コバロスが、淡達の宇宙船の爆発を見届けた。彼は、これで淡達は宇宙の藻屑になったと確信していた。
ハンニャを乗せたミサイルの片割れ(?)が、コバロスの乗る宇宙戦艦に収容された。
超能力を封じるシールドが施されている中で、ハンニャは巨大なマジックハンドに身体を挟まれたまま身動きが取れないでいた。
コバロスが、
「この超能力者を特殊シールドから出すな! それで中を青酸ガスで充満させろ!」
と部下に命じた。
こいつは人質じゃないのか?
だったら何故捕えたのか?
「殺す…のですか?」
「やむを得まい。生きたままシールドから出せば、あの強烈な超能力で、こっちが破壊されてしまう。危ない芽は早いうちに啄ばんでおくべきだ。」
「では何故、この生物を乗せたままで宇宙船を爆破しなかったのですか?」
「こいつを調べたいんでね。本当は、生きたまま調べたいところだが、今回はやむを得まい。死体解剖で留める。」
「分かりました。」
「では、頼んだぞ。」
ハンニャを収容したミサイルの中に、大量の青酸ガスが流し込まれた。その量は、ヒトの致死量を遥かに超える量だった。
それから数十分後、コバロスの宇宙艦隊は瞬間移動でその場から姿を消した。
一方、淡達は、緑の星の地下都市で別の宇宙船に乗り込んでいた。
指令席は空けてある。ここは、ハンニャの席だ。
淡は、その隣の席に座りながら珍しく泣きそうな顔をしていた。ハンニャの身に何が起こっているのか心配で堪らないのだ。
ウルウルから、
「敵は、どうやら、おとめ座銀河団に引き返したようです。」
との報告が入った。
「では、私達も一気にタイシン星に向かいます。長距離瞬間移動の用意を。」
操縦席に座るサンムーンが、今は司令官代理を務める。
「はい。」
「それから王子は、いつでも出撃できるようにしておいてください。」
「やっちゃってもイイの?」
「はい。思い切りやっちゃってイイです。」
「ヤッター!」
タムタム王子は、まるで無邪気な子供のように喜んでいた。ハンニャが捕らえられていると言うのに、全く緊張感の欠片も無かった。
それから数分後、淡達を乗せた宇宙船は、緑の星の地下倉庫から、一瞬でタイシン星の位置する惑星系内部に瞬間移動した。
そして、そのまま再度の瞬間移動でタイシン星衛星軌道付近まで一気に詰め寄った。
ウルウルが通信チャンネルを開いた。
タイシン星司令室のモニター画面にサンムーンの姿が映し出された。
相手には、こっちの正体がバレている。今更、淡に第一皇女役をやらせる必要もない。
「ハンニャとイタタを返してもらう。」
単刀直入な台詞だ。
これにコバロスが答えた。
「あの爆発で生きていたとは驚いた。どんな手を使ったか分からないが、さすがだな。しかし、残念だが、両方とも遺体を解剖させてもらう。さっきの超能力者には大量の青酸ガスを吸わせた。もう死んでいることだろう。」
「もう一度言う。ハンニャとイタタを返してもらう。力ずくでな!」
サンムーンは、それだけ言うと通信を切った。
「ウルウル。敵の発信源は?」
「ここから東に200キロのところです。」
「分かった。そこまで一気に瞬間移動する。ハンニャとイタタを乗せた宇宙戦艦も、そこにあるでしょう。では、王子。その後は御願いします。思い切り暴れてください。」
「うん!」
それから僅か数秒後、宇宙船は目的地上空1キロの位置まで一気に瞬間移動した。
宇宙船の扉が開き、中からタムタム王子がパラシュートもつけずに飛び降りた。これくらいの高さからでも無難に着地できる自信があるのだろうか?
その後姿を心配そうな顔で淡は宇宙船の中から見送っていた。
「ねえ、私達も一緒に行った方が良かったんじゃないの?」
「いえ…。済みませんが、我々では王子の足手まといになります。」
「ちょっと、それは言いすぎじゃ…。」
「済みません…。しかし、王子のパワーは並大抵では有りません。王子の武器は、その体力…。もっと正確に言えば、鋼を超えた筋肉と、超スピードで動いて行くのに必要な動体視力、そして超スピードで動いても空気摩擦に負けない強靭な皮膚です。」
サンムーンが、モニター映像をタムタム王子の着地予定位置に切り替えた。
「最高潮に達した時の王子のスピードは、マッハ50を楽に越えますし、強靭な皮膚と筋肉は、レーザーも利きませんし弾丸をも弾き返します。」
「…はぁ?」
余りに現実離れした台詞に、淡は懐疑的な目をサンムーンに向けた。しかし、今のサンムーンには冗談などぬかしている余裕は無い。ハンニャを捕らえられて一番頭にきているのは彼なのだ。
「とりあえず、機体にバリヤーを。それと、王子の動きを特殊レーダーで追いかけて見て下さい。」
「ええ。信じられないけどね…。」
地上から見たアングルの映像だ。これが、上空1キロの地点から見られるのは不思議だが…。
淡がモニターを見上げると、上空から猛スピードで落ちてくる物体が捉えられた。タムタム王子だ。
そして、そのまま両足で無事着地。1キロもの高さから何の装備も無しに飛び降りたはずなのだが、何故か平然としていた。
コバロスも、このタムタム王子の姿をモニターに捉えていた。
「あの暗殺者か!」
彼の中では、タムタム王子は、すっかり暗殺者と言うことになっていた。すくなくとも王子だとは思われていない。
それ以前に、王子を単独で敵地に送り込むこと自体が、普通の感覚からは考え難いことなのだが…。
タムタム王子の前方に、沢山の兵士達が姿を現した。侵入者を排除する。これは当たり前だろう。
しかし、それも束の間、次の瞬間にはタムタム王子の姿は忽然とモニター上から消え、バタバタと倒れ込んで行く兵士達の姿だけが映し出された。
「へっ?」
一体何が起きたのか、淡には分からなかった。
タムタム王子は、一瞬で数キロメートルもの距離を移動しながら、途中にいる何百人もの兵士達の体に次々と猛烈な蹴りやパンチを繰り出していたのだ。その超スピードは、もはや我々人間の常識の範囲を遥かに越えていた。
その余りの動きの速さに、淡は全然目がついて行かなかったのだ。
「私の言ったことがお判り頂けたと思います。あのスピードに付いて行くことは、基本的に誰にも不可能なんです。王子は、マッハ30くらいのスピードにセーブすれば、不眠不休で、丸三日間走り続けることができます。」
「…。」
淡は、すっかり言葉を失ってしまった。
マッハ30がセーブしたスピード?
しかも、そのスピードで丸三日走り続けられる?
非常識極まりない。
少なくとも生物の範疇を超えている。
タムタム王子もまた、ハンニャやサンムーンと同様に彼女の常識の枠では全く計り知れない存在だったのだ。
そうこうしているうちにも、多数の兵士達がタムタム王子の攻撃を食らって次々と倒れていった。武器は不要。全て丸腰での攻撃だ。
「君達は、もう死んでいるよ!」
タムタム王子は、そう言いながらも、極めて爽やかな好青年としか思えない明るい表情をしていた。
ちなみに、胸に七つの傷はない。
ふと、モニターに映る兵士達の様子がおかしいことに淡は気が付いた。
「ねえ、サンムーン。なに、あれ? (兵士達の)体から煙が出てる。」
「それは、そうですよ。彼等は強靭な身体と高い戦闘力を得るために、身体の一部を機械化しているのですから。」
「じゃあ、サイボーグ?」
「そうです。イタタからの報告によれば、この星のおよそ九割の人間がサイボーグ化されているそうです。戦闘力を高めるものもいれば、大脳を強化するものもいる。それぞれに合った形でサイボーグ手術を積極的に施行しているとのことです。」
「そうなんだ…。」
人間が人間でなくなっている。人工産物に成り下がっている。そんな感じがする。
しかし、淡は、自分にはそれを非難する資格がないと感じていた。脳力アップのヘルメットを二度装着しているからだ。
淡は、別にサイボーグ化されたわけではない。しかし、自らの力ではなく人工的に大脳を強化したことには変わりはないだろう。
タイシン星人に、淡は自分のバックグラウンドが重なって見えた。
一方、タムタム王子は、珍しく気の入った顔を見せながら猛スピードでタイシン星基地のゲートの中へと飛び込んだ。そして、床や天井、壁を蹴りやパンチでぶち破りながら一直線に突き進んでいった。
まさに生きた兵器と言えよう。
基地のあちこちにはカメラが仕掛けてある。侵入者をキャッチするためだ。
司令室のモニターに、そのカメラ映像が映し出された。
この派手な破壊劇を見せ付けられて、コバロスは、
「暗殺者ではなく破壊神か…。」
とタムタム王子への認識を改めた。
進入してから約十五分、タムタム王子は、好き勝手に基地を破壊しながら突き進み、なんとかイタタが甲板に貼り付けられた宇宙戦艦を、基地の地下で発見した。
この場所を最初から知っていたわけではない。見つけるために、当然、あちこちを見て回った。
となると、ここに到達するまでに、どれだけの設備を破壊したことだろう?
それはさておき、タムタム王子の姿も、当然、戦艦の周りで作業をしていた者達にバレバレだった。侵入者が戦艦のほうに向かっているとの情報が伝わっていたからだ。
「侵入者だ。」
「撃て!」
一斉にタムタム王子に向けてマシンガンが撃ち放たれた。
大量の銃弾がタムタム王子の身体に命中した。
しかし、
「痛いなあ、もう。」
そんなものは通じない。銃弾は、タムタム王子の身体に当たると、そのまま彼の身体を傷つけることなく弾き返された。
死ぬどころか、むしろケロッとした顔をしている。
そして、次の瞬間、マシンガンを構えていた者達の視界からタムタム王子の姿が忽然と消えた。超音速で動く相手を肉眼で捉えろと言うのはムリがあるだろう。
そのまま、タムタム王子は開いていたゲートから戦艦の中に乗り込んだ。
そして再び、戦艦内のあちこちを破壊しながら、ハンニャが収められたミサイルの片割れを探して行く。
数分後には、戦艦は内部の殆どを破壊されて使い物にならなくなった。
「見つけた。これだ!」
タムタム王子は、戦艦のほぼ中央の位置する格納庫内に、例のミサイルの片割れを見つけた。そして、彼は、軽くジャンプすると、そのミサイル上部から1センチくらい離れたところに向けて蹴りを繰り出した。
その蹴りはミサイルには届かなかった。わざと空振りしたのだ。しかし、その凄まじい風圧で、蹴りを繰り出された付近が鋭利な刃物で斬られたかのように切断された。常識の枠を越えた凄まじいカマイタチ現象である。
宇宙空間で使うミサイルの機体だ。脆いはずはない。それをカマイタチ現象で切断するのは相当非常識だろう。それくらいとんでもない拳法の使い手が主人公の漫画が以前あった気もしなくもないが…。
タムタム王子が、ミサイルの中を覗き込むと、ハンニャは血の気が…引くどころか、むしろ血色良く感じられた。
ハンニャの身体全体がうっすらと輝いている。タムタム王子の攻撃で死なないように超能力でバリヤーを張っていたようだ。
超能力シールドを施されたミサイルの外に超能力攻撃はできないし、同じ処置を施されたマジックハンドを超能力で動かすこともできなかったが、超能力のバリヤーで自分の身体を守ることくらいはできる。
周りの激しい音を聞いて、タムタム王子が暴れていることを察知して超能力バリヤーを張っていたようだ。
「王子。来てくれたのですね。」
「うん…。ハンニャ、大丈夫?」
「はい。大丈夫です。敵は、我々に毒は効かないと言うことを知らなかったのでしょう。久し振りに青酸ガスを吸わされましたよ。」
「本当! いいなあ…。」
そう言いながら、タムタム王子がハンニャを捕まえるマジックハンドに向けて拳を繰り出した。すると、そのマジックハンドはタムタム王子の拳が触れていないのに大破した。
気のパワーか?
そのままタムタム王子がハンニャに手を差し伸べた。
ハンニャがタムタム王子の手を掴むと、タムタム王子は、ハンニャの身体を一気にミサイルの片割れ中から引き上げた。
「そう言えば、王子も私と一緒で青酸ガスが大好物でしたっけ。しかし、あれだけ多いと、もう当分はいらないかなと…。」
「ズルイなあ、そんなに沢山…。僕の分も取っといて欲しかったのに。」
「済みません。しかし、ガスですので取っておくことは難しいですよ。」
「分かってるけど、でも、青酸ガスが沢山吸えるんだったら、僕が代わりに捕まっても良かったのにな。」
「まあ、青酸ガスでしたら、研究施設惑星として建設中の『萬の星』に行けば好きなだけ吸えますよ。地下から噴出しているらしいので。」
彼らは娯楽・遊園施設惑星以外に、研究のみに特化した星も作ろうとしているようだ。
しかもネーミングは、三元牌、風牌に続いて、今度は萬子らしい。
「本当!」
「はい。ただ、近々青酸ガスの噴出を止める作業に入るそうです。それでサッタ(赤の星首相)がその星に向かっております。」
「そうだったんだ…。止めちゃうんだ。もったいないな。」
「しかし、この宇宙では青酸ガスを吸ったら死んでしまう生物の方が圧倒的に多いですからね。我々白の星の総意としては、今後、色々な惑星との交流を深めて行く方向で動くことになっております。研究施設惑星にも、他の星の研究者達に来て貰いたいと思っておりますし。」
「そうだったね。」
「はい。ですから青酸ガスを止めるのは仕方有りません。」
「残念だな。」
「まあ、お気持ちは分かりますが…。それはそうと、急ぎましょう。王子、イタタはどうなってます?」
「甲板の上で死んだままだよ!」
「分かりました。」
ハンニャが超能力で周りの状況を確認した。超能力を遮断する入れ物から出された今、全てが手に取るように分かる。
「イタタは、あそこですね。では、全員テレポートします。ハンニャー!」
ハンニャの毛先の球が煌々と輝いた。超能力を発揮した証拠だ。
そして、その直後、イタタの死体とハンニャ、タムタム王子は淡達の乗る宇宙船操縦室内に瞬間移動して現れた。
「ハンニャ、大丈夫?」
淡がハンニャを抱き上げた。
「ご心配をお掛けしました。問題ありません。」
「でも、毒ガスを吸わされたって…。」
「言い忘れましたが、我々白の星の者達には毒も病原体も寄生虫も効きません。」
「へっ?」
「だから、なんの問題もありません。むしろ、私も王子も青酸ガスは大好物です!」
「マジで?」
地球人の常識は一切通じない。
それは淡も分かっていたつもりだが、いまだにその非常識振りには驚かされる。
「タムタム。ハンニャを助けてくれてありがとう。」
「これくらい、どうってことないよ。むしろ、久し振りに運動できて楽しかったし!」
これが運動ですか?
レベルが違いすぎる。
「でも、イタタは大丈夫なの?」
「それなら、もうすぐじゃないかな。」
「もうすぐ?」
淡には、タムタム王子の意図することが分からなかったが…、その数秒後、
「ああ、良く死んだ。」
そう言いながらイタタが目を覚まして、ピョコンと立ち上がった。淡は、タムタム王子が言おうとしていたことを理解した。
要は、もうすぐ生き返ると言いたかったようだ。
ウルウルが、
「白の星から通信が入ってます。」
通信チャンネルを開くと、巨大モニターにタムタム王子にそっくりな生物が映し出された。頭の上には王冠を被っている。
「貴女が淡さんですね。」
「は…はい。」
「私は、白の星の王。ゾウサンガパです。」
ゾウサンガパ王?
ゾウさんがパオー?
ふざけた名前だ。
ちなみに、先代王の名前はツケメンダイ、その先代はスパ、そのさらに先代はモナ、さらにその前はニッシンラだそうだ。
「ハンニャ、サンムーン。」
「「はい!」」
「白の星、緑の星、赤の星に暮らす民達の総意としてタイシン星の破壊を決定しました。イタタへの虐殺行為が、最終的にそう判断させる材料になったようです。」
イタタが不死身なのをハンニャ達の種族は全員知っている。しかし、コバロス達はそれを知らずにイタタを串刺しにした。つまり、惨殺する気満々だったと言える。ゆえに許されざる行為と捉えられたようだ。
「カンブリア星との二大勢力で均衡を保っていたところ、そのバランスを壊したのは我々ですが、このままタイシン星を放っておくわけには行かないとの考えです。」
「では、これから私達で総攻撃を。」
「いいえ。こちらも試したいことがあります。」
「試したいとは?」
「開発中のモノを試したいのです。」
「では、もしかして?」
「そうです。今から三分後に白の星から例の超長距離型惑星間弾道ミサイルを発射します。急いでそこから避難してください。」
そう言いながら、ゾウサンガパはカップラーメンにお湯を注いでいた。ミサイル発射と同時に食べ始めるつもりなのだろうか?
だとすると、相当ブラックである。
しかし、ハンニャもサンムーンも、そこは突っ込まずにスルーしていた。
「「分かりました!」」
淡達の乗る宇宙船が、タイシン星から約1天文単位の空間に一気に瞬間移動した。
しばらくすると、モニター画面に大量のミサイルが映し出された。白の星から打ち上げられ、そのまま瞬間移動してこの空間に現れたのだ。
その数、約一万発。
それらがタイシン星のあちこちを一気に襲った。
「ねえ、ハンニャ。あのミサイルでタイシン星の人達は全滅するってこと?」
「いいえ。殺すのがもっとも手っ取り早いのは事実ですが、他に方法が無いわけでは有りません。この星の文明を全て取り上げ、原始生活からやり直してもらいます。」
「でも、どうやって?」
「あのミサイルから病原体であるウイルスを星全体にばら撒きます。そのウイルスで彼等の大脳機能を大幅に退化させます。知能指数をサル以下にまで下げてしまうのです。」
「ちょっと、原始人にしちゃうってこと?」
「原始人以下かもしれませんね。言語の習得や火の使い方に至るまで、完全に文明文化の確立をゼロからやり直してもらうのです。」
「でも、人間以外の生物も大脳も退化しちゃうんじゃ…。」
「その点は大丈夫です。タイシン星人のみに感染するように人体実験しております。そのために、緑の星に偵察に来たメンドーク星人を生け捕りにしているのですから。」
「えっ?」
これは、これで人道的見地から見て酷い話である。
しかし、相手が淡の乗っていたシャラク星の宇宙船を攻撃してきた奴らだ。それもあってか、淡は人体実験の犠牲になったメンドーク星人に余り同情する気にはならなかった。
「なるほど…って、でも、そんな都合の良いウイルスってあるの? それに、メンドーク星人に感染してもタイシン星人には感染しないとかってことはない?」
この淡の問いに、サンムーンが答えた。
「赤の星で人工的に作り出したウイルスです。それと、メンドーク星人もタイシン星人も遺伝子情報に差はありませんでした。ですので、タイシン星人にも感染するはずです。ちなみに地球人には感染しませんけどね。」
「でも、抗ウイルス剤を使われたら…。」
「その点は大丈夫です。イタタの調査で、このウイルスを撃退する薬剤がタイシン星には存在しないことを確認しています。もはや、感染力が強く空気感染可能なウイルスが一気に蔓延するだけです。数時間後には、彼等の知能はサル以下にまで低下します。もう、宇宙への進出は不可能でしょう。」
超長距離型惑星間弾道ミサイル。
これが実用化されれば、わざわざ敵地に赴く必要はない。
今回、中に搭載されたモノは恐ろしいウイルスだが、これをアワイ砲に置き換えることも可能だろう。ならば、相手方を消滅させることも十分可能だ。
淡は、とてつもなく恐ろしいモノを見た気がした。
もし今後、地球が宇宙開発を誤ったほうに進めたならば…、どこかの星々に対して不当なる侵略行為を展開したならば…、この超長距離型惑星間弾道ミサイルが天誅と言わんばかりに地球を攻撃してくるかもしれない。
そうならないことを淡は祈るのみだった。