淡-Awai- あっちが変   作:おこそとのほもよろを

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流れ三本場:淡、与えられた力を証明する

 淡には、まだハンニャに聞きたいことがあった。

「それと、どうして私が選ばれたの? 他にも沢山人間がいるのに。」

 選択基準は何なのか?

 それは、それで気になる。

「何のことはありません。私の独断で決めました。好みと言うか、趣味と言うか…。まあ、強いて言うなら、私が見た目で直感的にイイと思った。それだけです。」

 淡としては、好みと言われて嫌な気はしないが、まるっきり別種の生物である。美的感覚も全然違うだろう。

 正直、少々複雑な心境だった。

 恐らく、ハンニャとしては、我々人類がイヌや猫を見て可愛いと思うのと大差ない感情なのかもしれないが…。

「それでは、これから白の星に行きます。高校合格のため、我々の科学力で淡さんの頭の回転を少々速くさせていただきます。」

 この時、淡の視界に入っていたのは、『真っ暗な空に輝く多数の星々』と『果てしなく延々と続く地面』であった。

 前にも後にも右にも左にも建物も何もない自然いっぱいの風景だ。

 突然、淡とハンニャがいる10メートル四方の地面が、下がり始めた。その部分が、巨大なエレベーターになっていたのだ。

 地下には人工的な明かりが煌々と灯っている。

 もしかして、ここが、ハンニャ達の地下都市か?

 そして、地下50メートルくらいまで降りたところに、全長30メートルくらいの宇宙船が、ところ狭しと置かれていた。

「(この宇宙船に乗るのかな?)」

 と、淡は思った。

 しかし、ハンニャは、その宇宙船の横を通り過ぎて、その遥か後方にある壁のドアを開けた。

「淡さん。こっちです。」

 ハンニャに連れられて、淡は、そのドアを通り過ぎた。

 すると、何故かドアの向こうには、大都会を思わせる街並みが広がっていた。ハンニャ達と似たような姿をした生命体が沢山歩いている。彼等の街だ。

 空には、太陽のようなオレンジ色の恒星が輝いている。昼だ。緑の星は、さっきまでは夜だったはずなのに…。

 広大な土地の地下50メートルに位置するところに、何故、このような風景が広がっているのか?

 しかも、100メートルくらい先には、200メートルはあると思われる超高層ビルが建っている。地下に降りる前には、こんなものは無かった。ただ、地面が延々と広がっていただけだ。

 どこか、おかしい。

 さっきまでの風景から考えて、矛盾しないか?

 すると、ハンニャが、

「ここが白の星です。」

 と言った。

 緑の星から220万光年離れた白の星が、ドア一枚挟んだところにあるって?

 さすがに、突っ込みどころだ。

「えっ? だって、ドアを通り過ぎただけでしょ?」

「淡さんが、シャラク星の輸送船に迷い込んだ時と同じですよ。このドアが220光年先の空間と繋がっているのです。」

「はあ…。」

 たしかに別の空間に出たのなら、この光景も理解できる。

 しかし、220光年もの距離をドア1枚隔てただけで移動できることが信じられない。

 さすがに淡も頭を抱えた。

「あのビル…の向こうにある小さな建物に、文部科学大臣のサンムーンがいます。彼の力を借ります。」

 たしかに、少し小さ目のビルがある。4階建てだ。

 しかし、ハンニャが入っていったのは、そのさらに隣にある平屋の小さな家だった。床面積は、全部でせいぜい8坪くらいだ。

 どこかの飲み屋みたいだ。

 淡も、ハンニャの後を追って、その小屋の中に入っていった。

 そこには、ハンニャと似たような背格好をした生命体がいた。

 彼は、とても気難しそうな目をしていた。彼の頭には、ハンニャの頭に生えている球の付いた毛と同じようなものが二本生えており、額には三日月模様がついていた。

「彼がサンムーンです。」

「よ…よろしく。大星淡です。」

 淡がサンムーンに会釈した。

 ただ、大臣が小屋にいる?

 そう言えば、ハンニャは首相だ。それで、こんなんだ。

 質素に暮らす大臣が居てもイイだろう。

「はじめまして。サンムーンです。話は、ハンニャからテレパシーで聞いております。早速ですが、これを被ってください。」

 サンムーンもテレパシーを使えるようだ。淡の脳内に直接話しかけてくる。

 彼が、部屋の隅に置いてあったヘルメットを淡に渡した。

 若干抵抗はあったが、別に埃で汚れているわけでもないし、

「まあ、イイか。」

 と、淡は、言われたとおり、そのヘルメットを被った。

 すると、

「ギュイーン…。」

 電子機器が起動するような音が聞こえてきた。そして、その音は、10秒ほどで消えた。

「外してください。」

 サンムーンにそう言われ、淡はヘルメットを外した。

「では、大星さん。この紙に書いてある問題を解いてみてください。」

 淡は、サンムーンからA3サイズの紙を二枚受け取った。

 その片方に書かれてあったもの…。それは、今日学校で受けた数学のテストだった。もう一枚は答案用紙。

 ただ、頭が拒否らない。いつもと感覚が違う。

 内容が分かる。これなら解ける!

「嘘でしょ? 私、今まで、こんなものが分からなかったの? 授業で聞いたやつとか教科書に書いてあったやつとか、そのまま出てるジャン。」

 淡は、そのまま数学のテストを20分くらいで解き終えた。

「大星さんの偏差値を、一先ず全科目63くらいに設定しました。」

「じゃあ、数学も理科も25も底上げしてくれたってこと?」

 と言うことは、元のレベルは…。言わないでおこう。

「まあ、そうですね…。」

「それに、他の科目も10ちょっと上がってるってことだね。でも、すごーい。こんなヘルメットをつけただけで頭が良くなっちゃうなんて!」

「いいえ。頭の出来は変わってませんよ。」

「えっ? さすがにそれは、嘘っぽいけど。」

「本当です。元々あった能力を少し引き出しただけです。ついでに理科のテストも受けてみますか?」

 サンムーンは、何故か、今日受けた理科のテストも持っていた。

 淡は、それを受け取った。

「やっぱり、今なら答えが分かる。どうして、今まで分からなかったんだろう?」

 そして、こっちも20分ちょっとで全ての解答を書き終えた。

「でも、いまさら解けても遅いよね。」

「そんなことありませんよ。では、ハンニャ。御願いします。」

 ハンニャは、サンムーンから淡の二枚の答案用紙を右手で受け取ると、毛先の玉を煌々と輝かせた。

 すると、ハンニャが持っていた答案用紙が消えて、いつの間にか、別の二枚の紙を淡が左手で持っていた。

 さっき淡が解答を書いた答案用紙と、テスト中に淡が書いた答案用紙を、ハンニャが超能力で差し替えたのだ。

 と言うことは、テストの点も、まともな点に差し替えられるはず。

「一先ず、これで淡さんの願いは叶えました。今日は、これでお帰りください。必要が生じた時に、私からテレパシーで連絡します。」

 そう言うと、ハンニャが、この小屋(?)のドアを開けた。淡が、そのドアを通ると、その先にあったのは、何故か淡にとって見慣れたところ…自分の部屋だった。

「では、また。」

 ハンニャがドアを閉めた。

 既に、そこは夜になっていた。

 時計を見ると午後8時。

 右手にはマイボトル、左手には数学と理科の答案用紙がある。自分がテスト中に書いた奴だ。

 問題用紙は、かばんの中にもある。どうでもイイと思って、適当にかばんの中に入れたものだ。グシャグシャになっている。

 かばんから問題用紙を取り出して見直してみたが、やっぱり解答できる。

 それに、そもそも、この解答用紙がここにあると言うことは、さっきまでのことは夢ではない。現実にあったことの証明だ。

「淡。起きてる?」

「(もしかしてハンニャ?)」

 部屋のドアが開いた。

 ただ、淡の期待を裏切り、ドアの向こうにいたのはハンニャではなく、母親だった。

「寝てたみたいだけど、もう、とっくに夕飯できてるわよ。」

「うん。食べる。」

 淡は、部屋を出てリビング・ダイニングに向かった。

 この時、淡は、これから起こる悲劇(喜劇?)を、まだ知らなかった。

 

 翌朝、

「(息苦しい。)」

 淡は、呼吸がし難くて目を覚ました。それに何故か胸の辺りが重苦しい。

「(なんだろう?)」

 ただ、別に何かが乗っかっているわけではない。

 淡が上体を起こした。

「あれ?」

 胸の辺りが窮屈だ。

 それでボタンを外そうとしたが、いつもと感覚が違う。

 淡は自分の胸に手を当てた。

「なに、これ?」

 急にサイズアップしていた。

 そう言えば、昨日、

『それと、私、胸が小さいから、能力のエネルギーが補給されると胸が大きくなっちゃう…、なんちゃって。』

 たしかに、淡はハンニャにこんなことを言った。

 胸を大きくして欲しいとは思ったが、半分冗談だった。それが、寝て起きたら鉄板が見事な双丘に変わっている。これは、周りの人達に説明するのがメンドクサイ。

 それに、能力補給で大きくなるのなら、大きさは可変式だ。日によって色々とサイズが違う可能性がある。

 すると、淡の頭の中にハンニャの声が聞こえてきた。

「心配要りません。周りの人には、淡さんが、そう言う体質だと認識するよう、既に記憶を操作させていただいておりますから。衣類のほうも、クロゼットの中に幾つか揃えてあります。」

 記憶操作もできるのか…。恐ろしい。

 淡がクロゼットを開けると、確かに服が増えていた。ぬかりがないと言うか、至れり尽くせりだ。助かると同時に申し訳ない。

 今日は、学校は休みだ。しかし、朝九時から一応部活がある。

 淡は、朝食をとり、身支度をすると学校へと向かった。

 とは言え、淡の所属する南日ヶ窪中学卓球部は、弱小だし、そんなに力を入れて練習しているわけでもなかった。

 そもそも、顧問が来ていない。

 部活と言うよりも、殆ど大学のサークルみたいな状態だ。

 淡は、急に変わった自分の身体を見て、誰かが何か言ってくるのではないかとヒヤヒヤしていた。しかし、みんな、淡を見ても普通の顔をしていた。

 ハンニャの言うとおり、一部大きさが変わっても、それが淡の体質と言うことで受け入れられていた。

 特に不思議がられてもいない。普通は有り得ない体質だと思うが…。

 

「大星。面子が一人足りないんだけど、いいか?」

 卓球部なのに、練習時間なのに、何故かレギュラー落ちが確定した先輩達から麻雀の誘いがくる。

「いいですよ!」

 淡は、早速ハンニャにもらった力を試してみたく、その誘いに乗った。

 何故か部室には麻雀卓があった。それも、麻雀部から御下がりでもらった自動卓だ。積み込みはできない。

 

 場決めがされた。淡は北家でスタートだった。

 東一局。

「(能力発動。絶対安全圏。)」

 先輩達の嫌そうな顔。

 配牌が悪いのが顔に出ていた。

 一方、淡の配牌は一向聴。3巡目で対面が捨てた{發}を、

「ポン!」

 鳴いて、次巡、

「ツモ! 發チャンタ三色ドラ2。2000、4000です。」

「お前、手がイイな。こっちは配牌五向聴だぞ。」

「私は六向聴だった。ツモは悪くなかったけど。」

「私も…。」

 非常に素直でイイ先輩達だ。淡の能力発動をきちんと確認させてくれる。

 

 東二局。

 ここでも淡は、

「(能力発動。絶対安全圏。)」

 またもや先輩達の嫌そうな顔。今回も配牌が悪いのだ。

 一方、今回、淡は二向聴。良好な配牌だ。

「ポン!」

 下家が捨てた{東}を鳴き、

「チー!」

 上家が捨てた{8}を鳴き、

「ロン! 2000点です。」

 対面が捨てた牌で和了った。

 

 東三局も、

「(絶対安全圏!)」

 淡の能力が発動した。淡のみ二向聴、他は全員五向聴。

 ここでも淡は序盤から鳴き、

「ロン。2000点です。」

 上家から和了った。

 

 そして、東四局、淡の親番。

「(ここで試させてもらいますよ、先輩方。)」

 絶対安全圏プラスダブルリーチ。

 とうとう、淡が本気になった。

「リーチ!」

 先輩3人が全員五~六向聴のところにダブルリーチ。これは強烈だ。しかも、サイの目は5。最後の角の後が比較的長いパターン。

 角の直前で、

「カン!」

 淡が暗槓した。

 嶺上牌はツモ切り。そして、角を過ぎた後、下家の先輩が切った牌で、

「ロン!」

 出和了りした。

 ただ、何故か牌を普通に倒さずに、逆回転で淡は牌を倒した。勝手に手がそう動いたのだ。何故そうしたのかは、淡にも分からなかった。

 ハンニャの声が淡の頭の中に聞こえてきた。

「特に意味はありません。なんとなくです。そのほうが、能力発動条件みたいに見えて格好良さそうと思っただけですよ。」

 説明ありがとう。

 淡の手を見て、振り込んだ先輩はホッとしていた。ダブルリーチのみだ。

 しかし、淡が裏ドラをめくると、その先輩の顔は、唖然とした表情に変わった。

「スミマセン、先輩。カン裏4です。18000点です。」

 これで下家の先輩は、残り3000点となった。

 

 東四局一本場、淡の連荘。

 ここでも淡は、

「スミマセン。今日はツイてます、私。また、ダブリーです!」

 建前上、ツイていることにした。それでいて、先輩方は五~六向聴。

 絶対安全圏とか意図的なダブルリーチとか、こんな能力があるなんて普通は考えられない。単なる偶然で片付けられる。

「ゲッ! 大星。お前、本当に今日はツイてるな。こっちは、またもや配牌最悪だって言うのに。」

 一応、先輩方の手は、普通に育ってゆく。それが、見た目には救いのように見えた。

 しかし、これは淡のダブルリーチに対して、後半に危険牌を勝負させるための罠だとも知らずに…。

 今回のサイの目は7。角の後が最も長いパターン。淡が、前局と同様に角の直前で、

「カン!」

 暗槓した。嶺上牌はツモ切り。

 そして、角を過ぎた後、今度は自力で和了り牌をツモってきた。

「ツモ! ダブルリーチ…。」

 淡の開いた手牌を見て。ダブルリーチツモのみと知って、一瞬先輩達はホッとした。

 しかし、淡が裏ドラをめくると、先輩達の顔色が変わった。

「スミマセン、先輩。また、カン裏4です。6100オールです。」

 これで下家の先輩のトビで終了になった。

 証明終了。淡がハンニャにお願いした能力は、たしかに淡に備わっていた。これなら無敵だ。淡は、そう確信した。

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