淡-Awai- あっちが変   作:おこそとのほもよろを

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流れ四本場:淡、初仕事に行く?

 先輩達は、こんな負け方をして納得するはずがない。

「「「大星。もう一回だ、もう一回!」」」

 淡は、先輩達に言われるがまま、二半荘目に突入した。

 ただ、余り勝ち過ぎても先輩達の機嫌を損ねる。

 今日の目的は勝つことではない。能力の証明だ。それが済んだのだから、あとはトータルで負けない程度に流せばいい。

 一先ず淡は、絶対安全圏を自分の親の時のみの使用に限定した。また、ここから先は、ダブルリーチをかけずに済ませた。

 

 四半荘目が終わった時、

「なんだ、お前達。部活サボって麻雀か?」

 レギュラーの先輩達が部室に入ってきた。しかし、もともとダレ切っている部だ。別に怒られるわけではない。

 それに、レギュラーの先輩達も、他の中学に行けば補欠にもなれない。正直、威張れる立場でもないだろう。

 明日からの地区予選。多分、一回戦負けだ。

 他校からは、

「お笑い卓球部!」

 と言われるくらいの超弱小なのだから…。

 一応、それでもレギュラーとは無関係の淡達も応援に行かなくてはならないのだが…。笑われに行くみたいで気が重い。

 この日は、麻雀だけ打って淡は家に帰った。今日の部活は、もともと午前中のみで、午後はフリーだ。

 しかし、淡にとっては、ここからが大変だったのだが…。

 

 家に帰って昼食を取ると、淡は自分の部屋に戻り、ベッドに寝転んだ。

「(あはっ! ハンニャにもらった能力って凄い!)」

 淡は、目を閉じて今日打った能力麻雀を思い出していた。これなら、余程の化物でない限り負けることはないだろう。

 まあ、その化物一号に出会うのは、今から一年先、化物二号との出会いは二年先になるのだが…。

 そのまま淡が昼寝をしようとした、その時だった。

「淡さん。仕事です。ドアを開けてください。」

 淡の頭の中にハンニャの声が聞こえてきた。

 交換条件なのだから、行かないわけにはいかない。

 ハンニャに言われたとおり、淡が自分の部屋のドアを開くと、そこは、宇宙船の操縦室内に繋がっていた。

 それは、緑の星の地下で見た宇宙船の中だった。

 操縦室には、ハンニャ、サンムーンの他に、緑の星でジュースをくれた生物もいた。大きな目をして、

『ウルウル』

 と言っていた子だ。どうやら、その子は、レーダー通信担当のようだ。

 指令席にはハンニャ。操縦席にはサンムーン。

 そして、何故か操縦室の真ん中にはソファーが置かれており、そこにはハンニャ達と同じ種の生物が一人(一匹?)くつろいでいた。彼は、非常に爽やかな感じの顔付きをしていた。

「仕事って?」

 この淡の質問にハンニャが答えた。

「偵察隊から、おとめ座銀河団で、ある星が一方的かつ不当に侵略行為を受けているとの報告を受けました。そこに行きます。攻められている側を守り、侵略する側を排除、最悪の場合、侵略する側との戦いになるでしょう。」

「へっ?」

 たしかにハンニャからは、

『宇宙の平和のために、共に働いて欲しい』

 と言われた。

 それと、宇宙戦争が実在することも教えられた。

 ただ、いきなり宇宙戦争の真只中に行く?

 淡には想定外だった。

 しかし、約束は約束だ。もし約束を破ったら…。

 にやけ顔で気の抜けたような顔をするハンニャが、文字通り般若の顔になって淡に超能力で攻撃してきたら…。

 ハンニャ達の持つ科学力で攻撃されたら…。

 多分、どちらにしても一貫の終わりだ。淡の命はない。

 つまり、淡には『イエス』か『はい』の二択しかない。社畜と変わらない立場だ。よって、腹をくくるしかない。

「では、淡さんに、こちらのメンバーを紹介します。既にサンムーンには面識があると思いますが、彼は白の星、緑の星、それと大マゼラン星雲にある赤の星の文部科学大臣を兼任しております。」

「赤の星?」

「はい。我々の第二の移住先です。我々は、アンドロメダ星雲の白の星、天の川銀河の緑の星、大マゼラン星雲の赤の星の三つの惑星に拠点を置いております。」

 白、緑、赤って…三元牌か?

 淡は、一瞬そう思った。

「そして、レーダー通信担当が、紅一点のウルウル。普段は緑の星に居ます。操縦室中央に居るのが、タムタム王子。普段は白の星におります。」

 王子がいるのか?

 あの爽やかな感じの、ソファーでくつろいでいた奴か。

 これから戦地に向けて出発すると言うのに、くつろいでいられるとは、どういう神経をしているのだろう?

 それに、ハンニャ達の種族に王家があっても、『オウケ』ではなく、『オオウケ』の間違いとしか思えない。

 そんな不謹慎なことを淡は一瞬考えた。しかし、とんでもない超能力者のハンニャがここにいる。

 もしかしたら、考えたことは全て筒抜けかもしれない。

 淡は、それ以上考えるのをやめた。

「でさあ。白の星、緑の星、赤の星って、星の色がそうなの?」

「白の星は、他の二惑星と比べて石灰質の土地が多いため、白の星と呼んでおります。緑の星は、自然豊かで緑が多いからです。赤の星は、巨大大陸がある星で、砂漠地帯が多いんです。それで、赤の星と呼んでいます。」

「そうなんだ。」

 丁度のこの時、女性からの報告が入った。ウルウルからのテレパシーだ。

「首相。どうやら、攻撃されている星は、サシス星です。」

 どうやら、ハンニャ達達は、基本的にテレパシーで会話をするようだ。

 それにしても、メンドーク星だのシャラク星だのサシス星だの酷い名前だ。緑の星は、メンドーク星人からはシンキク星と呼ばれていたみたいだし…。

「あの全長20メートルにも及ぶ巨人が住む星ですね。」

 操縦室の巨大モニターに、サシス星人の男性の姿が映し出された。

 ウルウルが、サシス星人の画像の隣に、淡の全身画像をはめ込み、大きさを対比してくれた。これなら淡にも分かりやすい。

 たしかに、淡の10倍以上の背の高さである。それに筋肉隆々で、ごつい姿だ。

「攻撃しているのは、カンペキブリッコアイドル星。略してカンブリア星です。」

 これを聞いて、淡の目が点になった。

「なんじゃ、この名前は!」

 と言いたいところだ。

 今度は、カンブリア星人の画像が巨大モニターに映し出された。これも男性の姿だ。見た感じ、華奢な人間に羽が生えたような姿だ。

 その隣に淡の全身画像がはめ込まれ、大きさを対比してくれた。

 カンブリア星人の大きさは、体長30センチくらい。ハンニャ達と同じくらいの背丈だ。まるで、妖精のようだ。

「あの攻撃的で、極悪非道の奴らですね。」

 ハンニャからのテレパシーだ。

 再び淡の目が点になった。

 どう考えてもイメージ的に逆でしょ!

 何故、ごつい巨人の星が、華奢な妖精の星に侵略されているの?

 訳が分からなくなった。

「では、ウルウル。瞬間移動先の宇宙座標を設定してください。」

「はい。宇宙座標、上ゲ‐大字‐へ‐226‐3…。」

 これを聞いて、淡がコケた。

「ちょっと、ハンニャ。何なのよ、その宇宙座標は。『上ゲ』とか『字』とか『ヘ』とか、田舎の住所じゃないんだから。」

「いけませんか?」

「良いとか悪いとかの前に、雰囲気的に合わないんじゃない?」

「別に我々にとっては、違和感は有りません。それに宇宙座標も住所も、きちんと確定さえ出来れば問題無いでしょう。」

「それは、そうだけど…。」

 そうこうしているうちにウルウルが宇宙座標の打ち込みを終えてレーダー映像を切り替えた。

 モニター中央に、一つの惑星が映し出された。

「これが、サシス星です。では、これから、ここに瞬間移動します。では、サンムーン。御願いします。」

「了解。」

 サンムーンがボタンを押すと、淡を乗せた宇宙船の姿が、一瞬のうちに、その場から消えた。

 

 この頃、カンブリア星司令官トモティは、サシス星の五つの主要都市の上空に宇宙戦艦から構成される軍隊を分散させ、全戦艦の核ミサイルゲートを開かせていた。

 彼が、通信チャンネルを開くと、モニターにサシス星大統領タイタンの弱り果てた姿が映し出された。

「僕、トモティ! ねえ、タイタン君だったかな。昨日、君に出した宿題。僕達に全面降伏するか否か。君達の答えは、マルかな? それともバツかな?」

 トモティは、天使のような可愛い笑顔を見せながら、元気いっぱいで無邪気な声を出していた。話している内容と一致しないが…。

「わ…我がサシス星は、降服はしない。誇り高き死を選ぶ。」

「あれぇ? 何だか良く聞こえなかったな。なんか、死にたいみたいな風に聞こえたけど、気のせいかな?」

「だから、我々は降服しない!」

「ふーん。」

 トモティの顔が、突然悪魔のような邪気に満ちた顔付きに変わった。そして、画面越しにタイタンを睨み付けながら、今までとは全然違う低い声に変わった。

「タイタン君だったね。君なら僕の最高の奴隷になるかと思ってたんだけど、こんな形でサヨナラすることになるなんて、残念だな。まあ、自分達の頭の血の巡りの悪さを後悔するんだね。」

 妖精っぽい姿だが、少なくとも小悪魔なんて表現は似合わない。完璧な悪党そのものの顔付きだ。

 トモティが、発狂するかのように大声で笑い出した。

 そして、彼が、サシス星各主要都市の上空に待機させていた宇宙戦艦に、核ミサイルの一斉攻撃の命令を出そうとした、まさにその時だった。

「ハンニャー!」

 もの凄い大きな声が聞こえてきた。これと同時に、核ミサイル発射ボタンが次々に破壊されていった。ハンニャの超能力だ。

 トモティ達には、何故こんなことになったのか理解できない。しかし、これで核ミサイルの発射は、できなくなった。

 その直後、トモティの宇宙戦艦の前に、見知らぬ宇宙船が姿を現した。瞬間移動で空間を越えてきたのだ。

 それは、緑の星にあったハンニャ達の宇宙船だった。

 ハンニャ達の宇宙船から通信波がトモティの宇宙戦艦に送られた。これによって、まるでウイルス感染でもしたかのように、強制的に通信チャンネルが開かされた。

 トモティの宇宙戦艦のモニターに、淡の姿が映し出された。ハンニャ達は、映っていない。映っているのは、淡だけだ。

 この時、淡は真っ白なドレスに身を包み、うっすら化粧をして装飾品で全身を飾り、まるで、どこぞの国のお姫様のような姿をしていた。

 馬子にも衣装とは、良く言ったものだ。

 淡の頭の中にサンムーンの声が聞こえてきた。テレパシーだ。

「私の言うとおりに相手に話してください。」

 淡が、静かに頷いた。

 一方、トモティは、折角これからサシス星に核ミサイル一斉攻撃を仕掛け、

『雨アラレの如く空から激しく降り注ぐ核の嵐に身を打たれ、人々が凄惨な最期を遂げて行く姿…』

 とか、

『骨すらも残らない、全てが轟音と激しい光に包まれると同時に消え去ってしまう地獄絵図…』

 とかを楽しもうと思っていたところだ。

 これに釘を刺されてトモティは頭に来ていた。

「なんだ、お前は!」

「私は、白の星の第一皇女、アワイ。カンブリア星の不当な侵攻を止めにきました。」

「不当も何も、宇宙船もろくに作れない程度の文明しか持っていないくせに、言うこと聞かないから、目茶目茶にしようと思っただけだよ。」

「しかし、サシス星の平穏を壊す権利は、あなた方には無いはずです。」

「うるさいな。」

 トモティが、淡達に向けてミサイル砲を撃ち放った。

 すると、淡達の宇宙船は分厚いバリヤーを張った。ミサイルは、このバリヤーにぶつかると、轟音を上げて爆発した。

 淡達の宇宙船には、傷一つ付いていない。

「カンブリア星の貴方。名前は何といいます?」

「俺はトモティ。カンブリア星第一戦隊の司令官だ!」

「では、何故トモティは、相手を攻撃し、力ずくで押さえ込もうとするのですか?」

「力こそ正義だからだ!」

「力での侵略は、正義とは逆行するのではないですか? むしろ、正義とは、他人のためになってこそ意味があるのではないのですか?」

「自分のためになってこそ、正義としての価値があるんだ!」

「そうですか。そう言うのなら、仕方ありませんね。力が正義なら、これから見せる私達の力も正義と受け取ってもらいます。」

 ウルウルが通信を強制的に切った。

 トモティの目の前のモニターから淡の姿が消えた。

 淡は、

「もうドキドキ。あんなんで良かったの?」

 とサンムーンに聞いた。サンムーンは、

「上出来です。ああ言った感性の星も少なくありません。もはや、何を言っても、平行線でしょう。」

「そうよね。」

「しかし、大星さんが時間を稼いでくれている間に、ハンニャが超能力で相手の深層心理を解析しました。更生の余地無しのようです。」

「じゃあ、どうするの?」

 これにハンニャが答えた。

「力が正義と言うなら、トモティ軍を力で制圧します。」

「でも、この宇宙船一隻で何が出来るの?」

「あれくらい倒すのは簡単ですよ。地球の言葉で、目には目を、歯には歯をって言葉がありますでしょ。」

「あるけど…。」

「それが、こちら側の回答です。サシス星を守るためです。サンムーン。一番手っ取り早い方法でよろしく。」

「了解。」

 淡達の宇宙船が、バリヤーを張ったまま、トモティの戦艦に突き進んでいった。

「ちょちょちょ…ちょっと、これ、どういうこと?」

 こんなこと、淡は聞いていない。このままではトモティの戦艦とぶつかる。

 まさか、死なば諸共?

 淡達の宇宙船は、そのまま体当たりした。

 しかし、淡の不安は的中しなかった。

 トモティの戦艦は、大きな風穴を開けられたが、淡達の宇宙船は分厚いバリヤーに守られて傷一つ付かなかった。

 そのまま、その宇宙船は、超高速…いや、準光速で次々と敵戦艦の機体を打ち抜いて行き、ものの二分足らずで付近の戦艦(数百隻)を一掃した。

 まるで宇宙船そのものが、弾丸になったかのようだ。

 そして、他の都市の上空に配置された軍隊のところにも準光速で移動し、さっきと同じ手法で次々と敵戦艦を撃破して行った。

 どうやら自動操縦に切り替えているらしく、操縦担当のはずのサンムーンは、席にもたれかかって、くつろいでいた。

 ハンニャもウルウルも同様。完全にだらけ切っている。

 タムタム王子に至っては、何もしていない。ただ、操縦室のど真中のソファーの上で、横になって寝転がっていただけだ。

 そう言えばこいつ、最初から何もしていない。ただ、居ただけだ。

 こんな状態でいながらも、ハンニャ達が五つに分散した敵軍隊を全滅させるのに、十分もかかっていない。

 自動操縦での勝利。

 ハンニャ達とトモティ達で、科学力のレベルに天と地ほどの差があるのだろう。

 少なくとも、カンブリア星だって地球と比べれば、遥かに優れた科学力を持っているはずだ。それをさらに大きく上回る白の星の力。

 もはや、淡の想像の範囲を超えていた。

 歴然とした力の差…。今日、先輩達と打った麻雀を連想させる。自分の立場がハンニャ達で、先輩達がトモティ軍…。

 この余裕の勝利に、淡は、唖然としていた。

 こいつら、もしかして物凄いんじゃない?

 絶対に敵に回しちゃいけない。それが今日の淡の結論だった。

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