ケロロ軍曹 ~金木犀の君と~ 作:ありさ
3月。
ヒナタケにまた遊びに来た。
しかし、フユキはどこか元気がない。理由を聞きだしてみると、
「そのピクニックというのに行けないのが不満なんだな。」
「その、ママがね、仕事だから…」
「とにかくピクニックとやらに連れて行けばいいんだろう?来い。」
「えっと、今は勘弁してもらえるかな、ごめんね。」
外に連れ出そうとするアリサに対して、フユキは断りを入れた。そして自室にゆっくりと向かっていった。
「だ、そうだ、わかったか、アリサ」
「わからん。」
「ママが仕事で忙しいから、ピクニックには行けないんだとよ。」
「…わからん。」
ケロロが、『もうすぐ4月だという時期をクリスマス気分でいっぱいにさせてペコポン人どもの季節感をうばってしまいその心のスキをついてサクッと侵略作戦』を始めようとしているところに、割り込む。
「話がある。」
「ゲロッ!? 一体何を?」
「元気のないフユキを元気にさせたい。」
「フユキどのことを心配する気持ちは美しいと思うのでござるが……」
アリサは狩人の眼で睨む。
自分が何をすべきなのか分からず焦っている。旅行、お土産、焼肉など提案されたものに納得しない。
「ママとは、なんだ?」
「ははーん、読めたであります。仕事で忙しいママ殿を早く帰らせればいいであります。」
「そのママのところまで案内しろ。」
ケロロを強制連行して飛んで行った先は一軒家。〆切間近なのに仕事としない漫画家のアシスタントの仕事だろう。
「つまり、アリサ。この男が仕事しないのが悪いのだ。」
「わかった。……早く描け!」
アリサは実力行使に出て無理やり書かせた。しかしそれは望まれた解決策ではないのだろう。
***
ママを連れ帰ってもフユキは元気を出さない。
「どうだ、フユキ。これで元気になったか?」
「困るよ。ピクニックに行けなくなって元気がなかったのは本当のことだけど。でも、こんな風にママに迷惑をかけてほしくないんだよ。」
「フユキ、怒ってるのか?ママを連れてきたのに、なぜ怒る?」
「アリサが迷惑をかけたからだ。」
「わからない、わからない…」
フユキのためにやったことなのに『嬉しい』って言ってくれない。
リボンの状態の俺を、ケロロに渡す。少し1人になって理由を考えたいのだろう。
感情を表に出せるようになったアリサは、まだ他人の感情が分からない、ダディにも分からない。だから俺やフユキに『感情』をいつも尋ねる。
時間が少し経って、
電波塔の上で膝を抱えているアリサの元へ俺は飛んでいく。
「謝ろう。そして想いをちゃんと伝えよう、『言葉』で。」
ニンゲンになったアリサは、人間になることを焦りすぎている。
ヒナタケに戻ってきたアリサはママに伝える。
「その、迷惑かけてごめんなさい。フユキを元気にしてあげたくて。……それだけだ。」
「ありがとう。あの漫画家先生にはアリサちゃんくらい強く言いたかったもの。それと、アリサちゃんにお願いがあるの。」
アリサは初めて自分の手で包丁を握る。
ママに支えてもらいながら、ゆっくりとウサギのリンゴを作っていく。タコのウィンナーを焼いていく。
「これは、なんだ?」
「これはね、お弁当。」
初めて自分で焼いたウィンナーを口に入れる。今まで食べてきた何よりも『驚き』があった。
「明日のお昼に食べるの。」
「そうか。これで『喜んで』くれるのか?ママ。」
「そうよ。」
「仲直りできるといいな。」
そのまま、アリサは安心してソファに横たわって眠った。
***
山の上へのピクニック。
桜が咲いていてのどかな場所である。レジャーシートを広げ、お弁当を食べる。
「昨日よりももっと美味しい。」
「アリサちゃん、ありがとうね!」
言葉で言われなくても、ナツミの感情が伝わっている。
「昨日は本当にごめんね。」
「気にするな。私の方こそ、焦ってしまった。」
言葉で言われなくても、フユキの感情が伝わっている。
「ダディ、ツキキ、私もっと人間のことを理解したい。もっと知りたい。」
「じゃあ、一緒に『初めて』を経験していかないか?この街でゆっくりと。」
「いいな。」
「ここで腰を落ち着けるとするか。」
「フユキが私たちの運命を変えてくれた。フユキのおかげだ。」
「みたいだな。……しっくりくる『言葉』があるな。」
アリサにゴニョゴニョと伝える。
「フユキ、おにいちゃん…?」
旅をしてきた俺たちは、街で『住む』ことにした。人間は帰る場所があって、気を休める場所だと聞く。
桜の花びらが風に舞う。