ケロロ軍曹 ~金木犀の君と~   作:ありさ

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第9話

 

 

宇宙人が、このペコポンで暮らせることには理由がある。

1つはアンチバリア。設定した者以外にはその姿が見えなくなるという科学の力だ。地球人スーツというアイテムも使うこともあるが、かなりバレそうである。

 

もう1つは特性。元々地球生物に似た宇宙人はそのまま生活していたり、ステルス能力を持っていたりする。

 

 

 

「おーい、今日はもう上がって良いぞー」

 

「はい、それじゃあ、お先に失礼します。」

 

お金の入った封筒を貰えるのではなく、後日に振込か。これから最終チェックや機材の調整に入るスタッフたちに頑張ってくださいって言って、帰宅する。

 

こういった日雇いのバイトをすることは多い。今日はイベントの会場設営で、力仕事の日雇いのものが多い。俺の場合は人間型への変身能力を使って生活に溶け込んでる。過去のアリサやネブラと違ってペコポンの文化を満喫するため、もともと働いていたのだ。居候してから日が経ったし、また再開したのである。

 

 

「ケロッケロッケロッ♪……フギャ」

 

「ぐ、軍曹……」

 

「よう、冬樹か。」

 

アンチバリアを使用しているため女子高生に踏まれたケロロを拾いながら、横断歩道を歩く。冬樹の手には紙袋があって、おそらくガンプラを購入させられたあとだろう。

 

「あ、ツキ……」

 

「月村イツキな。ツッキーでいいぞ。」

 

「ハハハ…」

 

「ゲロッ、助かったでありますツキキ……ってこれは、まるであの悲劇の宇宙要塞のごとき謎の祠が!」

 

紫色の小さな柱、たしか鳥居というものに似ている。そして、何かが祀られているような石があって、奥には小さな古墳だろうか…。オカルトマニアが喜びそうな場所だ。ケロロは徐に、お賽銭を取り出す。ちなみに、ケロン人って俗に言う四次元ポケットっぽいものを持っているのだ。

 

「ここはひとつ、ジムスナイパーカスタムが無事完成しますようにと…アリャッ!?」

 

手が滑って、チリンチリンと祠へ飛び跳ね、お賽銭は消える。

 

「ゲロ~ヤッべー!100円玉返して~!」

 

「ワープみたいなものか?」

 

突然追いかけて行ったケロロは消えるが、また現れる。

 

「冬樹殿~!一緒にお賽銭探してほしいであります!吾輩お賽銭は5円玉と決めているでありますよ~」

 

「冬樹、ガンプラは預かっておくぞ。」

 

「う、うん。行ってみるよ。」

 

冬樹も入っていく。

ここでずっと立って待つのも暇なので、携帯を取り出しアプリを起動する。ほんとうに暇つぶしはソシャゲに限る、ペコポン人の文化はなんて素晴らしいんだ。

 

「おかえり。」

 

なにかをやらかしたように、焦って出てきたケロロと冬樹。ケロロは右手に握る桃色の結晶を見つめて、大汗をかき始める。それを道端に投げ捨て、冬樹とともに逃げだしていった。

 

光輝き、桃色のケロン人へと変わっていく。

俺も擬態を解きアンチバリアを使用、いつでも戦闘できるようにする。

 

「何者だ?」

 

「え、わたしの登場いと早くないですか!?……え、えーと、わたしはミララ。古代兵器研究家でーす!」

 

「あざとい。」

 

「しつれいですー!ともかく、いと恐ろしいことが起きてしまうんです!」

 

「ふーん、祠に封印された古代兵器が世界を破滅に導く、とか?」

 

「な、どうしてわかったんですかー!」

 

当ててしまったのかよ。

さっき古代兵器ってキーワードが出てきたからである。

 

「じゃあ、さっさとアリサに伝えないといけないな。あと、ケロロたちにも。」

 

「へー、アリサって大切な人なんですかー?」

 

「それは、そうだけど。」

 

「でもでも、ペコポン人なんですよね!でもあなたってケロン人じゃないですか。それって相容れない存在なのでは?」

 

まるで俺の迷いを見透かしてくるような問いかけ。

 

「それにー、大切ならそんな危険なことに巻き込みたくないですよねっ!傷つけたくなんかないですよねっ!」

 

「……そろそろ失礼するぞ。」

 

 

 

夜になってようやく、白いケロン人らしきやつが現れた。

空中を飛びながら、凄まじいスピードでペコポン人に接触していく。以前会ったことのある熱い男も対象だったから、知性のある生物を狙っているのだろう。おでこに謎の『バッテン』を残していくだけで、ケガはなさそうだ。

 

「って、こっち来やがった!」

 

なぜか鼻の上につけられたが、変わった様子はない。

 

一晩追い続けたものの、逃げきられた。

 

 

「おかえり、ツキキ。」

 

「おかえりなさい。」

 

「……ただいま。」

 

早朝に帰宅すれば、リビングでニュースを見るアリサとネブラがいた。アリサがこんな時間に早起きするとはな。ママさんも仕事から帰宅し、冬樹や夏美もリビングに降りてくる。

 

『……『バッテン』をつけられた人たちは超能力が身につくというのです!』

 

「556に『バッテン』!?」

 

ニュースに映る熱い男にケロロが反応する。

夏美や冬樹も寝て起きたら、ついていたという。

 

「へー、テレパシーね。しかも、念じるだけでつけれてあげれるのね。ね!ママにもつけてあげる。」

 

『聞こえる?ママ。』

『まぁ。』

『すごい僕にも聞こえる!』

 

ケロロはたぶん侵略に使えるとかなんとかで地下に降りて行った。

 

「ツキキ、私もやってみたい。」

 

「おもしろそうですねー。」

 

「わるい、ちょっとケロロの様子見てくる。」

 

あまり良いものじゃないし。でも、詳細を話して、日常を生きる彼女たちを巻き込みたくはない。今は一刻も早く、白いケロン人を探すに限るだろう。冬樹目的で来た、西澤グループの集団を横目に、俺は1人家を出た。

 

 

***

 

 

『心』の声が聞こえるテレパシーの能力を身につけたことで、人々はお祭り騒ぎだ。定期的に帰宅した際には、冬樹や夏美は学校でのできごとを楽しそうに教えてくれる。

 

しかし、人の『心』が聞こえることは『悪意』に常に晒されること。

 

1日経った頃の夜には、街の雰囲気が一変して暗くなる。

人々は『繋がり』を断ち始めた。

 

 

「平和ボケしてましたね。」

 

「……オーラをばらまいているせいで、どこにいるのか検討がつかないな。」

 

そして、その負のエネルギーを餌にしているらしい。

 

「しらみつぶしに探すしかないな。俺は先に行くぞ。」

 

「一緒に行こう、ツキキ。」

 

「手分けして探したほうが早いだろ。俺はあっちを探してくるから、向こうを頼む。」

 

アリサに向かうよう指差した方向は、敵のいない方向。

 

俺が決着をつける。

だから、そんな寂しそうにしないでくれ。

 

 

俺の言葉にアリサは暗い顔で頷き、’別々に’探し始めた。

 

―――私はツキキをこの地球(ほし)に縛っているのではないか?

―――俺はいつか人間として生きるアリサの邪魔になるんじゃないか?

 

お互いの不安を、テレパシーで伝えてしまった。

 

「アリサ、アリ…」

 

ネブラの焦る声は、今の俺には届かなかった。

 

―――リボンとなることは、もうなくなった。

 

 

 

 

 

竜の翼を広げて、電波塔に向かう。

負のエネルギーが凄まじい勢いで集まっている。

 

怪獣のように巨大化した白いやつは、街をゆっくりと歩く。

 

「くらえ!」

 

火竜の能力で、火のブレスを吐こうとも動じない。

 

「いくですー!タママインパクトォ!」

 

「おらぁー」

 

「ドロロ参上!」

 

ギロロやタママたちも兵器を持ち出して攻撃しているようだが効果がない。

 

「くそっ、消火作業に移る。」

 

しかも逆に街を燃やしてしまったようだ。

 

 

 

 

「ぐんそうさーん?」

 

「ケロロ!」

 

今度はケロロが巨大化する。

街を壊さないようにおそるおそる進み、キルルに命令ビームを発射する。

 

「おとなしく従うであります。静岡工場~!」

 

「お小遣い値上げ~~」

 

「こうなったら接近戦でありま…ゲロ~~」

 

どうやらウルトラな巨人のように上手くいかないようだ。

 

 

攻撃の余波に巻き込まれそうな冬樹を救う。夏美はギロロが救ったようだ。

 

「ありがとうツキキ。あれ、アリサちゃんは?」

 

「……今はそんな場合じゃないだろう。」

 

「う、うん。あそこで降ろして。」

 

指差した先にあった、あの小さな祠へ俺たちは降り立つ。

 

冬樹は別空間に飛び込んでいく。

 

「アンチバリアの一種だ。」

 

「そうなのね。」

 

俺たちも入る。

地球と違うどこか幻想的な場所である。

 

「ここでキルルの封印を解いちゃったんだ。」

 

描かれた壁画を調査する冬樹は様になっている。

 

ケロン文字を読めない状況で、情報を得ようとする。

 

「これは…ミララ?」

 

解決の鍵を見つけたようだ。

ほこらから出たところ、キルルは尖った塔と化していた。多くのエネルギーを使って巨大化したケロロの、負のエネルギーを吸収したんだろう。

 

 

 

「な、んで……?」

 

「どうしたの、ツキキ……アリサちゃん!?」

 

 

キルルの攻撃から動けない少女を守るネブラが見えて、頭が真っ白になる。

 

日向家に降りるとすぐに冬樹を降ろして《アリサ》の元へ向かう。『心』があっても動けない人形。

 

いつもより柔らかい手を握る。

 

「ごめん。アリサの想いちゃんと考えてなかった。有耶無耶にしていた。向き合っていなかった。」

 

少女は返事をできない。

『心』を『言葉』にできない。

 

それでも、

 

「そうだな。ずっと一緒だ。」

 

『心』を『言葉』にすることがちょっと苦手な、少女の『心』に繋がりを創る。

 

俺たちは地球人と宇宙人。

 

それでも、

 

―――だいすき

 

『偽物』のキズナは消えて、『本物』のキズナに。

 

―――君がくれたモノは生きる意味

 

 

 

冬樹とケロロは大きなピンクの鍵を2人を持って走り出す。彼らも『本物』のキズナを再認識したみたいだ。

 

『こうして、2人の地球を救うための戦いが始まった!』

 

つまずいてこけた。

 

「締まらないですねー」

 

「お兄ちゃんは世話が焼けるな。ツキキ頼む。」

 

「はいよ、アリサ。」

 

 

 

全身を銀火竜’そのもの’に変えて、アリサと彼らを乗せて飛び立つ。

 

「やっほー、楽勝でありまーす!」

 

それフラグな。

塔から溢れて出てくるのは白いケロン人いや、兵器キルルたち。

 

「いけない。すでに一部の分裂が、いと始まってしまいました。」

 

「えぇ!」「ゲロッ!?」

 

「ギロロ、パス。」

 

「うわー!?」「ゲーロー!?」

 

 

後方に飛んできていた乗り物に、鍵を持つ彼らを渡す。

 

 

 

「しっかり掴まってろよ、アリサ。」

 

翼の風圧でキルルたちを吹き飛ばす。

ネブラが俺にキルルを近づけさせない。

 

信じているから、背を任せられる。

信じてくれるから、つよくなれる。

 

 

 

タママと桃華、ドロロと小雪、クルルとサブロー、ギロロと夏美も、彼らの援護に駆けつける。

 

「「「「「あとは任せた!」」」」」

 

 

 

***

 

地球は救われたが、日向家は無事じゃなかったみたいだ。

 

「ツキキ、はやく『デート』というものに行ってみよう。」

 

「家を直してからな。」

 

たぶん『恋』については、まだわかっていないんだろうな。

 

ゆっくりと分からせていくつもりだけど。

 

やはり平和が一番である。

 

 

 

 

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