「それでは皆さん、本日もよろしくお願いします」
いつもの締めの文句を聞くやいなや、がやがやと朝食を食べに皆思い思いの方向へ歩きだす。その足取りはまさしく十人十色。疲れからか、はたまた単に日の光にくじけているからか一歩がいやに重い者、つかつかとそれらを微塵も意に介さず去っていく者、いつもの仲間を見つけてはしゃいでいる者、酒臭さを撒き散らしつつふらふらとあらぬ方向へ進んでいく者。それでも皆朝食を食べるという目的は同じ。誰かが言わずともいつも決まっていることだ。暗黙の了解とはいえ規律は厳守する。
そんな中、その場に留まる者が一人。以蔵が居た方角を見つめながら全く動かない。その上、妙に悦に入った表情を浮かべていて、少々不気味である。それを見かねたのか、後ろから声をかけた者がいた。
「なにやってるのさぶっきー。ちょっと気持ちわるいよ?」
「なっ、そんなことないですよ!いいじゃないですか司令官を見ていたって!それにいきなり気持ち悪いだなんて失礼ですよ北上さん!」
早口で吹雪がまくし立てる。皆さっさと居なくなってしまうからあまり知られていないが、吹雪が朝礼の後その場から動かないのはいつものことなのだ。それは何故か。朝礼の内容を
「見ていたって…もう提督居ないよ~?さては、まーた提督の言葉に浸ってたんでしょ~?なんかストーカーみたいだよ~?」
「……そんな…ことは…」
いつものこととはいえストーカー呼ばわりされるのはいい気がしない。しかし、否定も出来ない。そうして毎回葛藤を繰り広げる。そして、北上が凄まじい苦悶により生み出された
(かわいいねぇぶっきーは…)
こうして、武流島鎮守府の一日が始まった。
朝食を終え、執務の補助をてきぱきと行う。今日の秘書艦は
「なんでここに居るんですか北上さん…」
「え?いつものことでしょ?」
頭にずくりと不快な衝撃が訪れる。表情が歪んでいるのが自分でもよく分かる。挙げ句の果てに、不快感の主は私を見てからからと笑っている。あ、はち切れそうだ。どれ、じゃあ一つあのにっくきおさげ頭をかち割ってやろうかーー
「こらこら北上さん。吹雪は真面目なんだからいじめないであげて下さい。」
その一言で私は一気に平静へと引き戻された。しかし同時に、真面目と言ってくれた嬉しさや感情を剥き出しにしてしまった恥ずかしさ、また北上さんに弄ばれた悔しさ、言い尽くせないほどの感情の奔流が頭をかき回す。陸にいるはずなのに沈みそうになる。司令官の視線がこっちに向いている気がする。しかし、混乱の極みにいる今、直視は出来ない。ああ一体どうすれば…。
「すいません吹雪。工廠の様子を見てきてもらえませんか?頑張ってくれてたので、リフレッシュを兼ねて散歩がてらにどうです?」
その一言で思考の波が吹き飛ばされた。最早私の頭には工廠に行く、の一文しか存在していなかった。
「はい!喜んで向かわせていただきます!!」
間違いなく私の人生で最も
全部書いてしまうと長く成りそうなので一度切ります。
誤字脱字はもちろん、読みにくい、分かりにくい表現があったら遠慮なくご指摘下さい。