とりあえずサクっと人理修復   作:十六夜やと

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 どうも、十六夜やとです。新年あけましておめでとうございますm(__)m
 なんかハーメルンで面白い作品がありましたね。展開が全てぶっ飛んでいて、私の作品のキチガイが常人に見えるレベルでした。まだまだキチガイ力が足りませんね。精進せねば(`・ω・´)

 次回を持ちまして序章終了とさせていただきます。
 待ってろよ特異点。


裏舞台でキチガイは舞う

 通信が終わり、僕は画面から視線をそらす。

 まだまだシバは安定しないが、どうにか所長たちへの最低限のサポートを行うことは可能となった。管制室にはカルデア内で生き残ったメンバーが交代でフル稼働している。それでもカルデアの管制室を中心的に爆破された影響は少なくなく、思うようにサポートを行うことが出来ない。

 ひとまず他の職員に復旧を頼んで管制室を出ようとする。

 

 理由は分かっている。

 僕が現段階で生き残っているカルデア職員の最上位だからだ。

 

 このような非常事態に上手く指示を出すことが出来ない自分が嫌になると同時に、心を蝕むやるせなさで思わずため息をついてしまう。

 どうしてこうも自分がやることは上手くいかないんだろう。

 今すぐにどうこうすることが出来ないだけに、なら今までの時間を僕は何をしていたんだろうと思考の悪循環に陥る。

 

「──まったく、君らしくない顔だよ。鏡でも見たらどうだい?」

 

「……やっぱり?」

 

 出ようとした扉の横で腕を組みながら待っていたのは、彼の有名な絵画『モナ・リザ』を彷彿とさせる──いや、()()()()()()()()()()()姿()()()()美女だった。

 

「無理をするな……なんて今の状況下でそれを言うのは無理があるのかもしれないけど、そう自分を追いつめるような自虐は止めたほうがいいと思うよ? 自分にも他人にも良い影響は与えない」

 

「あはは、確かに分かっているんだけどね。それが出来たら苦労はしないよ」

 

「努力ぐらいは見せて欲しいね」

 

 僕は彼──レオナルド・ダ・ヴィンチその人の厳しい評価に肩をすくめる。

 その反応を不審に思ったのか、レオナルドは声を潜める。

 

「……もしかして彼の言葉を気にしているのかい?」

 

「もしかしなくても気にするよ。さっきからそのことしか考えてないくらいだ」

 

 ここで僕達が共通の話題として出す『彼』は、四十八番目のマスター適正としてレイシフトしてしまった彼だ。どう考えても彼の経歴にある『マイケル』という名前は偽名だが、肝心の本名を確認しようにも情報もないし、外部にも連絡できない。なので僕達は彼を『マイケル君』と呼ぶことにする。

 それに今重要なのは彼の素性じゃない。

 彼が僕たちに残した警告とも受け取れる言葉だ。

 

 

 

『この一連の大事故は誰が原因なんだろうね』

 

『明らかに人為的なものしか俺は感じないんだが?』

 

『俺は内部犯の可能性が高いと睨んでる』

 

 

 

 魔術師として素人同然の、今回偶然に巻き込まれた普通の少年は、鋭い洞察力と冷徹なまでの疑惑で、僕達カルデア職員の心を大きく揺さぶった。戯言と切り捨てるには理にかなっている推理である上に、その口から発せられる提案は無視できないものである。

 カルデアに勤める者としては否定したい内容であったけれど、肝心の反論が思いつかないくらいだ。

 だから今のカルデア職員の仕事は、緊急時にレイシフトしたメンバーを確実に呼び戻す調整を行っている。

 

「……彼は本当に何者なんだろうか?」

 

「一般人じゃないのかな? 彼はそう言ってたが」

 

「少なくとも十代後半の少年が、唐突に過去にレイシフトしても動揺せず、戦闘で自分の役割と限界を理解し、司令官さながらの命令を的確に出して、黒幕の推測を行うことが普通だとは言わないよ。彼の友人曰く『悲観主義のチキン野郎』らしいけどね」

 

「僕も前に同じようなこと言われたなぁ。まぁ、僕は彼ほど有能ではないけど」

 

 あそこまでテキパキと他者に指示を出し、自分のやることを精一杯している人間に、羨望や嫉妬に近い感情を覚える。彼が今ここに居て指示を出してくれたら、レフ教授のいないカルデア職員にどれほどの希望を与えてくれるのだろうか。もしかしたら所長以上に適任かもしれない。

 一方でレオナルドは彼のことを疑っているようだ。どうにも年相応の人間がするような言動じゃないと勘繰っているのだろう。

 

「有能かどうかは別として、確かに君は有能ではないね。未だにオルガマリーに例のことを話していないんだからさ。どうせ近いうちに知ることになるんだから、言うべきじゃないのかな?」

 

「……そう、だね」

 

 嫌なことから逃げ続けると、大抵後には取り返しがつかなくなる。

 そう自分では分かっていても、僕は()()()()()()()()()()()()()()()()ことを打ち明ける勇気を持ち合わせていなかった。あの理不尽な上司ではあるが、決して悪い子ではない彼女に、自分が既に死んでいるとどうして告げられようか。

 損傷の激しい彼女の身体はかろうじで医務室に保存してあるが、恐らく数日で遺体に変わるであろう。

 現実逃避に現実逃避を重ねた結果がコレだ。

 

 レオナルドは自己嫌悪のループに陥っている僕に、今思いだしたと言いたげに話題を変える。

 

「あぁ、そうだ。私が君に言いたかったのはその件じゃなくてね。ダニエル君達の掃除が完了したらしいんだけど、その確認をしてほしいとのことだ」

 

「ダニエル……あぁ、あの黒髪の彼か」

 

 あの笑顔が胡散臭い黒髪で長身の青年の顔を思い浮かべ、無理なことを頼んだと苦笑する。

 現在特異点で活動しているマイケル君の友人達の一人であり、幸いにも爆破されたカルデア内の生存者である。ダニエル君はマイケル君と花子ちゃんの送迎、他二人はノリと勢いでついて来たんだとか。色々とおかしなことが多すぎるが、今はそのことは指摘しない。

 彼等は崩壊寸前のカルデアを復旧している際に、自分達にも何かできることはないかと手伝いを買って出てきたのだ。管制室関係は彼等には専門外だろうと、カルデアの住居区画や崩壊している部分の掃除をお願いした。

 

「三人だけに掃除を頼んだのは申し訳なかったかな? 彼らにも一通り目途がついたらお礼がしたい」

 

「もちろんだとも。というか君達カルデア職員生存組が自室に戻らないから、掃除も頼んでしまったぐらいだ。まぁ、住居区画に戻る余裕すらなかったけどね」

 

 何人かは管制室に寝袋を持って来てるぐらいだ。

 何時間寝れるかと時間を確認しながらレオナルドと管制室を出た僕は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「──は?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新品同様の真っ赤な絨毯の敷かれた通路と、数メートル間隔で置かれた調度品、頭上に煌めく高価なシャンデリア、真っ白に塗装された壁に言葉を失った。静かで穏やかなオーケストラのBGMが僕の心を癒し、極寒だったはずの通路は適温に設定されている。

 一見すると高級ホテルの通路と間違う。

 そこに機能のみを追求したカルデアの通路はどこにも存在しなかった。

 

「……僕は夢でも見てるのかな? え、ちょ、これ何?」

 

「──あぁ、ここに居ましたか。探しましたよ」

 

 脳が正常に働かない僕に声をかけたのは、作業着に身を染めたダニエル君だった。どちらかというと燕尾服が似合いそうな彼だが、なぜか作業着も完璧に着こなしている。

 

「内装に関しては特に指示を受けなかったんで、このような形に改装させて頂きました。あ、ここにタブレットがあるのですが、住居区画、食堂、医務室……他多数の改装はこのようになっておりますが、ご確認いただけますか?」

 

 医務室は最先端技術の結晶とも呼べる機器が元々揃っていたが、住居区画はスイートルーム、食堂はお洒落なレストラン……改装というよりは改築とも言える変化を遂げていた。

 あまりにも全ての部屋が見違えるように改装されていたので、「カルデアスと呼ばれていた機械も、熱かったようなので業務用冷蔵庫に保管しておきました」というダニエル君の発言を聞き逃す。後から考えるとやっぱりおかしい。色々と。

 

「──以上となります。これでよろしかったでしょうか?」

 

「いやいやいやいや、よろしいとか言うレベルじゃないよ!? これどうやって改装したんだい!?」

 

「とりあえず、ここにあるもので適当に見繕ってみました。もう少し材料があれば、カルデア周辺に作物を作れる場所もできたんですがねぇ……。まぁ、非常事態なので無理は言いますまい」

 

 無理とか言う次元の話じゃないんだけど。

 呆然としている僕とレオナルドだったが、それだけでは終わらなかった。

 

 タブレットの画面が切り替わり、ダニエル君と一緒の作業着を着た、灰色の髪をした少年が映し出される。いかにも不良少年っぽい彼の背景は雪山だった。

 

『オイ、ダニエル。洗濯モン関係の部屋はどンぐらい広くする』

 

「ジョンですか。そうですね……食堂と同じぐらいにしましょう」

 

『材料が足りねェんだよゴミカスが』

 

「Amazonにでも注文しなさい」

 

『テメェ名義で注文すっからな?』

 

 そこで通信は終わる。

 次に映し出されたのは白髪の少年だった。僕と同じような白衣に身を包んだ彼のエプロンには多数の血が付着している。マスクを外しながら笑う彼は、メスを回転させながらダニエル君と会話を始める。

 

『こちら医務室のボブ。所長さんの手術終わったよー』

 

「お疲れ様です。まさか貴方の医師免許がこのようなところで役立つとは思いませんでした。人生何が起こるか分かりませんね」

 

『ユーキャンで資格取ってて正解だったね』

 

「どうやら所長さんは魂が特異点にいるようです。このようなケースは初めてでしょうが、ボブの判断で所長さんの本体をお願いします」

 

『りょーかい』

 

 唖然とした僕とレオナルドを他所に、ダニエル君はタブレットを僕達に見えるように構える。

 

「えーと、次に発電システムの完全自動化ですが──」

 

「君達本当に何者なんだい!?」

 

 

 

 

 

 ──後に時計塔では今回の改築劇を「新しい魔法か何かか?」と議論されたとか、しなかったとか。

 

 

 

 




【来るであろう質問への回答】

Q,改装した道具はどこから?
A,カルデア内部から拝借。なければAmazonで注文。

Q,人類いないんじゃないの?
A,カルデアス一部青いじゃろ? 日本人に休みなんてない。

Q,ボブは何してんの?
A,増築。土木関係のバイトの経験が生きている。

Q,カルデアスって冷蔵庫に入るの?
A,メイドインジャパンを侮るなかれ。

Q,医師免許ってユーキャンで取れるの?
A,fate作品ならできるでしょ。

Q,発電システムの自動化って?
A,文字通り。発電からメンテナンス、外的攻撃からの防衛まで全てをこなす発電システム。

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