一話分で5000字超えたので分けました。
個人的にキチガイシリーズは『サクッと読める分量』として平均文字数3000字を目標としています。
今回は雑談回です。
次回は(ある意味)コラボします。
「……あれが監獄城ね」
どっかの誰かが提唱した『馬鹿とキチガイは高いところが好き』という名言に準え、俺達カルデア一行は高台から敵の根城を見下ろしていた。望遠鏡で姿を確認した俺は、マシュに望遠鏡を手渡して、カルデアの連中と連絡を取る。
こうも敵の本拠地がむき出しだと勘ぐってしまう。
「ロマン、監獄城の様子は?」
〔ちょっと待っててね……うーん……えーと……これは少し難しいな。城の周囲に強固な結界が張ってあるね。この魔力量は完全に魔術やサーヴァントが張れるような結界の域を超えている。間違いなく聖杯を使ってるとみていいよ〕
「データ収集ありがと。やっぱ一筋縄じゃいかないかぁ」
敵が守りに入った。この事実に俺は表情を歪める。
聖杯を持っており、尚且つ戦力は相手が上。挙げ句の果てに籠城戦と洒落込む当たり、カルデアの面々があちら側に認識されてると見て間違いないだろう。
フランスを壊滅させる目標はある程度達成されており、戦力を十分に補充した状態で城に籠る。シャルル王が死去しているからフランスが完全に自然と消えるのは時間の問題だ。彼女等が手を下さなくとも、特異点を修復しなければ、文明の停滞は決定する。
黒幕たるジャンヌ・ダルクが復讐心を露わにし、強欲にも他の集落をゲリラっていただければ、こちらにも勝機はあっただろう。だが、下手に防衛に回れると手が出しにくい。
城や要塞を攻撃するには、相手の三倍以上の兵力を以て、十倍の損害が出ると言われている。
ジャンヌ・ダルク……じゃねぇな。バックに有能な参謀が居ると見た。
「ジャンヌ」
「なんでしょうか」「なによ」
「………」
手遅れ感が半端ないと思うのだが、これはややこし過ぎではないか?
俺の呼びかけにジャンヌsが反応するので、思わず頭を掻く。俺は白い方のジャンヌ・ダルクを呼んだのだが、監獄城を親の仇のように睨んでいたオルタも反応したようだ。
返事をした白い方のジャンヌ・ダルクは、俺が困り顔をした理由に気付いたのだろう。苦笑しながらも代替案を提示する。
マシュといい白ジャンヌといい、なんか周りの女性達が健気過ぎない? オルタも何だかんだ良い子だし、花子や妹しか女性を知らない俺達にとって、御淑やかな女性は珍しい生き物だった。鹿児島の女性は花子や沖田さんよりもヤベェ奴等しかいないし。
「私の姿は『レティシア』という少女の姿を借りております。よろしければ、今後は彼女の名で呼んで頂ければ、混乱することがないと思うのですが」
「いや、『ジャンヌ・ダルク』って名前は君のものだ。むしろオルタの方が贋作だろう? なのに君が名を偽る必要はないと思うけど」
「はいはい、どうせ私はクソ聖女のパチモんですよ」
鼻を鳴らしながら捻くれ、しかも若干涙目のオルタに苦笑しつつ、言葉を続けた。
マスターの俺が自分を『贋作』と呼んだことが、何気に堪えられなかったのだろう。でもお前は俺達のこと『キチガイ』って言うじゃん。
実際に俺はオルタを貶めるために言ったわけじゃない。
キチガイ共相手なら遠慮なく貶め罵り蔑むのだが。
「というわけでオルタの新しい名前をつけよう。あ、マシュは監獄城に張られた結界の規模と正確な座標をカルデアに送ってくれない? 他の人にはできないからさ」
「はぁっ!?」
「分かりました!」
ぴしっと敬礼したマシュは、即座に仕事へと取りかかる。
花子は沖田とスマホのカメラ機能で遊んでいる。二人で自撮り写真を収める姿は微笑ましい。
オルタは『何言ってんの馬鹿なの?』の意味を込めた「はぁ?」を、全力で自分のマスターにぶつけたが、俺的には今までがおかしかったと説明する。
「考えりゃ
お、これ
どうせならサングラスかけて言いたかったなーと考えを他所に、オリジナルの彼女は俺の提案に乗り気なようだ。わざわざ手まで挙げて候補を上げる。
「はい! はいはい! それこそ『レティシア』にしましょう!」
「どうしてアンタの姿の元ネタの名前にしなきゃいけないのかしら? 脳みそオルレアンなの? 私は贋作という立場に満足しています。それに、今さら、あ、新しい名前……だ……なん……て……」
前半は気丈に振る舞っていたが、伝説のガードの名言である『自分の物語』って部分に、思った以上に魅かれているようだ。意外と承認欲求と主人公願望のある彼女は、『ジャンヌ・ダルクではない、新しい一個人の名前』を、失笑を以て斬り捨てることはできなかったのだろう。
俺はオリジナルの考えた名前は良いと思った。
純粋に『レティシア』って響きが良いのもあるが、他にも理由がある。
「俺も白いジャンヌの名前がいいと思うな」
「……アンタも白い方の肩持つわけ?」
「いや、実は前から『オルタって名前はあんまりだよなぁ』って、麗しき友人達に募集かけてみたんだが……」
ひょっとこオル太郎(マイケル)
メタモン(ジョン)
オル・レアン(ボブ)
ゼアノート(ダニエル)
ポチ(花子)
「俺達のネーミングセンスって壊滅的なんだよなぁ」
「花子ちゃんの『ポチ』とかどうですか。沖田さん的にポイント高いです」
「荒川・ジョセフィーヌ・万次郎は?」
「私のっ! 名前はっ! レティシア、です!」
例え決められた名前だとしても、彼女は自分の名を手に入れた。
オルタ改めてレティシアは、新しい人生の一歩を踏み出したのだ。
彼女は存在しない英霊。
実際にそうだ。『ジャンヌ・ダルク・オルタ』という名前は存在しない。
故に──彼女には帰る場所はない。
サーヴァントは消えたら英霊の座に還るのだが、イレギュラーで生まれた彼女は本体がないのだから、消滅されたら再度召喚はされない。記憶にも残らず、喜怒哀楽の感情すらも消え失せる。
だから、後に人理修復した世界で、彼女の名前は残ることはなかった。
カルデアに召喚された記録も抹消され、名前も残ることなく、英雄として祭り上げられることもない。
だって──ジャンヌ・ダルク・オルタは存在しなかったのだから。
まぁ、英霊の座の代わりではあるが、後に鹿児島市役所で『レティシア・ダルク』って名前が戸籍に登録されるんですけどね。
オルタ改めレティシアへの印象
マイケル……ツンデレにしてチョロイン。行動が分かりやすいけど、時々思考が分からないことがある。
ジョン……生意気な女。けど、この前密かに文字の練習をしていたので、努力家の面も認めている。
ボブ……これもしかして彼女はマイケルのこと好きなのでは? これは面白くなってきたぜ引っ掻き回したろ。
ダニエル……微笑ましい存在。割とジャンヌダルクの歴史を一番知っている人物なので、彼女には幸せになってもらいたい。だから受肉させよう。
花子……仲間。ポチ。