とりあえずサクっと人理修復   作:十六夜やと

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 面接近いのに何やってんだ俺は。
 どうも、十六夜やとです。古戦場と就活で大忙しです。

 簡単に人理修復進んでいるように見えますが、実際には原作よりもハードモードとなっております。現地の味方サーヴァントがジャンヌ一人だけって時点でお察しでしょう。
 ただ、キチガイが黒幕の想定を遥かに超えるキチガイだった。それだけです。

 今回は前座です。
 次回は決戦です。


どんどんしまっちゃおうねー

 崖の下の城を眺めていた俺達は、次元の裂け目みたいな空間から放たれた眩い光に視界を染められる。

 なぜか白く塗りつぶされた視界に『心か』の二文字が見えたような気がしたが、きっと幻覚だろうと無理矢理納得する。

 視界だけじゃない。光の束は俺の鼓膜にもダイレクトアタックを仕掛け、一時的にだが音も聞こえなってしまった。そりゃ強固な結界を貫通するようなバ火力を城単位にぶち込めば、騒音被害は尋常なものではないだろう。ジャンヌが何か言っているようだが、俺には聞こえん。

 

 視界が晴れると、そこには()()()()()()

 ジャンヌに案内され、実際に監獄城をこの目で確かめなければ、隕石が落下した跡地ぐらいの感想しか出ないであろう有様だ。

 そりゃ監獄城跡地にクレーターしかなければ当然か。中央にヤムチャが転がってそう。

 

「おっしゃ、計画通りだな」

 

「あの、先輩。監獄城の結界どころか、本体が消え失せたんですが」

 

「誤差の範囲内だ」

 

 実際に監獄城の結界は跡形もなく消えたのだ。

 彼女等を守る防壁もなく、膨大な魔力を生み出す聖杯の一撃を受けたサーヴァントは、かなり弱体化しているだろう。ダヴィンチちゃんと構想を練っていた際に、主砲の威力を数値で打ち出した彼女が、「……理論上は並のサーヴァントが消滅するね」と述べていた。

 かなり攻略しやすくなったと推測する。

 

 俺は双眼鏡でクレーターを確認し、カルデアに連絡を取る。

 所長とロマンは思考回路がショートしてるだろうから、消去法でダニエルだけが頼りだ。

 

「要塞防衛指揮官、敵の数は?」

 

〔魔力反応を示す個体は五。ジャンヌさんからの情報と照らし合わせて、黒ジャンヌ・ダルクとジル・ド・レェ、バーサク個体三騎でしょう〕

 

「……お前、先に計測してやがったな? 先に情報寄越せや」

 

〔はて? 何のことやら〕

 

 しらばっくれているダニエルとの情報を断ち、俺はサーヴァント四騎と未確認生命体一匹を引きつれて崖を降りる。このパーティメンバーの中には自力で崖を降りれない非力な面子もいるので、そこら辺はサーヴァントに何とか助けてもらう。

 簡単に描写すると、俺はジャンヌにお姫様抱っこされながら、崖から落ちている。笑いたきゃ笑え。自力で崖から落ちようものなら、ミンチになること確定である。

 あと聖女の胸の感触を堪能できる。羨ましいだろう?

 

 ……ところで、マシュはまだデミ・サーヴァントだから、崖からの着地も難なくできるのは分かる。でも、花子が当たり前のように崖の側面を走っているのは、そろそろ誰かツッコんだ方がいいのではないのだろうか? コイツだけ出る作品違くないか? NARUTOじゃねぇんだぞ?

 何華麗に着地決めてんだよ。

 

「ジャンヌありがとう。……マジでありがとう」

 

「いえいえ、マスターと契約してから何故か身体が軽いんです! これぐらいなら、ルーラーのサーヴァントとして当然ですよ」

 

「あ、沖田さんも何故か生前より気分がいいんですよねー。だから不思議と安心するというかなんというか」

 

 ジャンヌは俺を地面に下ろして、力こぶを作る仕草をする。それに便乗して、沖田もピョンピョンと元気であるアピールをしてくる。俺としては「ふーん」程度の感想しか出てこない。

 まぁ、俺は歩くアロマセラピーだから仕方ないか。存在するだけで周囲に癒しと温かみを提供するマスコットキャラクターなのだから。これは日本に帰ったら『ゆるキャラグランプリ』にでも出場してみようか。「ジャンヌ・ダルクと沖田総司を癒したゆるキャラ」とか凄くない?

 

「ボケるのも大概にしたら?」

 

「レティシアは構ってくれなくて寂しいって言ってますよ、マスター」

 

「だぁれがそんなこと言ったぁっ!? ほらっ、そこで間抜け面晒してないで、さっさと行くわよっ!」

 

 レティシアにラリアットされながら、俺は監獄城跡地まで赴く。

 魔術師見習い以下の一般人なので、ラリアットされながらサーヴァントの速度で走られたため、何度か三途の川が見えたが、そこは気合と根性と次のソシャゲのイベントのモチベーションで乗り切る。

 サーヴァントの皆さん、俺が貴様等の生命線であることを忘れるな。

 

 引きずられること数百メートル。

 俺はラリアットしてるレティシアの腕をバシバシ叩く。

 

「止まれ止まれ、ストップストップ」

 

「あぁ?」

 

「まさか馬鹿正直に連中へ突っ込むつもりか?」

 

「……チッ」

 

 舌打ちされたが俺は解放された。木陰で遠くに見えるサーヴァント達を双眼鏡に入れつつ、同じように木蔭に隠れる英霊と小声で意思疎通を交わす。

 最初に言葉を発したのはマシュだった。

 

「……怒ってます?」

 

「よくよく考えてみ。いきなり自分の城が木っ端微塵に吹き飛ばされたんだぞ? どんだけ温厚な人間でもブチたって不思議じゃない」

 

「なるほど……確かにそうですね。カルデアを吹き飛ばされたら、確かに所長なら怒りそうです」

 

 失神するんじゃねーかな、オルガ所長なら。

 何やらレティシアのそっくりさんが地団駄を踏んでおり、近くのローブの男性らしき人物がそっくりさんを宥めている。他のサーヴァントには特に動きはない。

 

 他のサーヴァントを観察してみよう。

 白い長髪のおじさん、猫耳の弓兵、仮面のおねーさん。

 ……わっかんねぇ。何というか並の英霊じゃないのは確かなのだが、「どこの誰なの?」って話になると検討もつかない。猫の耳つけてる英雄なんざ聞いたことねぇぞ。

 

「沖田さん的にアレって殲滅できる?」

 

「沖田さん的には厳しいですね。いや、人斬りとか剣豪とか呼ばれてる身ですが、一騎当千の強さを誇った時期は一度として在りませんよ」

 

 剣豪が必ずしも一騎当千の武者とは限らない。

 日本の剣豪として知られる佐々木小次郎や宮本武蔵も、日本人なら『剣豪』と聞いて思い浮かべそうな偉人だが、来る敵の山をバッサバッサ切り倒したという逸話はない。実際問題存在していたかどうかは別として。

 というか剣豪って一対一のプロフェッショナルみたいなイメージがある。多対一で無双を誇る英雄など、それこそ神話の時代の連中ぐらいじゃないか? それほど『数の暴力』は強力であり、少数の兵で数倍の軍勢と渡り合ったスパルタクスや、数年間もゲリラ戦で戦ったクーフーリンが不朽の英雄譚として語られるのだろう。

 

 何より沖田さんのモチベーションが低い。

 さて、どうしようか──あ、

 

「なぁ、沖田さん。俺分かっちゃったんだけどさ」

 

「うーん、あれはちょっと厳しいですねー。弓兵ってのがいただけません。飛び道具とか反則でしょう? まったく、英霊なら剣を使ってナンボじゃないですか──ん? どうしましたか?」

 

「あれ島津貴久(しまづたかひさ)島津義久(しまづよしひさ)島津義弘(しまづよしひろ)じゃね?」

 

「首置いてけえええええええええええ!!」

 

 島津の鉄砲隊の基盤を作った貴久、九州制圧手前まで勢力を広げた義久、家康すら「やべぇ」と恐れた義弘の名前を出すと、どこぞの島津のバーサーカーみたいな奇声を上げながら、三体のサーヴァントに特攻する。聖杯の知識の恩恵が恐ろしい。

 俺は新選組のバーサーカーに魔力を回すことへ集中したいため、マシュ達に迂回するジェスチャーを見せる。黒幕とローブのサーヴァントを押さえて欲しいって意味である。意図を汲み取ったマシュは、いつもの仏頂面な花子と、黒幕を睨んでいるレティシアを引っ張っていく。

 

「死ねえええええええええええ!!」

 

 まず沖田さんが狙うのは弓兵。

 奇襲に対応しようと弓を構える猫耳だったが、俊敏性で沖田を上回るのは非常に難しい。刀は吸い込まれるように首を切り落とした。

 

「マスター!」

 

「はいはい、【令呪を以て命じる。宝具を使用せよ】」

 

 

 

 

 

「これは私の生きた証……誠の旗の下、共に時代を駆けた我らの誓い。ここに──旗をたてる」

 

 

 

 

 

 俺が令呪の一画を使用した瞬間、沖田総司の持つ宝具の中で、俺が魔力をブーストしないと使えない宝具を解き放つ。彼女が赤地に黒字で『誠』と刻まれた旗を地面に刺すと、旗を中心に一陣の風が舞う。

 蒼い光を纏った神秘的な風だ。

 

 ゆらりと空間が歪む。

 旗が周囲に掲げられる。

 『誠』の羽織りが集う。

 

 沖田総司が所有する三番目の切り札──対軍宝具『誠の旗』。かつて、この旗の元に集い共に時代を駆け抜けた、近藤勇などを始めとする新選組隊士達が一定範囲内の空間に召喚される最終宝具。

 これは予想外だったのだろう。白髪の老紳士(ランサー)仮面の美女(アサシン)は顔を歪める。彼等が全員サーヴァント並の強さを誇るわけではないが、隊士の中には宝具を放てる者もいる。これで数の不利は消え失せた。──だが、まだ足りない。

 

 

 

「──我が旗よ、我が同胞を守りたまえ! 我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!」

 

 

 

 俺の背後で解放されるジャンヌ・ダルクの宝具。

 天使の祝福によって味方を守護する結界宝具であり、宝具を含むあらゆる種別の攻撃に対する守りに変換する。展開中は彼女は動けないが、果たして今の彼女は動く意味はあるのか? 数の優位は得ているのに?

 沖田総司の対軍宝具。

 ジャンヌ・ダルクの結界宝具。

 オルレアンの聖女に守られながら、俺は笑みを堪えられなかった。「あの消滅寸前の裁定者(ルーラー)が、どうして!?」という顔を見て、笑わずにはいられないだろう。

 

 なぁ、絶対的な有利を崩された気分はどうだ?

 勝てる戦いに敗北しようとしている今をどう思う?

 レフ教授、貴方が夢見る人理焼却とは、この程度のものなのか?

 

「まぁ、今はそんなのどうでもいっか。──沖田総司、最後まで共に戦い抜こう。ジャンヌ・ダルク、手始めに世界を救おう。なに、どうせ懸かっているのは所長の胃痛だ。個人の自由と権利に比べりゃ、対して価値のあるもんじゃないさ」

 

 俺は確信した。

 この人理修復の旅は『勝利か、死か』ではなく、『勝利か、より完全な勝利か』を得るための戦いだと、今さらながらに理解したのだから。

 

 

 

 

 

「──さぁ、そろそろ始めるとしよう」

 

 

 

 




コイツ等の筋力

マイケル……成人男性の平均より少し低い。
ジョン……男組の中では一番高い。物理的な喧嘩なら一番強い。
ボブ……もやしっ子。マイケルよりやや低い程度だけど。
ダニエル……割と高い。ギャグ補正だともっと高くなる。
花子……ヘラクレス程度が薩摩兵子に勝てると思うな。
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