どうも、十六夜やとです。
今回はオルタ視点の圧倒的シリアス回です。彼女がクソみたいなマスターをどう想っているのか、申し訳程度の主人公の過去が垣間見えます。そしてタイトル詐欺はしません。
補足ですが主人公の回想パートは、もし前作を読まれているのなら、何を示しているのか分かると思います。分かんなくてもそのうち伏線入れます。
次回、帰る。
アイツは良くも悪くも普通だった。
もちろん聖杯の知識で得られる『普通の人間』というカテゴリーに入るわけではなく、あの神代よりも神話してるアイツの故郷の住人と比べたらの話だ。確かに、あの町で暮らしていたのなら、こんなキチガイが生まれるのも無理はない。
私の知らない異国の地『日本』は想像以上の魔境らしい。
マイケル──××××は引き連れてきたキチガイと比べるとマシな存在であり、アイツ等以上に厄介な思考回路を持つキチガイだと、クソマスターの記憶を共有して知ることとなった。
この能天気なマスターは幸せで恵まれた環境で育ち、温室育ちの御坊ちゃまは、周囲を引っ掻き回すように生きていた。
『目には目を、歯には歯を、復讐には復讐を……ってな。ハンムラビ法典万歳、報復最高。そんなわけで地べた這いずり回って、適当に死んでくれ』
『なら「虐められる方が悪い」って考えを尊重してみよっか。というわけで、こっちも「虐め返される余地を作ったお前等が悪い」って考えで動くから』
『相手を平気でサンドバックにするくせに、自分がいざ殴られる立場だと、「暴力だ!」とか喚く輩が多いのなんの。反撃しない相手を嬲るのは実に楽しいんだろうな。羨ましい限りだ』
『聞いたか? 俺は奴等にとって「慈悲のない卑怯者」らしいぜ? 暴力だの法律だのうるさいから、正規の手続きをとって、法に基づいて社会的に殺してやったってのによ。……弱者が国の法を守ることは、寄ってたかって一人の女の子を虐待することよりも卑怯で卑劣な行いのようだ。やっぱ他人の考えていることなんて、よっくわっかんねぇなー』
あぁ、本当に
私の根本的なものを許容してくれる。私の偽りを面倒臭そうに受け入れてくれる。世界を敵に回そうとも、このクソで鬼畜で外道なマスターは
「は──ははははは、はっははははははははははははっはは。ははははははははははははあはっは!!」
「──馬鹿な」
狂ったように笑う
唖然とするジル。
今回の元凶となる二騎の英霊を前にして、
あの『マイケル』を詐称するマスターは言った。
この特異点にレイシフトする前に、無駄に料理スキルの高いクソマスターの料理を口にしている最中、まるで明日の天気を語るように言った。
『オルタ、お前が復讐したいのはフランスの全国民なのか?』
『老若男女関係なしに、それが対象なのか?』
『お前の裏切りや処刑に携わった人間だけじゃ足りないのか?』
『……そうか。まぁ、お前がそう考えるのなら別に構わん。それを遂行するだけの力があるんなら、止める必要性も権利も俺は持ってないからな』
『だが、これだけは覚えておいてくれ』
『全く関係ない人間に復讐することは、お前が想像する以上に──
「──楽しくない』」
あの腐れキチガイに共感するのは不本意だ。
だが、フランスを滅ぼした『もう一人の私』を、シャルルでもピエールでも私を殺した兵士でもない『もう一人の私』を見て、自分が想像する以上に拍子抜けしてしまっていたのだ。
クソマスターが言った通りのことが、今ここで起こってしまったのだから。
私がコレを殺す?
復讐対象の代わりに?
こんなのを殺すの?
──何が楽しいの?
私の霊基が壊れてしまったのか。キチガイ共に汚染されてしまったのか。復讐に苦楽もないだろうに、この空虚なサーヴァントを前にして、憤怒や憎悪よりも『落胆』を覚えてしまったのだ。
「ホント、ばっかみたい……」
故に理解した。
マシュに復讐の価値観を語っていたマスターだったが、それ以前に『復讐問答』は幾度となく行ったのだ。しかし、復讐を許容すると言っておきながら、なぜかクソマスターが私の『全人類に対する復讐』を、強制とはいかないまでも止めようとした。
最初は甘っちょろいガキの戯言だと嗤った。
でも、あのマスターの言いたいことを今理解した。そして──今の私なら受け入れられる。
「あぁ、
「ジル! 私は狂ってしまったのかしら!? もう一人の私が存在するなんて! ……で、私に何の用でしょうか?」
「用、ねぇ。ここまで来るのにアンタをブチのめす理由なんて、数え切れないほど用意してきたのだけれど、もう意味を成さなくなったわ。でも……そう、ねぇ。しいて言うなら──」
フランスへの正当な復讐者ではなく、ただの殺人鬼もどきに成り下がっている自分を見て、私はドヤ顔で口を弧に歪める。
こうすると効率的に相手を挑発できる。
あのキチガイ共から学んだ。
「──シャルル7世とピエール・コーションの敵討ち、かしらね?」
「「はぁ!?」」
あ、確かに面白い。
他人にこんな面白い表情を作れるのなら、あのキチガイの煽りも悪くない。
私としては『王と司教をご丁寧に私よりも先に殺しやがった』という意味を込めたのだが、それを知らない二人には狂人に見えるだろう。
「……気でも狂ったのでしょうか? もう一人の私は」
「それはこっちの台詞なんだけど。さっきまで神に祈りを捧げてたじゃない。あの詐欺師よりも詐欺臭い神に祈り捧げるとか
「おかしなことを言うんですね。神は言いました。『この存在そのものを間違えているフランスを滅ぼせ』と。だから私は正しい」
「……ふぅん、そう。そういうことね」
何故か同じ存在のはずなのに、会話が全然噛み合わない。その理由を自分なりに考えてみたのだが、キチガイマスターの斜め上から切り込む推測法に影響されたのか、割とすぐに答えを導き出すことが出来た。
同時にマスターへの恐ろしさを覚える。もう一人の私の正体を把握して、私をコレとぶつけているのなら、やっぱりアレは真性のキチガイよ。脳みそ何で出来てんの?
「マシュ、さっさと盾構えなさい。あの私と聖女様を足して二で割ったような不良品をシバき倒して、聖杯回収するわよ」
「それはジャンヌであろうと聞き捨てなりませんね。これはまさしくジャンヌ・ダルク! フランスを憎み、神の名の元に正義を下す存在! 人は皆等しく、裁かれる運命にある!」
「あっそ」
マシュは私を守るように盾を構え、同時に敵も各々の得物を構える。
私は黒い剣を抜いて、もう一人の私へと向ける。
アイツは私を正してくれる。
例え、私が間違った道を歩んだとしても、あの男は頭を掻いて面倒臭そうに諭すのだろう。私が真に望んでいる願いを共に夢見て、あの外道な思考回路で導き出すのだろう。マイケル……いや、××××なら、地獄の底まで共に死んでくれるだろう。
クソマスター。アンタはこう言いたいのでしょう?
「要するに、『
復讐する先は私を辱めた者。
フランスとか人類とかどうでもいい。それはただの八つ当たりに過ぎず、私の正しく清く美しい復讐劇には似合わない。ジャンヌ・ダルクの怨念ではなく、レティシアの名を持つ私が夢見るは、何者にも文句を言わせない復讐だ。
「偽物がっ! 私の前から消えなさい!」
「えぇ、私は偽者よ! 覚悟は当の昔に決めてるわ! 他の誰でもない、これは私の物語よ!」
マシュとジル。
もう言葉を交わす必要はなく、互いが互いを殺すために駆け出し──
「邪魔」
「「があああああああああああああ!!??」」
「何してんのよおおおおおおおお!?」
──理不尽を具現化した少女に鳩尾をブチ抜かれる。
合間から割って入ったキチガイマスターその二は、振り向き様に衝撃波を伴った拳を叩きこむ。駆け出していた私とマシュは、風圧に耐えられず数メートルくらい滑り、直撃した二人は訳も分からず座に還る。
座に還る。
座に還る。
座に、還る。
カランと小気味良い音を鳴らして転がる聖杯。
万能の願望器を何のためらいもなく拾った金髪のマスターは、いつもの仏頂面で私たちに声をかけるのだった。
「終わり」
「こんな終わり認められるかああああああああああ!!」
コイツ等の耐久
マイケル……とりあえずマスターとして最低限の耐久はある。
ジョン……スポーツは一通りできるので耐久は高い。
ボブ……紙装甲。打たれ弱い。医療班に耐久を求めるな。
ダニエル……割と高い。ギャグ補正だと毎ターンガッツ付与&HP回復くらいしぶとくなる。
花子……マシュの宝具よりは堅い。近所のババァには劣るけど。