俺「……ふぁ、ファンタジーを少々」
面接官「凄いなぁ」
まさか
どうも、十六夜やとです。
今回をもちまして、オルレアン編を終了とさせていただきます。
次回からはセプテムですね。
「お帰り、マシュ、マイケル君に花子ちゃん! お疲れ様! 補給物資も乏しい、人員もいない、そして実験段階のレイシフトという最悪の状況で、君たちはこれ以上ない成果を出してくれた。生存している全カルデア職員を代表してお礼を言うよ。本当にありが──」
「クロネ〇ヤマトから注文した物資が届いたよー。これどこに置いとけばいーい?」
「………」
特異点から帰ってきた俺達は、ロマンから手厚い出迎えを受ける。
が、ロマンの感謝の言葉の大半を、フォークリフトトラックに乗って物資を運ぶボブに邪魔された。補足だが、カルデアの廊下はフォークリフトが余裕で操作できるくらい拡張されている。白衣姿で手慣れた運転で、ボブが巨大な段ボールを乗せたフォークリフトを動かす姿は大変シュールだった。
フォークリフトが過ぎ去った後、遠くからカルデア職員からの歓声が上がる。
ところで今のカルデアって浮遊要塞だよね?
クロ〇コヤマトさんは、どうやってココまで運んできたの?
「ま、まぁ、本当にありがとう。初のグランドオーダーをたった一日で攻略するなんて驚いたよ」
「それはココにいる期待の新人、ジャンヌ・ダルクさんの御蔭だな。あとレイシフトした先が黒幕の本拠地が近かったのもある。運が良かったってことさ」
あと
俺はレティシアにほっぺたをむにむに引っ張られている花子から、特異点で回収した聖杯を強奪する。
「……ところで花子ちゃんは何で顔を弄られているんだい?」
「見せ場を奪われたからだろ。……これが聖杯か。ふーん、えっちじゃん」
「先輩、その聖杯に何の性的要素があるんですか?」
一見すると金で作られた器。
しかし、魔術師の端くれである俺には、聖杯から漂う魔力の塊を感知する。
この『聖杯』ってのは神話的に何が由来なのだろうか? キリスト教に出てくる聖杯か? でもキリスト以前の英霊も呼べるよな? 今度所長にでも聞いてみるか。
「あ、忘れてました! マスターは新選組に加入するんですよね!? いやー、マスターの采配は近藤さんや土方さんもニッコリでしたよ! これはますます薩摩に置いておくのは惜しい人材だと! というわけで加入は書類と血判で簡単なので──」
「あ、ダニエルやん」
「薩摩死ねえええええええ!!」
少し沖田さんの瞳がハイライトになり始めたので、ちょうど中央管制室を通りかかったダニエルに押し付ける。沖田さんにとってダニエルは薩奸なので、なぜか霊基がバーサーカーになった人斬りは、薩摩の血を求めて縮地を用いて追いつめる。
一方のダニエルも負けてはいない。己の危機を悟った胡散臭い紳士は、魔改造したセグウェイで脱兎の如く逃げる。
カルデア一物騒な鬼ごっこだ。
俺は沖田が出ていった方向を指差す。
他四人に向けてだ。
「ほら、マシュもアホも早く物資貰いに行けよ。所長なんか奇声上げながら柿ピー貰いに行ってるぜ」
「私の……分もですか?」
「レイシフト前に補給物資で欲しい物のアンケートをボブに出しただろ? アイツがAmazonで注文したものが今日届いたってわけよ。ロマンも、な」
「え!? あれ本当に届いたの!? あー、もうちょっと本気で書けばよかったなぁ」
何を書いたのかは本人とボブしか知らないが、余程自分が必要なものだったのだろう。
ロマンはスキップしながら中央管制室を出て、マシュは花子と共に並んで歩く。
ちなみに所長が書いたものが分かった理由は、奇声が「柿ピいいいいいいいいいいいいいい」だからである。これで目当てのものが柿ピーじゃなかったら何だって話だ。それを柿ピーだと思い込んでいる精神異常所長だな。
俺も管制室を出ようとする。
……が、それは「クソマスター」という呼び声に止められた。俺はジャンヌに花子を追いかけるよう指示し、呼び止めた声が聞こえたほうを振り返る。俺のことをクソつけてマスターと呼ぶサーヴァントは一人だ。
「何だよ、レティシア。俺も早くスルメイカ欲しいんだけど」
「………」
「……レティシア?」
「………」
頬を掻いたり、明後日の方向を向いたり、視線を泳がせたり……いつものレティシアらしくない動きに、俺は眉をひそめた。あの彼女に瓜二つの黒幕を倒したことで、何か異常をきたしたのかとも考えたが、どうにも理由は他にあるらしい。
明後日を眺める彼女の表情は見えない。
だが、ようやく決心したのか、黒の復讐者は頬を赤く染めながら言葉を紡ぐ。
「あ、ありがと……」
「……
「何言ってるのか分からないけど、とにかく馬鹿にしていることだけは理解したわ。表出なさい。首と胴体に今生の別れを与えるから」
え、だってカルデア墜落するんでしょ?
あのレティシアが感謝の意を述べたのだから、天変地異が起きてもおかしくはない。
堕ちた聖女は腰に手を当てながら大きく溜息をつき、ジト目で理由を語る。自分の言葉に変な勘違いを起こさせたくないが故の行動だろう。
別に「ありがとう」って言われたら「あ、うん」程度の感慨しか思い浮かばんから、勘違いもクソもありゃしないんだけどね。
「アンタが言ってたことの意味を理解しただけよ。ほら、復讐云々の件」
「うん? ……あぁ、アレか。『復讐』って行動に決まった形はないってコトを、俺の実体験からアドバイスしただけだ。個人的に経験則を全面にアテにするつもりはないし、レティシアの復讐に比べたら微々たるものだろうが」
「復讐に大きい小さい関係あるものですか。まぁ、
「せっかくの復讐なんだぜ? 楽しまなきゃ、やってられねーっての」
少なくとも俺の復讐は代理的なものであり、レティシアがフランスを滅ぼした今回の黒幕を倒す構図と非常に似ていた。一般的に復讐に『楽しさ』なんざ必要ないだろうが、俺は楽しもうとした。復讐に「絶対苦痛に満ちた顔で、血反吐を吐きながら、相手を呪い殺すかの如く存在しなくてはならない」という決まりもないし、それが復讐の重みに直結するとは俺は考えない。
俺の人生に嫌なことをする暇はない。だから、俺は復讐代理という面倒を、せめて楽しもうとしてたわけだ。
その心理思考を覗いたレティシアは、己の存在意義に少なからず影響してしまったのだろうか。もしそうなら、水を差してしまったかもしれない。
俺の言葉にレティシアは首を横に振る。
気にしてないと言わんばかりに。
「最初は『何してくれちゃってんの、このクソガイジマスターは』って心底思ったけど、今は気にしてないわ。だって、『過去に私の死刑に携わった連中への復讐』は、『神の名の下にフランスへ裁きを下す』ことに固執してた黒幕とは違う、私が自分から思い描いた復讐なんでしょ?」
「……そう考えることもできるな」
「まぁ、
え、そうなの?
衝撃の事実にビックリする俺だが、黒い聖女はまるで俺が予知してたかの如く語るので、表向きは「や、やぱそうやったんやな……」と言葉を濁す。
あれジャンヌ・ダルクの負の面じゃなかったんだ……。なんか違和感あるなーって思ってたけど。
「それに……もし私が真に復讐する対象を間違おうとしても、アンタが正してくれるんでしょ? 一緒に地獄へ落ちてくれるんでしょ?」
「え、嫌だけど」
「は?」
今の「は?」はガチトーンの「は?」だった。
だって俺死にたくないし。
「お前俺の記憶知ってんだから、この答えは予測できるだろ……」
「ここで嫌って言えるアンタの神経を疑うわ」
「つか、お前現在進行形で復讐しとるやん。シャルルとピエールに」
どういう意味?とレティシアが首を傾げるので、俺は苦笑いをしながら説明する。これは完全にこじづけなのだが、俺は割と本気でそう思ってる。
「オルレアンの連中は魔女だと断定して殺したのに、今のお前は世界を救いながら日常を謳歌してる。今のアイツ等は地面の下で眠ってんのに、ジャンヌ・ダルクはゲーム遊んで第二の人生を楽しんでる。これって最高の復讐じゃないか?」
「……それ復讐って言えるの?」
「さぁ? でも、クソ国王とハゲ司教は俺達に文句は言えず、俺達は堂々と馬鹿共に唾を吐きかけられるわけだ。それで許すつもりは毛頭ないが、『お前が幸せになる』ことも復讐の一つの形だと思うぜ。何より──」
「何より?」
そう、これは俺の行動理念の一つ。
俺が考えつく言動は、全てこの一言に集約してるといっても過言じゃない。
「──
一瞬唖然としたレティシアは噴き出す。
この言葉の反応を、彼女は語らない。だが、顔には「確かに」と書かれていた。
つか、こんなこと話し合ってる場合じゃない。
だって──俺とレティシアの人生に、しなくていいことをする時間の余裕など存在しないのだから。
俺は彼女に手を伸ばす。
彼女は俺の手を取る。
「んなことより物資漁りに行こうぜ。ゲーム頼んだんだろ?」
「はいはい、分かりましたよ。
さぁ、今日も
俺とレティシアの復讐劇は、今日も面白おかしく始まるのだった。
コイツ等の敏捷
マイケル……『島津の退き口』を忘れたか? 素早きこと風の如し。
ジョン……笑止、新幹線など恐るるに足らず。
ボブ……目的地を思い描いた瞬間に、そこに立ってなければ、鹿児島県民に非ず。
ダニエル……新選組のサーヴァントに負けるならば、薩摩兵子の恥さらしよ。
花子……──ついて来れるか?