とりあえずサクっと人理修復   作:十六夜やと

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 どうも、お久しぶりです。十六夜やとです。
 いやー、社畜していて投稿できなかったことを、深くお詫び申し上げます。土日祝日休みなんだから投稿しろやボケナスがって話ですからね。

 そんな感じで今回まで日常回。
 次回はレイシフト会議ですね。


マシュ・キリエライトの歴史教室

「何か妹からLINE来たんだけどさ、鶴丸城の御楼門が復活するらしいんよ。工事中の門を背景に『復元なう』って言われても、どう応えればいいのか分かんないけど」

 

「いまさらかよ。ンなことすンなら、城そのものを直せってハナシ」

 

「でも黎明館あるから無理じゃね?」

 

 食堂での何気ない会話。

 人理継続保障機関『カルデア』改め人理継続保障要塞『カルデア』には、大人数で集まれるような部屋が幾つか存在する。これは人理修復が終わった後にも、カルデアが人理を見守る拠点として機能させるために、ジョンとダヴィンチちゃんで設計したものだ。

 しかし、曲がりなりにもカルデアは所長をトップとする機関のため、その大部屋を借りる手続きは非常に面倒臭い。

 

 なので複数人で遊ぶ時は食堂を利用することが多い。

 食堂は最低でも50人は入れるようになっているので、カルデアの施設の中でもそれなりに広い部類に入る。

 だからマリオパーティしてる俺たち以外にも、少し離れたカルデア職員集団が人生ゲームで盛り上がっていた。何気にロマンも入っているし。

 

「鶴丸……城? 黎明館……ですか?」

 

「そそ。鹿児島にある城」

 

 マシュは聞き慣れない言葉に首を傾げる。日本人でも県外の人間が知らない単語なので、俺とジョンはマシュの反応を気にすることはなかった。当然の反応だろうって感じ。

 沖田さんが年頃の女の子がしちゃいけない表情をしているのは無視する。

 

「鶴丸城は江戸時代初期に『島津忠恒』が築いた、上山城跡の城山と、その麓に築かれた鶴丸城で構成された平山城だな。ちなみに鶴丸城は通称で、今んところの正式名称は『鹿児島城』だね。現在では城の代わりに、歴史資料館的な『黎明館』と、市立図書館や美術館が建てられている……ってwikiに書いてあった

 

「つまり鶴丸城を復元するには、黎明館を取り壊さなければいけない……ということでしょうか?」

 

「おぉ、マシュちゃんは呑み込みが早いなぁ」

 

 俺は純粋にマシュの頭の回転を称賛し、ジョンは鼻を鳴らしながら懐から飴を取りだしてマシュに渡す。さすが『力のマスター、知のサーヴァント』と揶揄されるわけだ。

 当の力のマスターは何も考えずにコントローラーで適当に遊んでいる。

 

 既に歴史資料館として機能している黎明館を取り壊すことは、事実上不可能なので、鶴丸城が現世に蘇ることはないだろう。そもそも現物を見たことがないので、復活しようが二度とお目にかかれないことになろうが、俺にはさして問題はない。

 すると、『くいっく』のパーカーを着たセイバーが俺のプレイを妨害する。俺のパーカーを引っ張る形で、だ。無理やり着せられた『誠』の漢字を背負ったパーカーが着崩れる。

 

「どーせ薩摩の城なんてハリボテ以下に決まってるんですー。復元する必要のないくらいちゃっちい城なんですー。税金の無駄なんですー」

 

「さすがに沖田さんでも、その言葉は感心しないな。いくら鶴丸城がゴミカスだからって、言っていいことと悪いことがあるぞ」

 

「なンの擁護にもなってねェがな」

 

 頬を膨らませた桜の少女のほっぺたをプニプニ突いてると、マシュが再び首を傾げて、俺に質問を投げつけてきた。好奇心旺盛な女の子である。

 俺達が知らないレベルの世界史の知識を持っているマシュだが、日本の一地方の歴史までは把握していない。ましてや、自分のマスターが生まれ育った、悪鬼羅刹が跋扈する土地だ。盾のサーヴァントは興味を持ったのだろう。

 

 俺もその期待に応える。

 内心あまり言いたくない部類の話だけど。

 

「いや、まぁ、天守閣や高石垣がない城を、城と呼んでいいのかは謎なんだけどさ。薩摩って鶴丸城が建築される当時は77万石の大名だったんよ。けど城はお世辞にも立派とは言えなかった」

 

「補足だが、石高ってのは日本独自の数え方だなァ。当時の日本は米の生産性で測ってっから、領土を面積は関係ねェ。島津の77万石は日本でも有名な『加賀100万石』に次ぐ規模……要するに日本でも三本の指に入る大名だった」

 

 米の生産量を石で測ってたから『石高』と言われている。77万石の規模を有する島津の城が、どうして天守閣も大きな石垣もない城になったのかは不明であるが、諸説では『江戸幕府に対する恭順の意味があった』や『城をもって守りと成さず、人をもって城と成す』などと言われている。むしろ家臣の外城の方が立派だった。

 でも77万石の大名なら、もっと立派な城を築いてほしかったよなぁ。

 お隣の県にある『熊本城』の方が、防御力もあって立派じゃん。噂によると波動砲や重核子爆弾、空間磁力メッキにハイパー放射ミサイル、反射衛星砲が完備されてるとか。

 

「おかげさまでイギリスとの戦争では寺が天守と間違われて砲撃されたしさぁ」

 

「え、江戸時代に日本はイギリスと戦争してたんですか?」

 

「幕末だけどね。薩英戦争って呼ばれてるんだけど、マシュは知らない? 当時最強とも呼ばれてた大英帝国と、一地方に過ぎない薩摩藩との戦争なんだけど。ぶっちゃけ国と州の戦争って珍しいよね」

 

 それに長州も四国相手に戦争してるし。

 薩摩の蛮勇をオブラートに包んでみたが、

 

「国に喧嘩売るとか、やっぱキチガイですね」

 

「何を今さら」

 

 新選組の一番隊隊長が許してくれなかった。

 控えめに言って戦力差を考えて欲しい。英国がグレート・パンジャンドラムさえ使わなければ勝てたんだけどなぁ。

 

 俺と不良少年と人斬りは笑い合う。

 ジョンは鼻で嗤うような感じで。沖田さんはにこやかに笑っていて可愛いが、目が笑っていなかった。なので俺の笑いは必然的に乾いた笑い声となる。

 一方のマシュは思案するようにうつむいていた。どうしたのか尋ねてみると、

 

「いえ……そのカゴシマというところに私も行ってみたいです」

 

「来なよ、来なよ。くっそド田舎だけど、それなりに観光する場所はあるからさ。パパッと人理修復なんて面倒なモン終わらして、みんなで鹿児島行こうぜ」

 

 ロマンからの情報ではあるが、マシュは一度もカルデアから外に出たことはないらしい。理由は聞かなかったし、あんま聞いちゃいけない類の話だろうと尋ねもしなかったが、盾の少女が外の世界を望むのならば歓迎するのが正解だろう。

 当然、その話はジョンも花子も知っている。二人もマシュの願いに肯定的だ。

 

「はン。あそこに来るくらいなら東京や京都行く方が遥かに有意義だと思うが……来たいってンなら止めはしねェ。地元の美味いラーメン屋教えてやるよ」

 

「マシュと旅行。楽しみ」

 

 勿論、彼女だけじゃないがな。

 

「聖女sは確定として、ロマンと所長も強制的に拉致るか。沖田さんも来る?」

 

「…………………………………………行きます」

 

 苦虫を三千匹噛み潰しても、ここまで歪にはならないだろうと断言できるほどの表情を浮かべながら、かすれるような声で新選組の志士は了承する。

 元敵地に観光で乗り込むなんざ死んでもごめんだが、何か楽しそうだし着いて行きたい。あぁ、でも新選組の仲間たちに合わせる顔がないのでは? けど、現代の薩摩は敵じゃないから問題ないよね? でもでもでも、そんなの副長が許す筈が。あー、でも美味しいラーメンは食ってみたい。──みたいな顔してる。

 

「後で観光スポット調べてみるか。俺達は地元民だから、逆に行ける場所知らんのよね~。桜島登る?」

 

「黒豚……黒牛……じゅるり」

 

 花子の呟きは聞かなかったことにして、俺達は来るであろうその時の楽しみに心躍るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンで、今さら鹿児島の歴史語るなンざ、どういう風の吹き回しだテメェ?」

 

「いや、ね? 鹿児島への風評被害が激しいって話だから、ここらで媚びておこうかと」

 

「火葬後の心臓マッサージよりも効果ねェよ」

 

 

 

 




【コイツ等の礼装による所有スキル】
※マスターとしてクソ雑魚ナメクジなので、スキル一つしか使えない。

マイケル……『コマンドシャッフル(コマンドカードを配り直す)』
ジョン……『瞬間強化(味方単体の攻撃力を30~50%アップ)』
ボブ……『応急手当(味方単体のHPを1000~3000回復)』
ダニエル……『予測回避(味方単体に回避状態を付与)』
花子……『薩摩兵子(自身の攻撃性性能100%UP、自身の防御性能100%UP、各カードの性能100%UP、宝具性能3倍、回避付与、無敵付与、必中付与、NP80%UP、HP5000回復)(CT1)』

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