次回は例のアニキが出ます。可哀そうに。
ジャンヌ・ダルク。
農夫の娘として生まれ、神の啓示を受けたとしてフランス軍に従軍し、イングランドとの百年戦争で重要な戦いに参戦して勝利を収め、後のフランス王シャルル7世の戴冠に貢献した英雄。コンピエーニュ包囲戦で捕虜となり、『不服従と異端』の疑いで異端審問にかけられ、19歳で火刑に処せられた悲劇の聖人。
ってwikiに書いてあった。
火刑で殺されたことはジャンヌ・ダルク本人は恨んでいないらしく、つまり俺の召喚したジャンヌ・ダルクは『よくも魔女認定して殺してくれたなぁ? あぁ?』って考えるタイプのIFジャンヌ・ダルクということらしい。
通常の聖杯戦争……というかカルデアの召喚システムでは、
聖人と謳われた彼女の暗黒面の擬人化ってわけね。
「つまり俺は君のことを何て呼べばいいん?」
「適当にアヴェンジャーとでも何とでも呼びなさいよ。こんな贋作の名前に意味なんて」
「よっしゃ言質とったぞ。後で正式に決めるとして、仮名は『荒川・ジョセフィーヌ・万次郎』って──」
「ジャンヌ・オルタ。おk?」
新たな仲間としてジャンヌ・オルタ・荒川・ジョセフィーヌ・万次郎が加わった。
所長はピリピリかつイライラしているが、どうやら俺と花子が無能である以外にも、彼女が精神的に情緒不安定である理由があるらしく、特に彼女のことは気にせずに探索を続ける。
触らぬ神に祟りなしってコトだ。
「オルタ、あそこのモンスター倒してきて」
「はぁ? 何で私が」
「じゃあいいや。おーい、マッシュちゃーん。忙しいとこ悪いんだけど、ウチの穀潰しが働きたくないんだってさ。だから──」
「誰が働かないって言った!? あんな雑魚モンスターくらい私が瞬殺してあげるわっっ!!」
基本的に命令すると反発する。だけど、プライドが高いので自分が無能扱いされるのは耐えられない。恐らくオリジナルの彼女に大きなコンプレックスを抱えてるのが原因かもしれないが、そこのところを上手く突いて、俺は危険因子となりうる目前のモンスターにオルタを突撃させる。
黒い炎でモンスターが消し炭になっている様を満足げに頷いていると、どこか批難めいた表情を浮かべる所長が労いの言葉をかけてきた。
「……貴方、いつか彼女に刺されるわよ?」
「刺される理由が分からないんだが……」
俺は別に彼女に命令を強要してるわけじゃない。実際マスターになった際に『令呪』と呼ばれる強制コマンドがあるので、無理矢理社畜にさせることも本来ならば可能なのだ。これは正式な聖杯戦争の令呪よりも強制力は弱いらしいが、それでもマスターである俺には絶対権がある。
だが、俺はオルタに命令する理由で令呪を使おうとは今のところ思わない。今後どうなるか分からんから保留の段階だけど。
ロマン曰く英霊との信頼関係というのは割と重要らしく、それを損なう可能性はできるだけ排除したいと考えているからだ。それやるくらいなら誘導させて騙して彼女に判断させる方が楽である。
だから令呪の説明を聞いたときに俺は彼女に言った。
『俺は君に無理な命令はしないと約束しよう』
『……何馬鹿なこと言ってるの? そもそも信用できる訳が──』
『【令呪を以て命じる。そこでコサックダンスを披露しろ】』
『はぁ!? ちょ、身体が……!』
『【重ねて令呪に命じる。髭ダンスも追加で】』
『何乙女にアホなことさせてんのよおおおおおおお!!』
『これで俺の令呪は一つだ。これを失えば俺は君にコサックダンスと髭ダンスをさせた報復が待ってるから使えない。ほら、君に命令できないだろ?』
『アンタねぇ……!』
『あ、ちなみに令呪って回復するらしいんだけど、1画回復させる度に踊ってみた披露な?』
『クソマスターああああああああああああああああ!!』
「やっぱ俺が刺される理由が分かんないんだけど」
「……オルタよりも先に私が刺してやろうかしら、マジで」
次はモリヤステップだな。知らない人は検索してみよう。
スマホで面白そうなダンスを探してると、モンスター消し炭にしてきたオルタが俺を睨みながら帰ってきた。ちゃんとモンスターが落とした素材を持ってくるあたり、根は良い子なのかもしれない。
「お疲れさん。俺じゃあアレに対抗できないからね。助かるよ」
「……チッ」
「はい、報酬のアメちゃん」
「そんなんで私が喜ぶとでも? どうやら私のマスターは頭がお花畑のようね。いっそ燃やし尽くせば花畑よりも綺麗になるかしら?」
「いらんの?」
「……いる」
不機嫌そうにオルタが受け取った飴を大事そうになめてる姿に苦笑しながら、今度は仕事を果たして来たマシュと花子にも飴を提供する。ここで我が友ボブから袋ごと押収した飴が役立つとは思わなかった。
棒付きキャンディーが何気に世界を救ってるのだ。
「……ところでマシュ、貴方宝具が使えない?」
「はい……どうやらそのようです」
先ほどの戦闘で何か思うことがあったのか、所長の問いに影を落とす。
マシュが敵の攻撃を的確に防御し、花子が敵を殴り殺す連携は素晴らしいと思ったのだが、所長は『宝具』が使えないことに焦りを覚えているらしいのだ。
『宝具』とは簡単に言えば必殺技。
相手に弱点を悟られないためにクラス名で呼び合う彼等にとって、まさに伝承や偉業を切り札とする宝具は利点でもあり欠点でもある。マシュ自体は半ば強制的にデミサーヴァントとなったため、どの英霊と融合したのかが分からず、宝具が使えない状況だと語る。
マスターたる花子が一人前の魔術師となれば情報を閲覧できるとのことだが……このアホタレが一人前になるより先に人類が滅びそうである。
「宝具が使えない程度、どうってことないだろうって思うのは俺だけか?」
「ちょっとはその小さい脳みそで考えなさい。自分の四肢が思うように動かなかったらどうなるかを」
「……あー、そういう感覚なのね。納得」
オルタに指摘されて考えを改める。
やっぱり花子にはマシュちゃんのためにもマスターとして精進してもらおう。望みは薄いが確率はゼロじゃない。
「まぁ、カルデアのレイシフト機能が回復すれば一流のマスターをシフトさせることもできるわ。そうなれば貴方達はお払い箱よ。魔術の素人はカルデアの隅で震えていなさい」
「マジかぁ。カルデア雪山の上にあるから寒いんだよなぁ。逆にココは暖かいから楽」
「アンタを暖めるために街が燃えてるんじゃないわよ!」
とうとうアンタ呼ばわりである。
近くの燃えてる一軒家で暖を取っていたら怒られた。
だって雪山クソ寒いんだぞ? 何月だと思ってんだ?
氷点下なんて数えるほどしか体験したことのない南国育ちには辛すぎる環境なのだ。気温マイナスとか舐め腐ってるとしか思えない自分がいる。
「マシュは戦闘大丈夫?」
「はい、マスター。武器は上手く使えませんが……」
〔ごめん、話は後! そこから逃げるんだ! 新しい敵性反応だ……しかもこれはっ!〕
次から次へと問題が生まれるとは、どうやらこのパーティメンバーの中に不運の女神に愛されてる奴がいるようだ。さては所長オメーだな? 特に、ロマンが唐突に通信を開いて撤退を促した瞬間、ズシンと重い地響きが聞こえた瞬間に、今回のは「あ、これはヤバいやつだ」と直感的に感じる。
黒い霧のようなもので正しく認識できないが、それが人型をしたものなのは薄っすらと理解できる。そして聖杯戦争の後に起こったのが現在の特異点だという情報から察するに──
〔サーヴァントだ! マイケル君と花子ちゃんにはサーヴァント戦は早い……!〕
「いっちょ殺ったりますか……」
「ウォーミングアップには飽きた」
〔どうしてそんな君達は好戦的なんだい……!?〕
ポキポキと指の関節を鳴らしながら向かうマスターと、
「が、頑張ります!」
「クソマスター、いちご味とオレンジ味を用意しときなさい」
従順なサーヴァント達の初めての対サーヴァント戦が幕を開けた。
【前回よりはマトモな自己紹介】
花子……今作のヒロイン枠のような何か。もちろん偽名でハーフな帰国子女。ぶっちゃけ今作における『暴力と思考放棄』を司るキチガイ。行動原理が主人公に依存するのと、マシュのマスターなので全特異点に参加して悪いサーヴァントを腕力を以てシバき倒す予定。人類悪以上の人類悪。ロリ巨乳の美少女。