とりあえずサクっと人理修復   作:十六夜やと

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 さっさと序章終わらしたいですね。
 まぁ、作品のタイトル通り時間かけて人理修復なんてしませんが。

 そして優秀なキチガイシリーズ読者の方々なら大体の予想がつきますね、今回の話は。


新しい武器を手に入れた

 対サーヴァント戦に入った瞬間の俺の指示は個人的に早かったと思う。俺より早く的確な行動が出来る魔術師様がいるのなら代わって欲しいものだ。

 目の前に現れた黒いサーヴァントに対し、俺から見て右側にいつも不機嫌そうなジャンヌ・オルタ、左側に緊張で表情を強張らせたマシュと、いつも通りの仏頂面を崩すことなく八極拳の構えをする花子。俺の後ろに青ざめながら隠れてる所長のフォーメーションである。

 

「オルタ、攻撃に徹しながらマシュのサポート。出来るだけ敵の攻撃はマシュに受けさせろ」

 

「……ふん」

 

「マシュは防御だけに徹してくれ。タンクの君が倒れたら後方が崩壊するから、とにかく耐えて」

 

「わ、分かりました!」

 

「花子は殴れ。とにかく殴れ」

 

「あいあいさー」

 

 そろそろ花子は『魔術師はサーヴァントに勝てない』という理論を理解してほしいんだが。何で俺の指示に疑問を抱かずにサーヴァントへ特攻してるのだろうか?

 各自行動を始める姿を確認した俺は、少し遠目に敵であるサーヴァントの正体を見極める。サーヴァントの真名さえ知ることが出来れば、その攻撃手段や宝具の効果などを予測できるとロマンが言っていたからだ。魔術師としての知識が皆無なのだから、オルタの魔力タンク以外で魔術に頼らない貢献をするべきだろう。

 とは言っても俺に英雄の知識があるわけじゃないんだが。

 

 外見は紫色の髪をした眼帯をしている女性の英霊。衣服は人前で気軽に言えなさそうな仕事をしている人みたいな服装。鎖を巧みに使いながらオルタとマシュの攻撃を受けている。

 全く分からん。どこの偉人だよ。

 かろうじで理解できるのは、彼女が『蛇』に関する英霊だということ。服装や眼帯に鱗のような装飾を施していることから推測──

 

「打つべし、打つべし、打つべし、打つべし」

 

「……っ! ……っ!?」

 

 ──する必要はあるのだろうか?

 敵対してるはずのサーヴァントに馬乗りになった花子が、リズミカルに顔面フックを決めている姿に唖然とするカルデア御一行。しかも容赦もクソもないから逆に敵サーヴァントが可哀そうに見えてくる。

 あ、敵が光の粒子になって消えたわ。

 

「──っ! ──っ!? ──っ!! ──っっっ!!??」

 

「分かった分かった。とにかく声にならないほど驚いたのは分かったから落ち着け。何でアレが無双してんのか俺も知らんから落ち着け」

 

「……私を呼んだ意味って」

 

「オルタも落ち込むな。俺だって想定外なんだから」

 

 涙目で花子を指差し声にならない声で今だに叫んでる所長と、若干不機嫌そうに拗ねているオルタを宥める。あれ見て最初は『サーヴァントはサーヴァントでしか倒せない』という所長の理論そのものが間違ってると思ったが、どうやらアレがおかしいだけらしいな。うん。

 当の話題となっている本人は呑気に背伸びをして、マシュは周囲の警戒を怠ることなく見渡している。

 

「マシュちゃん、敵はいない?」

 

「はい、恐らくは──先輩っ!」

 

「オルタっ!」

 

 ガキンっと鈍い金属がぶつかり合う音がした。

 オルタが寸でのところで奇襲してきた新しいサーヴァントの攻撃を旗で受け止めたのだ。異様に右手だけが大きい黒色のサーヴァントは、片言ではあるが口から言語を紡ぎ出す。

 

「──見ツケタゾ、新シイ獲物。聖杯ヲ、我ガ手ニ!」

 

「ひいいいいいいいいいいい!!」

 

 さっきは敵サーヴァントが距離を取ってたから正気を保っていた所長も、金切り声を上げながら俺の背中にしがみつく。役得感よりも先に鼓膜が再起不能になりそうである。

 

〔マイケル君! それはアサシンのサーヴァントだ! ……いや、ランサーのサーヴァントも来たぞ!?〕

 

「チッ、こりゃ所長の日頃の行いって相当悪いな」

 

 加えて多量の武具を背負ったサーヴァント(ランサー)も現れたことにより、状況がさらに悪化の一途を辿る。これは所長のお祓いに行っている場合ではなさそうだ。

 とりあえずお望みのままに所長の盾となりながら、盾のサーヴァントと俺の相棒に大声を投げかける。

 

「マシュとオルタはアサシンを足止めしてくれ! 花子は槍持ってる奴をシバき倒せ!」

 

 とは言っても状況が悪い。

 さっそく花子は敵ランサーに仰向けの体勢を取る相手に馬乗り(マウント)状態となり、反撃を許さず顔面を一方的に殴りつけている。しかし、戦闘そのものに慣れていないマシュと魔力供給素人を主と仰ぐオルタは、暗殺者を生業とする敵に苦戦している様子である。

 そりゃ相手は『英霊』と称される程の腕を持つ存在。今回初サーヴァント戦の少女と旗ブンブン丸な元聖女が勝てる要素の方が少ない。

 

 せめて花子が早くランサーにトドメを刺せれば、彼女等が一気に優位になるのだが、流石は三騎士と持て囃されるクラス。あの神話生物モドキの攻撃を耐えていることを称賛するべきなのか、苦痛が他サーヴァントより続くことを憐れむべきなのか。まだまだ時間がかかりそうである。

 俺達カルデア御一行の主戦力が素人マスターなのは気にしない。しちゃダメだ。

 

「まだ耐えられるかマシュ!?」

 

「せん……ぱ……い……っ!」

 

「面白イ! 殺シタイイイイイタイイイイイイ! タノシイ!」

 

「クッソ……こっち向けっての……っ!」

 

 目に見えてマシュの負担が大きくなっていることを見兼ねたオルタは、注意を自分に引きつけようとする。しかし、アサシンは一点集中でマシュを狙う。実に合理的で厄介だ。

 さっき回復した令呪でオルタの魔力をブーストさせようと口を開こうとした瞬間、

 

 

 

「ったく、見てられねぇぜ」

 

 

 

 突如アサシンの真上から業火球が飛来し、暗殺者の猛攻を中断する。

 俺は声のした方を振り向くと、そこには蒼色の髪をした杖を持つ青年が立っていた。俺の知らない国の文字を周囲に浮かび上がらせながら、猛犬を彷彿とさせる笑みを浮かべた。

 

「貴様、キャスター!? ナゼ漂流者ノ肩ヲ持ツ……!?」

 

「あぁ? んなの言うまでもねぇ。テメエらよりも嬢ちゃん達の方がマシだからに決まってんだろうが。それとまぁ、見どころのあるガキは嫌いじゃない。つーわけで加勢するぜ!」

 

 気前の良いアニキ肌の魔術師(キャスター)の英霊は、さっそく呪術らしきものを口ずさみながら、先ほどの業火球を出現させて攻撃を再開しようとした。

 しようとした。過去形である。

 実際には()()()()()()()()()()

 

 

 

 死の縁から青い騎士を召喚するように。

 月の王が己が英霊と出会うように。

 素人の魔術師が復讐者と契約するように。

 

 

 

 人にはそれぞれの『運命(fate)』がある。

 そして彼女には──これが運命の夜(stay night)だったのだろう。

 

「見つけた」

 

「んぁ? どうしたちっこいガキ」

 

 まだ彼女が美少女の皮を被った未確認生命体だと知らないキャスターは首を傾げる中、ランサーを仕留めた花子は有無を言わさずキャスターの胸倉を掴み、力を込める。

 バチバチと紅い稲妻が彼女の周囲を迸り、キャスターが紅く輝き始めた。

 

「アサシン、その心臓を貰い受ける──」

 

「は、え、ちょ、テメエ待」

 

「真明封鎖、疑似宝具展開──」

 

 もはや人間かどうかすらも怪しくなってきたアホの子は、大地を踏みしめ助走をつけ、

 

 

 

 

 

「──刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)っっ!!」

 

「それ俺の宝具うううううううううううう!!」

 

 

 

 

 

 直立不動の姿勢のままのキャスターをアサシンにブン投げ、螺旋状に回転をしながら、アサシンに迫る。どれだけ逃げようとも『心臓に槍が命中した』という結果を作ってから『槍を放つ』という原因をもたらすチート宝具を疑似的に再現している(?)ため、何人たりとも逃れることはできない……のか?

 そんなわけで花子の新しい宝具は、アサシンの心臓を理不尽に貫くのだった。

 

 

 

 




【新しい自己紹介】

冬木のキャスター……真名はクー・フーリン。アイルランド神話『アルスター伝説』に登場する大英雄。ゲリラ戦の達人にして、1対多の戦闘に特化した槍の名手。しかも知名度も神秘もクソ高いから、ランサーで召喚された場合、『神性』というデバフを除けば最強角に匹敵する英霊。花子の宝具。
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