とりあえずサクっと人理修復   作:十六夜やと

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 ちっす、三河屋でーす。
 じゃなくて十六夜やとです。

 今回は対アーチャー戦です。
 次回は特異点とのボス対決ですね。彼女視点となります。

 可哀そうに。


おっと心は硝子だぞ?

 花子がコンビニから買ってきたコーラを飲みつつ、安心と信頼を七割くらい誇るWikipediaで調べ物をしながら、俺は聖杯があるとされている洞窟を目指して歩いていた。スマホがなぜ使えるのかというツッコミは受け付けない。ドコモの電波が未来からココまで届いてんだろ。

 あー、このシュワシュワ感がたまらん。

 

「こんな廃墟でもコンビニ経営してるとか社畜の鑑だなぁ」

 

「その感想はどう考えてもおかしいでしょ!? 冬木市滅亡してるのよ! あとアンタの飲んでいるそれを寄越しなさい! これ尋常じゃないほど塩辛いの!」

 

「人類の生命力舐めんなってコトだろ。つか醤油飲んだん?」

 

 醤油のボトルを大事に抱えながら俺のコーラを要求する所長。カルデアが半壊しているので、食糧になるものはたとえ調味料でも確保しておきたいのだろう。

 マシュは人生初の『お~いお茶』にご満悦し、オルタは甘ったるい小豆にほっこりし、キャスターは度数の低い酒にご機嫌な様子。オルタって甘いものが大好きなのだろうか? そもそも彼女の生きていた時代に甘いものが出回っているイメージがないため、仕方ないと言えばそうなのだが。

 

 それにしても……と俺はスマホの画面を見る。

 画面には『キャメロット-Wikipedia』と。

 

「マシュに力を貸した英霊はイギリス出身の英雄だったのか。でもキャメロットって単語だけじゃ特定するのは難しいかも。もうちょい他の情報ない?」

 

「す、すみません。ふと頭に浮かんだ言葉だったので、それ以外の情報となると……」

 

「あぁ、別に怒ってるわけじゃないよ? これするのだって本来はそこでカルピス原液をラッパ飲みしてる花子がやることなんだから」

 

 甘いものが気に入ったオルタでさえ噴き出したカルピス原液を、ゴクゴクと腰に手を当てて一気飲みする姿は異様に見えた。俺としては普段こんな感じなので特に気にしないが。

 しかも数十箱買いした原液をリヤカーで引いている。どこで手に入れてきたんだろうね。

 

 歩くこと数十分。

 俺達は聖杯があるとされている寺──柳洞寺を訪れた。

 本来ならば普通のお寺なのだが、長い階段を上った先にある本堂の前に、一つの影が居座っていた。俺達を視認した瞬間に黒い影は俺をピンポイントで睨む。

 

「──来たか」

 

「……顔黒たまごちゃんの擬人化!?」

 

「私はNHKのキャラではないぞ?」

 

 あ、よく見れば浅黒い肌はいいとしても、髪は銀髪じゃないか。全然似とらん。

 反対にキャスターとアヴェンジャーはしゃがんで地面をバシバシ叩くぐらいにはツボったらしい。昔の人の笑いの基準ってよく分かんないわ。

 

 その空気を変えたいのか影は咳払いをする。

 ……というかNHK?

 

「……もしかして近現代の日本人の英霊?」

 

「英霊などという大層なものではない。世界に酷使される守護者の成れの果て……とでも言うべきか。叶わぬ夢を追い続けた愚か者……も正しいかもしれん」

 

「なるほど。ただの厨二病か」

 

「魔術師など皆そういうものだろう?」

 

 それもそっか、と俺は妙に納得してしまった。

 所長の自分に酔っていた演説然り、俺が半強制的に唱えさせられた黒歴史ポエム然り、キャスターの意味不明かつ無駄にカッコいい詠唱然り。世間一般では『痛い』と称される言動も、魔術師の間では普通の言動なのだろう。

 場所が変われば文化も変わる。価値観も思想も変わる。頭ごなしに否定するのは失礼だな。

 俺は魔術師の厨二臭い言動を『ウナギをゼリーにぶちこむようなもの』と言い聞かせる。どちらも日本人にとっては理解できないものだ。

 むしろ中学二年生男子のロマンとも呼べる文化を楽しむのも一興かもしれない。

 

 情報量が多すぎて軽くスルーしていたが、よくよく考えてみれば俺達を襲ってきた汚染された英霊の中では初めて意思疎通が可能なのが彼(?)だ。しかも俺の『日本人の』という部分も否定しなかった。

 ダメ元でも交渉を試みることが出来ないだろうか?

 

「できれば同じ日本人のよしみで見逃してくれると嬉しいんだけどなぁ」

 

「……君の名前は?」

 

「My name is Michael」

 

「本当に日本人か?」

 

「それ最大のブーメランじゃね?」

 

 外見や名前云々はお互い様だろう。

 褐色肌の英霊に、名前が英語圏の俺は肩をすくめる。

 

「ふむ……まぁ、いい。君の提案についてなのだが、悪いが私も仕事なのでね。どうしてもこの先に行きたいのならば、力づくで押し通ってもらう他ない」

 

「暴力は趣味じゃないんだけど……」

 

 俺は、な。

 他は知らんが。

 

「さーて、マシュは安定のタンクをお願いするよ。相手は弓兵だが近距離もイケるクチらしいから、オルタとキャスターは花子の援護を。花子は以下略」

 

「はいっ!」

 

 返事して答えてくれたのはマシュちゃんだけだった。マジ天使。

 キャスターは詠唱に入ってるし、花子は無言で頷くだけだから仕方ないか。オルタは安定の無視。

 

 目の前に居る影──アーチャーは、キャスターによると『いけ好かない近距離遠距離こなせる器用貧乏』らしい。良く言えば手数の多いサーヴァントなので、花子以外はマシュのサポートを受けられるような配置を取る。たぶん俺の思考はマスターとして非常識だろうけど。

 隣の所長が何か言いたそうにしているが気にしない。

 

 自分の小柄な体格を生かした俊敏な動きでアーチャーの顔を狙った花子の殴打は寸での所で回避されたが、バーサーカーよりバーサクしている人外の化物は勇猛果敢に攻撃を繰り出す。彼の英霊は双剣で応戦しようとするが、ことごとく花子に手刀で破壊される。時には握り潰す。どういう構造してるんだろ、あの手。

 しかし、破壊されたはずの武器は次の瞬間に手元へと戻っている。キャスターの言っていたのアレだったのだろう。どこの英霊だろか?

 

 少なくとも彼の英霊は『格上との戦闘に慣れている英霊』だと理解できる。

 マスターの方がサーヴァントより格上って事実もおかしな話だが、ランサーを一方的に殴り殺した花子の猛攻を耐えているのがその証拠だろう。

 素人の喧嘩のようで洗練されている化け物マスターの動きを紙一重で避けているのだ。

 

 こうなると俺達の仕事はなくなる。

 悟空とセルの戦いを見守る一般人の気持ちだ。下手に援護なんて出来やしない。

 

「はいドロー4。マシュ4枚引いて」

 

「えっと……あ、私も同じのがありました! ドロー4です!」

 

「げっ、嘘だろオイ。せっかく後2枚だったのによぉ……」

 

「幸運Eがざまぁないわね……って、何リバース出してんの!? 私に出番回しなさい! 燃やすわよ!?」

 

「……手札が全部消えたら勝ちなのよね。……この38枚の手札を使い切れば勝ちなのよね」

 

 だからUNOするしかないだろう?

 とうとう猛攻に耐えきれなくなったアーチャーが花弁みたいな盾を展開し、それを何食わぬ顔で破壊していく花子を横目に、所長が新しく27枚引いていく。

 もうデッキと見間違えるレベルで所長の手札が増えていく様をみんなで笑っていると、ボケにも耐えきれなくなったアーチャーが叫ぶ。

 

「貴様等真面目にやる気あるのかっ!?」

 

「あるわけないだろうが弓兵の英霊さんよ。つか、よそ見してる余裕があるの?」

 

「──っ!? しま」

 

 それがアーチャーの最後の言葉であった。ツッコミ気質の浅黒近代英雄が、対立している化物から目を逸らしてしまったのが最大の敗因だろう。

 彼の鳩尾を蹴り上げた容赦のない小柄の少女は、いつの間にか右手でキャスターの胸ぐらを掴んでいた。

 

 やることはただ一つ。

 

 

 

 

 

「──刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)っっ!!」

 

「またかよおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 UNOのカードを舞い散らせながら、紅い閃光は弓兵の身体を貫いた。

 

 

 

 




【前回よりはマトモな自己紹介】

所長……『人理継続保障機関カルデア』の所長。 フルネームは『オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア』で、魔術協会の総本山『時計塔』を総べる12人のロードの一角、アニムスフィア家現当主。現段階ではプライドの塊みたいな人物。原作ではこの後色々とあるキャラなのだが、今作品において終始キチガイの餌食となる。
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