そろそろ序章が終わりそうなんですが最近書き始めた
次回は特異点の裏でカルデア側の描写です。
その後に序章最終回です。
特異点の原因となるアーサー王を討伐したことにより、聖杯戦争そのものが終了してしまったようだ。
ついでと言わんばかりにキャスターも消滅してしまい、去り際に「次があるんならランサーとして……でも勘弁だわ。今の言葉は忘れてくれ。マジで呼ぶのは勘弁な。な?」とか言ってた気がする。呼んだ方が面白そうなんだけどな。
残ったのはカルデア組の面子のみ。
あと転がっていった聖杯。
「これで特異点は修復された……って扱いになるんかね?」
〔あぁ、みんなよくやってくれたよ!〕
「えぇ……そこの鬼畜マスターの非道な手の内を知れてよかったわ。どんな脳みその構造してたら、あんなゲスなこと思いつくのよ」
「さぁ? 生んだ親に聞いてくれ」
まったく、非力でか弱い素人マスターの俺が、無い知恵振り絞って考えた作戦だったってのによ。手札も情報も時間もないんだから、突貫で見栄えが悪い作戦になるのは仕方ないだろう?
つか作戦指揮とか本来なら所長の役目でしょ。
給料分の仕事はして。
「ジャンヌ・オルタちゃん。あのクソ小生意気な騎士王様を出し抜いた感想をどうぞ」
「お前を殺す」
「人理修復が終わったらね」
とりあえず彼女の刃から逃げる方法を探さないとな。
まったく、カルデアがアパマンショックしてから考えることが多すぎて嫌になってくる。同郷のアホ共と行動するよりかは幾分かはマシだが、今のメンバーは頭脳面で信頼できる対象が少ないのがいただけない。
個人的にはもっと楽して人類史を救いたいんだけど。
「先輩、私は聖杯の方を回収してきますね」
「……ん? あぁ、お願い」
マシュに聖杯をまかせて、俺は情報を整理しようと思考の海に沈もうとした瞬間、
「──いや、まさか君達がここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容の許容外だ」
マシュが回収しようとしていた黄金の器は突然浮遊し、声が聞こえる方角に飛んで行く。もちろん飛んでった方を振り向くと、
俺は彼の姿を確認した刹那、大きく溜息をついて肩を落とす。
今日は溜息をつくことが多い。溜息をつくごとに幸せが逃げていくのなら、今頃俺の幸運はEだろうと現実逃避するくらいには。
「47・48人目のマスター適性者。まったく見込みのない子供だと、善意で見逃してあげた私の失態だよ」
「レフ、教授……」
深緑の帽子にスーツ、ふっさふさのマフラーみたいな髪型、穏やかそうな表情の裏に潜む言いしれぬ不気味さ。カルデアで俺と花子を案内してくれた、所長の保護者みたいな人物、レフ教授がそこに立っていた。
マシュは彼の言葉に、様々な感情が入り交じった状態で名を呼ぶ。
いや、それだけじゃない。
所長やモニター越しのロマン、カルデアで彼と共に過ごしてきたであろう面々も青ざめていた。
想定していた反応とは違ったのだろう。レフ教授は嘲笑うかのように口元に笑みを浮かべる。
「その反応だと……もしかして私の正体に気づいていたのかな? クズ共に感づかれるとは私も詰めが甘かった」
〔僕も教授を疑いたくありませんでしたよ……〕
「レフ、そんな……どうしてっ!?」
確かに普通なら疑わないであろう。
彼らにとってレフ教授というのは、人理を守るために共に過ごした家族みたいなものだから。
だから今まで半信半疑だった。
『──なぁ、ロマン。カルデアの修復は終わったんだよな?』
〔まだ完全とは言い難いけど、七割くらいかな? 管制室と重要な場所はあらかた片付けたって言っても過言じゃないよ。不安定だけど君達のバックアップはできるから安心してほしい〕
『……管制室に散乱していた死体は片付けたんだよな?』
〔え、あぁ、まぁ。うん〕
『そこにレフ教授の死体は?』
〔なかったけど……それがどうしたんだい?〕
『なるほどなぁ。つまり
『アンタは何を言ってるのよ! レフがそんなことをするはずないじゃない!』
『だけど彼が犯人じゃない証拠もない。自爆して死体が残らなかった可能性、そもそも内部犯じゃない──考えられることは多いが、俺は内部犯の可能性が高いと睨んでる。俺的にはこの際犯人なんざ誰でもいいんだよ。確固たるアリバイがない限り、俺はレフ教授を犯人から除外する気はないぞ』
〔確かに死体がないのは不自然だ……管制室が爆破されたのに、肝心の指令室にいた教授の痕跡がないのはおかしい〕
『まぁ、これも予想の域に過ぎない。だけど、今後レフ教授を始めとするカルデアの誰かが立ちはだかる可能性が極めて高いのは覚悟しといてくれ』
なんて一幕もあったからなぁ。
できれば外れていて欲しかったが、悪い予想ほどよく当たる。
「ほう……本当に消すべきは君だったのかもしれないね。ゴミの分際が」
「それはどうなんだろうな。どうせカルデアを使えなくするんだったら、きちんと一匹残らず始末するべきだったんじゃないか? アンタのは善意じゃなくて怠慢だよ。記憶したか?」
「ふん、人間の癖に口ばかりは達者なようだ」
「達者で結構。というか図星だった程度で達者と抜かすんなら、どうやら人類の敵は大した存在じゃないらしい。良かったな、所長」
肝心の所長は目に涙を含んでいるが。
ちょっと酷だっただろうか? 現実だから受け入れてもらうほかないけどさ。
「それにしても一番の予想外は君だ、オルガ。どうして足元に爆弾を設置した君が生きているんだい?」
「「「……は?」」」
おっとこれは急展開。
「いや、生きているのとは違うな。君はもう死んでいる。肉体的にはね。トリスメギストスはご丁寧にも、残留思念となった君を、この土地に転移してしまったようだ。レイシフト適性のなかった君が、死後に適性をてにいれるなんて皮肉な話じゃないか」
まさかの所長死んでた説。
魔術師って死んでもレイシフトできるんだね。
「そ、そんな……私、し、死んで……え? う、嘘……」
〔あー、そのことなんですが〕
ここで申し訳程度にロマンが申し開きしてくる。
〔所長の肉体生きてます〕
「……は?」
今度は唖然とするのはレフ教授だった。
さっきまでの悪役っぽい笑みは鳴りを潜め、瞳孔が開いたまま顎が落ちるという間抜け面を晒す。
ロマン曰く所長の肉体が死んでいた……否、死にかけ寸前だったのだが、どうやら外的要因で治療は完全成功。このままレイシフトして帰っても、所長が死ぬことはないらしい。
魔術師って死んでも簡単に生き返るのか。すっげー。
そのことを黙っていたロマンだったのだが、現在進行形で所長にめっちゃ怒られてる。給料半減で済めば恩の字であろうと考えるくらいには怒ってる。
「っ! まだだ。君達に今のカルデアの様子を見せてあげよう。何、聖杯さえあれば時空をつなげることだって可能なんだよ」
聖杯を掲げたレフの頭上にバキュームみたいな空間が生まれる。
あれが特異点と現在を繋げているのだろう。奥にはカルデアで見た地球儀みたいな装置『カルデアス』を見ることが出来た。
しかし、それは俺が見てきたものとは様子が違った。
確かに俺はレイシフトする前にカルデアスをマシュと花子と見た。
それは瓦礫が撤去されて綺麗になった部屋に向けてではない。そう、カルデアス本体は──
──業務用冷蔵庫の中でキンキンに冷やされていた。
「「カルデアスううううううううう!!??」」
「お、カルデアスが一部青になってんじゃん。冷蔵庫で冷やしてる御蔭かな?」
「……先輩が想像している方法では青くはならないんですが」
まだ赤いところが目立つけれど、カルデアスは確かに一部青さを保っていた。
レフ教授なんて予想外の連続で思考が停止してんじゃん。
だが──これはチャンスだ。
俺は所長の腰を抱きかかえて、オルタとアイコンタクトで頷き合い、花子に指示を出す。
「花子! やれ!」
「えいっ」
花子は隙を見てカルピスの一本をレフに投げる。
ただの人間の投擲であれば効力はないに等しいが、ライダーやランサー、セイバーをシバき倒した花子の投擲は弾丸の速度を軽く超える。
ちょうど聖杯を持つ手に当たったカルピスは、ついでに聖杯を弾き飛ばし、こちらに落ちてくる。
「ロマン! 例のアレよろしく!」
〔君は本当に何なんだい……? 千里眼でも持ってるの?〕
「んなわきゃねぇだろ! 最低を想定してたら悉くすべて当たってんだよ察しろ!」
事前にレイシフトできるよう手配していたので、すぐさま特異点から脱出しようと試みる。
俺は去り際に大声でレフを煽る。
「レフ教授! 残念だが俺達はここでお暇させてもらうぜ! アンタ等の親玉に伝えとけ! 地べた這いずり回っても人類史なんざ消させねぇってな! 俺以外の誰かが」
レフ教授は何か言葉を吐こうとしたのだろう。
けれどもタイミングが悪かった。俺が落ちてきた聖杯を所長を抱えていないほうの手でキャッチした瞬間、レイシフトの光に飲み込まれた。
【前回よりはマトモな自己紹介】
杉田……本名はレフ・ライノール。人理保障機関カルデアの顧問を務める魔術師。近未来観測レンズ『シバ』の開発者であり、天才的な技術力を持っている。 そんでカルデア爆破事件の犯人であり、現在以降の人類史を焼却した張本人。本当ならこの後めっちゃトラウマレベルのことを起こすんだが、キチガイのせいで色々と計画が狂う。
所長が生きてるとか、業務用冷蔵庫『カルデアス』については次回判明する。
ヒント・残されたキチガイ