藤木遊作と財前葵が一緒に遊びに行くが、そこで事件が……

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時系列的にはアイがいない頃です



第1話

 ソルテクノロジー社はその名の通りテクノロジーを使って商売をしている会社であり、その技術は業界内でもトップクラスである。

 だが、技術の高さについては一部の技術者にしか分からず、一般人への知名度をどうやって上げるかというのは大切な問題である。

 今回手の中にあるチケットは、技術の実験と一般人に対するアピールのための一環で作られた施設のチケットだ。

 このような物はよくもらう。自分はあまり時間も取れないし、妹の葵もこういうものに興味を持たないため、しょっちゅう腐らせてしまうのだが、最近葵は学校で友人と付き合いがあるらしい。

 

 正直に言うと、プルーエンジェルとしての活動はあまり応援できない。実力は十分らしいが、身内としては危険な場所に行くというだけで不安なものだ。だから、少しでも現実の……学校の友人が葵のブレーキとなって欲しい。だから……

 

 

 xxxx

 

 

「電脳水族館?」

「お兄様が友人と行ったらどうだ?って……。今週まで何だけど」

 

 別に予定は無いが

 

「他に誰か誘ったのか?」

「藤木君以外には、島君を誘おうかと思ってたけど」

 

 島か……確かあいつはこの間

 

「島は今週は忙しいといっていたな」

 

 ブルーエンジェルのイベントの応募があるらしい。そのため一日パソコンに付きっきりになるとか。

 

「そっか……。それで、藤木君は?」

「問題ない」

 

 

 xxxx

 

 

 待ち合わせ場所には予定通りの時間に着いた。今の時代は交通機関を使って予定通りに着かないことの方が珍しい。

 

「あ、藤木君」

「……待たせてしまったか?」

「今来たばかり。……普段はこういう格好なんだ、少し新鮮」

 

 制服以外の姿で合うのは初めてかもしれない。草薙さんはもっと気合い入れた格好の方が良いんじゃないか?と言ってきたが、今のところ悪い感触ではない。

 

「それじゃあ行きましょう」

 

 学校での話をしながら歩くと、話題が尽きる前に直ぐ目的地に着いた。

 

 

「思ったより大きいんだな」

「お兄様が言うには、今のVR技術で出来ることを確かめておきたいのと、イメージアップのためだって」

 

 水族館といえば少し子供向けなイメージがあったが、外見は落ち着いていて、玉に見る動物のイラストはデフォルメした物ではなく、写実的な物だ。入り口の壁はイラストではなく、イルカが泳いでいるように動いている。……少し癖があるが、大作映画のCG以上の出来でこれだけで見世物に成りそうだ。

 

 中に入り受付でチケットを提示すると、電子マネーのカードを渡された。

 

「此方館内でのみお使いいただける、電子マネーが入っています。残高については裏に表示されるのでお土産やお食事等にお使いください」

 

 裏を見ると60,000と書いてある。……多すぎて館内で使いきれる気がしない。

 

「どこから行きましょうか、藤木君は何処か行きたいところはある?」

 

 館内の地図を見ると、幾つもの展示の説明が書かれている。

 

「『科学による自然の再現』がテーマで、展示はそれにあった物を出しているのか……」

「『ペンギンと同じ環境で過ごしてみよう!』ですって。ちょっと面白そうじゃない?」

 

 南極大陸のような過酷な環境から、密林のような複雑な環境まで再現可能であり、今まで飼育が難しく実現しなかった生物の飼育、繁殖に成功したことがやや強調して書かれている。

 

「そうだな。それじゃあペンギンのところから見ていくか」

 

 xxxx

 

「さっ、寒い……」

「全身最先端の局地対応スーツに包んでいてもこの寒さか……」

 

 xxxx

 

「外国は暑くても湿度が無いからカラッとしてるって言うけど本当ね」

「逆に汗で濡れたところが少し冷えるくらいだな」

 

 xxxx

 

「あいったっ!」

「VR技術が高すぎて、張り紙でもしないと壁のあるところが分からないな。……頭大丈夫か?」

 

 xxxx

 

「まさにジャングルって所で虫がいないのは嬉しいけど、なんか清潔すぎるって言うか違和感があるわね」

「まあ屋内だしな」

 

 xxxx

 

 暫く見たあと、時間がちょうど良いので食事にすることにした。館内でも幾つか食べるところがあり、何処にするか迷いながら決める。

 

「ちょっと疲れたから座れるのは嬉しいわね」

「メニューもデジタル化してるのか……タッチパネルになっててこのまま注文すれば良いんだな」

 

 メニューは動物や海がモチーフになっているものが多い。テーマパーク的な子供向けのメニューのような物が並ぶ。

 

「んーー、どれにしようかな……今日はあまり重いものって気分じゃ無いのよね……。藤木君は決まった?」

「俺は、このお勧めのバラエティプレートにした」

「へぇー、それも美味しそうね。うーん、どれも美味しそう……」

「混んでる様子もないし、ゆっくり選ぶと良い」

 

 xxxx

 

 

「美味しかったな」

「うん。見た目に凝ってるだけじゃなくて、味も何ヵ所も変化を付けてて……」

 

 食事が終わりどこを次は見ようかと相談をしていると、突然館内に放送がかかる。

 

『緊急放送、緊急放送。館内で緊急事態が起こりました。お客さまは直ちにお近くのスタッフ、または案内AIの指示に従ってください。繰り返します----』

 

 一体何が……と思っていると、突然近くにあった扉が開いた。あれは……ワニだ!

 

「こっちだ!財前!」

「えっ何が……」

 

 強引に手を掴み、近くにあったドアの中に入り鍵を閉める。

 

「藤木君、な、何がどうなって……」

「さっきの地図を見せてくれ」

 

 地図を貰って読む。さっきまでいた通路の近くにワニの水槽があったが、そこから逃げたのか?いや、何かがおかしい……。

 

 と、そこで俺と財前の端末が鳴り響く。

 

「もしもし、草薙さん。今聞きたいことが……」

『遊作!無事か?』

「……ああ。とりあえず今は近場にあった部屋に飛び込んだ。今どうなってるんだ?」

『……自称環境団体がそこの施設を攻撃したらしい。一部管理システムをハッキングして、従業員及び来場者を人質に取っていると……』

「……そういえば、幾つかの扉が開いていたがそれらは電子制御だったな」

 

 入ってきた扉は電子制御ではないのを確認する。……熊とかなら危なかったかもしれないが、ワニならとりあえず扉を破壊することは無いだろう。

 

『そっちのシステムは独立していて、外部からのハッキングは難しいことから、犯人グループは館内にいるらしいが……』

「これからこっちでシステムを回復させられれば解決しそうか?」

『銃や刃物等の武器は持ち込んではいないらしい。ハッキングさえどうにかできれば、警察が解決してくれると思う』

「草薙さん、サポートをお願いします」

『……わかった。任せろ遊作』

 

 通話を終えて、財前の方へ振り向く。

 

「藤木君、お兄様から聞いたんだけど、今の状況は……」

「俺も聞いた。……これからハッキングをする」

「え!藤木君、そんなことが出来るの?」

 

 草薙さんが独立ネットワークへのアクセス方法を送ってくる。俺はそのなかで丁度部屋の中にある掃除ロボに直接端末を繋いで、プログラムを走らせる。普段使っているものに比べて頼りないが、俺の端末を介して草薙さんはドンドンとセキュリティを潜り抜けていく。

 

『遊作、不味いことになった。重要システムがデュエルプログラムによって保護されている』

「わかった。そっちは俺が何とかする」

 

 そう言ってディスクを操作して準備をすると、肩を捕まれる。

 

「待って藤木君。私も行く」

「いや、俺だけで……」

 

 一緒にデュエルをするとなると、全力のデッキであるサイバースは使えなくなってしまう。だが、彼女の意思はぶれない。

 

「私も行く」

「……わかった」

 

 カリスマデュエリストが一人増えるのは戦力として頼りがいがあるのはたしかだ。それに、最悪サイバースを使うことになったら、彼女のアクセスを遮断させれば良い。

 

「デッキの確認は大丈夫か?……行くぞ」

 

 xxxx

 

 内部では、重要プログラムを守るように3人の影があった。

 

「おっとぉ、そこにいるのはわかってるんだぜ?」

「このステージはボクたちの領域なんだよ!」

「……二人かさっさと終わらせるぞ」

 

 向こうは直ぐに俺たちに気がつき、強制デュエルを仕掛けてくる。

 

「デュエルになればこっちのものぉ!ハノイのプログラムは治療法があるとはいえ、逆に言えば治療しない限り昏倒状態にできるんだぜ!」

 

 ハノイのプログラムをどういうルートか手に入れたのか?……負けなければ良い話だ。

 

「財前!そっちは任せた!」

「……藤木君、直ぐに終わらせるからそれまで耐えてて」

 

「「「デュエル!!!!」」」

 

 

 ???LP4000

 VS

 藤木 LP4000

 

 

「ボクのターン!モンスターをセット、そして永続魔法《グレイドルインパクト》発動!エンドフェイズにはいって、《グレイドルインパクト》により《グレイドル・スライムJr》を手札に加える」

「俺のターン!ドロー!」

 

 グレイドル……相手モンスターのコントロールを得る能力を持つが、この手札なら……。

 

「俺は、《フォトンスラッシャー》を特殊召還!そして、《切りこみ隊長》を召喚し効果で手札から《HCエクストラソード》を特殊召還!」

 

 フォトンスラッシャー 攻撃力2000

 切りこみ隊長 攻撃力1200

 エクストラソード 攻撃力1000

 

「《フォトンスラッシャー》と《エクストラソード》でエクシーズ召還!《機甲忍者ブレード・ハート》!エクシーズ素材となった《エクストラソード》の効果でブレードハートの攻撃力を1000上げる!」

 

 機甲忍者ブレード・ハート 攻撃力2200→3200

 

「《ブレードハート》の効果により、エクシーズ素材を取り除き二回攻撃の効果を与えてバトルだ!《切りこみ隊長》でセットモンスターに攻撃!」

 

 切りこみ隊長 攻撃力1200

 VS

 グリズリーマザー守備力1000

 

「《グリズリーマザー》の効果で《グレイドルイーグル》を特殊召還!これでお前の攻撃は届かな……」

 

 グレイドルイーグル 攻撃力1500

 

「それはどうかな?《ブレードハート》で《グレイドルイーグル》を攻撃するとき、手札から速攻魔法《ハーフシャット》を発動!《グレイドルイーグル》に戦闘耐性を与えて攻撃力を半分にする!」

 

 グレイドルイーグル 攻撃力1500→750

 VS

 ブレードハート 攻撃力3200

 ×2

 

「なっ、うわぁぁ!」

 

 ???LP4000→0

 

「……《禁じられた聖槍》を使うまでもなかったか」

 

 ふと横を見ると、財前のデュエルも終わっていた。

 

「ふっ……貴様らなかなかやるみたいだが、俺は有象無象とは違うぞ……さあ、勝負……」

「する必要はない」

「「え?」」

 

 今のデュエルのうちに草薙さんがハッキングをしてくれた。やってみたら思ったより杜撰だったらしい。

 

「財前、ログアウトするぞ」

「あ、うん」

 

 xxxx

 

 セキュリティが正常化すると、警備ロボが勝手に動き動物を収納、及び客の保護をしてくれた。

 

「……今日はごめんね、こんなことに巻き込んじゃって」

「いや、お前が悪いことじゃない。気にするな」

「すまない、藤木君。今回も葵を守ってくれた見たいで」

「いえ、大したことはしてないです」

 

 財前と事前に話して俺が正常化させたことは話さないことにした。対外的にはシステムの自動修正によるもの、ということになっている。

 

「財前」

「「え?」」

 

 二人が反応する。

 

「……葵、今日は色々あったが楽しかった。また誘ってくれ」

「……うん。また遊びましょう、遊作君」

 

 xxxx

 

「遊作、結構いい感じじゃないかお互いに名前で呼び会うなんて」

「?苗字が同じだから名前で読んだだけで、向こうもそれに合わせだけだが……」

「……遊作、今度恋愛……いや、青春映画でも見てこい」

 

 


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