武器名までは考えたんですけど技名やスペルは流石に厳しかった・・・
それでは本編どうぞ!
時刻は6時40分になり、僕のアバター「カナタ」は約束の始まりの村のショップを目指し出発した。
僕が今いるエリアから始まりの村へは街から街へのワープを使っても5分はかかる。
そのため僕は、時間に余裕はあるが少し急ぎ目に始まりの村を目指した。
始まりの村に到着し、僕はショップを目指した。
その途中、僕は大事なことを思い出した。
(あれ・・・そういえば2人のプレイヤーネーム聞いてない!)
ネトゲは自由度が高い分トラブルになるとかなりめんどくさいことになる。
そのためプレイヤーの間ではあまりリアルの話をしない事が暗黙のルールとなっている。
宇田川さんには僕のアバターの特徴を伝えてあるので2人が僕を見つけてくれるのを祈るしかない。
そう考えながら僕はショップに到着した。
待ち始めて5分後。
僕の前に死霊魔術師の女の子のアバターが歩いてきた。
「失礼ですが、もしかして九条さんですか?」
「はい。宇田川さんですよね?」
「はい!えっとこっちの世界じゃあ聖堕天使あこ姫って名前だから!」
「わかりました。僕はこっちの世界ではカナタって名前でやってます。そういえば白金さんは?」
「りんりんならもう少しで来るはずだけど、あっ!いた!おーいりんりーん!」
宇田川さんのアバターが手を振った。
すると煌びやかな服装の魔法使いがこちらに走ってきた。
「こっちの世界でははじめましてですね九条さん。私はこっちの世界ではRinRinって名前でジョブは魔法使いをしています。今日は協力してもらってありがとうございます!」
・・・あれ白金さんってこんなに喋ったっけ?
「ええ・・・よろしくお願いします。白金さんもNFOやっていたんですね。」
「はい。あこちゃんともこの世界で初めて会って、一緒にプレイしていうちに仲良くなったんです。今日はあこちゃんが前からやりたいって言っていたクエストなんで一緒に頑張りましょう!」
「はい!頑張りましょう!」
「2人ともー!早く行こーよー!」
2人のことはあこ姫さんとRinRinさんと呼ぶことにして僕達はクエストの発注場所に向かった。
今回のクエストは三人以上が最低条件のクエストで、森に住む三つ頭の大蛇を倒してその牙を持ってきて欲しいというクエストだった。
三つ頭の大蛇こと「イービルスネーク」は、三つの頭で噛みつきや毒攻撃を仕掛けてきてたまに装備を腐敗させるブレスを吐いてくる。
僕は昔、このクエストをやったことがあるがかなり難しいボスだ。
これをマルチでやるのでおそらく難易度も上がっているはずなので注意して戦わなければならなさそうだ。
戦い方を考えているとRinRinさんが話しかけてきた。
「もしかしてカナタさんはあの両手剣使いのカナタじゃないですか?」
「でもりんりん?カナタさん片手剣装備しているけど?」
「はい。メインは両手剣ですけど今は片手剣を鍛えようと思って片手剣を使っているんです。」
僕は昔、このゲームのイベントで大型のドラゴンをどれだけ早く倒せるかというランキングイベントに参加して見事2位に入った。
1位の人は全身真っ黒の革コートの二刀流使いで僕と0.5秒の差で優勝した。
この日から僕は「両手剣使いのカナタ」として少し有名になり、周りから色々と言われるのが面倒なので片手剣と胸部アーマーと篭手を付けている。
「でも今回かなり強いと思いますけど。慣れていない武装で大丈夫ですか?」
「ボスは1度違うクエストで戦ったことがあるので攻撃パターンはわかりますし、この片手剣もメインの両手剣と同じぐらい強いので後は連携次第でなんとかなると思います。」
「そうだよ!あこ達の連携ならどんなボスでも倒せるよ!」
こんな感じで雑談しているうちにボスのエリアに到着した。
やはり前に戦った時より体力が多い。
2人には道中攻撃パターンを教えてあるのでどうにかなるだろう。
僕は片手剣「ガルムソード」を構え、イービルスネークに立ち向かった。
戦闘開始から15分が経過した。
2人との連携があってか、イービルスネークの体力は残り10%程になっていた。
イービルスネークが怯み、後ろへ下がった。
「よーし!最後はあこの最強技で決める!」
そう言ってあこ姫さんが詠唱を始めた。
名前はわからないが詠唱の長さからおそらく特大魔法を使うようだ。
するとイービルスネークの頭があこ姫さんに向き、大きく息を吸うモーションを始めた。
(あれは・・・腐敗ブレスの動き!)
特大魔法の詠唱中はダメージを受けるか詠唱を止めないと動くことが出来ない。
あこ姫さんもモーションに気づき、詠唱を止め、回避行動をとろうとするが、
(あれでは・・・間に合わない!)
そう思った時には僕はアバターをあこ姫さんの前に出して防御行動をとっていた。
腐敗ブレスが吐かれ、体力は残ったものの、片手剣、篭手、胸部アーマーは腐敗状態になっていた。
腐敗状態の装備は付けているだけで耐久値が激しく減り始め、使い物にならなくなる異常状態だ。
装備を外せば耐久値の減りは止まり、鍛冶屋で修復できるのだがイービルスネークのターゲットは明らかこちらに向いている。
まずいと思ったその時RinRinさんがイービルスネークの一つの頭に火炎魔法を放った。
「タゲはこちらで引き受けるので、あこちゃんとカナタさんは回復を!」
「う、うん!カナタさん大丈夫?」
「はい・・・装備は予備がありますので。」
「ごめんなさい・・・あこが特大魔法を放とうとしたばっかりに・・・」
「いえ、気にしないでください。それとあの蛇の行動には少しイラッと来ました・・・」
「カナタさん!?」
「少し本気を出します!」
そう言って僕は腐敗した装備一色をストレージに直し白の革製のロングコートと両手剣「純銀剣クラレント」を装備し、ターゲットを集めているRinRinさんのところへ向かった。
RinRinさんのところへ向かうと流石に時間をかけすぎたのか体力は少なくなっていた。
「すみません、お待たせしました!とりあえず回復を!」
「りんりん!回復魔法かけるから少し下がって!」
「はい!ありがとうございます!」
回復をあこ姫さんに任せて僕は愛剣をイービルスネークに向けて振るっていた。
RinRinさんが回復した頃にはイービルスネークの体力は残り4%になっていた。
「あこがバインドをかけるんで2人でとどめさしちゃって!」
そう言ってあこ姫さんはバインド魔法を唱え、イービルスネークの動きを止めた。
「私がアシストするのでカナタさん頼みます!」
RinRinさんが高火力魔法でイービルスネークの体力を削る。
「これで止めです!」
僕は愛剣を弱点である真ん中の首の付け根に刺した。
するとイービルスネークは断末魔の叫びを上げてポリゴン状になって消滅した。
「いやったぁ!」
「ふぅ・・・」
「お疲れ様です。カナタさん、あこちゃん!」
僕達はピンチになりながらも何とかイービルスネークを討伐した。
イービルスネークを討伐し、依頼主に報告するための帰り道、行きと同じように話しながら向かっていた時だった。
「ねぇ・・・りんりんあれって!」
「どうしたのあこちゃん?」
「どうしました?え?あれは!」
そこには、滅多に出てこない黒い毛並みでモフモフの体と翼が特徴のレアモンスター「ファーリドラ」がいた。
ファーリドラは他のモンスターに比べてかなり弱いのだが滅多に出てこないうえに逃げ足がものすごく速い。
しかし、倒した時にドロップする「ファーリドラの毛皮」は最高レア防具の素材の一つで売却価格は頭一つ抜けている。
「よし・・・ここはあこが!」
「・・・待ってあこちゃん。あのファーリドラ、こっちに近づいてきてるけど?」
「えっ?嘘?」
ファーリドラは2人を無視してこちらの方に近づいてきた。
すると僕の画面に『ファーリドラが友好的な眼差しを向けている』と出てきた。
「これってもしかしてテイムチャンス!?」
テイムチャンスとはたまに敵モンスターが仲間になるチャンスの事だ。
主に猫や狼、コウモリなどの弱めのモンスターにテイムチャンスが起こりやすいのだがまさかこんなレアモンスターにまで出るとは思わなかった。
「ファーリドラのテイムチャンスなんて初めて見た・・・!」
「カナタさん!頑張ってください!」
「は、はい・・・」
テイムするにはそのモンスターの好物をあげる必要がある。
他のモンスターならわかるのだがなにせファーリドラに会うこと自体初めてで好物などは聞いたことがない。
「・・・迷ったら負けだ!これでどうですか?」
悩んだ末、僕が選んだのは始まりの村で買ったビスケットだった。
「・・・カナタさん。流石に人の手で作られた物は食べないんじゃあ。」
『ファーリドラが仲間になりました!』
「嘘ぉ!テイムできてる!」
「おめでとうございます!カナタさん!」
「嘘だろ・・・本当にテイムできてしまうとは・・・」
あげた僕が一番びっくりした。
「カナタさん。その子の名前どうするの?」
テイムできたらまず名前をつけなくてはいけない。
考えていなかったのでとても悩んでいるとRinRinさんが提案してきた。
「あの、その子の名前ルナってどうでしょうか?ここからだと月が綺麗でその子の顔が良く見えるんで。」
「うん!いい名前だと思うけどカナタさんはどう?」
「はい、良いですね!今日からこの子はルナです!」
新たにファーリドラのルナが仲間に加わり、依頼主に報告を済ませに行った。
「2人ともありがとう!このネックレスカッコイイから欲しかったんだ~」
「お役に立てて何よりです。」
「うん、良かったねあこちゃん。」
報告が終わり、クエスト報酬の大蛇の牙のネックレスを貰ってご満悦なあこ姫さんに2人は笑って返した。
「そうだ!カナタさん、あこ達とフレンドになろうよ!」
「僕は構いませんけどRinRinさんはどうですか?」
「はい、こちらからお願いします!」
2人とフレンド申請を交わし、僕は先にログアウトさせてもらった。
NFOをログアウトすると一気に疲れが押し寄せた。
イービルスネーク相手に苦戦したからだろう。
夕飯を食べる気力も残ってないためそのまま隣のベッドにダイブした。
(白金さん達との連携良かったな。ソロでやるより楽しいかも・・・)
そう考えながら、僕の意識は夢の中へ落ちていった。
今回出てきたファーリドラのルナの名付け親は僕の師匠にあたる人につけてもらいました。
けどまさかここまで長くなるとは思わなかった!
次回はやっと4人集まります!奏多はいつになったら燐子のピアノを聴けるのだろう!