無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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次に「秋時雨に傘を」を書くに当たって今回はそれとは全く関係ない番外編となります。
今回のメインはタイトル通り奏多とリサです。作者の策略によって同じバイトをしている2人の何気ない一時を書こうと思いました。(なおリサには奏多に対しての恋愛感情はありませんので浮気じゃないことをあらかじめお知らせします)
てか奏多は女子に対しての抗体ないから恋愛系はもっぱらアウトだからそもそも恋なんてできるのかねぇ・・・(と言いながらも恋愛小説書いてる人)
なお時系列的には奏多がバイト始める前辺りの『ハタラクムショク』の前日譚からそこからのリサとの交流を書こうと思います。
ということで今回だけ「無色と灰色の交奏曲」改め「無色と陽だまりの交奏曲」始まります!


番外編 無色と陽だまりの交奏曲

『アルバイト』

それは全国の高校生が部活動の次にやることが多い(かもしれない)ことである。

僕はこの街に来て初めてアルバイト募集の検索をした。

前の学校では部活もアルバイトもしてこなかった。

部活もアルバイトも人と関わったり話したりすることが苦手なためいつも帰宅してネトゲばかりしていた。

そんな僕が何故バイト募集の検索をしているのかと言うと親からの仕送りが微妙に足りないのだ。

親父は会社の都合で僕に家を任せて大阪まで稼ぎに行っている。

そこから仕送りをしてもらっているのだが1ヶ月の光熱費や水道代、食費などを計算した結果このままではどれだけ節約しても苦しいことがわかった。

そのためバイトをせざるを得なかったのだ。

 

 

 

「できれば近くで・・・あまり難しくないこと・・・」

そんなことを考えながら検索しているとこの前行ったライフハウスのバイトやあの美味しかったコーヒーの羽沢珈琲店などがあった。

行き先がわかるところへ行ってもよかったのだが考え直す。

顔を知っている人が来るのもなんか困るし珈琲店やライブハウスのアルバイトはかなり難しいのではないだろうか。

考えていると腹の音がなる。

気がつけばもう夕飯時である。

「・・・なんか買いに行くか。」

いつも行っているスーパーまで行くのも面倒なので今回はコンビニで済ますことにした。

財布とスマホを持って僕はまだ少し寒い外へ出た。

 

 

 

 

コンビニに着くと人はかなり少なかった。

平日の夜なのでそれもそうだろう。

中にいたのは早帰りのサラリーマンや子連れの親子ぐらいだった。

適当におにぎりと緑茶をかごの中に入れる。

めぼしい商品がないか見回ると茶髪の恐らく僕と同じ年頃の女子が商品の補充をしていた。

(コンビニバイトか・・・)

コンビニでアルバイトも悪くないかもしれない。

多少接客もするが補充や注文、掃除ぐらいなら僕にもできるだろう。

レジに商品を持って行って会計をする。

その間に隣を見ると「アルバイト募集!学生OK!」と書かれた張り紙があった。

時給や時間を見ると部活に行く気がない僕には丁度いいかもしれない。

「あ、あの・・・すみません。」

「はい、どうされました?」

「アルバイト・・・募集しているんですよね。」

「お、もしかしてアルバイトの募集見てくれたの?どうかな、人手が足りなくて欲しかった所なんだよ~」

その店員のネームプレートを見るとその人は店長さんらしい。

人当たりもよく、優しそうだ。

「は、はい・・・ですけど具体的にどんなことをするのか・・・」

「レジ打ちとか商品の補充、あとは掃除とかかな~制服の貸出もあるし、ほかの人達も優しい人ばかりだからさ。無理に来てってわけじゃないけどバイトやったことないんだったらやりやすいと思うよ?」

「・・・はい。やってみます・・・」

「よし、だった履歴書渡すからそれに記入して今度持ってきてね。面接も少しするけど多分入れるから。」

店長さんがレジの下から履歴書を取り出して商品の入った袋と一緒に渡してくれた。

それから僕は面接を通してこのコンビニで働くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、今日からアルバイトとしてみんなの仲間となる九条奏多くんと青葉モカちゃんです。みんな、二人はまだまだ知らないことも多いと思うから色々教えてやってくれ。」

店長から紹介を受けて拍手をもらう。

店員とアルバイトを含めると17人。

確かにこれでは24時間営業のコンビニでは厳しいのかもしれない。

それで僕の隣にいるのほほんとした顔をした女子は僕が履歴書を出しに行った時にたまたま一緒に提出した子で僕より一つ下の高一らしい。

「青葉モカでーす。精一杯頑張りまーす。」

「九条奏多です・・・よろしくお願いします。」

(やばい・・・かなり緊張する・・・)

人が多いためかなり緊張する。

そんなことお構い無しに店長は話を続けた。

「それじゃあ・・・今井さん、2人に色々教えてあげて。」

「あ、アタシですか?わかりました!」

この人はこの前見た茶髪の子だ。

この前は後ろ姿だったからわからなかったが見た目は少々ギャルっぽい雰囲気がある。

「九条さんでしたっけ~これからもよろしくお願いしま~す。」

「は、はい・・・よろしくお願いします。」

(これ、僕は本当に大丈夫だろうか・・・)

この期に及んで僕はバイトをすることにかなり心配し始めた。

 

 

 

 

「えっと、アタシが2人の教育係的な立場になった今井リサです!九条奏多くんに青葉モカちゃんだっけ?よろしくね!」

「よろしくお願いしま~す。」

「よ、よろしくお願いします。」

ということで今井さんによるレクチャーが始まった。

レジの説明や商品の陳列方法などをメモを取りながら覚える。

「・・・ってことで内容とかはだいたいわかったかな?」

「私は大丈夫で~す。」

「僕もだいたいわかりました。」

「よし!覚えが早くて助かる!あとアタシが思うに一番大切なのは声だと思うんだよね~」

「声・・・ですか?今井さん、それって・・・」

「挨拶の事ですか~?」

「そう!挨拶!挨拶がしっかりしてないとお客さんも来ないでしょ?だから二人共挨拶だけはしっかりしてね。」

「はい、了解です。」

「わかりました~」

「それじゃあやってみようか。」

「・・・へ?」

僕は初め今井さんがなんと言ったかわからなかった。

「だから、挨拶やってみようか!アタシに続いてね、いらっしゃいませー!」

「い、いらっしゃい・・・ませ・・・」

「はい、声が小さい!次はモカ!」

「いらっしゃっせ~」

「も、モカはしっかり挨拶する~!次から2人ともアタシがいる時はしっかりチェックするからね!」

「は、はい・・・」

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

これが今井さん改めリサとの出会いだった。

このバイトを機に色々変わった。

リサのお陰で僕は話すことにも慣れ、地の文を読まれてまで呼び方をリサに直された。

それにリサと会わなければRoseliaに入るどころか自分の才能ですら気づけなかったかもしれない。

もしかしたらリサがいなければ僕の人生は全く変わらなかったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・た」

 

 

 

 

 

僕は僕なりに彼女に感謝することが多い。

 

 

 

 

 

「・・・・・・た?」

 

 

 

 

 

バンドの練習の時も彼女に助けられることが多いし

 

 

 

 

 

「お・・・・・ータ?」

 

 

 

 

 

みんなは2人がいなければダメだというけど正直Roseliaには僕よりリサの方がいないと困る

 

 

 

 

 

「もしもー・・・ータ?」

 

 

 

 

 

だからいつかリサに感謝を伝えればいいのだが・・・

 

 

 

 

 

「ねぇソータ!」

「うわっ!」

気がつくとリサが少しふてくされた表情でこちらを見ていた。

「り、リサ・・・どうかした?」

「どうかしたじゃないよ!そろそろシフト上がる時間だよ!何度呼びかけても返事ないんだもん、心配するよ!」

「そ、そっか・・・ありがとリサ。」

時計を見るとあと3分でシフトが上がる時間だ。

昔のことを考えていたせいで全く気が付かなかった。

「もぉ・・・最近のソータなんか気が緩んでる気がするんだけど・・・」

「みんなを信用してるから・・・かな?」

「・・・まぁいいや!ソータが戻ってきてくれたことが嬉しいし!」

リサと僕が笑っていると丁度モカが入ってきた。

最近Roseliaのメンバーと炎とモカだけは下の名前でタメ語で話せるようになっている。

「おお~お邪魔でしたか?」

「違う違う!そんなことないって!」

「そ、そうだよ!て言うかソータにはもう大切な人いるし!」

「い、いないって!リサ?まだいないから!」

「ほほぅ・・・リサさん、また後で聞いてもいいですか?」

「わかった、後でLINE送るから~」

「ちょ、リサ!?」

大切な人?

そんなものまだ居ないのに僕は全くわからない。

なぜリサはあそこであんな嘘をついたのだろうか?

「とりあえずリサ、時間だし上がろう。」

「そうだね、それじゃあモカ後はよろしく!」

「はいは~い、モカちゃんにおまかせで~す。」

そう言って僕とリサはコンビニを出た。

「り、リサ?さっき言ってた大切な人って誰のこと?」

「え?もしかしてソータ気づいてないの?」

頭の上に?が浮かぶ。

するとリサは呆れたような顔をした。

「ま、まぁいい。とりあえずソータまた明日ね~」

リサがそう言って自分の帰宅路へ向かった。

僕はリサが言ってたことを考えながら自分の家へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まさかソータがあんなに鈍感だったなんて。て言うか燐子も気づいてないような言い方してたし・・・ってことはあの2人全く気づいてない?それに他のメンバーもあの2人の様子に気づく様子ないし・・・あぁ!もう焦れったい!」

僕と別れた後リサがそう叫んでいたのに僕は全く気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




久々の番外編どうだったでしょうか?
多分次からは「秋時雨に傘を」をやると思いますが次に番外編やるとしたら友希那かあこか紗夜のどれかになると思います。
なお、奏多と燐子のいい関係は本人もリサ以外のRoseliaは全く気づいていません。
それでは次回お楽しみに~

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