無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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はい、前回の続きです。

早く書き終えてバンドリのランキング頑張ります!(ただいま5000位代)

では番外編ラストどうぞ。


番外編 多色と女優の狂想曲(後編)

次の日、俺は自分のクラスではなく隣のB組に顔を出していた。

 

目当ては昨日の放課後に友達になったこの学年唯一の男子生徒、九条奏多を尋ねに来たのだ。

 

放課後の職員室で母さんを待っている時に荷物を職員室に運んでいた奏多を少し手伝った後に話をしたらすぐに意気投合した。

 

その後少しだけ母さんと話をしたようだが母さんは彼をいい友達だと言ってくれた。

 

それで当の奏多は体調を崩して休みらしい。

 

彼は料理が上手いらしく、その手料理を今日食べに行こうかと考えていたのだが・・・

 

代わりに奏多のバンドメンバーだという2人と昼休みに屋上で話すことになった。

 

とりあえずこれで奏多のことについて色々知れるだろう。

 

・・・まぁ、そこから色々な問題に巻き込まれたのだがそれは別の話だ。

 

とにかく俺は昼休みを待つにもその間にはHRなり授業がある。

 

そして事件はそのHR後に起こったのだ・・・

 

 

 

 

 

「・・・はい、それじゃあHRはこれで終わります。1時間目は移動教室なので素早く移動しましょう。」

 

担任の先生がそう言った。

 

そのためわらわらとクラスメイト達が準備したものを持って教室から出ていく。

 

俺もその流れに乗って出ようとした時だった。

 

「・・・あ、ルーズリーフ忘れてる。」

 

ノートではなくルーズリーフ派の俺はルーズリーフ用のファイルや筆箱等を持っていながらもルーズリーフを机の中に入れっぱなしなことを思い出した。

 

勉強は苦手だが提出物や授業態度さえなんとかしておけば赤点は免れる。

 

しかしルーズリーフがなければ板書ができない。

 

ファイルなら後でルーズリーフを挟めばいいのだが肝心のそれがないのは厳しいので取りに戻ろうとする。

 

すると流れに逆らおうとしたせいか誰かの足が引っかかった。

 

「うわっ!!」

 

咄嗟のことでバランスが取れない。

 

しかし幸運なことに俺がいたのは列の最後尾あたり、倒れるのは自分だけで済む!

 

・・・と思った矢先、目の前に誰かがいた。

 

こうなってしまった以上俺は何もすることが出来ない。

 

とりあえず倒れる瞬間声だけ掛けてみた。

 

「危な・・・!」

 

「え・・・?きゃっ!」

 

二人揃って倒れる。

 

なんとかその子に乗っかからないように手に持っていたものを投げ捨てて両手を下に構えようとする。

 

そして二人揃って盛大にコケた。

 

なんとか両手両膝をついて四つん這いになるように倒れたのでその子にのしかからなかったが両手両膝に衝撃が走ってじんじんする。

 

とりあえずその子に声をかけてみた。

 

「いつつ・・・大丈夫・・・か・・・?」

 

「ふええ・・・こ、こっちこそごめん・・・?」

 

ぶつかった相手は花音だった。

 

そして奴は最悪のタイミングに現れた。

 

「花音?何かあった・・・の・・・?」

 

金髪のすらっとした人、彼女は同じ委員会の白鷺千聖その人だった。

 

「陰村くん?何をしているの?」

 

昨日話した時以上に低いトーンで話しかける。

 

その低さでわかった・・・俺、彼女に絶対適わない・・・!

 

「え、えっとこれは・・・不慮の事故で・・・」

 

「不慮の事故でそうなるかしら?」

 

確かに花音は倒れていて俺はその上から四つん這いになっている。

 

傍から見ればそう思われてしまうだろう。

 

俺だって多分そう思う。

 

とりあえずこのままでは絶対説得力がないので花音の上からどいた。

 

花音は少し顔を赤らめながらも弁解してくれた。

 

「ち、違うの千聖ちゃん!これは本当に事故で・・・」

 

「花音は少し落ち着きなさい、私、彼にしっかりと話をしないといけないから。」

 

花音に対しては笑顔を見せるがその笑顔がめちゃくちゃ怖い。

 

花音も「ふええ・・・」と言って下がってしまった。

 

そして俺は蛇に睨まれた蛙みたいに動かなくなっていた。

 

「とりあえずあなた、花音に言うことがあるんじゃないの?」

 

「は、はいっ!ま、松原さん本当にすみませんでしたっ!」

 

「ええっと・・・うん?」

 

花音が少し引き気味に返事を返す。

 

だってこれぐらいしないと目の前の御方が何するかわかんないし!

 

「・・・まぁいいわ、今回は不慮の事故ってことにしてあげる。けど次に花音に怪我でもさせたらただじゃおかないからね。それと・・・」

 

「それと・・・?」

 

「陰村くん、彩ちゃんより危険なにおいするし目をつけておくから。ちょうど委員会も同じだし。」

 

この瞬間、俺のハイスクールライフにお目付け役が着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ってなことがあったんだよ。」

 

「そっか・・・入院してる間にそんなことが・・・でもそれ原因明らかに炎じゃん。」

 

炎の話を聞き終え、率直に感想を言う。

 

炎は軽く溜息をつきながらグラスに入ったコーラを飲んだ。

 

「・・・でもあれは不慮の事故だったんだよ。たしかに俺は少し鈍臭いけどさ・・・」

 

「少しじゃないと思うけど・・・」

 

たしかに炎は所々で何かをやらかすタイプの人だ。

 

天然バカとも言える炎はちょくちょく委員会の仕事を忘れるし教科書や弁当などを忘れることもしばしばある。

 

まぁそれならお目付け役がついても仕方ないだろう。

 

でも僕は少し疑問が湧いた。

 

なら何故、炎はその天敵である白鷺さんのいる芸能事務所なんかに行っていたんだ?

 

「ねぇ、なんで炎は芸能事務所なんかに行っていたんだ?確か今日怒られた原因それだったよね。普通あそこ関係者以外立ち入り禁止だろ?」

 

「あぁ、前にも言ったけど芸能事務所のお偉いさんに気に入られたんだよ。千聖が早退した時、あいつ机に台本を忘れてよ、花音にバイトがあるから私は届けられないから届けてくれって言われてさ。ぶつかった時の謝礼もしっかり出来てなかったから仕方なく持っていったらたまたま受け付けに事務所のお偉いさんがいて話したら気に入られたんだ。」

 

炎が普通にそう言った。

 

しかし初対面の、しかも年上のお偉いさん相手によく普通に話せるな。

 

これも炎の、天性の才能だろう。

 

人懐っこい犬みたいなやつだ。

 

「そこでだ、今度またその事務所に用があるんだけどこの日着いてきてくれねぇか?今日みたいに千聖になんか言われた時の弁護役が欲しいんだよ。」

 

炎が自身のスマホのカレンダーを見せる。

 

その日を確認したがその日は・・・

 

「あーごめん、その日燐子と出かける予定入ってる。」

 

「え?まじ!?ズラすの難しそう?」

 

「うん・・・1度ズラしてこの日にしたからもう一度ズラすのはキツイかな・・・」

 

「そうか・・・なら仕方ないか。」

 

「というかそこに何しに行くの?聞いた感じ白鷺さんなんで炎が事務所に行ったのか知らなかったようだけど。」

 

「ああ、それは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多に『理由』を話してから日が経ち、4月6日。

 

俺は芸能事務所の一室に来ていた。

 

そこには俺以外に彩、イヴ、日菜、麻弥の千聖を除くPastel*Paletteのメンバーと補佐係のスタッフさんがいた。

 

事前の打ち合わせで『計画』はバッチリ進行中、千聖にここにちまちま来ていることはバレてしまったが多分この計画まではバレていないだろう。

 

すると彩が話しかけてきた。

 

「・・・ねぇ、ホントに炎くん来て大丈夫だったの?千聖ちゃんには色々言われているのよく見るし・・・」

 

「正直にいえば・・・大丈夫じゃないかもしれない。けどあいつは俺の事をしっかり見てくれてるし、手助けもちょくちょくしてくれるからそのお礼ぐらい伝えないと。」

 

「カゲローさんとチサトさんが話しているのをよく学校で見てます!」

 

イヴがそう言った。

 

イヴには初対面の時、名乗ったら『陰村炎』から村を抜くと『陰炎(かげろう)』と読めるので

 

「あなたはニンジャの末裔なんですか!」

 

と言われたのをきっかけに『カゲロー』と呼ばれている。

 

「へぇー、炎くんと千聖ちゃんってそんなに仲良いんだー!」

 

「日菜さん、多分仲がいいってわけじゃないと思うんすけど・・・」

 

「『喧嘩するほど仲がいい』って言うし!」

 

喧嘩というよりかは一方的な威圧力なのだが・・・

 

すると監視役の人からすぐに千聖が来ると連絡が来た。

 

全員が千聖が来るのを待つ。

 

するとノックの後、ドアノブを捻る音がした。

 

「・・・失礼します、白鷺千聖入りま・・・」

 

「「「「千聖ちゃん、お誕生日おめでとう!!」」」」

 

全員がクラッカーを鳴らす。

 

千聖は面食らっているようだった。

 

「み、みんなありがとう・・・!って、陰村君までいるの!?」

 

すると突然背中を押された。

 

押した犯人は日菜のようだ。

 

「なんか炎くんが言いたいことあるんだって!」

 

「え?ちょ!・・・まぁいいや。」

 

「い、いいんだ・・・」

 

彩がツッコミを入れるが軽く流して千聖に話しかけた。

 

「え、えっと・・・まずは誕生日おめでとう。学校とかだとめちゃくちゃ迷惑かけてるけど、それでも俺は感謝している。自分が鈍臭いから何をしでかすかわからないのにそれを見ていてくれているのは俺からしたら本当に感謝しかないんだ。だからほんとうにありがとな!」

 

千聖に精一杯の感謝の言葉と笑顔をみせる。

 

すると千聖はクスッと笑うと話し出した。

 

「たしかにあなたの相手は疲れるけど、その分楽しませてもらっているわ。これからもよろしくね、陰村くん。」

 

周りから拍手が起こった。

 

そこからはプレゼントを渡したり写真を撮ったりと色々した。

 

・・・まぁ、カメラマンは俺がやったのだが。

 

そしてパーティーも終盤に差し掛かってきたところだった。

 

「そうそう!4月の初めに私変な夢見たんだけどさ、なんかAfterglowのモカちゃんが神様になってて私モカちゃんが作った世界で悪党のボスやってたんだ〜」

 

「何それ〜変な夢〜!」

 

日菜がお腹を抱えて笑う。

 

・・・少し違うけど俺もそんな夢見たぞ?

 

「あー、俺もそんな夢見たー。魔法少女を相手に戦う敵のボスの下っ端してた。それでそのボスがさ〜名前が酷くてさ〜確かローズチサ・・・」

 

そこまで来て何かを感じとって話を止める。

 

隣を見ると千聖がものすごい笑顔を見せていた。

 

()()()()()()()()()を・・・

 

「「ひぃっ!」」

 

俺と、普段千聖に怒られることがある彩が怯えた声を上げる。

 

周りは「あちゃー・・・」とこちらを見ていた。

 

「名前を笑ったわね?」

 

「・・・はひ?」

 

「あの名前・・・結構気に入っているんだからっ!」

 

すると女の子が出すものでは無い拳が頬目掛けて飛んできた。

 

それを俺は交わすことが出来ず、直撃した。

 

「ちょっ・・・なんでさぁぁぁぁ!!」

 

・・・こうして千聖の誕生日パーティーは盛大な拳と共に幕を閉じたとさ。

 

……To be continued




どうでしたでしょうか?

とりあえずしばらくは番外編はなさそうなので・・・

次回から再開するNeo-Aspectもお楽しみ!

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