無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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ぱっと浮かんだ突発性のifストーリーです
息抜きがてらにやるので無窮の狭間に突っ込んでます

なお、最初に言っておきますが、前半重いですがこれネタストーリーです()


ifストーリー 未来の模様

時はガールズバンド全盛期から数年たった2023年

 

5年経った今でもその人気は衰えることを知らず、色々なバンドが生まれては消滅するということを繰り返していた。

 

RoseliaもFWF出場からそこで頂点を勝ち取ったものの、友希那の『ここが私たちのゴールじゃない。ここからさらに自分たちの音楽に磨きをかける』の言葉により活動自体は続けていた。

 

しかし高校3年生がほとんどのRoseliaはそれぞれの進路のため音楽だけにつぎ込むことができず、一時的な活動休止しざるを得ない状況に追い込まれていた。

 

友希那、紗夜、リサ、燐子の4人は進学、僕は才能を見込まれてとある事務所のマネージャーとして就職した。

 

そこから活動を再開し、万全の状態ではなかったもののなんとか2回目のFWF優勝を取ったものの、そこから先の音楽の祭典『ワールドミュージックフェスティバル』、略してWMFであまり良い結果が出せなかった。

 

また初心に戻って自分たちの演奏を見直す中、燐子がウィーンへ留学を勧められていることを告白した。

 

みんなのために残ろうとする燐子を友希那は『行ってきなさい。そしてRoseliaのために心身ともに強くなって帰ってきて』と告げた。

 

さらに『Roseliaはこれからしばらく活動を休止するわ。それぞれが、それぞれのなすべきことをやり遂げて強くなってからまた集まりましょう』とみんなに告げてその時を持ってRoseliaは無期限活動休止となった。

 

そしてその一年後に燐子がウィーンへと旅立ち、Roseliaのみんなは己のため、Roseliaのため、また再会するためにそれぞれの道を歩み始めた・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・そして今。

 

Roseliaが無期限活動休止してから3年がたった今、燐子が「これより日本に帰国します」との連絡があったため、1度Roseliaで集まろうとのことでとあるバーで待ち合わせることになった。

 

羽沢珈琲店や件のファミレスでも良かったのだが、あこも成人となり『あこ、かっこいいバーで待ち合わせしたいです!』とのことでバーになったのだ。

 

場所は新宿駅周辺。

 

少し離れたところにあるお店だ。

 

前に上司に連れていってもらったことがあるお店で、店主1人で経営していて店は狭いが静かでお酒が美味しいと評判のあるお店らしい。

 

あこがバーを希望した時、この店を勧めるとすぐに可決されたので予約をとって貸切にしたのだ。

 

さて、そろそろでなければ遅刻する時間である。

 

相変わらずの服のセンスの僕は、昔来ていたパーカーによく似たパーカーを着て出発の準備をしていた。

 

すると玄関に1匹の猫が寄ってきた。

 

すっかり大きくなって態度もでかくなった我が愛猫、レインである。

 

「にゃん」

 

「うん、行ってくる。お前もまたみんなに会いたいのはわかるけど、今度またここに連れてくるからその時まで待ってて。」

 

「にゃぁ・・・」

 

「大丈夫、お前も立派なRoseliaのメンバーだよ。」

 

それだけ言って僕は玄関の鍵を閉め、バーへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新宿駅を出て、バーに着くとそこには翡翠の髪をした女性が立っていた。

 

あの凛とした雰囲気、キリッとした風格、間違いない紗夜である。

 

「紗夜、久しぶり。」

 

「九条さん!お久しぶりです、すっかり雰囲気が変わられましたね。」

 

「紗夜も結構変わったけど雰囲気ですぐわかったよ。」

 

「九条さん、眼鏡をかけ始めたんですね。印象がガラッと変わっていいと思いますよ。・・・服装は昔と変わりませんけど。」

 

「僕がパーカー好きなのは昔からだよ。さ、入ろうか。」

 

そう言って店に入る。

 

店主と軽い挨拶を交し、適当なカクテルを選んで飲みながら今の状況を話し合っていた。

 

「紗夜そろそろ就職とか決めないといけない時期なんじゃない?」

 

「そうですね。おそらく今回湊さんからRoselia復活のことを言われると思います。なのでそのままRoseliaというバンドとして商売をしていくかどうかを考えている感じですね。九条さんの所はどうなんです?今はマネージャーをやっていらっしゃるのでしょう?」

 

「そうだねー今は色々なバンドを見て回ってるかな。前まであるバンドのマネージャーしてたんだけど時の波に乗れなくて解散しちゃってね〜・・・今の時代、ガールズバンド戦国時代みたいなことまで言われちゃってる世の中だからガールズバンドが結成されても他のバンドに押しつぶされちゃうことって珍しくないから。」

 

「そうですね、私も今の音楽状況はしっかりと目を通してますが、ほとんど聞きなれたバンドで新鮮味が足りてないような感じはするんですよね。」

 

「RASのみんなとかおっきくなっちゃったからねー、チュチュがプロデュースしてるのもあってか、今じゃ世界トップクラスの人気バンドだもんね。」

 

「あの人はどうも好きになれないんですが・・・確かにすごい人なのはわかります。」

 

「あはは・・・」

 

とまぁこんな感じに話しながらお酒が入るわけですよ。

 

すると突然扉が開いた。

 

「ふっふっふ・・・またせたな皆の衆・・・この3年間闇の力を蓄え続け・・・えっと・・・大人となって舞い戻った高位なる最強魔王!宇田川あこ!推参!」

 

「あこー、久しぶりー!」

 

「あ!奏多さんに紗夜さん!!!お久しぶりですっ!」

 

「う、宇田川さん・・・かなり背が伸びましたね・・・巴さんとはたまに会いますが、それと同じ位まで大きくなってませんか?」

 

「はい!気がついたらおねーちゃんより2センチほど小さいぐらいにまで成長してました!」

 

「お、男の僕より背が高くなってる・・・」

 

まぁ実は高校以来背が全く伸びなくて171cmなのだが、あこを見た感じだと、175cmぐらいある。

 

さすが巴さんの妹、伸びる素質はあったみたい。

 

「とりあえずあこも飲もうか。話聞きたいし。」

 

「はい!成人式以来お酒飲んでないですけど今日はじゃんじゃん飲むぞー!」

 

「宇田川さん、慣れずに一気に飲むと急性アルコール中毒になる可能性もあるのでゆっくり飲みましょう。」

 

「はーい!それじゃあ最初カシスオレンジってやつで!」

 

「わかりました。」

 

店主がカシスオレンジの準備をする。

 

紗夜も最初カシスオレンジだったし、女性ってなんかカシスオレンジ好きなイメージある。

 

あこが飲もうとした直後、2人の女性が入ってきた。

 

もう見てすぐにわかった。

 

友希那とリサである。

 

「やっほー!おっひさー!」

 

「友希那!リサ!久しぶりだね!雰囲気全然変わんないや!」

 

「久しぶりね、みんな。紗夜はすぐにわかったけどあこと奏多はかなり雰囲気変わったわね。」

 

「お久しぶりですっ!あこ、この中で一番大きくなりました!」

 

「ほんとだー!背がたかくなってる!」

 

「へへーん!」

 

「2人ともお久しぶりです。とりあえず座って飲みながら話しましょうか。」

 

「そうね。あ、それと燐子、今空港についてもう来るって言ってたわよ。」

 

「ホントに!早く会いたいなぁ・・・!」

 

「ソーター幸せオーラ出しすぎ〜!ソータは燐子といる時ずっと幸せそうだったんだから〜」

 

「りんりんがウィーンに旅立つ時にりんりんの前では泣かないくせに飛行機出た瞬間泣き出したのは面白かったですけどね。」

 

「それ言わないでください・・・」

 

「とりあえず飲みましょう。リサ、カシオレでいいわよね。」

 

「うん、マスターさん!カシオレ2つお願いしまーす!」

 

またカシオレかよ!

 

どんだけカシスオレンジ好きなんだよこの人たち!

 

まぁ、燐子が来るまでの間、楽しく談笑できればそれでいいか。

 

・・・と、そんなこと思っていたのが3分前の僕であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お酒は人を変えるとよく言われる。

 

アルコールを摂取することで気分が高揚し、普段見せない一面を見せてくるあれだ。

 

僕は生まれつきお酒に強かったせいかあまり酔っ払うことは無かったので、平常心を保つことが出来た。

 

しかし人は誰しもそんなお酒に強い訳では無い。

 

その影響がまっさきにでたのは予想通りというかなんというかあこだった。

 

しかもカシオレ一口でである。

 

「ふにぁ〜・・・気分が高まっていい気持ちぃ〜・・・」

 

「ち、ちょっとあこ!?いくらなんでも早くない!?」

 

「リサ姉が分身の術使ってるぅ〜・・・リサ姉いつから忍者修行始めたの?」

 

「いや、やってないから!」

 

「あこ、こんなにお酒弱かったのね。」

 

「予想通りというかなんというか・・・だよね、紗夜。」

 

紗夜に話を降った。

 

しかしそこに居たのは紗夜であって紗夜ではなかった。

 

「うー・・・っ、お酒足りません・・・マスター、今度は梅酒をおねがいします。」

 

「別に構いませんが、お客さんこれで5杯目ですがよろしいのですか?」

 

「だいじょぶれす、あとフライドポテトおねがいします。」

 

「生憎うちでは扱ってませんので・・・とりあえず梅酒の方ご用意させてもらいますね。」

 

「おねがいしらす」

 

紗夜お酒進むの早くないですか!?

 

みんな1〜2杯目なのにこの人もう5杯目だよ!

 

「さ、紗夜?呂律まわってないけど・・・本当に大丈夫?」

 

「だいじょぶといったらだいじょぶれす!それときいてくらさい、みらさん!うちのひなったらこのまえてれびにれてたんですけど・・・とてもかわいくてかわいくてひとにせられないくらいらんれすよ!」

(特別訳:大丈夫と言ったら大丈夫です!それと聞いてください、皆さん!うちの日菜がこの前テレビに出てたんですけど・・・とてもかわいくて人に見せられないぐらいなんですよ!)

 

「紗夜、崩れすぎてもはや何言っているかわかんないから!」

 

「らりって、そんらのひなのことにきまってるらないてすか!」

(特別訳:何って、そんなの日菜のことに決まってるじゃないですか!)

 

なんだろ・・・何言ってるか分からないのに紗夜がすごく日菜さんのことを伝えたがってるのはわかる・・・

 

てか紗夜の真面目キャラがお酒によっていとも簡単に崩れ去るとは思わなかった。

 

ちょっと引いてしまうほどである。

 

「と、とりあえずこれ以上崩れちゃったら燐子出迎えるのに対応できる人が減っちゃうから、僕達は少し抑え目にしよう!」

 

「そうね、今回みんなに伝えたいことあるわけだし。」

 

「よし!アタシ達だけでもしっかりしよう!」

 

そういきこんだ、そこまでは良かったのだけど・・・

 

いきこんだ2分後、もう1人の仲間もお酒によって崩れてしまった。

 

「へへ〜ゆきにゃ〜・・・ゆきにゃはアタシのもの〜・・・」

 

「リサ、ここで頬を擦り寄せないで。あなた、お酒弱いのにいきこんでもう酔ってるじゃない。」

 

「よってにゃいよ〜へへ〜ゆきにゃはかわいいにゃあ〜・・・」

 

こんな感じにずっとリサが友希那に頬を擦り寄せながらずっと頭を撫でたり膝にすり寄ったりして甘えている。

 

まるで猫である。

 

「このまま友希那にも倒れられたら困るな・・・」

 

「私なら大丈夫よ。お酒には強いみたいだから。それに私はRoseliaのボーカル、お酒程度で崩れてしまっては再建なんて夢のまた夢よ。」

 

「ゆきにゃぁ〜よそみしないでよぉ〜」

 

「はいはいわかったわよ。」

 

友希那よ、かっこいいこと言いながら撫でられて甘えられて満更でもない顔をするな。

 

こちらが踏み入れられなくなる。

 

すると扉が勢いよく開いた。

 

異国の服をまといながらも、なくなることの無い雰囲気と見慣れた黒髪、そしてこの温かさ。

 

間違いない、燐子である。

 

「お、遅れました!」

 

「燐子!おかえ 「りんりーん!おかえりー!」

 

僕がいうより早く、あこが燐子へと抱きついた。

 

大きくなったあこを受け止められるはずもなく、燐子はあこと一緒に倒れ込んだ。

 

「あこちゃん・・・久しぶりだね・・・なんか・・・おっきくなってる・・・」

 

「りんりんの匂いだぁ・・・久しぶりだぁ・・・」

 

「しろきゃねさん、おひしゃしぶりでしゅ」

 

「へへぇ〜ゆきにゃぁ〜」

 

「リサ、ちょっと離れてもらえるかしら。・・・こほん、久しぶりね、燐子。」

 

「みなさん・・・お久しぶりです。それと・・・ただいま、奏多くん。」

 

「うん、おかえり燐子。」

 

あこに離れてもらって燐子の手を取って立ち上がらせる。

 

半分ぐらい酔いつぶれてるが全滅前にあえて良かった。

 

「なんか・・・みんな変わっちゃったね。」

 

「主にお酒でね・・・」

 

「とりあえず後で宇田川さんと妹さんに連絡して迎えに来てもらおうかしら。リサは私が連れていくから。」

 

「そうだね・・・とりあえず燐子も飲もっか。聞かせてよ、ウィーンでの話。」

 

「・・・うん!」

 

燐子も席に座って注文(もちろんカシスオレンジだった)した。

 

最初はちまちま飲みながらウィーンでの出来事を話してくれていた。

 

僕も友希那(リサ、あこ、紗夜を1人で相手にしながら)も燐子の話を聞いていた。

 

留学中も連絡は取り合っていたので、あちらでどんなことがあったかは知っていたりするが、やはり本人の口から聞きたいものである。

 

しかしここは酒の場、どんどん燐子の様子が変わってきたのだ。

 

「それで・・・その先生自分中心でしか話しなくて・・・そこのキーは絶対押さなくていいのに押したがるし・・・あ、マスターさん、ビール追加で。」

 

「お、お客さん大丈夫ですか?これで9杯目ですが・・・」

 

「氷川さんが8杯で止まっちゃったんですから私が飲まないと・・・」

 

「ち、ちょっと燐子?飲みすぎは体に毒だよ?」

 

「これは私がやり遂げないといけないことだから・・・」

 

「なんの責任感!?」

 

そして燐子は出てきたグラスを手に取るとグイッと喉を鳴らせながら飲み続けた。

 

僕も友希那も唖然としている。

 

というかさっきから愚痴しか聞けてない!

 

燐子の闇がめちゃくちゃ出てきてる!

 

「燐子、その辺にしないと・・・」

 

「それでヨーロッパの男性と来たらすぐナンパして来るんです・・・私には大事な人がいるって言っても伝わらなくて・・・ううっ・・・」

 

やばい、今度は泣きに入ってきた!

 

燐子お酒で本性表わしすぎだよ!

 

というかめんどくさい酔い方しちゃうな僕の彼女!

 

「連絡とってたけど・・・寂しかったんだから・・・ううっ・・・」

 

「奏多、私にはもう手一杯よ。燐子の相手はあなたしか無理よ。とにかく燐子を慰めて。」

 

「わ、わかった!燐子、1度落ち着こうか!僕は今ここにいるし話はちゃんと聞いてるから!」

 

「ずっと我慢してたけど怖かったし・・・寂しかったんだから・・・ギュッてさせてよ・・・」

 

すると燐子が僕に抱きついてきた。

 

それもものすごい力で抱きしめるので首締まりそうなのである。

 

「燐子!ギブ!ギブっ!」

 

「ダメ・・・あと5分だけ・・・」

 

「これ以上やったら天に召されるから!さらに遠いところに行っちゃうから!」

 

「・・・お客さん、お熱いけど大変ですね・・・」

 

そう言って店主が暖かい目で見つめてくる。

 

見てないで助けてくれと思ったのが今の僕の心境だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・そんなこんなで僕と友希那を除くほとんどが酔いつぶれてしまったので話も出来なくなり、この日はお開きとなった。

 

「いやー、すみませんね!九条先輩たちに迷惑かけちゃって!ほらあこ、帰るぞー」

 

「おねぇちゃん・・・おんぶぅ・・・」

 

「昔ならともかく今はあたしぐらいにデカくなったからな・・・悪いけど歩いてくれ。」

 

「巴ちゃんも大変だね〜。ほらおねーちゃん!おうち帰るよ〜」

 

「めのまえにてんしがいましゅ。これはゆめでしゅか?」

(特別訳:目の前に天使がいます。これは夢ですか?)

 

「夢じゃないからね〜、酔っ払ったおねーちゃんも好きだけど介護が大変だからあまりなって欲しくなかったんだけどね・・・」

 

「お酒8杯も飲んだからね・・・」

 

「今度またおねーちゃんとお酒のこと相談しとくから!それじゃあね奏多くん!また仕事場で会えたらよろしくねー」

 

とりあえずお迎え組は保護者に連れられて帰っていきました。

 

さて、あとは我々が帰るだけである。

 

「ゆきにゃ〜・・・」

 

「リサ、歩きにくいからまとわりつかないで。それじゃあ奏多、今度また改めてRoselia再スタートの話をしましょう。」

 

「そうだね、今度はいつものファミレスにしとこうか。」

 

「ふふっ、そうね。あなたと話せて良かったわ。それじゃあ。」

 

友希那がリサの手を引いて駅の方に歩いていった。

 

さて、僕と燐子も帰るとしましょうか。

 

実は燐子の留学予定が発覚する3日前から同居していたので、僕の家は実質燐子の家でもあるのだ。

 

「ほら、燐子。一緒に帰るよ。」

 

「ううっ・・・頭痛い・・・」

 

「あれだけ飲んだらそりゃしんどくなるよ・・・」

 

燐子はあの後11杯まで飲んだあと、こうしてずっとグロッキーなのである。

 

未だに吐いてないのが不思議なくらいだ。

 

「どうする?タクシー乗る?」

 

「・・・お任せします・・・」

 

「了解、お姫様。」

 

とりあえずタクシーを呼び止めて僕の家の付近の駅まで送ってもらう。

 

家まで送ってもらわなかったのは、酔い醒ましには夜風に当たって歩いた方が楽になるかと判断したからだ。

 

タクシーを降りてお金を払って僕は燐子の肩を支えながら僕の家まで歩き始めた。

 

燐子の荷物は新宿のコンビニで僕の家まで送ってもらっているので、最悪明日の朝には届くだろう。

 

そんなこんなで歩いていると、燐子も多少楽になってきたのか、話しかけてきた。

 

「・・・ごめんね、変な姿見せちゃって・・・」

 

「確かにちょっと驚いたけど・・・燐子の本音聞けたからよかったな。」

 

「ううっ・・・恥ずかしくなってきちゃった・・・」

 

「でも、燐子が正直に『寂しかった』って言ってくれたの、僕は嬉しかったな。」

 

「・・・だって、本当だったから・・・」

 

「高校の時付き合い初めて1年経った頃でもこんなにはっきり言ってくれてなかったからさ。今こうしてはっきり言ってくれてるの、本当に信頼されてるんだなって思うと嬉しくって。」

 

「みんながはっきり言う大切さを教えてくれたから・・・今の私があるのはRoseliaと奏多くんのおかげだよ・・・だから私はもつ留学なんてしたくない。奏多くんと、みんなと離れたくない・・・大好きなみんなと・・・大好きな奏多くんと一緒にいたい・・・」

 

燐子はそう言うと空いている手で僕の手をぎゅっと握りしめていた。

 

僕の手をにぎりしめる燐子の手は、僕にとってとても強く、儚く、そして弱いものだと思った。

 

もうこの手を離したくない、もう二度と遠くに行って欲しくない。

 

僕は今、心からそう思えた。

 

「僕だって寂しかった。この2年間、また会える日をずっと待っていた。もう遠くへいって欲しくないって気持ち、僕も同じだよ。」

 

「奏多くん・・・」

 

今もふらつく燐子を今一度肩をしっかり抱き寄せ、燐子の顔を見て話した。

 

「だから帰ろう。僕達の家に。」

 

「・・・うん!」

 

互いを支え合い、助け合い、僕達は確かな1歩をあゆみ出す。

 

たとえ幻想でも、夢でも、これは僕が作る物語であり、2人で奏でる交奏曲である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ーーーーこれはあるかもしれない未来の物語

しかし未来は誰にもわからない。

この物語を紡ぐのは私の仕事であり、読み解くのはあなたの仕事である。

これは可能性の1ページ。

こうなるまでの道はまだ長そうです。

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