無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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二話連続投稿の2話目!
こちらは燐子sideになっています
9話じゃないよ。まだ8話だよ。

それでは本編どうぞ!


8話 モノクロ ノ ワタシ(燐子side)

体がだるい・・・。

 

九条さんと話してその後、図書室によって本を借りて少し探し物をした後の帰り道。

 

私は体の不調を感じていた。

 

何とか家に着いて熱を測ると少し熱を出していた。

 

私は体が弱い方なのでたまにこうして風邪をひいてしまう。その時に携帯に通知が来た。

 

差出人はあこちゃんからだ。

 

内容は今日NFOで話したいことがあるから来てくれとのことだった。

 

携帯のチャットで話せばいいのにわざわざNFOで話したいということはなにかあるのだろう。

 

パソコンの前に座り、私はNFOを起動させた。

 

 

 

 

 

始まりの村のショップ前に行くとあこちゃんの他に九条さんのアバターのカナタと使い魔ルナの姿があった。

 

九条さんがこちらに気がついて、フレンドのみの会話のモードにしてくれた。

 

内容は2人が友希那さんのバンドグループに入れることになったことだった。

 

あこちゃんの部活の先輩の今井さんも入れたらしく、後はキーボードだけとのことだった。

 

2人と話していると徐々にしんどくなってきたので先にログアウトさせてもらった。

 

 

 

 

 

パソコンの前から立つと私は部屋の中にあるグランドピアノに触れた。

 

 

 

 

 

 

ピアノ

 

 

 

 

 

 

 

1人で頑張ってきて昔はある発表会で賞もとったことがある。

 

昔は確かに楽しかった。

 

今でもたまに弾いて楽しいと思うのだが、昔の『楽しい』と今の『楽しい』は全く違う。

 

昔は頑張って練習し、それが色々な人に認めてもらえるのが嬉しかった。

しかし歳を重ねるにつれて周りの人の目線や人の数が怖くなってきた。

 

昔は少しまともに話せたのだが今では人と話すことが苦手になっている。

 

一時期はビクビクしすぎて喋れないということもあった。

 

そんな中、1人でも楽しめるNFOであこちゃんと出会い、一緒にやっていくうちに色々とかわっていったのだが、根本的な所は変わらなかった。

 

九条さんと出会って彼も話すのは苦手なのだそうだがここ最近、それを克服しようとしている。

 

しかし、私はどうだろうか。

 

そこまで努力して苦手を克服しようとしただろうか。

 

そんな深いことを考えていても体はだるさを訴えかけている。

 

私は考えるのを辞めてベッドの中へ入り眠りについた。

 

 

 

 

 

次の日、私は学校を休んだ。

 

熱が昨日より悪化し、今日は休むことにした。

 

体は昨日より悲鳴をあげているため一応病院に行くと診察結果は風邪だと言われた。

 

そのため私はしばらく学校を休むことにした。

 

 

 

 

 

 

学校を休んで数日後、体のだるさは消えないが熱も下がりだいぶ楽になった。

 

今、家には誰もいないため何をしようか考えているとインターホンが鳴った。

 

恐る恐る出てみるとそこには九条さんがいた。

 

「九条・・・さん?どうしてここが?」

 

「宇田川さんに聞いたんですよ。これ、月曜日提出らしくて担任に渡してこいって言われたんですよ。」

 

彼は苦笑しながら私にプリントを手渡した。

 

「その・・・ありがとう・・・ございます。」

 

「いえ、では僕は今からバンドの練習があるので。お大事にしてください。」

 

そう言って九条さんはこの前あこちゃん達といたライブハウスの方向に走っていった。

 

やはりバンド活動は忙しいのだろうか。

 

彼はマネージャー的な立場になったとは言っていたがマネージメントはかなり大変だったはず。

 

「九条さん・・・ありがとうございます。」

 

聞こえないだろうがお礼を言って私はプリントに目を通して記入を始めた。

 

 

 

 

 

その日の夜体の調子もかなり良くなり、いつも通りあこちゃんとチャットで会話していた。

 

「ちょっとは怒られたりするけど、みとめられるようにはなってきたんだ!」

 

「バンドとして息が合ってきたんだね。あこちゃんのドラムもどんどん上手くなってきてるんじゃないかな?」

「こんなこと造作もないことよ!」

 

ここ最近のあこちゃんはバンドの話一色で本当に楽しそうだ。

 

「では特別に、我が同胞、りんりんにだけ演奏中のバンドを見せてしんぜよう!」

 

するとあこちゃんから動画が送られてきた。

 

中身は友希那さん達の演奏でとても楽しそうに演奏しているあこちゃんの姿もあった。

 

そしてこの前見た友希那さんの演奏の時よりとても素晴らしくなっていた。

 

「ありがとう。すごいね!全員でひとつの音楽を作り上げてる。みんなでって、こういう事なんだね!」

 

「・・・」

 

「・・・あこちゃん?」

 

あこちゃんからの返事が来ない。

 

あこちゃんが自分からチャット落ちるなんて初めてだ。

 

おそらく今日の練習で疲れたのだろう。

 

私はあこちゃんから送られてきた動画を見直した。

 

この動画を見ると身体が引き寄せられる気がするのだ。

 

「例えば・・・もし・・・仮にだけど私のピアノをあこちゃんのように合わせてみると・・・どうなるんだろう・・・?」

 

私はグランドピアノの前に座り、あこちゃんから送られてきた動画に合わせて弾いてみた。

 

 

 

 

 

するとまるでずっと前からこうしてきたようにピアノの音が合わさっていく。

 

(凄く・・・楽しい・・・!)

 

この感覚は今までの『楽しい』とは違う。

 

この感覚は昔の頃の『楽しい』の感覚。

 

自分がまたこの感覚に戻れたことに驚いていた。

 

 

 

 

 

ピアノを弾き終わり、私は寝る前に本を読み始めた。

 

寝る前に本を読むのが私の日課だ。

 

本にはピアノの鍵盤の柄のリボンがついたしおりが挟んであった。

 

これは予備で前から使っていたしおりは前借りた本に挟んだままのようだった。

 

そのため落としたり本に挟まっていないか探しているのだがまだ見つかっていない。

 

(あのしおり・・・どこ・・・行っちゃったんだろう?)

 

そう疑問に思いながら私は本を読み続けた。




8話「モノクロ ノ ワタシ」はこれで終わりです。
結局間に合わなかった・・・。

9話はしっかりと今晩仕上げるのでお楽しみに!

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