予定では、次話でRoselia結成編『メブク アオバラ ト ネイロ ノ ショウタイ』は終わりです。
なお、Roselia1章の11話~20話は奏多が加入した事で時の流れが変わり、そのルートが無くなったということになっています。
毎日投稿も明日まででその後のストーリーは週4投稿になりますので宜しくお願いします。
それでは本編お楽しみください!
次の日の朝、僕は学校に着いた瞬間すぐに白金さんの所へ駆け寄った。
「白金さん!ピアノ弾けるって本当ですか?」
「あの・・・はい・・・すみません・・・話すタイミングが無くて・・・」
「いえ・・・驚かせてすみません、でも大丈夫ですか?」
「はい・・・あこちゃんから演奏中の動画を送ってもらってたので・・・それで何度か練習しました・・・」
「それはいいのですが・・・」
すると氷川さんが話に入ってきた。
「おはようございます、九条さん、白金さん。」
「あぁ、おはようございます。」
「おはよう・・・ございます。」
「白金さん、あなたの経歴を少し調べさせてもらいました。あなた、発表会で賞をとったことがあるようね。」
そんなに凄いのか・・・
「いえ・・・賞をとったのは・・・昔の話で・・・」
「とにかく、今日の放課後CIRCLEでオーディションを受けてもらいます。課題曲は1曲、それで私達に合わなければ悪いけど加入してもらうのを辞めてもらいますから。」
「氷川さん・・・そこまでプレッシャーをかけなくても・・・」
「この程度でビビってしまっては意味が無いんですよ。」
「あの・・・精一杯・・・頑張ります・・・!」
「その意思はオーディションで示してもらいます。九条さん、HRも始まりますので私達も席に戻りましょう。」
「・・・はい。それでは白金さん、また後で。」
HRも始まるので僕は席に戻った。
しかし、宇田川さんの時もオーディションをしたのになぜ白金さんの時だけこんなに心配するのだろうか・・・。
放課後、僕は白金さんと一緒にCIRCLEへ向かっていた。
氷川さんは湊さん達と一緒に行って先に準備をしておくと言って先に行ってしまったので2人で向かっている。
しかし緊張のせいか白金さんとの間に会話がない。
自分から話しかけようかと思ったが彼女が物凄く集中しているので話そうにも話しにくいのだ。
そうこうしているうちにCIRCLEに到着した。
そこにはもう四人の姿があった。
「あ、来た!おーい、りんりーん!九条さーん!」
「すみません、待たせてしまいましたか?」
「そんなことないよ、ソータ。その子が燐子ちゃん?」
「はい・・・白金・・・燐子です。宜しく・・・お願いします。」
「燐子、紗夜と奏多から聞いていると思うけど課題曲は1曲だけ、わかった?」
「大丈夫ですよ!何たってりんりんはあこの大大大大大親友でネトゲでは最強なんですからっ!」
「宇田川さん・・・ネトゲは関係ないかと・・・」
「・・・とにかく始めるわよ。」
「・・・はぁ、大丈夫かしら?」
氷川さんが軽くため息をついたがそんなことお構い無しに僕達はCIRCLEの中に入った。
「ピアノとキーボードは少し違うけど感覚は同じだと思うわ。」
「・・・はい。頑張り・・・ます。」
白金さんはかなり緊張しているようだ。
今回の課題曲は今やっているオリジナル曲。
この曲の名前の命名権は僕にあって、まだ決めていないがこの曲はかなり難しい曲である。
白金さんの成功を祈りつつ僕はいつもの席についた。
「それじゃあ・・・いくわよ。」
宇田川さんのスティックの音が鳴ってリズムが刻まれる。
確か初めからキーボードが入るはず。
大丈夫か心配していたがその心配は一気に消え去った。
白金さんのキーボードが音を響かせ始めた瞬間、僕はあの時の衝撃と全く同じ、いやそれ以上の衝撃を受けた。
あの始業式の帰り道に聴こえた《音色》。
それと全く同じ音が響いているのだ。
(あの時の・・・音色!あの・・・僕の心を震わせ・・・初めて感動したあの音色・・・!)
僕は驚きすぎて本来の目的を忘れるほど衝撃を受けた。
まさかあの時の音色を響かせていた人の正体がまさかこんなに近くにいるとは思わなかった。
これは後から聞いた話なのだが、メンバー達は僕とは違った衝撃を受けていた。
白金さん以外の4人は初めて合わせた時のあの《音》以上の感覚に驚いていた。
そして白金さんは1人でやるよりもみんなでやる楽しさに心から感動していた。
演奏が終わると全員があの時のように沈黙していた。最初に口を開いたのは宇田川さんだった。
「・・・あの、みんな黙っているけど・・・りんりん入れないの?」
「・・・ごめんなさい、そうだったわね。無論合格よ、ぜひ入ってほしいぐらい。」
「・・・!はい!」
「宜しくね!燐子ちゃ・・・燐子!」
「やったぁ!これで今週末のライブに間に合いそう!」
「・・・!こ、今週末!?」
今週末と聞いて白金さんの顔が青くなった。
「燐子!?・・・あのさぁあこ?燐子にどうやって伝えたの?」
「え?あこ達と一緒にバンドやらないって。」
「ん~それだけじゃあ言葉が足りないかな~。ソータからは聞いてないの?ソータ?」
僕はまだ意識が呆然としていた。
「ねぇソータ!聞いてる!」
「・・・!は、はいっ!」
リサの呼びかけで何とか意識がこちらに戻った。
「ねぇ、燐子に今週末のライブの事説明した?」
「・・・あの、タイミングを逃してしまって。」
「・・・あちゃ~」
「・・・今週末なんて・・・そんな・・・まだ心の・・・準備が・・・」
「なら、帰って。」
湊さんが冷たい声でそう言った。
「どれだけ技量や音が合っても、やる気のない人に用はない。また新しいキーボードをさがすだけよ。」
この言い方に僕が口出ししようとした時だった。
「・・・たいです。」
「えっ?」
「・・・ひ、弾きたいです!・・・あの・・・精一杯・・・頑張ります・・・ので・・・宜しく・・・お願い・・・します!」
あの大人しい白金さんが大声を出した。
その事に僕と宇田川さんはとても驚いた。
「白金さんが・・・大きな声を!?」
「りんりんの大声・・・初めて聞いた・・・」
「・・・なら、その意気込みはライブで示してもらうわ。頼んだわよ燐子。」
「・・・!は、はいっ!」
こうして5人目のメンバーが決まった。
その後湊さんに「バンド名は私が考えるからあなたは早くこの曲の名前を考えて。」と言われ、その日は解散になった。
宇田川さんは姉の和太鼓を見に行くと言って先に抜け、氷川さんと湊さんは自主練のため残ったので、僕と白金さんは帰り道が途中まで同じなので先に帰らせてもらった。
2人きりになり、今度は僕から話しかけてみた。
「とりあえず、オーディション合格おめでとうございます。」
「はい・・・ありがとうございます・・・」
「まさか宇田川さんが呼んだのが白金さんだったとは思いませんでしたよ。」
「ふふっ・・・そうですか。」
白金さんが微笑し、行きとは違う空気の軽さがあった。
「あの・・・白金さんの家ってピアノあるんですか?」
「・・・?はい・・・ありますけど・・・なぜわかったんですか・・・?」
「・・・実は、白金さんのピアノの音色を聴いたのはこれが初めてではないんですよ。」
「・・・!どこで・・・ですか?」
「それは・・・始業式の日、帰宅中にあるピアノの音色が聴こえたんです。・・・その音は澄んでいて、綺麗で、心に響く、そんな音でした。その音と全く同じ音が今日のオーディションの時にあなたの弾いたキーボードから聴こえたんです。」
「・・・そうだったんですか。確かに私はあの日、ピアノを弾いていました。窓かなにかが空いていて音が漏れ出たんでしょうか。」
「えっと・・・だからその・・・上手くは言えないんですけど、とにかくこれからもよろしくお願いします。」
「・・・ふふっ、九条さんって・・・面白い人・・・こちらこそ・・・お願いします。」
燃えるような夕焼けが沈んでいき、辺りは暗くなっていく。
黒くなった空には星星と月が映っている。
「・・・決まりました。オリジナル曲の・・・名前を。」
「それは・・・何ですか?」
「はい、それは・・・」
この曲の名前は『BLACK SHOUT』
黒き叫び。
色を求めた僕が初めて聴いた音の叫び。
あと1話でRoselia結成編は終わります。
結成編終了後は『病ンデル彼女ノ陰』(タイトル確定)の投稿と2章の制作です。
どちらも乞うご期待!