無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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シリアスな回なので後書きは基本省略してます。
ということでこちらも短め。

ちなみにシリアス回長いです。(別に前書き後書きがめんどくさい訳ではない。)



それでは本編をどうぞ。


34話 ゼツボウ

燐子side

 

「奏多さん来ないね~」

 

「来ないわね・・・」

 

「学校にいたのはわかるのですが・・・」

 

いつものスタジオに着いてみんなが揃ってから30分がたつがいつまでたっても九条さんがこない。

 

学校で先生に頼み事を頼まれているとしてもそれなら連絡が来るはずだし、それにしてもいつも時間を厳守している九条さんなら仕事があってももう来る時間だ。

 

「ソータの携帯に連絡してみる?」

 

「そうね、そうしてみましょうか。燐子、頼める?」

 

「わ、私が・・・ですか?」

 

「最近、仲が良さそうだったから奏多も話しやすいと思ったんだけど何か悪いことでもあるの?」

 

「い、いえ・・・そういう訳では・・・」

 

そんなに仲が良さそうに見えていたのかな?

 

たしかに最近話すことが多い気がするが・・・

 

「白金さん、頼みます。」

 

「頼むよ~燐子!」

 

「お願いね、りんりん!」

 

氷川さんに今井さん、さらにあこちゃんまでが頼んできた。

 

こんなに言われると断ろうにも断れない。

 

「は、はい・・・わかりました。」

 

私は携帯を取り出して九条さんの携帯に電話をかけた。

 

コール音が鳴る。

 

しかし一向に出る様子がない。

 

しばらく待っているとコール音が切れて通話できるようになった。

 

「あ、あのもしもし・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子が電話をかける数分前

 

廊下を1人の警備員が歩いていた。

 

今日は始業式で学校が早く終わる日で部活も教員会議ですべて休みにしてある。

 

そのため残っている生徒は受験のために残っているほんの少ししかいないはずだ。

 

そう思って警備員は廊下を歩いていた。

 

警備員が廊下の角を曲がる。

 

その先は職員室などがある道だった。

 

警備員がふと、なにかに気づいた。

 

「・・・なんだ?」

 

廊下にある黒いもの。

 

それはよく見るとこの学校の制服のようだ。

 

しかも男子の制服・・・

 

「まさか・・・!」

 

警備員は走ってそれに近づいた。

 

近づいてみるとそれは倒れた男子生徒だった。

 

意識はなくどうやら気絶しているようだ。

 

「ど、どうする・・・とりあえず救急車!」

 

無線で別の警備員に救急車と応援を頼んだ警備員はその男子生徒の様子を確認する。

 

目立った外傷などはなく他人による暴力で気絶させられていないことはわかった。

 

応援で呼んだもう1人の警備員が担架を持ってきてその男子生徒を保健室に運ぼうとした。

 

するとその男子生徒の懐から音が鳴る。

 

どうやら携帯からのようだ。

 

その警備員は電話に出るべきか迷った。

 

彼が倒れたことを知り合いに言ってご家族に話してもらうべきだとは考えたのだが見ず知らずの人にいきなり話すのはどうかとも考えた。

 

少し考えた結果その警備員は電話に出ることにした。

 

『つ、繋がった!あ、あの・・・もしもし・・・』

 

「も、もしもしこの携帯の持ち主の関係者ですか?」

 

『え、あの・・・九条さん・・・どうかしたんですか?それに・・・あなたは?』

 

「えっと私は花咲川高校で警備員をしているものです。彼は廊下で倒れていて今から救急車で病院に行くところですが・・・」

 

『そ、そんな・・・なんで九条さんが・・・うちの学校で・・・』

 

「あなたここの生徒なんですか?原因はわかりませんが気絶しているだけのようなんで恐らく大丈夫だと思いますが出来れば彼の親にこのことを伝えてもらえませんか?病院は恐らく総合病院だと思います。」

 

『は、はい・・・わかりました。』

 

「よろしくお願いします。」

 

そう言って彼は男子生徒の電話を切った。

 

するとちょうど救急車が到着する。

 

救急隊員が担架に男子生徒を乗せて救急車に乗せる。

 

そのまま救急車は病院へ行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

「はい・・・わかりました。」

 

『よろしくお願いします。』

 

そう言って警備員さんは電話を切った。

 

まさか九条さんは学校で倒れていたなんて・・・

 

「り、燐子どうしたの?顔がめちゃくちゃ青いけど・・・ソータに何かあったの?」

 

「く、九条さん・・・うちの学校で・・・倒れていたって・・・」

 

「「「「え!」」」」

 

全員が驚く。

 

当たり前だ、メンバーの1人でとても重要な人が倒れたのだから。

 

「そ、それで奏多さんは大丈夫なの?」

 

「気絶・・・してたって・・・」

 

「湊さん・・・」

 

「ええ、練習どころではなくなったわね・・・燐子、奏多が送られた病院ってわかる?」

 

「たぶん・・・総合病院だって・・・電話に出た人は言ってました・・・」

 

「わ、わかった。アタシがスタジオのキャンセルと別日に借りれるか聞いてくるからみんなは先に行ってて!」

 

今井さんが受付の方に走っていった。

 

昔の友希那さんなら練習を続けていたのかもしれないが九条さんの所に行くって言ってくれてよかった。

 

私達は荷物をまとめて九条さんが送られたであろう総合病院へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

移動中に合流した今井さんに九条さんの叔父さんを呼んでもらい、受付に説明して九条さんのいる病室へ案内してもらった。

 

そこには白衣を着てベッドの上で寝ている九条さんの姿があった。

 

そして、その病室内にいた医師に今井さんが尋ねた。

 

「あ、あの、ソータは大丈夫なんです?」

 

「目立った外傷もなく、恐らく何らかの負荷がかかって倒れたんでしょう。恐らく心や精神の問題なのでこればかりは彼が起きないとわかりません・・・」

 

「そうですか・・・ありがとうございます。」

 

医師はそれだけ言って病室を出ていった。

 

「奏多さん、何があったんだろ・・・」

 

「日頃のストレスや疲れの可能性は?」

 

「九条さん・・・確かそういうのは・・・大丈夫だったと思います。」

 

「ソータが気絶したのって海の時ぐらいだよね。女の子耐性ないからアタシ達の水着見て目を回して倒れたけど・・・」

 

「それじゃあ九条さんは誰かの水着を見て倒れたってことですか?」

 

「今回のは・・・あの時とは違うと・・・思います・・・」

 

「どうしてわかるの?」

 

「九条さん・・・海の時・・・鼻血や顔が赤くなってたりしてました・・・けど今回は・・・顔が青いし血も何も出ていません・・・」

 

するとガラガラガラと扉が開く音がした。

 

入ってきたのは九条さんの叔父さんだった。

 

「お、おう・・・おめーら先に着いてたか。ありがとな今井ちゃん、連絡くれてよ。」

 

「いえ、ソータの家族って茂樹さんしか思いつかなくて・・・」

 

「んで、奏多はどうなんだ。」

 

「気絶しただけらしいです。しかしなぜ気絶したのかがわからなくて・・・原因はストレスらしいんですが。」

 

「奏多にストレスか・・・そりゃ原因が思いつかねえな・・・」

 

「シゲさんわかるんですか?」

 

「こいつ、ストレスとか疲れはあんまりたまんないタイプなんだよ。けど一気に強いストレスや衝撃がくると弱いんだけど・・・そもそもそんなに強い衝撃なんてこいつの前に水着のねーちゃんが何人もいるぐらいの衝撃じゃないとこんなこと起こんねぇしな・・・」

 

「原因・・・なんでしょう・・・」

 

「それはこいつが起きねぇとわかんねぇ。」

 

「とりあえず待ってみましょう。起きたらその時聞けばいいわ。」

 

私達は九条さんが起きるまで病院で待つこととなった。

 

その場は明るい空気にはならずずっと暗い空気が漂うだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苦しイ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つライ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コワイ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウダ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コワイナラ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニゲレバイイ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コノ ウンメイ ト イウ クサリ ニ シバラレナガラ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダレトモセッシナケレバイイ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モウ イタイノハ イヤダ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケド・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダレカ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タス・・・ケ・・・テ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年の願いは

 

 

 

 

 

 

 

『九条奏多』という人の思いは

 

 

 

 

 

 

 

絶望の深淵に落ちていった

 

 

 

 

 

 

 

届かないとわかりながら

 

 

 

 

 

 

 

助けを求めて

 

 

 

 

 

 

その少年の心に残ったのは

 

 

 

 

 

 

『絶望』と『逃亡』、そして『誰とも接しない』と思う気持ちだけだった。




次回、『フサグココロ ウラ ノ ムショク』

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