無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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昨日土曜日の気分すぎて急いでネタを考えてた隠神カムイです。
これだから金曜日の祝日は嫌いなんだよ・・・←小説書いてまだ一ヶ月ちょいしか経ってない
あと少しで2ヶ月か・・・なんだかんだ続けてるってすごいな。
作者の数日前の過去はほっといて今回は『九条奏多の過去』をメインとして書いていきます。

(ピロロロロロ・・・アガッタビリィー)九条奏多ぁ!
君が何故人を信用しきってないのか
何故信用してても敬語が抜けないのか(アロワナノー)
何故前回負の感情に取り込まれたのかァ!(それ以上言うな!)
(ワイワイワイワーイ)その答えはただ一つ・・・(やめろー!)
ハァァ・・・九条奏多ぁ!それは!君の幼少期に・・・関係があるからだぁぁぁ!
(ターニッォン)アーハハハハハハハハハアーハハハハ
(ソウトウエキサーイエキサーイ)ハハハハハ!!!


奏多「僕の・・・過去に・・・?」ッヘーイ(煽り)


すみませんこれがやりたかっただけです・・・
なお奏多の今までの感情のセリフは「」で、負の感情のセリフを『』で書こうと思います。

それではハイテンションな前書きから打って変わってめちゃくちゃ重くなる本編始まります!


36話 ムショク ノ カコ

燐子side

 

私達は茂樹さんの車に乗って九条さんの家に送ってもらっていた。

 

車の中で話を聞こうと思った人は一人もおらず、車内はずっと静かだった。

 

九条さんの家について茂樹さんが借りてきた鍵を使ってドアを開けた。

 

「さ、お前らは入れ。」

 

「「「「「お、お邪魔します・・・」」」」」

 

全員の声が緊張している。

 

これから九条さんの過去が明らかになるということでもあるが全員が同年代の男子の家に上がったことがないので何故か緊張するのだ。

 

「なんだお前ら、緊張してんのか?」

 

「だって・・・その・・・」

 

「アタシ達・・・同い年の男の子の家って初めてだから・・・」

 

「んなモン普通の家と変わんねぇよ。あいつの事だ、整理整頓されているし、ヤラシイもんなんて買ってねえよ。」

 

「そうだよ!早く入ろ!」

 

1人だけ男の子の家だろうと気にしないタイプのあこちゃんがみんなを促す。

 

あこちゃん曰く「おねーちゃんの部屋以外なら大体いける」だそうだ。

 

あこちゃんに急かされて私達はリビングへ入っていった。

 

 

 

 

 

 

リビングの中は整理整頓されていてとても綺麗だった。

 

床や机の上はしっかりと掃除されていてホコリやゴミが全然見つからない。

 

「ソータの家・・・めちゃくちゃ綺麗・・・」

 

「そういえば九条さん、学校でも整理整頓してますし彼が掃除した後はホコリ一つありませんでした。」

 

「だから言ったろお前ら。あいつはそういう奴なんだ。とりあえず座れ。」

 

そう言って私達は机を挟んで向かい合わせに置かれているソファーの上に半分に分かれて座った。

 

そして茂樹さんは別に置かれている椅子の上に座る。

 

後で聞いた話なのだがあそこは九条さんのお父さんの椅子なのだそうだ。

 

「ふぅ・・・さて、どこから話すべきかな。」

 

そう言って九条さんの昔の話が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九条奏多という人間はこの世に生まれてからずっと無色だった。

 

『人生を多くの色を束ねて奏でてほしい』という願いで『奏多』と名付けられたがそれとは正反対の感じで髪の毛は色素が足りないのか生まれつき銀色。

 

成長して4歳になった頃はまだ4歳児らしさはあった。

 

家には父親が仕事で毎日遅くにならないと帰ってこないので、常に母親と奏多の2人だけ。

 

幼稚園や保育園は家に母親がいるから大丈夫だろうとの事で行かせてなかった。

 

時々、叔父の茂樹が見に行っていたが至って普通の家族のような生活をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ある日を境に九条奏多の生活は激変した。

 

 

 

 

 

 

 

それはある日の昼食時の頃だった。

 

当時5歳だった奏多がいつも通りご飯を食べていた時、誤ってお茶の入ったコップを倒してしまい、隣で食事をしていた母親の服の上にお茶をこぼしてしまった。

 

その日、母親はどこかに外出予定があったらしく、いつもは着ない高いスーツを着ていた。

 

「あ・・・お母さん、ごめんなさい・・・」

 

奏多がすぐに謝る。

 

いつもは舌打ちして自分の服をタオルで拭いてから奏多に机を拭かせる程度で済んでいた。

 

しかし今日は様子が違っていた。

 

母親はなにかに取り付かれたようにゆるりと立って奏多の首を掴んで投げ飛ばした。

 

「あんたね!いつまで経てば言うことを聞くの!」

 

「ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

奏多が謝っているのにも関わらず容赦なく両頬を叩く。

 

「いつまで!経っても!言うことを!聞かない!思い通りに!ならない!この!不良品が!」

 

日頃のストレスや疲れが出ていたのだろう。

 

普通の子なら抵抗したり父親や他人にこの事を言っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、彼は『九条奏多』という人間は無色、つまり『普通』では無かった。

 

 

 

 

 

 

彼は自分が原因で母親がこうなってしまったのだと思い、誰にも言わずこの罰を受けた。

 

彼は『何も無い』から『全てを受け入れる』人間だった。

 

今まで頼み事を断ったこともなく、抵抗もしたことがなかった。

 

そして誰にも受け入れた事を吐き出すことは無かった。

 

母親はこのことを知ってから何かあれば奏多に暴力を振るうことが普通になっていた。

 

初めは投げ飛ばしたり頬をぶったりした程度だったが腹を蹴ったり首を絞めたりなど次第にエスカレートしていった。

 

傷が残ると帰ってきた父親にバレてしまうため傷がつかないように、あるいは傷がわかりにくいため傷を付けるなら体にやるようになっていた。

 

奏多は時々こんな暴力から逃れたいと思った。

 

しかし逃れることは出来ないとわかると自分の思いを内側に閉じ、母親のなすがままになっていた。

 

そして小学生になる頃には『どうして自分はこんなにも無色で何も無いのだろう』と思い始めた。

 

 

 

 

 

小学校での体育の時間、奏多は自分の体の傷を隠すように着替えていた。

 

その頃には成長期の少年の体に母親から付けられた生々しい傷が古傷となって身体中についていた。

 

しかし、その傷を隠しきれるはずがなかった。

 

2年生になった頃、いたずら好きの男の子が着替え中の奏多の腕を掴んで引っ張ってみんなの前に出された。

 

奏多の傷を見た男の子達はその傷を気持ち悪がった。

 

奏多は「これは自分が悪いことしたから付いた傷だ」と言うといたずら好きな男の子達は奏多のことをいじめ始めた。

 

先生のいないうちに暴言を吐かれ、机の上には『きずだらけかいじん』『どっかいけ』などの落書きをされていた。

 

母親はどこからその情報を仕入れたのか「アンタらしい無様なお友達ね」と言って殴られた。

 

 

 

 

 

しかし、母親の暴力も長くは続かなかった。

 

 

いつも通り母親から暴力を受けている時に突き飛ばされた衝撃でボールペンが飛んで母親の顔に当たった。

 

その事に激怒した母親は奏多服を剥ぎ取り、首を掴んで倒し、近くにあった酒瓶をもって叩きつけようとした。

しかし、幸い頭に来ていて標準が狂ったせいか奏多には当たらず、床に当たって瓶が割れる。

 

その破片が奏多の腹部やが胸に刺さり、傷を作る。

 

その後、母親は瓶の破片を集め、奏多の血を拭いてから倒れた奏多を放ったらかしにして荷物をまとめて出ていった。

 

机の上には離婚届と「あなたとはやっていけないわ、親権はそちらにあげるからどうぞ勝手に暮らしてください。さようなら」と書かれたメモが置いてあったらしくその後の行方は分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「その後の奏多は人と話したり関わることを拒み続けた。そりゃイジメやあの母親からの虐待もあったからだ。だからあいつは小4まで別室で授業を受けていた。今のアイツは俺から見りゃ凄く成長しているぜ。なんせ中学に上がっても他の奴と全く喋ってなかったからな。今のあいつになったのはお前達のお陰だよ。」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

茂樹さんにそう言われたが私達は何も反応できずにいた。

 

まさか敬語や一歩引いた立場だったのはこの過去の経験があったからだなんて誰も思わなかったからだ。

 

「・・・その・・・九条さんが倒れたのって・・・まさか・・・」

 

「あぁ、学校であいつの母親にあったらしい。」

 

今の話の流れからして全員がやっぱりそうだったのかという空気になる。

 

そんな中、友希那さんが茂樹さんに質問をした。

 

「ねぇ茂樹さん、何故奏多は学校でお母さんと会ったの?あの後行方不明になったんでしょ?」

 

「どうやら今日転校してきた子の母親があいつの母親だったらしい。」

 

「それって陰村さんの事じゃないですか?」

 

「はい・・・多分・・・」

 

花咲川組は陰村さんの事だとわかったが羽丘組はわからなさそうだった。

 

「とりあえずその陰村って子はソータの父親違いの兄弟ってことになるの?」

 

「いや、奏多の母親は奏多を産んでから子供ができない体になっちまってるから子供はできないはずなんだ。だから恐らく再婚相手の子供だろう。」

 

「う~ん・・・あこ達に出来ることってなんだろう?」

 

その事で全員が静まる。

 

ここまで知ってしまったからには九条さんのために何とかしたいがいざ考えてみると良い案が思いつかない。

 

「・・・私と白金さんでその陰村さんと話してみます。」

 

「話すっていったって何を?」

 

「特に・・・思いつきません・・・けど・・・話してみないことには・・・わからないと思います・・・」

 

「・・・わかったわ、なら私とリサとあこでもう一度奏多に会ってみる。」

 

ということで花咲川組は陰村さんとのコンタクトを、羽丘組は九条さんともう一度話すことでまとまった。

 

「さ、お前ら今日はもう遅い。早く帰った方がいい。」

 

「そうね、そろそろ帰りましょうか。」

 

そういう事でここで解散となった。

 

九条さんの家は幸い花咲川に近かったので各々が自分の帰宅路に向かった。

 

(今まで・・・九条さんには・・・たくさん助けてもらった・・・たくさん支えてもらった・・・次は私が・・・私達が九条さんを助ける番・・・)

 

そう決心して私は自分の家に足を運んだ。




珍しく奏多sideがないストーリーとなりました。
なお陰村炎のキャライメージは奏多が『無色』なので炎は『多色』というイメージを持っています。
そこだけを言いたくてこの章に入って久々の後書きです。
次の更新は明日です。それまでお楽しみに!

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