無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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久々に日曜日しっかり投稿してるような気がする・・・
ども、最近ヴァイスシュヴァルツというカードゲームでAfterglowデッキ作ろうか考え中の作者の隠神カムイです。
Roseliaデッキあるんだけどね・・・Afterglowも作ってみたい訳ですよ・・・(あ、浮気じゃないんで)なおサインカードはSPパックでたまたま当たった巴さんしか持ってないです()

作者のカードゲーム事情は置いといて今回も重い雰囲気の無灰本編始まんます~


37話 ムショク ト タショク

燐子side

 

九条さんの過去を知ってから日が変わって、今は朝のホームルーム前だ。

 

九条さんは昨日のことがあってしばらく学校を休むこととなった。

 

家に着いてからLINEで氷川さんと話し合い、昼休み辺りに転校生『陰村炎』と話すことになった。

 

話す内容としては母親はどんな人とかそんな感じの話をしようかと思っているのだがどうやって話しかけるべきなのかを未だ思いついていない。

 

ホームルームが終わると氷川さんが話しかけてきた。

 

「白金さん、例の件なのですが・・・」

 

「はい・・・陰村さんと・・・どうやって話すべきなのでしょうか・・・」

 

「私も考えてはいたのですが・・・」

 

どうやら氷川さんもお手上げのようだ。

 

突然話しかけても怪しまれるだけだし仮に話しかけることが出来たとしても突然九条さんと彼の母親の関係を話しても信じないだろう。

 

そうやって悩んでる時だった。

 

 

 

ガラガラと扉が開く音がした。

 

次の授業の先生が早く来たのかと思い扉の方を見ると

 

「奏多~いるか~ここのクラスだったよな~」

 

それは陰村さん本人だった。

 

初めは九条さんを読んでいたことにびっくりしたが氷川さんと顔を合わせる。

 

これは願ってもないチャンスだ。

 

「九条さんなら今日は体調不良で休んでいますよ。」

 

「そうなのか?マジかー今日アイツんちで飯食わせてもらおうと思ったんだけどなぁ・・・」

 

「九条さんと・・・知り合い・・・なんですか?」

 

「んー?あいつとは昨日知り合ってよ、職員室で母さん待ってたら先生の手伝いかなんかで段ボール運んでてそん時話してダチになった!」

 

その事に私達はびっくりした。

 

まさか昨日九条さんが倒れる前に彼と出会っていたとは思わなかった。

 

「ところでアンタらは?奏多のことやけに気にしてるっぽいけどもしかしてダチ?」

 

「ダチ・・・よりかは同じバンドのメンバーですね。私は氷川紗夜と言います。」

 

「私・・・白金燐子って言います・・・」

 

「バンド!?あいつバンドやってたのか~!なあなあ、後で詳しく教えてくれよ。あいつが紗夜と燐子のバンドでどんなことしてるのかよ!」

 

「・・・!ええ、それでは今日の昼休み辺りに屋上とかでどうですか?今日は日差しが良いので屋上でも寒くないかと。」

 

「お、いいねぇ!それじゃあ昼休み頼むぜ!」

 

陰村さんが自分の教室に走っていった。

 

しかしこうも簡単に話をする機会を得ることができるとは思わなかった。

 

しかし陰村は九条さんとは正反対の活発で人当たりがよく、フレンドリーな人だ。

 

同じ母親に育てられた人だとは思えない。

 

「まさかこんなにも早く話すチャンスが来るとは思えませんでした・・・」

 

「はい・・・あの人が明るい性格で良かったです・・・」

 

とりあえず私達は陰村さんと話す昼休みまで待つこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

時が過ぎて昼休み。

 

私達は屋上にお弁当をもって上がっていた。

 

この学校は珍しく屋上を解放している学校である。

 

今井さん達によると羽丘も屋上を解放しているらしいがこの学校の生徒で屋上を使う生徒は少ない。

 

そんな屋上を選んだのは聞かれる人は少ないほうがいいのと単なる気まぐれだったと氷川さんは言っていた。

 

屋上に座っていると陰村さんが上がってきた。

 

「よっ、待たせたな紗夜に燐子!」

 

「はい、待ったと言っても私達も今さっき来たところですが。」

 

「まぁ立ち話もなんだし座って話を聞かせてくれよ!」

 

そういう事で私達は陰村さんに九条さんの話をした。

 

転校したはじめの方はあまり人と話せなかったこと、Roseliaにマネージャーとして入ったこと、九条さんと今井さんがいなくて大ピンチだったことなどRoseliaにあったことを大体話した。

 

「・・・とこんな感じ・・・です。」

 

「そっか、あいつすげー奴なんだな。あいつの事すげー気に入ったわ!」

 

陰村さんが話を聞いてすごく笑っている。

 

九条さんを、友達を心から尊敬しているような感じで本当に優しい人なんだなと私は思った。

 

すると氷川さんが本題を切り出した。

 

「そういえば陰村さんは転校した初日に九条さんと会ったと言ってましたが・・・」

 

「あー、入学手続きとかで母さんが職員室にいてよ、それを廊下で待ってたらあいつが荷物持って運んでたから話しかけたってわけよ。この学校ほとんど1年しか男子いないって言われたからな、2年で男子がいたのが嬉しくてよ。」

 

「陰村さんの・・・お母さんって・・・どんな人なんですか?」

 

「優しくて、しっかりしてて、めちゃくちゃ俺に甘い人でよ、この世で最っ高の母さんだぜ!」

 

その言い方に私達はすごく驚いた。

 

茂樹さんから聞いたイメージと陰村さんから聞いたイメージでは全くかけ離れていたからだ。

 

陰村さんは聞いた感じ嘘をつくような人ではない。

 

それでは何故こんなにもイメージに差があるのか・・・

 

「あれ、どうした?二人共難しい顔なんかして・・・」

 

「い、いえ・・・何も・・・」

 

「そ、そうです。陰村さんとお母さんは仲がいいんですね。小さい頃からそうだったんですか?」

 

「・・・?まぁ、いいや!母さんとは仲いいけど実は血が繋がってないんだ。俺が小学2年の時に父さんが再婚した相手でよ、そん時からめちゃくちゃ可愛がってくれてさ~この前奏多と話すって言って俺先に帰ってたけど後からどんな感じだったかって聞いたら『いい友達を持ったわね』ってさ!やっぱり見る目あるよ母さん!」

 

陰村さんがお母さんの事をベタ褒めする中、私達は疑問が確信に繋がっていた。

 

やはり陰村さんのお母さんは九条さんのお母さんであり、陰村さんとお母さんが出会った時期や九条さんと話したということも合っている。

 

「実は・・・今、九条さんは入院していて倒れていたのが学校の職員室前の廊下らしいんです。」

 

「なんだって!?それでなんで倒れたんだ?」

 

陰村さんが真剣に心配して聞いてくる。

 

やはり彼はこの件のことを全く知らなかったようだ。

 

「どうやらあなたのお母さんと会った後らしいのですが・・・」

 

「うーん・・・ダチの母さんと話して緊張してストレスで倒れたか?それで、奏多がいる病院は?」

 

「えっと・・・総合病院・・・ですけど・・・」

 

「そんじゃあ俺学校終わってから様子見に行く!・・・と言っても俺まだこの街慣れてないから2人とも着いてきてくれねぇか?」

 

「え、ええ・・・構いませんが。」

 

「ありがと!うぉっ!やっべ!」

 

陰村さんが屋上に掛けられている時計を見る。

 

あと5分で昼休みが終わる時間だ。

 

「俺、次移動授業なんだ!この話はまた後で頼むわ!」

 

そう言って陰村さんは走っていってしまった。

 

「・・・最後まで・・・言われませんでしたね。」

 

「でも・・・その方が良かったのかもしれない。彼、本当にお母さんのこと信頼してるみたいだから・・・」

 

私達も荷物をまとめて教室へ戻る。

 

戻る途中にお互いの携帯に通知が来た。

 

どうやらLINEのグループチャットの通知のようだ。

 

 

 

友希那『こちらは授業が終わったので奏多の様子を見に行きます 』

 

 

 

どうやら友希那さんからの通知のようだ。

 

そういえば羽丘は授業が午前に終わると言っていた。

 

 

 

燐子『こっちは陰村さんと話をしました。詳しい話は夕方の練習のあとに話します 』

 

リサ『りょうかいっ!紗夜も燐子も学校終わったら来れそうなの? 』

 

紗夜『それなんですが陰村さんも一緒に行くことになりまして、恐らく大丈夫だとは思いますが・・・ 』

 

友希那『そうね・・・一応気をつけて 』

 

あこ『それじゃあ先行ってまってまーす!』

 

 

 

羽丘組が出発したようだ。

 

「私達も出来るだけ早く見に行った方がいいですね・・・」

 

「そうですね・・・」

 

私達はまだ授業があるのですぐには行けないが、九条さんとしっかり話をしたいので我慢して授業を受けに行った。

 

 

 

 

 

 

しかしなんだろう・・・この胸騒ぎは・・・

 

 

 

 

 

 

 

友希那side

 

授業が早く終わった私達はすぐに奏多のいる総合病院へと向かった。

 

受付に面会の許可を貰い、奏多のいる病室へ向かった。

 

「着いたね・・・」

 

リサが袋を持ちながらそう言った。

 

病室へ来るにも手ぶらでは不甲斐ないので適当に果物などを買ってきたのだ。

 

「は、入ろっか・・・」

 

あこが扉をノックする。

 

すると置くから「どうぞ」と声がした。

 

「私たちよ、入るわね。」

 

そう言って扉を開く。

 

奥には九条さんがベットの上で座っていた。

 

「また来たよ、ソータ。」

 

『はい、ありがとうございます、今井さん。』

 

「・・・えっ?」

 

奏多の言い方に私達は驚いた。

 

今まで「リサ」と読んでいたのに突然「今井さん」と言ったのだ。

 

『湊さんに宇田川さんもありがとうございます。』

 

「奏多さん・・・どうしちゃったの?」

 

『どうしたって・・・普通ですよ。』

 

奏多が軽く笑う。

 

しかしその笑顔はどこか普通じゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

例えるなら・・・《色》がない様な・・・そんな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ソータ・・・まるで別人みたいに・・・」

 

『別人も何も、ぼくはぼくですよ。』

 

奏多が首を傾げる。

 

その目には光がともっておらず、表情もどこかぎこちなかった。

 

『今日はありがとうございます。しかし、せっかく来てもらったのは嬉しいんですが帰ってもらえますか?』

 

「で、でも・・・」

 

『すみません・・・しばらくは話したくないんです・・・』

 

「・・・そう、それじゃあ失礼するわ。突然来て悪かったわね。リサ、あこ、行くわよ。」

 

そう言ってわたしは病室を出る。

 

追いかけるようにあことリサが出てきた。

 

「ゆ、友希那・・・ホントにいいの?奏多をほっといて・・・」

 

「今の奏多は普通じゃない。変に触れると前の奏多に戻らない可能性があるから置いておく方がいいと思う。」

 

「友希那さん・・・」

 

奏多があそこまで変わってしまっては私たちではどうにも出来ない。

 

これは奏多が乗り越えるべき壁なのかもしれない。

 

そう思って私達は病院を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレデ・・・ヨカッタノカナ・・・」

 

『当たり前だろ、実際あの3人は傷つかなかった』

 

「タシカニソウダケド・・・」

 

『とにかく君は引っ込んでいろ。』

 

「・・・ウン」

 

時折側の感情が表に出てくるようになってきた。

 

これを抑えなければまた傷つき傷つけるかもしれない。そうなるのはゴメンだ。

 

昔のように同じ過ちは繰り返させない。

 

他人のためじゃない、『自分』のために・・・




次回『アレル ウラムショク』

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