無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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今の奏多の心を支配している負の感情の奏多を「裏奏多」と名付けたネーミングセンスが皆無に等しい作者です。
ということでタイトル通り裏奏多さん荒れます(笑)
どのように荒れてRoseliaとの間に亀裂を入れるか、そこの再現が難しかったです・・・
なお、いつもの奏多の一人称は「僕」、裏奏多の一人称は「ぼく」となっております。

それでは本編お楽しみください!


38話 アレル ウラムショク

「・・・ネェ、ホントニ ソレデ イイノ?」

 

 

 

 

『うるさいな、黙って見ていてって言っただろ。』

 

 

 

 

「ケド、アレジャア リサ ト ユキナ ト アコ ヲ キズツケルノデハナイカ?」

 

 

 

 

 

『あれぐらい言っておけば近寄ってこないさ。人間という生き物はわざわざ自分から傷つきにこない生き物だからな。』

 

 

 

 

 

「シカシ アイテガ キズツケバ キミ ノ イウ タガイニキズツケナイ ト イウ イミ ガ ナクナル」

 

 

 

 

『ったく・・・わかってないなキミ(僕)は、この程度で傷つくようでははじめにきつく当たった時点で二度と近づいてこないよ。』

 

 

 

 

 

「ケド・・・」

 

 

 

 

 

 

『悪いけどしゃしゃり出ないでくれないかな。側のキミ(僕)が前に出ちゃうとまた傷つくよ。』

 

 

 

 

 

「・・・ウン。」

 

 

 

 

 

側の感情が内側に戻る。

 

あの感じだとしばらくは表に出てこないだろう。

 

あの母親から虐待を受け始めてから心に芽生え始め、側の感情と共に成長していた負の感情が覚醒したのはついこの間だ。

 

ぼくが覚醒すると側の感情は衰弱しており、側の記憶を読むとかつて虐待を受けていた母親に出会ったことがわかった。

 

ぼくはこれを好機だと思った。

 

今までの虐待やイジメの時に貯まる「恐怖」や「ストレス」は全てぼくに蓄積されていたので、恐怖やストレスに耐性のない側の感情からしたら母親に出会ったのはかなりのストレスだっただろう。

 

側の感情が気絶している間に側の記憶を読み取り、この体の感情の主導権を側から奪うことにした。

 

ぼくを否定する側の感情に負けるはずがない、その結果今の主導権はぼくにある。

 

時折、側の感情が前に出る時があるが言葉で押し着れば内側に勝手に戻るだろう。

 

『・・・せっかく前に出れたんだ、誰とも関わらせないし誰とも関わらない。他人なんて信用できない、信用できるのは・・・ぼくだけだ。』

 

後は紗夜ってやつと燐子ってやつを待つだけだ。

 

側の感情にとっては一番交流のある奴らだ。

 

こいつらを、Roseliaってバンドから側の感情を引き剥がせば・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

側の感情は消えてなくなってくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぼくが僕を上回るのも時間の問題だ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

ようやく終礼が終わり、荷物をまとめる。

 

時間は3時半前といったところでここから病院へは30分ほどかかるので着くのは4時過ぎだろう。

 

スマホを見ると通知が来ており内容を見ると友希那さんからだった。

 

『奏多と面会した 私達は先にCIRCLEに行っておくから面会後に結果を教えて』

 

結果を教えてとはどういう事なのだろうか。

 

チャットでは言い難いことなのだろうかと考えていると誰かが私の肩を叩いた。

 

「ヒャッ!」

 

「し、白金さん?驚かせてしまいましたか?」

 

後ろを見るとそれは氷川さんだった。

 

様子を見るに行く準備は終わっているようだ。

 

「ひ、氷川さん・・・でしたか・・・」

 

「準備は終わりましたか?陰村さんが待っていますので早く行きましょう。」

 

「は、はい・・・」

 

私達は荷物を持って陰村さんを待つために校門前へ向かった。

 

 

 

 

 

 

校門前へ行くと陰村さんがそわそわした感じで待っていた。

 

「お待たせしました。」

 

「おう、早く行こうぜ。」

 

陰村さんが今すぐ走り出しそうな雰囲気で私達にそう言った。

 

「早く行きたいのはわかりますが・・・着く前にバテてしまっては・・・」

 

「・・・それもそうか。悪ぃな、奏多のために早く行きたくてよ!」

 

陰村さんは急ぎたい気持ちを抑えてはにかんで笑った。

 

やっぱり友達思いのいい人なのだと確認した後、私達は九条さんのいる総合病院へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

総合病院へ着くとまず受付の人に面会の許可を取りに行った。

 

「あの、205号室の九条さんに面会を取りたいのですが・・・」

 

「あ、はい大丈夫です。けど・・・」

 

受付の人は少し不安そうな顔をした。

 

「どうか・・・したんですか?」

 

「さっきも九条さんに面会したいって子達が来たんだけど10分ぐらいで出てきちゃってね・・・それにあの子うちの看護師たちにもあまり話さないみたいで・・・」

 

「あいつそんな人見知りだったっけ?俺が初めてあった時は普通に話してくれたけど・・・」

 

陰村さんが頭を悩ます。

 

確かに九条さんは話すのは苦手だが今井さんとの練習でかなり良くなっているはずだし恐らく先に面会に来たのは友希那さん達だろう。

 

何故そんなに早く出ていったのか全くわからない。

 

「・・・ここで悩んでいても仕方ありません。これは九条さんに会ってみないとわかりません。」

 

「そう・・・ですね・・・」

 

「んじゃ、あいつの病室に向かいますか!」

 

という訳で九条さんの病室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

『すみません、帰ってもらえますか。』

 

入って挨拶をすると開口一番これだった。

 

この態度に私達は戸惑いを隠せなかった。

 

「九条さん・・・どうしたんです・・・?」

 

『この前も言いましたがあまり話したくないんです。僕を気にかけてくれるのは嬉しいです。けど今はほっといてもらえると・・・』

 

「そういう訳にも行きません。私達はあなたの過去を知ってしまった。それを知ってしまった以上放ってはおけません。」

 

『けどこれはぼく自身の問題です。白金さんも、氷川さんも、Roseliaの人達には関係ないことです。』

 

「・・・っ!」

 

呼び方が違う。

 

今まで下の名前で読んでくれていたのに名字に戻っている。

 

彼は本当に私達の知る九条さんなのだろうか。

 

すると今まで黙っていた陰村さんが話し出した。

 

「・・・なぁ奏多、お前本当に九条奏多か?」

 

『本当・・・ってぼくは九条奏多ですよ。何を言っているんですか陰村くん?』

 

「いやさ、お前から感じないんだよ。昨日初めてあった時に感じたお前の個性を。」

 

『個性って・・・僕は元から・・・』

 

「いや、確かに感じた。なんか・・・こう・・・表現できねぇけどお前がお前だっていう感じは出てた。けど今はそれが無いただの屍みたいだぜお前。」

 

陰村さんがまくし立てていく。

 

それは今さっきまで見ていた明るく元気で友達思いの陰村さんとは全く違う冷静で落ち着いた陰村さんだった。

 

『屍・・・ですか・・・』

 

「倒れたのはストレスかなんかだって聞いた。けどその様子じゃあストレスより何かに怯えて逃げようとしてパニクって倒れたみたいだな。」

 

『なにを・・・言って・・・』

 

九条さんが強ばった笑顔を作る。

 

しかし様子からして図星のようだった。

 

「全く・・・お前に何があったか話してみろ。俺達に話せなくても親にぐらい話せるだろ。お父さんかお母さんにでも話してみろ。楽になるぜ。」

 

私と氷川さんはその発言にやばいと思った。

 

なんせ倒れた原因もこうなってしまった原因も全て自分の母親にあるのだから。

 

しかし陰村さんはそれを知らない。

 

「大体、親ぐらいきただろ?お父さんに話せなくてもお母さんにぐらい話せよ。あーあ、うちの母さんみたいに全員の母さんが優しかったらな~」

 

その発言を聞いて九条さんが下を向いて震え出す。

 

『・・・・・・れ・・・』

 

「ん、なんか言ったか奏多?」

 

『・・・・・・まれ・・・」

 

「なんだ?小さくて聞こえねえよ。もしかして話す気になったのか?」

 

「・・・黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!お前に何がわかる!親も!クラスメイトも!何もかもすべてから裏切られて!殴られて!傷つけられてきた!そんな人間に他人に話せだって!?ふざけるな!出来るもんならとっくに出来てる!」

 

初めての九条さんの怒声に全員が驚く。

 

しかし九条さんの顔には怒っているより苦しんでいるような顔で、その瞳には大粒の涙があった。

 

「そ、奏多・・・」

 

「確かにお前の母親は最高かもしれねぇ!ただ僕からしたらあいつは最低最悪の人間でしかない!」

 

「ちょっ、なんで俺の母さんが侮辱されなきゃいけねぇんだよ!」

 

「確かに今はお前の母親だ!けど昔は俺の母親でもあったんだよ!」

 

「なっ・・・!」

 

陰村さんが硬直する。

 

まさか自分の母親が昔友人の母親だとは思わなかったのだろう。

 

「嘘だろ・・・なぁ嘘だろ!?」

 

「陰村さん・・・事実です。」

 

陰村さんがそう言ってこっちを向いてきたので氷川さんが冷静に答える。

 

私はただ頷くことしかできなかった。

 

「・・・頼む・・・もう帰ってくれ・・・今は誰とも話したくないんだ・・・」

 

今までの勢いは消え、九条さんが泣きながら弱々しくそう言った。

 

「・・・陰村さん、白金さん。」

 

「・・・はい。九条さん、失礼します。」

 

「・・・悪かったな奏多。」

 

九条さんを置いて静かに病室を出た。

 

すると陰村さんが落ち着いて低いトーンでこちらに尋ねてきた。

 

「・・・なあ、奏多が言ってたことって本当なのか?」

 

「・・・はい・・・九条さんが言ってたことは・・・事実です。」

 

「私達は彼の叔父から全てを聞きました。しかし最初あなたのお母さんが彼のお母さんだとは思わなかったです。」

 

「俺だって初めてだ・・・母さんは昔のことを話すのが嫌いだった・・・その事は色々あるんだと気にしてなかったが・・・そんな事が・・・」

 

陰村さんが肩を落とす。

 

それもそうだ、今まで信じてきた人が今回の問題の原因だったのだから。

 

すると陰村さんは決心したような顔をして話し出した。

 

「・・・俺、母さんに昔のことを聞いてくる。」

 

「けど・・・昔のことを・・・話したがらないって・・・」

 

「何が何でも話させる。今回の件はうちにも問題があるみたいだし。」

 

「・・・では、よろしくお願いします。」

 

氷川さんがわかったような顔をして答える。

 

2人は連絡先を交換して病院を出たところで別れた。

 

私達は友希那さん達が待つCIRCLEへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クッ・・・マサカ ガワ ガ アソコマデ デテクル トハ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シカシ、ツギコソ ガワ ノ カンジョウハ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・黙れ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナニ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の僕に・・・誰も近づくな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マダ ソンナキリョク ガ・・・イヤ、チガウコレハ・・・!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう・・・独りにしてくれ・・・みんなも・・・負の感情も・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ム ノ カンジョウ・・・ダト・・・?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そっか、そんな事が。」

 

CIRCLEに到着し、3人に今さっきまであったことを話す。

 

友希那さん達はそれを黙って聞いていた。

 

「奏多さん・・・そんなに重荷を抱えてたんだ。」

 

「話してる時の九条さん・・・とても苦しそうでした・・・」

 

「どうにか、彼の心を治さなければ・・・」

 

全員が悩んでいると今まで黙っていた友希那さんが言葉を発した。

 

「・・・みんな、聞いて。」

 

「湊さん・・・?」

 

「今の奏多には私達の言葉はどうやっても届かない。話しかけても恐らく心を閉ざしてしまっている。」

 

「ならどうすれば・・・アタシ達に出来ることなんて・・・」

 

「あるじゃない・・・一つだけ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「歌うこと・・・それだけよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『ムショク ト ハイイロ ノ コンツェルト』
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