無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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はい、挫折編のラストです。
実は前回書き終わったあと次の日見直したらめちゃくちゃ恥ずかしかった・・・これが黒歴史というものなのか・・・
ということで今回その黒歴史の続きからです。
この小説書いてるおかげで作者が地味に成長してるところもあります。
おかげで座右の銘が『他人と違ってもいい、人生何事も楽しんだもん勝ち』になりましたw

カッコつけてないで『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』のラスト、お楽しみください!


40話 ~軌跡~ムメイ ノ ナマエ ユメ ノ ツヅキ

気がつけば体が勝手に動いていた。

 

 

 

 

 

 

彼の思いを受け止めるために

 

 

 

 

 

 

彼の悲しみを背負うために

 

 

 

 

 

 

彼の頭をこの胸に抱きとめていた

 

 

 

 

 

 

もう一人で抱え込まないで

 

 

 

 

 

 

そのままの彼でいて

 

 

 

 

 

 

そんな気持ちでいっぱいだった

 

 

 

 

 

 

彼は私を信じてくれた

 

 

 

 

 

 

私の胸の中で泣いてくれた

 

 

 

 

 

 

気持ちが伝わった

 

 

 

 

 

 

今まで彼にどれだけ支えられていたのかを知った

 

 

 

 

 

 

そしてこんな自分でも人を助けられるのだと知った

 

 

 

 

 

 

奏多side

「・・・ありがと・・・落ち着いた。」

 

気持ちが落ち着き燐子にそう言うと燐子はその手を離した。

 

彼女の顔を見るとその瞳には涙は残っているが笑っている。

 

「よかった・・・信じてくれて。」

 

「うん、燐子のお陰。」

 

すると今さっきまでどういう状況だったのかが頭をよぎる。

 

(まって・・・僕、今さっきまですごく恥ずかしいことしてたんじゃ!)

 

女子の前で思いっきり泣いたこと、今まで彼女を、Roseliaのみんなを信じきってなかったこと、そして彼女の胸の中に抱かれていたこと・・・

 

(額の感触・・・あの柔らかさ・・・あれってもしかして・・・)

 

僕の頭が熱くなってきた。

 

恐らくめちゃくちゃ赤くなっているのだろう。

 

「・・・っ!あの・・・その・・・今さっきのは・・・体が・・・勝手に・・・」

 

僕が赤面していることに気がついたのか燐子も顔がみるみる赤くなる。

 

話を変えなければお互い何も喋れなくなりそうだ。

 

「あ、あの・・・来て欲しい・・・所って?」

 

「う、うん・・・CIRCLEの第3スタジオ・・・来てくれる?」

 

「わかった・・・けど先に行ってて。色々と用事済ませていくから。」

 

「うん・・・先に行って待ってるから・・・」

 

そう言って燐子は病室を出ていった。

 

僕1人になったところで僕はやることをしなければならなかった。

 

 

 

 

 

 

「・・・いるか、『ぼく』」

 

 

 

 

 

 

『イマサラ ナンノヨウダ』

 

 

 

 

 

 

「話しておくことがある」

 

 

 

 

 

 

『ボク ヲ ミトメヨウト シナイ ゼイジャク ナ ガワノカンジョウ ノ ハナシ ナンテ キクキハ・・・』

 

 

 

 

 

 

「僕は・・・『ぼく』の事を認める」

 

 

 

 

 

 

『・・・ナニ?』

 

 

 

 

 

 

「確かにぼくの事は避けていたさ。嫌な思い、辛い思いを全部押し付けてそれを弱さだと思ってそんな自分は自分じゃないって思ってた。」

 

 

 

 

 

 

『・・・シッテルサ、キミハボクダ。キミノオモイナンテカンタンニ ワカル。』

 

 

 

 

 

 

「だったらわかるだろ。今の僕がどう思っているか。今の僕は人を信じて頼ることを知った。自分が変わるためには君を認めないといけない。」

 

 

 

 

 

 

『コノボクヲウケイレル・・・カ・・・ソノサキハ ジゴクダトシッテモカ?』

 

 

 

 

 

 

「もう地獄は味わったさ・・・それに今は信じられる人がいる。」

 

 

 

 

 

 

『・・・イイヨ、ケド マタザセツシタリシタラ コンドハボクガ キミノコトヲトリコムカラナ』

 

 

 

 

 

 

心の中の負の感情の気配が薄れていく。

 

過去にあった惨劇が霧が晴れたように思い出せる。

 

辛さ、悲しさ、怖さ。

 

それをすべて受け止めて今の僕という人間の糧とする。

 

もし挫折してもその時は支えてくれる仲間がいるのだから。

 

「・・・よし、行くか。」

 

明日には退院できるよう手続きをしてもらうようシゲさんにメールを送って白衣からパーカーとカーゴパンツという動きやすいラフな格好をしてみんなが待つ第3スタジオを目指した。

 

 

 

 

 

 

CIRCLEに久々に来た。

 

最後に来てから数日しか経ってないのにとても懐かしく思える。

 

「お、奏多くん!なんか久しぶりだね。」

 

声の主はまりなさんだった。

 

確かにいつもRoseliaの練習の時にカウンターに行くのは僕なのでそう思うとこうして会うのも久しぶりなんだなと思う。

 

「はい、お久しぶりです。」

 

「友希那ちゃんから聞いたよ〜体調崩してたんだってね。」

 

「え、えぇ・・・けどもう大丈夫です。」

 

「そうなんだ、よかった!そうそう、Roseliaのみんなは第3スタジオだよ。顔見せに行ってあげて!」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

友希那が上手いこと誤魔化してくれていたことに感謝して第3スタジオの前に立つ。

 

そこで手が止まる。

 

思い返せばみんなにかなり酷いことを言っている。

 

機嫌を損ねてなければいいのだが・・・

 

「し、失礼・・・します。」

 

部屋に入るとRoseliaのみんながなにか話し合っていた。

 

そして僕に気づくと一斉にこっちに来た。

 

「奏多、待っていたわ。」

 

「は、はい・・・遅くなった。」

 

「あ、奏多さん敬語抜けてる!」

 

あこに言われて今気づいた。

 

みんなに対して話す時使っていた敬語が抜けていた。

 

「ほ、ほんとだ・・・いつから・・・」

 

「奏多くん・・・病院で・・・話してた時も・・・そうだったよ。」

 

「り、燐子も敬語抜けてるよ!しかもソータのこと『奏多くん』って!」

 

「そ、そうですか?・・・そんなこと・・・ないと・・・思いますけど・・・」

 

「どうやら九条さんだけに対して敬語が抜けているようね・・・病院で何があったんです?」

 

あのことを話されると色々とやばい。

 

燐子が質問に答える前にやることをやってしまおうと思った。

 

「あ、あの・・・みんなに言いたいことがあるんだけど・・・」

 

そう言うと全員が静かになった。

 

僕は意を決して話し出した。

 

「まずは君たちに謝りたい、本当にごめんなさい。僕はたしかに君たちを信用していた。けど心のどこかでは信用できてなかった。そこは僕の未熟さであり弱さだ。そのせいで君たちを避けて傷つけてしまった。けど燐子に言われて心の霧が晴れたんだ。弱さから逃げてはいけない、向き合って受け入れなければならないって。だからもう1度君たちを信用したい。だから・・・」

 

「皆まで言わなくていいわ。」

 

「え・・・」

 

「私達があなたを信じなかったことってあった?」

 

そう言われて心にジーンとくる。

 

泣きそうになるがここで泣いてはだめだ。

 

「そうですよ。誰だって弱さや人に知られたくない面もあります。」

 

「それでもソータがこうやって帰ってきてくれたのがアタシ達は嬉しいんだよ。」

 

「あこ達はずっと奏多さんのこと信じてます!」

 

「だから・・・そんなに固まらなくていいよ。」

 

「・・・っ!みんな・・・ありがと・・・」

 

ほぼ泣きかけの僕の肩を友希那が掴む。

 

「次は私達の番よ。ここに呼んだ理由は一つしかない。あなたに聞いてほしい歌がある。」

 

肩を掴んだまま僕はステージの前の椅子に案内された。

 

そこに座らされるとRoseliaのみんながそれぞれの位置に立つ。

 

「これは本当はあなたの誕生日に送るはずの歌だった。けどこの歌は今のあなたに必要だと思ってみんなで完成させたの。」

 

そんな急ピッチで完成させたのか。

 

これでは彼女達に頭が上がりそうになさそうだ。

 

 

 

 

 

 

「それでは聞いて・・・『軌跡』」

 

 

 

 

 

 

『靴紐が解ければ 結び直すように』

 

 

 

 

 

 

ピアノの伴奏に合わせて友希那が歌を紡ぐ

 

 

 

 

 

 

『別れても途切れても また繋がる為に出逢うべく 人は歩んでゆく』

 

 

 

 

 

 

『バラード』

 

それはRoseliaが今までやったことのないレパートリー

 

 

 

 

 

 

『哀しみで 胸の中溺れそうならば 瞼閉じ迎えよう いつも変わらず 笑う貴方の瞳が ほらね…』

 

 

 

 

 

 

ほとんど時間がなかったのにこの完成度・・・

 

彼女達はどれだけ練習したのだろうか

 

 

 

 

 

 

『ただ綺麗で』

 

 

 

 

 

 

テンポが上がる。

 

恐らく次は・・・曲のサビ・・・

 

 

 

 

 

 

『“ありがとう”

歌をうたい ひたすら愛しさを告げ

溢れ出す想いは

ずっと星のように瞬くから』

 

 

 

 

 

 

僕はこの曲の名前が何故『軌跡』なのかようやく理解した。

 

バラードは基本別れなどを惜しみその人に感謝する曲、しかしこの曲はただ純粋な『感謝』の曲だった。

 

 

 

 

 

 

『“ありがとう”

廻る地球 貴方と私は進む

握る手離れても

終わらない絆がある

 

幾千も 永遠を重ね』

 

 

 

 

 

 

1分半ほどの短い曲、その曲が今終わった。

 

突如視界がぼやけ出す。

 

気がつけば僕は大粒の涙をポロポロ落としていた。

 

「練習時間が短くてこのぐらいしか完璧にこなせなかったけど・・・」

 

「・・・みんなと会う時は・・・絶対に・・・泣かないって・・・決めてたのに・・・止まんないじゃん・・・」

 

「それはソータがみんなの事大切に思ってる証拠だと思うな。」

 

「リサ・・・」

 

「多分この前のソータだったら泣かなかったと思うよ。けどソータすごく変わったじゃん。泣くって事は私達がソータのこと大好きな仲間だって思いが伝わったからだと思うよ。」

 

「大好きな・・・仲間・・・」

 

「そうだよ・・・奏多くんは・・・大切な仲間なんだから。」

 

「もう・・・泣かせないでよ・・・これ以上泣くと・・・涙枯れるじゃん・・・」

 

一人泣く僕の前にステージから降りた友希那が前に立つ。

 

「奏多、次からの練習・・・来てくれるわよね。」

 

そう言って手を差し出す。

 

僕は涙を拭い、その手を握った。

 

「・・・ええ、もちろん!」

 

「あなたの支えが私達の『色』を引き立たせる。奏多のこと、信用してるわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は無色だ。

 

 

 

 

 

 

 

しかし今はそれが青薔薇のバンドを引き立たせる。

 

 

 

 

 

 

自分の『色』を見つける

 

 

 

 

 

 

そんな『夢』は朧気となった

 

 

 

 

 

 

このバンドを引き立たせる『無色』でありたい、そんな夢になっていた。

 

 

 

 

 

 

他人が見たら笑うかもしれない。

 

 

 

 

 

 

それでも僕はこの夢の続きを見たい

 

 

 

 

 

 

僕は初めて自分が無色であることを誇りに思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』は終わりです。
あーやりたいこと全部やれた!次何しようか考えてないっ!(投稿日明日)
恐らくNFO編の前日譚やると思うんで!ひっさびさにファーリドラの「ルナ」を出す時がきたぞぉ!
それではまた明日!おたのしみに!

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