無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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この前ラストだと言ったけど大事なこと決着ついてないからエピローグです
なので流石に今回で終わると思います。

遂にお気に入り150件到達!これも皆さんのおかげです!評価バーに色もついて見た瞬間指震えましたw
今回はそれを記念して設定資料集のVer.2も仕上げようと思います。これが上がり次第作業に取り掛かります。

それでは『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』のエピローグお楽しみください!


エピローグ ムショクデアルカラコソ

『軌跡』の発表から日が明け、今日は月曜日。

 

久々に学校へ登校する日だ。

 

昨日病院で手続きを済ませ、無事退院した。

 

シゲさんはこれから忙しくなるらしく都心の方へ帰っていった。

 

実はシゲさんは丁度仕事の関係でこの辺りの人気バンドを取材していたらしく近くに支社があってそこで寝泊まりしていたそうだ。

 

昨日退院手続きのあと僕達Roseliaにも取材が来た。

 

インディーズを尊敬していること、FWFを目指していること、そしてこの6人で『自分たちだけの最高の音楽』を目指すこと。それを話した。

 

シゲさんに聞いたところPoppin PartyやAfterglow、Pastel Paletteにハロー、ハッピーワールド!の皆にも取材に行ったらしい。

 

編集が終わって出版されたら僕達に送ってくれるらしい。

 

それを楽しみにしながら僕は花咲川高校の門をくぐった。

 

 

 

 

 

教室の扉を開くと周りがざわついた。

 

久々の登校だ、無理もない。

 

「奏多くんおはよっ!久しぶりだねー!」

 

席に座ると後ろから丸山さんが声をかけてくる。

 

何度か席替えをしているはずなのだが何故か丸山さんとは席が隣前後になるという謎の引きをしている。

 

「おはようございます、丸山さん。」

 

「・・・奏多くん何か変わった?」

 

「変わった・・・?」

 

「うん、前よりなんか柔らかくなってる感じがする!」

 

自覚していなかったが多分この前の件で気が付かないうちに変わっていたのだろう。

 

するとドアの開く音がした。

 

入ってきたのは紗夜と燐子だった。

 

「紗夜!燐子!おはよー!」

 

「おはようございます、九条さん。」

 

「奏多くん・・・おはよう・・・」

 

燐子の言い方に何も知らない丸山さんは驚く。

 

「燐子ちゃん・・・その言い方・・・ねぇ、この土日に何があったの!?」

 

「えっ・・・その・・・色々と・・・」

 

燐子が誤魔化す。

 

僕も誤魔化し程度に笑って返す。

 

すると後ろから強い衝撃が来た。

 

「おーっす奏多!久しぶり!」

 

声の主は炎だった。

 

炎が僕の肩に腕を回していた。

 

彼はいつも通り元気そうだ。

 

「炎、おはよう。あとこの前はゴメンな、あんな言い方して・・・」

 

「あぁ、気にすんな。それとちょーっと来てくれ、話ある。」

 

炎が腕を引っ張って男子トイレに連れ込んだ。

 

「それで話って何?まぁ他の人に聞かれたくない事なんだろうけど・・・」

 

 

 

 

 

 

「母さんがお前に会いたいって。」

 

 

 

 

 

 

その言葉に一瞬体が固まる。

 

しかしすぐに平然を装って返す。

 

「う、うん、わかった。それでいつ行けばいい?」

 

「できれば今日。お前と会うことを条件に母さんから昔のこと色々聞いた。無理しなくていいけど・・・」

 

確かに母親と会うのは怖い。

 

しかし会って自分の気持ちを伝えなければ何も変わらないような気がした。

 

「・・・大丈夫、なんかあったら炎を頼るから。そん時は頼むよ炎。」

 

「わかった、とりあえず話したいことは色々あるから昼休み屋上に来てくれ。」

 

「了解。」

 

ということで男2人で屋上で話し合うことが確定した。

 

 

 

 

 

 

時は流れて昼休み。

 

僕は炎に言われた通り屋上に来た。

 

炎は先に来ていて待っててくれていたようだ。

 

「お待たせ、それで話したいことって何?」

 

「まずここに呼んだ理由だが・・・」

 

炎が真剣な顔付きをする。

 

僕は何故か緊張して生唾を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

「・・・弁当持ってくんの忘れて金もねぇ・・・だから奏多の弁当少し分けてくれ!」

 

 

 

 

 

 

炎が涙目で訴えかけてきた。

 

変に緊張したせいでガクッとなる。

 

「な、なんだ・・・そんな事か・・・」

 

「頼む~腹減って死にそうなんだよ~」

 

そう言って炎は僕にすがってくる。

 

「わかったわかった!だから服は引っ張るな!」

 

「奏多~ありがと~」

 

とりあえず座って弁当の蓋に適当なおかずを載せて炎に渡す。

 

それを炎はものすごい勢いで口の中に頬り入れた。

 

「は、早・・・」

 

「んぐっ!ぷはぁ~美味かったぁ!これ奏多が作ったのか?」

 

「そ、そう・・・だけど・・・」

 

「やっぱりお前の飯食いたくなってきた!この前の約束忘れてないよな!」

 

「当たり前じゃん。それは置いといて本当に話したいことって何?」

 

「・・・ああ、そうだったな。奏多、俺はお前の過去を聞いたけどそれでも今のお前のことをよく知らねぇ。今日母さんと話すにあたってもしかしたらもう二度と関わるなって言われるかもしれねぇ。それでも・・・それでもお前は俺のダチで・・・友達でいてくれるか?」

 

僕は炎の言うことを無言で聞いた。

 

少し間を開けて炎に返した。

 

「・・・昔の僕ならそのまま母親の言いなりになっていたのかもしれない。言うことを聞くことで母親から逃れようとしてたのかもしれない。けど今はもう違う。僕は僕で母親の奴隷じゃない。僕の生きる道を決めるのは僕自身だし、炎の生きる道も炎が決めることだ。それを親だろうと他人に言われる筋合いはないよ。だから炎はやりたいようにやればいい。炎がそう思っているのなら僕はそれに応える。ずっと友達でいるよ。」

 

「そっか・・・お前変わったな。だから初めて見た時からお前のこと気に入ってんだろうな・・・ありがとな奏多!」

 

「うん、気にしないで。その代わり今日何かあったら助けてよ~もうあの人に傷つけられるのはうんざりなんだからさ。」

 

「当たり前さ、例え母さんだろうと友達傷つけるやつは嫌いだからな!」

 

そう言ってお互い笑い合う。

 

すると屋上にある人が入ってくる。

 

僕は気がついたが炎は気がついていないようだ。

 

「・・・炎、昼休みなんか予定あったの?」

 

「ん?お前と飯食べる以外なんかあったっけ?」

 

「だったら何で・・・

 

 

 

 

 

 

後ろにいる白鷺さんは禍々しい笑顔で炎見てるの?」

 

 

 

 

 

 

炎の顔が固まる。

 

そのままゆっくりと後ろを向いた。

 

彼の顔には秋だというのに汗がダラダラ流れている。

 

「・・・ち、千聖・・・さん?」

 

「あら、炎くんは元気そうでゆっくりお弁当ですか?これから委員会の仕事があるっていうのに。」

 

白鷺さんの笑顔が怖い。

 

なにか良く分からない禍々しいオーラが僕達を襲っている。

 

「お説教が必要かしら?」

 

「そ、奏多・・・た、たす・・・」

 

「ごめん炎・・・こればかりは無理。」

 

「さ、行きましょうか。」

 

白鷺さんは炎の襟首を掴んで引っ張って行った。

 

炎は首を掴まれた猫のように大人しく涙目で引っ張られて行った。

 

炎の行く末を祈りながら僕は残った弁当を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

放課後、僕はRoseliaのみんなに『母親と話してくるから遅れていく』とLINEを送って炎と一緒に炎の家へ向かった。

 

炎が先に入ったのに続いて炎の家に上がる。

 

リビングに入ると母親が平然と座っていた。

 

「・・・母さん、ただいま。」

 

「おかえりなさい炎、そいつも連れてきたようね。」

 

「・・・話って何。」

 

「とりあえず立ったままでもこちらが話しにくい。座りなさい。」

 

言われた通り席に座る。

 

母親はコーヒーらしき飲み物を啜って話し出した。

 

「まずはあなた、うちの炎に近づかないでくれるかしら。あなたと炎が一緒にいたら炎にどんな影響が出るかわかったもんじゃないわ。」

 

「母さん・・・奏多を病原体みたいに・・・」

 

「炎は黙っていなさい。これはあなたの為でもあるのよ。」

 

僕は無言で聞いていた。

 

今話しても何も効果が無いと思ったからだ。

 

「炎はあなたと違って存在感や色々な才能がある。あんたは才能もない、存在感もない、極めつけはアンタを産んでから二度と子供を作れない体になった。あんたなんて産まなきゃ良かったわ。」

 

「母さん・・・そんな言い方」

 

「だから炎は黙ってなさい。」

 

炎もついに黙る。

 

こうなり始めた母親は止まらないことはわかっていた。

 

「アンタの人生はどうでもいいけど炎の人生は華やかで素晴らしいものにしてほしいの。だから二度と近寄らないでくれる?それとも昔みたいに体に刻み込んだ方がわかりやすいかしら。」

 

体が震える。

 

昔の惨劇を思い出す。

 

冷や汗が出る自然と拳に力が入る。

 

逃げ出したい。

 

傷つきたくない。

 

そんな思いが出てくる。

 

しかし逃げ出してはいけない。

 

だって・・・

 

 

 

 

 

 

今の僕には支えてくれる仲間がいるから

 

 

 

 

 

 

「・・・炎の人生は炎のものだ、あんたが決めることじゃない。」

 

「・・・何ですって。」

 

「あんたは炎に華やかで素晴らしい人生にしてほしいと言った。けどそれはあんたが炎に押し付けているだけのエゴに過ぎない。あんたの思う幸せが炎の思う幸せじゃあない。例えあんたが今の炎の母親だろうと炎の人生にとやかく言われる筋合いはない。しかもあんたと僕はもう赤の他人だ。僕こそあんたに誰と会おうが誰と友達になろうが言われる筋合いはないよ。」

 

「なん・・・ですって!この不良品!生きているだけで害悪な無色が!」

 

「無色か・・・今はその無色が誇らしく思えるよ。」

 

「・・・このっ!死んでしまいなさい!」

 

母親が激昂して隠してあった包丁を取り出して切りかかってくる。

 

「奏多!あぶねぇ!」

 

炎が止めにかかるが母親はもう僕の前に来ていた。

 

しかし僕は焦りはしたが怯えはしなかった。

 

なぜなら・・・

 

 

 

 

 

 

激昂した母親は標準を狂うからだ。

 

 

 

 

 

 

予想通り母親の包丁は標準が狂って左肩を浅く切り裂いただけだった。

 

左肩に痛みが走るが我慢して母親の足を払う。

 

すると母親はバランスを崩して近くの机の角に頭をぶつけてそのまま倒れ込んだ。

 

包丁は僕の座っていた椅子に突き刺さった。

 

「奏多!大丈夫か!」

 

「痛てて・・・大丈夫だよ。それより・・・」

 

僕は母親の方に視線を送ると炎は母親の脈を触った。

 

「・・・うん、脈はある。」

 

「そっか・・・とりあえず警察呼んだ方がいいかな、これは。」

 

「そうだな、面倒くさくなるけどこれは警察に任せた方がいいや。」

 

 

 

 

 

 

その後あったことをまとめると僕達は警察に連絡して母親は傷害容疑で逮捕、僕は怪我を見てもらうために警察病院へ、炎は何があったか言うため取り調べ室にに行った。

 

肩の傷は思っていたより浅く、数日で治るものだったが僕の体を見た医師は何があったか聞いてきた。

 

僕は昔の虐待のことを話し、母親は傷害容疑だけでなく虐待容疑もかかりかなり重い罪となり、刑務所行きが確定した。

 

炎は今日のことだけで済んだが僕は昔の虐待の件も何度も聞かれ気がつくと日は暮れていた。

 

炎によると父親は今日は帰ってこれないため僕の家に止めることになった。

 

炎に料理を振る舞い、談笑しながらその夜を過ごしたがRoseliaの練習に行けなかったのでこれから色々言われるだろう。

 

日が変わって僕達は一緒に学校へ向かった。

 

教室では先に燐子と紗夜がいた。

 

「おはよう、2人とも。」

 

「おはようございます九条さん。」

 

「おはよう・・・奏多くん。」

 

「昨日は行けなくてすみませんでした。」

 

「昨日の件は仕方の無いことです。それで・・・」

 

「うん、母親とは決着ついたよ。こうなったのはみんなのおかげ。本当にありがと。」

 

「よかった・・・奏多くん・・・優しい顔してる・・・」

 

「・・・こうなったのも君のおかげだからね、燐子。」

 

「昨日のことに関しては今日の練習できっちり話してもらいますからね。」

 

「それもそっか。わかったよ。」

 

 

 

 

 

 

彼は優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

それは心からの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

この日、彼は昔の縛りから開放された。




エピローグがいつも書いてる量より多い・・・!
との事で『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』は本当に完結です。この後資料設定集Ver.2を仕上げるとして次は何をしよう・・・
次に何をすればいいかメッセージ等でリクエストあったらやるかも知れません!リクエストはいつでもお待ちしてますのでよろしくお願いします!

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