前置きなんてほっといてとっとと本編入ります。(ただ書くネタが無いだけ)
それでは本編どうぞ!
この前のことから日が開けた。
紗夜はいつも通り練習には来ていた。
しかし昨日以上に浮かない顔をしていた。
「氷川さんの不調・・・まだ治らないですね・・・」
「そうだね・・・紗夜さんのギターなんかいつもより迫力がない・・・」
このまま不調が続けば次のライブにも影響が出るかもしれない。
そんな紗夜に友希那が話しかけた。
「紗夜、そんな状態で練習に参加されても困るわ。」
友希那がいつもの口調で話す。
実は昨日僕と友希那が別れる時に僕は友希那に「心配そうに話すんじゃなくていつも通り話してくれ」と頼んである。
紗夜の性格なら心配されると余計頑固になってしまうからだ。
「調子が悪いなら・・・」
「すみません。・・・すみません・・・」
「あ・・・ちょっと休憩入れよっか!良いよねソータ!」
「う、うん。それじゃあ30分ぐらいとろうか。」
「ってことでみんな今から30分休憩~!休むのも大事っ!」
リサにそう言われて今から30分休憩をとることになった。
「・・・すみません、少し出ます・・・」
そう言って紗夜はスタジオの外へ出ていってしまった。
「ちょっと紗夜・・・」
追いかけようとしたリサの腕を掴んで止める。
「ソータ・・・」
僕は無言で首を振る。
リサの性格上おせっかいをかけたくなるのはわかるが今は我慢してもらうしかない。
どうやらその気持ちは伝わったようでリサは我慢してくれたようだ。
今は紗夜自身が問題を解決するか、僕らに頼るのを待つことしか出来ない。
しかし心のどこかには紗夜を今すぐにでも助けに行きたいと思う自分もいるのも事実だった。
紗夜side
スタジオに居づらくなってたまらずスタジオを出る。
弾けば弾くほど自分の演奏がつまらないものに聴こえる。
こんな状態で演奏を続けるなんて出来ない。
「あ、あの・・・っ!紗夜さん!」
後ろから宇田川さんが声をかけてきた。
「・・・なんでしょうか。」
「その・・・よかったらカフェに行きませんか?甘いもの食べたら、その、きっと・・・紗夜さんの右手に宿る聖なる力が・・・えっと・・・」
相変わらず宇田川さんのいう事はよくわからない。
しかし私をカフェに誘おうとしてくれているのはわかった。
「宇田川さん・・・ごめんなさい。あまり食欲がないの。」
宇田川さんの誘いを断ってしまう。
確かに甘いものを食べたら気分がスッキリするが食欲がないのと今は食べる気力がない。
「・・・そう、ですか・・・」
宇田川さんが寂しそうにする。
私はふと疑問が湧いた。
確か宇田川さんにはお姉さんがいたはずだ。
「・・・宇田川さん。」
「は、はい!」
「あなたは・・・まだお姉さんに憧れているの?」
それは純粋な疑問だった。
妹からして姉はどういうものに見えているのか、それが気になった。
「もっちろんです!おねーちゃんは世界一カッコイイですから!あこの永遠の憧れですっ!」
「永遠・・・」
やはり思った通りの反応だ。
宇田川さんはずっとお姉さんを目標にドラムを続けているがRoseliaに入り、技術が上達してからもずっと目標としているようだ。
「あ・・・す、すみません・・・あこ、また変なこと・・・言っちゃいましたか・・・?」
宇田川さんがさっきの反応をまた悪い癖が出たと思い反省する。
聞いたのはこちらだ、反省しなくてもいいのに。
「・・・ていうか、急にどうしたんですか?そんなこと聞いて・・・」
「いえ、何でもないわ。・・・そろそろ時間ね、練習に戻りましょう。」
宇田川さんの質問を濁し、スタジオに戻る。
つまらない音でも今は弾かなければならない。
ただそれだけが重荷だった。
あこside
「たっだいま・・・」
「あこ、おかえり~」
練習が終わり、家に帰るとおねーちゃんが先に帰っていた。
「うん、ただいまおねーちゃん。」
「・・・どうしたあこ?なんかあったか?」
おねーちゃんに一発で見抜かれる。
家に帰るまで紗夜さんがなぜあんな質問をしていたのかずっと考えていた。
「・・・うん、あのね・・・」
あこは今日の練習であったことをすべておねーちゃんに話した。
おねーちゃんはそれをずっと静かに聞いていてくれた。
「・・・って感じで、紗夜さん、ここのところずーっと元気なくて。演奏もいつもの紗夜さんらしくないような気がするんだ・・・」
「へぇ、紗夜さんでもそんなことがあるのか。」
「うん。それで紗夜さんにね、『今でもおねーちゃんに憧れているのか』って質問されたの。あこは、おねーちゃんはあこの永遠の憧れですって答えたんだけど・・・どうして急にあんな質問してきたのかな?紗夜さんどうしちゃったんだろう?」
「うーん・・・アタシは紗夜さんとあまり話したことないからわからないけど・・・早く、紗夜さんの調子が戻ればいいな。」
「うん・・・あこも、そう思う。」
おねーちゃんが心配していると言ったのであこもそれに賛同する。
するとおねーちゃんは恥ずかしそうに笑った。
「・・・にしても、永遠の憧れかあ~。へへ、アタシはあこにそんな風に思ってもらえて嬉しいよ。あこのためにも・・・アタシもずっと、あこのカッコイイでいられるように頑張らなきゃな。」
おねーちゃんがそう言ってくれるたのはめちゃくちゃ嬉しかった。
「おねーちゃん・・・っ!やっぱり、おねーちゃんはカッコイイなぁ!」
「あはは!だろ~!アタシ、カッコイイだろ~?」
「うんっ!カッコイイー!」
おねーちゃんがそう聞いてきたので正直に答える。
やはり誰が何を言おうとあこの永遠の憧れはおねーちゃん以外ありえなかった。
紗夜side
時は流れて日が変わり次の日の朝。
私は一人朝早くからCIRCLEへ向かっていた。
今日の練習で失敗したらもう許されない。
そのためにも事前に個人練習に来たのだ。
しかし向かう途中に足が止まってしまう。
今日もあの音だったらどうしようと怯えて足がすくんでしまう。
「・・・あれ・・・紗夜さん?」
呼ばれたので後ろを振り向く。
声の主は宇田川巴・・・宇田川さんのお姉さんだった。
「宇田川さん・・・?」
「・・・あ、あの、少し付き合ってもらってよろしいですか?」
宇田川さんに突然誘われる。
「・・・はい。わかりました。」
私はその誘いに乗ることにした。
なぜなら、同じ姉として妹とどう付き合っているのか気になったからだ。
宇田川さんはこのあとCIRCLEでAfterglowの練習があるという訳でCIRCLEの前のカフェまで来て、向い合せで席に座った。
「・・・あ、あの!うちのあこがいつもお世話になってます。」
「え、ええ・・・」
宇田川さん・・・巴さんは少し戸惑っているようだった。
恐らく昨日、宇田川さんから話を聞いたのだろう。
「宇田川さん・・・いえ、巴さん。あこさんから私の話を聞いたの?」
「えっ・・・」
「巴さんの方から突然声をかけてくるなんて、他に理由が思い浮かばないですから。・・・私の演奏が上手くいってないと、そんな話を聞いたのでしょう?」
巴さんが少し慌てたような顔をする。
どうやら図星のようだ。
「あ、あっはは・・・ま、まあそんなところです・・・あこ、心配してましたよ。アタシも、あこにその話を聞いたから、声をかけずにいられなくって・・・」
「巴さん、気を使ってくれてありがとう。・・・そういうところも、あこさんの『憧れ』のもとなのかしら。」
「え・・・」
「あなたは、あこさんの『永遠の憧れ』なのでしょう?」
「あはは・・・まあ、そう見たいですね。」
私は巴さんに一番気になることを聞いた。
「あなたは・・・苦痛に感じたことはないの?ずっと憧れと言われ、追い続けられることが。」
巴さんは少し考えると思ったことを話してくれた。
「アタシは・・・あこがアタシを慕ってくれているのは純粋に嬉しいです。けど、時々ドラムもホントはあこの方がうまいんじゃないかって思うこともあります。でも・・・あこがアタシのこと慕ってくれている。それなら、アタシはあこの気持ちを大切にしたいし、応えたい。」
巴さんは一息置くと自分が思っている一番大切なことを伝えた。
「なぜなら、あこは・・・アタシのたった一人の大切な妹ですから。」
その言葉に私は衝撃を受けた。
それと同時に私はそんな風に思うことが出来ないと思った。
「・・・なんて、ちょっとカッコつけちゃいましたね?すみません、紗夜さんの方がアタシより年上なのに・・・」
「巴さんは大人ね。私は妹からの想いをそんな風に受け止めきれない。」
「アタシだってプレッシャーに感じることありますよ?あこのヤツ、アタシのこと全知全能の神!みたいに言うことありますからね!」
確かに宇田川さんはお姉さんのことをそんな風に言うことがある。
巴さんは息を整えると話を続けた。
「アタシは紗夜さんの抱えているものを知らない。それに、アタシが深く立ち入れる筋合いもないです。・・・でも、紗夜さんの調子が戻りますようにって、願ってます。」
「巴さん・・・」
「すみません、なんだか急に。それじゃあ、アタシは練習があるのでこれで失礼します。」
そう言って巴さんはCIRCLEの中へ入っていった。
「・・・たった一人の、大切な妹・・・」
その言葉を聞いて私は巴さんが強い人だと思った。
そして巴さんは私が思う姉というものの理想形なのではないかと思った。
妹ねぇ・・・
兄からしたら妹って、ろくなもんじゃないよ・・・
お兄ちゃんな作者の愚痴は置いといて明日で四日連続投稿のラスト!その次から修学旅行!
ということで次回もお楽しみに!