無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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新章『~Opera of wasterland~Neo Fantasy Onlineー猫とはじまりの歌ー』のはじまりです!
Determination Symphonyより先にする予定が無灰世界の時間の関係とアンケートの奴で後になりました。

前置きはここまでにして本編始まります。


9章~Opera of tha wasterland~NFOー猫とはじまりの歌ー
48話 ムショク ト ネコ


『猫』

 

それは数多の人間を『魅了』という技で虜にした動物の総称である。

 

今では様々なところで人間社会に対応していき、技を駆使しなから生きて、人間共を虜にしている。

 

更に猫には大きく二つの種類に分けられる。

 

『野良』と『飼い猫』だ。

 

この二つの決定的な違いはその生活にある。

 

『野良』は人間社会で餌となるものを探すため、日夜人々が行き交う街の中を動き回り、人間共の残した残飯や魚屋の魚などを奪って生活をしている。

 

そのため警戒心が強く、他の猫や人間にはあまり寄り付かない。

 

対して『飼い猫』は動ける範囲が制限され、時々動物病院等に連れていかれる場合もあるが、そのデメリットを上回る程に安全性と餌の保証がある。

 

更に人間に媚びることでさらなる餌を獲得できたり野良にはない『遊ぶ』という行動もある。

 

そのため人間に慣れているため人懐っこかったり人の前でも堂々としている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・さて、なぜいきなりこういう話を出したかと言うと僕は今大量の猫達に囲まれているからだ。

 

ここは猫カフェ『にゃぴねす』商店街に最近出来たカフェだ。

 

なぜここに来ているかと言うとこの店の開店当初、告知無しで開いたため客が入ってこなかったこの店に初めて入った『お客様第一号』としてマスターに顔を覚えられており、その後、友希那のバースデイパーティ会場として使わせてもらったこともあるので、その日から常連客として度々この店に通っているのである。

 

さらに言えばこの店の名物の『肉球ロールケーキ』が絶品で、猫よりかはこちらを目当てに来ている。

 

なので純粋にコーヒーが飲みたかったら『羽沢珈琲店』、ロールケーキが食べたければ『にゃぴねす』と使い分けているのである。

 

「九条くーん!ご注文の肉球ロールケーキ出来たよ~!」

 

「あ、はいマスター!今向かいます!」

 

今では常連客なため、マスターとはこんな感じに緩い会話をしている。

 

僕は猫がメインでいるスペースから人間メインのスペースに移動する。

 

人間メインのスペースと言っても猫達はそんなことお構い無しで床でゴロゴロしているのだが・・・

 

僕は高い椅子に座ってマスターに注文していた肉球ロールケーキを受け取る。

 

「いや~悪いね九条くん。毎度来てくれて。」

 

「いえ、ここのロールケーキが絶品なので。マスターももっと宣伝すればいいのに。」

 

「いやぁ、広告宣伝は苦手でねぇ・・・インターネットもよくわからなくて・・・」

 

「まぁ、マスターはネット苦手ですもんね・・・」

 

ロールケーキを頬張りながらマスターと会話をする。

すると高い椅子をもろともせず、1匹の猫が膝の上に乗ってくる。

 

「んにゃあ」

 

「ん?なんだモカか。」

 

乗ってきた猫の名前は『モカ』

 

うちのコンビニで一緒に働いている脳内年中パン祭りと同じ名前だ。

 

『モカ』の名前通りカフェモカのような色をして、垂れ耳で尻尾が短い猫だ。

 

ここに始めてきた時に一番最初に触れ合ったのがこのモカで、今では僕が来ると真っ先に飛んでくる。

 

「モカは九条くんにベッタリだね~」

 

「むぅ・・・やはりモカって名前はあっちと被るな・・・」

 

「九条くんのお友達にモカって名前の子がいるの?」

 

「はい、友達ってよりかはバイト仲間ですけどね。」

 

「へぇ~仲いいの?」

 

「そこそこって所です。パンを見せれば尻尾振ってこっちきます。」

 

「食べ物に目がないところもモカにそっくりだねぇ。」

 

話をしているとカランと店のドアが開く音がする。

 

「あ、いらっしゃいませ。」

 

「こんにちは、マスター。」

 

聞きなれた声がする。

 

後ろを見ると入ってきたのは友希那だった。

 

「あ、湊ちゃんいらっしゃい!」

 

「あ、友希那。」

 

「奏多・・・来てたのね。」

 

「うん、今日はロールケーキ目当てでね。」

 

友希那が隣の席に座る。

 

すると友希那が来たことを察したように猫エリアから猫達が一斉に近寄ってきた。

 

「フフッ、みんな・・・お待たせ。」

 

「「「「「「「ニャアン!」」」」」」」

 

「ら、ライブの時より・・・メンバーの統一感がある・・・」

 

「ライブの時はライブの時、猫達の時は猫達の時よ。」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

キメ顔で友希那にそう言われる。

 

正直何を言ってるかわからないのでとりあえず流す。

 

「湊ちゃんはいつものでいい?」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「わかった、すぐできるから待っててね。」

 

マスターがカウンターで準備をする。

 

するとコーヒーのいい匂いがしてくる。

 

「はい、湊ちゃん。コーヒーとにゃぴねす特製猫用ビスケット。」

 

「ありがとうございます。」

 

友希那がコーヒーの入ったカップとビスケットの入った袋を受け取る。

 

友希那がいつも通り砂糖とミルクモリモリでコーヒーを飲むと猫達は待っていたかのように鳴き出した。

 

「こらこら・・・1匹ずつ順番に・・・」

 

友希那が猫を見る時限定で見せる緩顔で猫をあやす。

 

すると猫達は順番を守るようにその場に座った。

 

そして1匹ずつにビスケットを渡していく。

 

「・・・友希那、Roseliaのメンバーより統一させてるよ。」

 

「人は人、猫は猫よ。」

 

「そうだけど・・・将来歌姫兼猫トレーナーにでもなる?」

 

「・・・わ、悪くないけど・・・歌手でいいわ。」

 

友希那が苦し紛れにそう言う。

 

今絶対悩んだだろ。

 

モカを撫でながら時計を見るとそろそろ3時前である。

 

「マスター、お会計を。」

 

「あれ?いつもより早いけど九条くん今日なんか予定あるの?」

 

「はい、この後友人とネトゲで会う予定なので。」

 

「そっか、それじゃあレジまで来て。」

 

僕が立とうとするとモカがそれに合わせて膝から飛び降りる。

 

華麗に着地すると少し寂しそうに「にゃ~ん・・・」と鳴く。

 

「・・・また来るからね。」

 

そう言って頭を撫でる。

 

モカは目を閉じて喉を鳴らした。

 

「それでは友希那、僕はここで。」

 

「ええ、また明日の練習で会いましょう。」

 

友希那がキリッとした顔で言うが頭以外は猫だらけなので迫力がない。

 

変に言うと機嫌を損ねそうなのでニャンニャンパラダイスの中邪魔をしないように会計を済ませて外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩いて5分後、突然雨が降り出した。

 

それもパラパラじゃない本降り並みのやつ。

 

確かに天気予報ではにわか雨に注意とは言っていたが心配ないと思い傘を置いてきたのが間違いだった。

 

(次から天気予報士の話はしっかり聞いとこ)

 

という謎の決心をしながら雨の中を走っていると

 

「・・・にゃん・・・」

 

と弱々しい猫の鳴き声がした。

 

声のした方を向くとそこには段ボールが一つあるだけだった。

 

しかし確かにその辺から聞こえたため、段ボールに近づくと布で包まれてはいるがそこにはやせ細って弱っていた子猫がいた。

 

多分このままほおっておけば子猫は確実に死ぬ。

 

しかし家には猫用の用具なんて一切ないし、猫に対する知識も強い訳では無い。

 

「・・・んぁもう!悩んだら負けだ!ごめんよ猫!」

 

考えるのをやめて布ごと子猫を抱いて雨の中を走る。

 

すこしデジャヴを感じながら家に走り込んで急いでお湯(と言ってもあまり熱くない)を沸かす。

 

そして小さなバケツの中に子猫を入れてあまり体が浸らない程度にお湯を入れる。

 

優しくお湯をかけながら温めて、すぐに体を拭いてドライヤーで遠距離から軽く乾かす。

 

猫は嫌がる気力がないのかじっとしていた。

 

猫を乾かし終わると猫の毛はモフモフになっていたが体がやはり細い。

 

何も食べていなかったせいだろう。

 

「・・・いそいで買いに行くか。」

 

僕は猫を毛布に包ませて1人で僕の働いているコンビニへ向かう。

 

コンビニに着くとそこにはモカ(人間)がいた。

 

「あれ、九条さん。どうしたんですか~そんなに急いで~」

 

「も、モカ!すぐにレジ打ちできる?」

 

「?・・・わかりました~」

 

とりあえず猫缶を三つほど取ってモカにレジ打ちしてもらう。

 

「猫缶ですか~?湊さんにでもあげるんですか~?」

 

「その事はあとで話す!とにかくありがと!」

 

お金を渡し、モカから袋を受け取って家まで走る。

 

家に入ると子猫は動かずにじっとしていた。

 

「待たせたね、とりあえず食べて!」

 

皿をとって猫缶を開け、中身を皿に移す。

 

子猫の前に置くと子猫は少し警戒しながらもニオイを嗅いで猫缶を食べ始めた。

 

「良かった・・・食欲はあるみたいだな・・・」

 

ふぅとため息を吐く。

 

こんなに走ったのは沖縄でアザラシのレイを抱いて走った以来だ。

 

さっきのデジャヴはそれだろう。

 

するとスマホに電話の着信音がなる。

 

相手は燐子だった。

 

「もしもし、燐子?」

 

『奏多くんどうしたの・・・?時間・・・過ぎてるけど・・・何かあった?』

 

「ご、ごめん!子猫助けてたら時間忘れてた!」

 

『子猫・・・?何か・・・あったの?』

 

燐子に軽く事情を説明する。

 

その説明に燐子は納得してくれたようだ。

 

『・・・そんな事があったんだ・・・』

 

「うん、だからもう少し様子を見てからログインするけど・・・次イベ発表までには間に合いそう?」

 

『うん・・・あと30分ぐらいかな・・・あこちゃんには私から言っておくよ・・・』

 

「うん、ごめんありがとう。それじゃああとで。」

 

そう言って通話を切る。

 

子猫はまだ猫缶を食べていた。

 

この後、実はNFOで新イベの発表があり、新しいタイプのクエストらしいのでそのイベントに対応するために準備をしようということで燐子とあこと僕で集まる予定だったのである。

 

発表が遅くて助かったと思いながらも子猫を見るともう食べ終わっていた。

 

子猫はどうすればよいのかわからないように辺りを見回していた。

 

僕はそっと手を伸ばして子猫の顔の近くに手の甲を近づける。

 

子猫は少しビビりながらも手の甲を嗅ぐとチロチロと舐め始めた。

 

その行動に僕の心は一撃で射抜かれた。

 

「やばい・・・かわいい・・・」

 

子猫は温まってご飯を食べて満足したのか拭く時に使ったタオルの元に行きそこで丸まって寝てしまった。

 

僕はその子猫に触りたい衝動を抑えて自室へ向かう。

 

あの様子だとしばらくは寝続けるだろう。

 

「・・・そうだ・・・名前考えなきゃ・・・」

 

自室へ向かう途中にそう考える。

 

いつの間にか僕はあの子猫を飼うつもりでいた。




ということで名前はまだ無い()
期限は木曜日まででリクエストやTwitter等で募集しますのでよろしくお願いします!

子猫のイメージ
白と黒の毛並み
フワフワ
種類は雑種

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