無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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今日やることが無さすぎてゲリラ投稿に至った隠神カムイです。

あらすじにも書いてあるとおり基本は火曜と土曜更新ですがたまにゲリラやります。

ゲリラで唐突すぎてよくわからないと思いますが内容としては良いものだと思います。
っていうか今回は多分無灰史上すごく良いものだと思います。(タイトル回収してるしつまりこれが最高の黒歴史の可能性)
あ、それと今回後書きないんで。

それでは本編お楽しみください!


61話 無色と灰色の交奏曲

今井さんから奏多くんの誕生日がクリスマスのひであることを知った。

 

更にその日に入っていたアルバイトが休みになったことも知った。

 

これならちゃんと思いを告げれるかもしれない。

 

次の練習の終わりに伝えられるといいな・・・

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

リサと話した日が変わって翌日、僕はいつも通りRoseliaの練習に参加していた。

 

まさか誕生日に入れていたバイトが無くなったのは予定外だけどこれはかなり嬉しい。

 

これでクリスマスをゆっくり過ごせるし、この前リサに言われた『クリスマスにバイト入れた独り身の高校生』に見られずに済む。

 

・・・まあ、バイトが無くなっただけで家で1人と猫1匹で誕生日を祝うことに変わりはないが。

 

そんなことは置いといてRoseliaは今、絶賛CIRCLEクリスマスライブのための最終調整を行おうとしている。

 

クリスマスライブに行う楽曲は2曲。

 

最初に陽だまりロードナイト、そして新曲の-HEROIC ADVENT-である。

 

Roseliaは今回クリスマスライブの最初を担当するので各バンドの曲をしっかりと聞くことができる。

 

その点、他のバンドを見て勉強ができるので正直かなりありがたい。

 

「ライブ本番まであと2週間切ってるわ、本番だと思って本気で行くよ!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

友希那を筆頭にメンバーが良い意味の緊張を持っている。

 

今回のライブはかなりいいものになると僕は感じていた。

 

 

 

 

 

 

練習が終わって帰る前、僕は友希那、燐子、リサと帰っていた。

 

紗夜とあこはそれぞれ用事があるらしく先に帰ってしまったのでこの4人である。

 

「そう言えば奏多、クリスマスの日、アルバイトを休むことにしたそうね。」

 

「あ、うん・・・そうだけど・・・」

 

「ごめーん・・・アタシが話しちゃった・・・」

 

リサが反省0で謝る。

 

別に知られたぐらいどうといったこともないが。

 

「それってつまり燐子と同じでクリスマスの日は用事が無くなったって事よね。」

 

「まぁ、そうなる・・・かな?」

 

「なら2人ともクリスマスの日に私の家にこない?お父さんもあなたに会いたいって言っていたし。」

 

予定がなくなっては断る理由もない。

 

「・・・うん、行かせてもらってもいいかな?」

 

「もちろん、燐子はどうするの?」

 

「私も・・・行かせてもらいます。」

 

こうしてクリスマスの楽しみが増えた。

 

僕は初めてクリスマスの日を楽しみになった。

 

そしてもう一つ、あることをやろうと決心した。

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

友希那さんに誘われてから話すタイミングを無くしてしまった。

 

その日から何度か話しかけてはいるがどうしても尻込みしてしまって伝えられない。

 

そのまま伝えられないまま日が流れ、クリスマスライブ当日となってしまった。

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

やって来たクリスマスライブ当日、お客さんもたくさん来て大盛況である。

 

いつも通り掛け声を合わせ、Roseliaは早くもステージに立っていた。

 

「Roseliaです。今日はCIRCLEクリスマスライブに足を運んでくださってありがとうございます。まずは聞いてください・・・『陽だまりロードナイト』。」

 

陽だまりロードナイトの演奏が始まった。

 

陽だまりロードナイトはRoseliaの楽曲の中で軌跡の次に思い入れのある曲なので、いい曲を聴くのはやはり良い。

 

いつも通りフードの中にいるレインはこの曲が一番のお気に入りのようだ。

 

「・・・ありがとうございました。続いて新曲です。聞いてください・・・『-HEROIC ADVENT-』!」

 

紗夜のギターソロより曲が入り出す。

 

練習の成果か練習以上に素晴らしいものに出来ている。

 

そして今までと変わっていたことは・・・Roseliaのみんなの表示が、鋭くはあるがとても柔らかいものとなっていた。

 

「ありがとうございました・・・Roseliaでした・・・」

 

Roseliaが退場していく。

 

ここから先は僕の仕事であった。

 

 

 

 

 

 

そこからは各バンドの新曲祭りだった。

 

続くAfterglowは「Y.O.L.O!!!!!」を、Pastel Paletteは「天下トーイツA to Z」、ハロー、ハッピーワールド!は「ハイファイブ∞あどべんちゃっ」を初公開した。

 

弦巻さんが僕を見た瞬間、勧誘しようとした事件はあったがそれ以外は予定通りに動いていた。

 

そして大トリのPoppin Partyである。

 

「こんにちは!私達、Poppin Partyです!まずは聞いてください!『ときめきエクスペリエンス』!」

 

ポピパの面々がハイテンションでライブを始めた。

 

会場内の熱気もやばいことになっているので最後にポピパを入れたのは間違いではなかったかもしれない。

 

そしてときめきエクスペリエンスが終わって最後の1曲である。

 

「次の曲で本日のCIRCLEクリスマスライブはおしまいです。だからクリスマスライブに相応しい曲を作ってきました!CIRCLEクリスマスライブ、最後まで盛り上がっていこー!」

 

戸山さんの掛け声に合わせて会場が盛り上がる。

 

こういった掛け声をRoseliaはしないのでそこがやはりポピパとRoseliaの違いだと思える。

 

「よーし!それでは聞いてください!『クリスマスのうた』!」

 

ポピパが最後にクリスマスらしい曲でラストを締める。

 

今回のクリスマスライブは大成功だった。

 

そして5バンドで行った打ち上げは物凄いことになったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

そして日が変わってクリスマス当日、友希那との約束の日である。

 

僕と燐子は予め待ち合わせをしていた。

 

そしてその待ち合わせ場所に『あるもの』で向かっていた。

 

「燐子お待たせ。」

 

「うん・・・私も今来たとこ・・・って!ば、バイク・・・!?」

 

燐子が驚く。

 

まぁ、無理もない。

 

僕はこの日のために免許を取って、今まで貯めに貯めたバイトのお金を使ってバイクを購入したのだ。

 

単に昔からバイクに憧れていたのもあるが、バイクがあれば移動も便利だと考えたからだ。

 

花咲川へのバイク通学は禁止されているがそもそも家が近いためそこは影響がない。

 

しかし今まで少し遠いと思っていたCIRCLEへはこれから楽して向かえそうだ。

 

予備として購入済みのヘルメットを燐子に渡す。

 

「かぶり方わかる?」

 

「ご、ごめん・・・わからない・・・」

 

そう言うので髪をまとめてもらい、ヘルメットを被ってもらって僕が顎紐を締める。

 

「・・・これで、よしっと。さぁ、乗って!」

 

「う、うん・・・」

 

僕が跨ってから燐子がバイクに跨る。

 

「しっかり捕まってて。スピード出るから。」

 

「・・・うん。」

 

燐子が腰に手を回してギュッと捕まる。

 

背中に柔らかい感触があるが煩悩を振り切って僕は友希那の家にバイクを向かわせた。

 

 

 

 

 

 

ということで湊家に到着した。

 

バイクは近くの駅の有料駐輪場に止めさせてもらった。

 

僕がインターホンを押した。

 

『はーい』

 

「あ、九条です。燐子も一緒に来ました。」

 

『了解〜ちょっと待ってて!』

 

どうやらインターホンに出たのはリサのようだ。

 

そして扉が開いた。

 

「やっほー、お待たせ〜!」

 

「・・・ここ友希那の家で間違いないよな?」

 

「確か・・・お隣さん・・・でしたね。」

 

「いやいや、間違ってないって!とにかく上がりなよ!」

 

「「お邪魔しまーす・・・」」

 

そう言って僕達は友希那の家に上がった。

 

僕自体ここに来るのは2回目である。

 

リビングに行くと友希那とその御両親がいた。

 

「こんにちは、それと・・・お久しぶりです悠斗さん。」

 

「ああ、九条くん。また話したかったよ。それに白金さん、あの時以来だね。」

 

「は、はい・・・!その・・・お久し・・・ぶりです・・・」

 

するとキッチンの方から友希那と同じ銀色の髪色をした女性が出てきた。

 

「2人とも初めまして、友希那の母です。これからも友希那の事をよろしくね。」

 

「「は、はい!」」

 

「もう・・・お母さんったら・・・」

 

「とにかく2人とも座って!そろそろ料理が完成するから!」

 

その後、僕達は友希那のお母さんの料理を堪能した。

 

聞いた話によると友希那のお母さんは料理研究をかじっているらしく、その料理は絶品だった。

 

僕は友希那のお母さんに料理のことを色々教わっていた。

 

1通り話した後、悠斗さんが僕を呼んだ。

 

「こうやって話すのも、あの時以来だね。」

 

「はい・・・あの時もらったスコアは大切に使わせてもらってます。」

 

「・・・やっぱり、君は変わったね。そして強くなった。」

 

「まだまだ強くはなっていません・・・僕はまだみんなに助けられてばっかりです。」

 

「けど、助けてもらったから他のみんなを助けるんじゃなくて君は助けるのを当たり前だと捉えてみんなを頼りながらもそれに報いるようにしている。それだけでも立派な強さだと、僕は思うよ。」

 

「悠斗さん・・・」

 

「さあ、友希那達の所に行ってあげて。シゲから聞いたよ、今日が誕生日だってね。今日ぐらい楽しまないと。」

 

「シゲさん・・・はい、楽しませてもらいます!」

 

僕はその後、友希那の家でのパーティをめいいっぱい楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

リサside

 

「私・・・そろそろ帰ります。」

 

燐子が突然そう言った。

 

時間的にはまだまだ余裕がありそうだが・・・

 

「燐子、ソータのバイクで来たんじゃなかったっけ?」

 

「私は・・・電車で帰ります。今日はありがとう・・・ございました・・・」

 

そう言って燐子は家を出てしまった。

 

ソータはさっきから友希那のお母さんと話している。

 

友希那のお母さんの料理は絶品なため、そのコツなどを聞いているのだろう。

 

すると友希那がソータに声をかけた。

 

「・・・奏多、燐子先に帰っちゃったけど大丈夫なの?」

 

「え、ホント!?」

 

「早く追いかけた方が良いわ、また明日練習で。」

 

「う、うん!友希那のお母さん、話はまた今度お願いします!それと皆さん、ありがとうございました!」

 

そう言ってソータは燐子を追いかけていった。

 

アタシは友希那と一緒に玄関の外に出た。

 

「・・・友希那、あれで良かったの?」

 

「・・・良かったのって?」

 

「友希那・・・何年も付き合ってきたからわかるよ・・・友希那がソータに対する気持ちぐらい・・・」

 

「そう・・・やはりわかっていたのね・・・」

 

「うん、だから聞くけど・・・なんで燐子を追いかけるように言ったの?燐子が先に言ったなら思いを伝えることが出来たんじゃ・・・」

 

「私では・・・ソータの思いに届かない。」

 

「・・・!!」

 

「私も、燐子が奏多に対する気持ちぐらいわかっていたわ。だからこそ自分から引いたの。燐子の気持ちを尊重したいのと・・・言ってしまったら・・・私が私ではなくなるような気がしたから・・・」

 

友希那が俯いてアタシの胸に額を当てる。

 

「友希那・・・」

 

「だからリサ・・・少しだけ・・・少しだけ・・・泣いてもいいかしら・・・」

 

そう言い終わる頃には友希那は泣いていた。

 

アタシはそれを頭を撫でることしかできなかったが自分の幼馴染は自分から引くことの出来る強い人間なのだと再確認した。

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

友希那さんの家を出てから数分が経った。

 

私は自分の情けなさに失望していた。

 

今までいくらでもチャンスはあったはずだ。

 

しかしそのチャンスを今までずっと無駄にしてきた。

 

そしてパーティーの中では話しかけるタイミングが無く、自分がなぜそこにいたのか違和感を覚えるほどだった。

 

やはり私は弱いままなのか、そう思って帰っている矢先だった。

 

「おーい!燐子ー!」

 

後ろから聞きなれた声がした。

 

とっさに振り返る。

 

そこには奏多くんが息を切らしてそこにいた。

 

「そ、奏多くん・・・!?」

 

「やっと追いついた・・・友希那に追いかけるように言われてさ・・・」

 

その言葉に私はハッとした。

 

友希那さんは私のために奏多くんを追いかけさせたのだと。

 

このチャンスは・・・絶対に無駄にはできない、私はそう思った。

 

「そ、奏多くん!」

 

「り、燐子!?どうしたの?そんな大きな声出して・・・?」

 

「そ、その・・・わ、私・・・」

 

呂律が回らない。

 

私は大きく深呼吸した。

 

奏多くんは少しびっくりしていたがすぐに落ち着きを取り戻した。

 

伝えるのは・・・今しかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ず、ずっと!奏多くんのこと・・・す、好きでした!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

追いかけて、追いついて、僕は燐子にこう言われた。

 

「あなたが好きだ」

 

と。

 

僕は初めその言葉の意味がわからなかった。

 

しかしその言葉を一文字ずつ噛み締めることでようやく意味がわかった。

 

そして様々なことが頭をよぎる。

 

そして僕はようやく一つの答えを導き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別で、大切で、心から守りたいと思える人がいること。

 

それこそが僕にとっての『恋』であったということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その・・・だめ・・・ですか?」

 

燐子がそう問いかけてくる。

 

その言葉に僕は首を横に降った。

 

「ううん、その気持ちを伝えてくれてありがとう。多分、その気持ちを伝えてくれなかったら僕はこの気持ちをわからないままになっていたんだと思う。僕も・・・燐子のことが好きだ。」

 

燐子の顔が赤らみながらもぱあっと明るくなる。

 

この顔がとても愛おしく思える。

 

これが恋を自覚したということなのかと理解する。

 

「だから・・・その・・・燐子、僕と・・・僕と、付き合ってくれませんか?」

 

僕は精一杯の気持ちを燐子にぶつける。

 

すると燐子はホロホロと涙を流し出した。

 

「そんなの・・・きまってるよ・・・こちらこそ、よろしくお願いします・・・!」

 

燐子が涙ぐみながら笑顔を見せる。

 

僕はこの笑顔を守りたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして僕は燐子の顎を引いてその艶やかな唇に自分の唇を重ね合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『フタリ ノ ネガイ』

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