無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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70話まで来て行き詰まりながらも頑張っている隠神カムイです。

祝バンドリ2周年!

運営マジ神!これからも一生ついていきます!

そしてドリフェスで何としてもすり抜けで燐子を狙う・・・!

小説本編ですがここに来てようやくNeo-Aspect本編に入れる・・・前日譚が長すぎた・・・

そういうことでやっとRoseliaの方々にはSMSに出てもらいます。

それでは本編どうぞ!


70話 オトズレタネイロ(後編)

『父が亡くなりました。葬式のため、月末までそちらに帰ることが出来ず、練習にはいけませんがSMSには必ず行くので』

 

私が家に着いてから1時間後、奏多がグループにそう送ってきた。

 

それは私達にも衝撃を与えた。

 

彼が曲の最終調整まで居られないのもあるがこれで彼が事実上両親をなくしてしまったことになる。

 

その悲しみはかなり大きいだろう。

 

「ミャーオ・・・」

 

レインが寂しそうに私の膝の上に乗ってくる。

 

私はレインの頭を優しく撫でた。

 

「・・・奏多が帰って来れないのは残念だけど、彼が帰ってきてから自信を持って演奏できたと報告できればいいわね。」

 

「ミャン」

 

レインが膝から降りて床に置いてあるクッションの上で丸くなる。

 

どうやらここに来て1時間でうちに慣れたらしい。

 

「フフっ、奏多と違ってふてぶてしいこと・・・」

 

私はグループにメッセージを送った。

 

『奏多、お父さんのことはお悔やみ申し上げるわ。レインはその間うちで預かるから帰ってきたら道具諸共取りに来て。それと他のみんな、奏多は来ることが出来ないけど練習はいつもと変わらず、それと奏多が帰ってきても胸を張って演奏できるように。』

 

と、そう送った。

 

他のみんなからは奏多に対するお悔やみの言葉と私の言葉に対する返事が返ってきた。

 

すると数分後、奏多からも返事が返ってきた。

 

『大阪を出るのがSMS当日ですが、おそらく午前中には会場に着くと思います。出番は午後なのでおそらく間に合うかと。楽屋には演奏終了後に戻りますので演奏楽しみにしてます。』

 

どうやら演奏の時間には間に合うようだ。

 

これを見てメンバーのやる気が上がったと思う。

 

そしてこのライブを何としても成功させなければならないという責任感も同時に生まれていたことを私達はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、昼過ぎのCIRCLEに奏多を除くメンバーが揃った。

 

しかしこの前と違って少し雰囲気が重い。

 

まぁ、昨日のあのことを知ってしまってはそうなるだろう。

 

「気を重くしても仕方ないわ。奏多がいなくてもやることは同じ、1曲1曲確かめるようにやるわよ。」

 

「・・・そうですね、本番は練習のように、練習は本番のようにです。いつも言っていることですが今回はいつものライブとは違う、この気持ちをしっかりしましょう。」

 

「そうだね、気を重くしても演奏に支障出るだけだもんね!」

 

「奏多さんがいなくても頑張れるってところを見せましょう!ね、りんりん!」

 

「う、うん・・・そうだね・・・」

 

燐子のテンションが少し低い。

 

しばらく奏多と会えないのだ、燐子にとってはかなり寂しいだろう。

 

「燐子、あなたの気持ちはわからなくもないけど、前にも言ったけど練習ではあくまでキーボードとマネージャーとしての立場をわかっていてほしいの。」

 

「は、はい・・・すみません・・・」

 

「・・・練習が終わったら、奏多に電話かけてみましょうか。多分夜なら奏多も空いていると思うの。だから練習頑張りましょう。」

 

「・・・はい!」

 

燐子の気合を取り戻させる。

 

今折れてしまっては困るのだ。

 

「それじゃあみんな位置について。ライブまであとすこししかない、本番の気持ちで行くわよ!」

 

昔の私なら励まさずに一喝していたかもしれない。

 

今でも馴れ合いは良くないとは思っている。

 

しかし馴れ合いとコミュニケーションは違うことを色々なバンドを見て知った。

 

これも全て私たちが最高の音楽を目指すための一つである。

 

ライブ当日まであと四日・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

親父との最後の別れを済まし、日は経ってライブ当日の日である。

 

祖父からは「あっちで1人暮らすのは大変やろ?どうや、儂らと一緒に大阪で生活せえへんか?」と誘われた。

 

しかし僕はそれを丁重に断わった。

 

まずRoseliaや他のみんなと別れたくなかったのもあるが親父と暮らした最後の家をずっと守りたかったのだ。

 

親父の遺骨を大阪の実家の仏壇に送るとシゲさんから親父が使っていた腕時計と葬式の時に使ったバイオリンを貰った。

 

実家にあったバイオリンは親父が高校時代の部活で使っていたものらしい。

 

親父が高校時代にバイオリンを引いていたことには驚きだがそれで合点がいった。

 

親父がバイオリンを小さい頃の僕に渡した理由を。

 

マネージャー活動を通して知ったことだがピアノやベース、ギターなどの弦楽器は気持ちがそのまま音に出る。

 

嬉しい時は嬉しい音、悲しい時は悲しい音が流れるので音を聞くだけでその人の気持ちが大体わかるのだ。

 

母親の虐待で当時ほとんどの感情を殺されかけた僕に唯一感情を知り得る方法としてバイオリンを渡したのだろう。

 

「・・・やっぱり親父には敵わないや・・・」

 

「兄貴には俺が後で言っておく。お前は早くRoseliaの所に行ってやれ。」

 

シゲさんが肩を叩く。

 

今は悲しさの余韻に浸ってる暇はない。

 

「・・・うん、行ってくる。」

 

僕は実家を後にし、新大阪駅へと向かった。

 

確かライブ会場は渋谷の近くだったはず。

 

早く行かなければならない。

 

「間に合うか・・・いや、間に合わせる!」

 

ライブ会場へ行くこと、それが今の僕にできる精一杯のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バス、新幹線、山手線を乗り継ぎ3時間ほどで渋谷へ到着した。

 

袖をめくり、親父から受け継いだ腕時計を見る。

 

時刻は11時35分、Roseliaの出番は55分からで後20分程である。

 

山手線の電車内で駅から会場までの時間を調べると徒歩で20分なので走ると10〜15分で到着するだろう。

 

ライブ前に激励を送ることは出来ないが見ることぐらいはできるだろう。

 

荷物は大きいものは全て宅配で送ってもらっているので手持ちには必要最低限のものしか持っていない。

 

走るのに大きな荷物がないのはかなり大きい。

 

「さて・・・走るか・・・」

 

スタミナには自信が無いが走るしかない。

 

僕は改札を出て直ぐに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那side

 

会場入りから2時間がたった。

 

いまだに奏多ここに来ない。

 

「遅いですね、奏多さん・・・」

 

「東京と大阪はかなり離れてるからね・・・かなり時間かかると思うけど・・・」

 

「でも・・・奏多くんは来るって言ってました・・・!」

 

「そうですね、今は彼を信じて待つしかないですね。だから私達はこれからのことに対して集中しましょう。」

 

楽屋に備え付けの時計を見る。

 

時刻は11時半、あと少しで舞台袖に移動しなければならない。

 

「・・・来た!ソータからの通知!」

 

リサが声を上げると全員がそちらの方を見た。

 

やはりみんな奏多のことが心配なのだ。

 

「えっとなになに・・・『あと少しで渋谷に到着します。会場には走って向かうので楽屋には向かえませんが会場から応援するので頑張ってください』だって!」

 

「よかった・・・」

 

「なんとか・・・間に合いそうですね・・・」

 

するとドアをノックする音が聞こえるとガチャりとドアを開く音が。

 

どうやらスタッフの方のようだ。

 

「Roseliaの皆さん、次の次なので舞台袖の方に上がってください!」

 

「さぁ、行くわよ。」

 

みんなを引連れて舞台袖へと向かう。

 

このライブが私たちを大きく変えるかもしれない。

 

しかしここも通過点に過ぎない。

 

私たちの目標はもっと先にあるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・これがきっかけだったのかもしれない。

 

私たちの『機転』の訪れと『音のズレ』の始まりは




次回、『Answer』

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