無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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ドリフェスは結局太鼓の巴姐さんしか出なかった隠神カムイです。

あ、ローソンコラボのグラス購入とリサ姉のクリアファイル貰いました。
ベース組はリサ姉好きだけどひまりが苦手・・・(前々から言ってる奴)

ということで今回から重くなりますが本編どぞ。


71話 Answer

走る

 

 

 

 

 

走る

 

 

 

 

 

走る

 

 

 

 

 

駅から走り出してどのくらい走っただろうか。

 

自慢では無いがスタミナは女子並みなので、すぐに息が上がってしまう。

 

それでも人をかき分け、信号待ちでイライラしながらも僕は会場を目指した。

 

そしてついに会場が見えてきた。

 

「つ、着いた・・・!」

 

腕をまくって時間を見る。

 

時刻は11時50分、あと5分しかない。

 

今から楽屋に向かってもみんなは今舞台袖だろう。

 

なら、観客席から見るしかない。

 

とりあえず入場券を買いにそのコーナーへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チケットカウンターの人によれば席は満席なのだそうだ。

 

なので本来は入場出来ないのだが、関係者である盛岡さんの名刺を見せると確認を取ってくれて入場はさせてくれた。

 

しかし、確認を取ったせいで時間がかかってしまい、55分となってしまっていた。

 

もうBLACK SHOUTが始まってしまっているだろう。

 

幸い、入場ゲートから観客席入口まであまり距離は無かった。

 

なので入ろうとしたのだが、どこかおかしい。

 

なぜなら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出入口から次々と人が出ていっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥からは確かにRoseliaのみんなの演奏が聴こえてくる。

 

つまり演奏中という事だ。

 

なのに人が続々と出ていってしまっている。

 

通り過ぎる人は

 

「さっきの演奏よかったよな〜今のうちに飲み物買いに行こうぜ!」

 

「トイレトイレ・・・どっちだっけ・・・」

 

「次のバンド目玉らしいよ?楽しみだわ〜」

 

など、Roseliaの演奏そっちのけである。

 

「なんで・・・観客の人出ていくんだ・・・?」

 

だんだん心配となってきたので観客席に入る。

 

中に入るとみんながしっかり演奏していた。

 

BLACK SHOUTが終わってLegendaryが始まった。

 

見た感じ、何も違和感はない。

 

みんなはノリに乗ってはいるようだし、ミスも感じられない。

 

演奏としては今までの中なら最高峰だろう。

 

しかし、強いて言うなら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『演奏は』上手い、で終わってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんで・・・演奏は確かに良くなってるのに・・・なんでそれだけで終わってしまってるんだ・・・?)

 

それにもうひとつの違和感があった。

 

それはRoseliaの演奏でも、観客の人達でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音が・・・皆の『音色』が聴こえないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今までは皆の音色がしっかりと聴こえていた。

 

友希那の歌、紗夜のギター、リサのベース、あこのドラム、そして燐子のキーボード・・・それぞれの音色を聞いて善し悪しを見分ける。

 

それが僕の才能・・・得意技であった。

 

しかしそれが全く感じられず、聴こえないのだ。

 

「なんで・・・なんで聴こえないんだよ・・・!みんなの音が・・・みんなのことが・・・!」

 

僕は左手で頭を抱えた。

 

走った汗ではない変な汗をかいているのがわかる。

 

それほど焦っているのがわかる。

 

『・・・ありがとうございました。』

 

気がつくといつの間にか演奏は終わっていた。

 

とりあえずみんなの元に向かった方がいいだろう。

 

チケットカウンターの人から関係者用の通行証を貰っているので楽屋に向かうことは出来る。

 

僕はみんなのいる楽屋へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽屋に着く。

 

しかし入口前に立ってみてわかるが中は静まり返っている。

 

しかし、電気はついているのが見えるのでおそらく中にいるのだろう。

 

変に緊張しながらも扉をノックした。

 

「・・・はい。」

 

「九条です、失礼します。」

 

扉を開けて中に入る。

 

着替えが終わっていたのかみんなは私服で、中は静まり返っていた。

 

「奏多・・・」

 

「うん・・・見てたよ、演奏。それに観客達のことも。」

 

「・・・私たちの中では悪くない演奏だと思いました。」

 

紗夜がそう言った。

 

皆も自分たちの『演奏のみ』はよかったことを感じてはいるようだ。

 

「けど・・・どうしてお客さんがどんどんいなくなっちゃったんですか?あこ、何回も間違えていたところも、今日はちゃんとできました。なのに・・・」

 

するとノックの音が聞こえ、扉が開く。

 

入ってきたのは盛岡さんだった。

 

「Roseliaさん、お疲れ様でした。」

 

「あっ・・・お、お疲れ様でした!」

 

咄嗟に返事を返す。

 

すると盛岡さんは少し不思議そうな顔をした。

 

「すみません、緊張していましたか?以前聴いた時と印象が違ったような・・・」

 

その瞬間、場の空気が凍りつくのがわかった。

 

皆が言葉を失う中、なんとかリサが対応してくれた。

 

「あ、あははは〜!すみません、緊張しちゃってたかもしれません・・・!」

 

「ま、まぁ高校生ですからね。まだまだこれからですよ。よければ、このあとの演奏も自由に聴いていってください。それじゃ、今日はありがとうございました。お疲れ様でした。」

 

盛岡さんは少し苦笑いしながら楽屋を出ていった。

 

「・・・・・・・・・」

 

場に沈黙が流れる。

 

誰も言い出せない中、リサが頑張って話を切り出してくれた。

 

「このあと・・・どうする?」

 

「・・・今日は、ここで解散にしましょう。」

 

友希那がそう言った。

 

いつもならこの後反省会をしているのだが・・・

 

そう考えていると紗夜がその質問をした。

 

「反省会はどうしますか?」

 

「別の日にしましょう。今はあまり冷静に振り替えれるとは思えないわ。・・・それじゃあ、私はここで。」

 

そう言うと友希那は自分のカバンを持って楽屋を出ていってしまった。

 

「あっ・・・友希那さん・・・!」

 

燐子が呼びかけるも友希那はそれを聞かずに出ていってしまった。

 

残されたみんなもあまり話せる空気じゃなさそうだ。

 

「・・・私達も帰りましょう。今の状況では他のバンドの演奏を聴いてもためになりません。」

 

「・・・そうだね、僕の方から帰ることを伝えとくからみんなは帰る準備を進めてて。」

 

そう言って楽屋を出て事務所の方へ向かう。

 

Roseliaにとってライブの失敗はこれが初めてである。

 

しかも初の失敗がこんな大きなライブだと後々必ずどこかで変化が起きてしまう。

 

それが良い変化になるか悪い変化になるか・・・その先は神のみぞ知ると言ったところか。

 

一番怖いのはRoseliaの解散だが、友希那のことだ、たった一度の失敗程度では解散はしないだろう。

 

しかし僕はこの先の展開が怖くて仕方なかった。




今回は短めとなります。

明日は日菜紗夜の誕生日、ということでやります特別編。

ということで次回もお楽しみに!

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