無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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なんだかんだ言って気がついたらガチャで引いたことないキャラが燐子だけになってしまった隠神カムイです。

どうして・・・推しに限ってでないんだ・・・っ!

ということでNeo-Aspectの続きですが時間が足りずに3000文字程度になってしまいました・・・5000文字ノルマは少しばかり時間がかかるな・・・

ということで本編どうぞ!


74話 ココニイルワケ

今日の練習で私と今井さんを除くメンバーが出ていってしまった。

 

湊さんのいう『仲良くなりすぎてしまったから音が昔に比べ悪くなった』という考えはわからなくもない。

 

しかし、だからといって昔に戻ったような練習をしていいとは思えないが、それ以外の方法は私でもわからない。

 

出ていってしまった人達のほとんどはそれが嫌だと思ったから出て行ったのだと思うが、私が見た様子だと1番傷ついていると思うのは隣にいる今井さんだ。

 

「・・・・・・」

 

いつもの様に明るくなく、ずっと俯いて考え事をしているようだった。

 

「・・・あの、今井さん・・・?」

 

今は声をかけないほうがよかったのかもしれないが、試しに声をかけてみる。

 

「あ、うん・・・なんか、アタシっぽくないよね。ごめん。なんか、アタシ・・・何してたんだろって思ってさ。みんなよりも演奏は下手だから、少しでも役に立てること考えてさ、みんながいい感じに演奏できるようにって色々やってきたのに、全部、Roseliaの為になってなかったんだよね。友希那の夢が叶うように、ってやってたのに・・・」

 

自嘲気味に話し、目には涙をうかべる。

 

そんな彼女を私は慰めの言葉をかけず、別の言葉をかけた。

 

「・・・あなたは、Roseliaのベーシストです。」

 

「えっ・・・?」

 

「技術は足りていませんが、私はあなたをベーシストとして認めています。あなたの存在意義は、ちゃんとこのバンドにあります。」

 

その言葉に対して今井さんが驚いたような顔をしたあと、クスッと笑った。

 

「紗夜・・・っ!はあ、もう・・・優しいなあ。けどさ、これからどうしていったらいいんだろう?」

 

「緊張感のある私達の音・・・たしかに、これは取り戻すべきですね。ですが、今より未熟だった頃に戻る必要はないはず。」

 

「うん。そう、だよね・・・?友希那だってこんな形で取り戻したいなんて、本気で思ってないよね。あこや燐子に言ったことだって、本心じゃないはず・・・アタシ、友希那にもう一度話を聞いてみようかな?あこ達のことも気になるし・・・」

 

今井さんのその提案を私は否定した。

 

「・・・今井さん。それでは今と変わらないじゃない。私達は変わらなければならないのよ。」

 

「だ、だってさ〜・・・やっぱり、みんなのこと心配だし。アタシ、今までみんなの間、取り持ってたじゃん?」

 

「あなたがこのバンドの精神的支柱になっているのは確かだけど、だからって、全部のトラブルをあなたが引き受けることはないわ。むしろ・・・その状態が、バンド全体を甘やかしていた可能性も・・・」

 

そこまで言って言葉を止める。

 

今はどれが原因だというのを探るのはやめておいた方がいい。

 

しかし今井さんは頭を抱えた。

 

「う〜・・・ホント、アタシってどこまでおせっかいなんだろ。全部ダメダメだよね?」

 

「精神的支柱としてのあり方は考えるべきだと思うけれど、何もかもがダメだったわけではないと思いますよ。」

 

そこまで言うと今井さんがすごく意外そうな顔をした。

 

別に変な事は言っていないと思うが・・・

 

「紗夜、なんかホント変わったよね。まさか紗夜にこんな風に言われるなんてな〜・・・」

 

その言葉に自然と笑みがこぼれる。

 

変われたのはみんなの協力があったからだ。

 

「変われた一因には、あなたも含まれているのよ。だからこそ、ダメたなんて言わないでほしいだけ。この問題は、あなただけに任せることじゃない。全員がそれぞれ向き合わなくては、Roseliaを取り戻すことはできない。」

 

「うん、そうだね・・・!紗夜、ホントにありがと。」

 

「まだ、何も始まってないわよ。」

 

この問題はまだ始まったばかり、感謝の言葉にはさすがに早すぎる。

 

「それでも言わせてよ!紗夜がいなかったらアタシ、もっとボロボロだったと思うし!だから考えなくちゃいけないってこともわかったし。アタシがここにいる理由を、アタシなりの向き合い方で。」

 

今井さんが決意の言葉を話す。

 

いつもの今井さんに戻ったようで何よりだ。

 

・・・今なら、この疑問を話してもいいだろうか。

 

「そう言って貰えるならあなたはもう大丈夫でしょう。・・・しかし、今日のことで一つ気になることがあるんです。」

 

「気になること?」

 

「湊さんが九条さんにかけた言葉・・・『ろくに音も聴くことが出来ないで、偉そうな口を叩かないで』」

 

「確かに言ってたけど・・・その言葉に気になることが?」

 

「はい、湊さんが宇田川さん達にかけた言葉は本心じゃないと今井さんはさっき言っていました。もしそれが本当だとしたらこの言葉だけはどうもそう感じないんです。言い返す際、つい本音が漏れてしまった、そんな感じがして・・・それに『ろくに音も聴くことが出来ない』とはどういうことなんでしょうか?」

 

「確かに・・・友希那のあんな必死な顔初めて見たし・・・」

 

今井さんも顎に手を当てて考える。

 

練習後からずっと考えていた。

 

湊さんが九条さんに怒られ続け、押され続けていた。

 

湊さんも負けじと返していたが、こちらからしたら九条さんだけではなく湊さんも必死なようだった。

 

自分の考えをずっと否定され続けたことに怒ったからなのか、それとも自分の考えが間違っているのを知っているからああ返したのか・・・

 

にしても『ろくに音も聴くことが出来ない』とはどういうことなのだろうか。

 

恐らく恐らく九条さんの身体的問題ではないだろう。

 

耳が聞こえないなら普通に会話もできるはずがない。

 

だったら・・・

 

「・・・ねぇ、紗夜。多分だけど友希那が言った『音を聴くことが出来ない』って奏多の才能の問題なんじゃないかな?」

 

今井さんがそう言った。

 

「才能・・・ですか?」

 

「うん、奏多がRoseliaに入った最初の理由って私達の演奏を1回聞いただけで私達のミスやズレを指摘したからでしょ?そこから友希那が奏多の才能を見つけてRoseliaのマネージャー兼監督としてやっているじゃん?もしかしたらその才能が上手く働いていないんじゃないかな?原因は・・・」

 

「・・・SMS・・・でしょうか。しかし九条さんはその日・・・」

 

「うん、演奏が終わるまでアタシ達のそばにいなかったし、1週間音楽と触れ合えなかった程度じゃ才能なんて衰えないと思う。」

 

九条さんの才能は私のように努力で手に入れたものではなく日菜のように天性的にあるものだろう。

 

天性的才能は努力で手に入れるものとは違い日を開けても衰えることは少ない。

 

10年以上使わないぐらいではないと衰えることはまずないため、1週間程度その才能を使わなかっただけでは九条さんの才能が衰えたとは考えにくい。

 

では何時からだ?

 

九条さんのお父さんが亡くなられた時?

 

それともお正月から?

 

もしかしてもっと前から・・・?

 

・・・少なくとも年越し前ではないだろう。

 

「・・・もしそうだとしたら原因はなんなのでしょうか?」

 

「多分奏多も音が聴こえないことを自覚はしていたんだろうけど・・・アタシ達じゃ何時からそうなったのかわからないし今の奏多には聞にくいし・・・」

 

「九条さんのことです、周りには話すことが出来ず溜め込んでいたんでしょう。九条さんの性格からしてこれほどのことならもっとも信頼している人にしか話すことが出来ないでしょう。」

 

「1番信頼してるのって燐子だけど・・・燐子も話しにくいし・・・あっ!彼ならどうかな、炎!」

 

今井さんが陰村さんを提案してきた。

 

彼なら九条さんと仲がいいので話を聞き出すことが出来るだろう。

 

「確かに陰村さんなら話せそうですね。では明日学校で彼に・・・」

 

するとスマホにメールの着信音が鳴る。

 

グループチャットアプリ等が普及した今、メールなんてあまり来ないはずだが・・・

 

「・・・すみません、失礼します。」

 

スマホを取り出して確認する。

 

送り主は学校からだった。

 

『本日、インフルエンザの生徒が一定数を超えたので2月7日まで本校は休校となります。』

 

・・・最悪のタイミングで休校のお知らせが来た。

 

これでは陰村さんにコンタクトをとることができない。

 

今井さんがスマホを覗き込んで苦笑いした。

 

「あ〜・・・最悪のタイミングだね。」

 

「はい・・・」

 

「とりあえず今日のところはこの辺にしようか。あこ達にはアタシから聞いてみるから。」

 

「よろしくお願いします。」

 

次の練習は二日後である。

 

それまでは私達のRoseliaを取り戻すためにどうすればいいのか動く期間でもあった。




次回、『トオザカル ユメ』

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