これから暑くなるので体調管理は気をつけましょう。
ということでラストまであとすこし!本編どぞ!
Roselia再興の兆しとなったものは見つけたがそれは後回しにし、僕達はついに燐子の家に到着した。
さっき確認をとったところ、あこはもう来ているらしい。
「着いたねー、じゃあ押すねー」
「あっ、ちょ」
僕の静止も聞き受けられることも無く、リサがインターホンを鳴らす。
まだ心の準備というものが出来てないって言うのに!
するとインターホンからは燐子ではない声が聞こえた。
『はーい』
「あ、はじめましてー、今井リサって言いますけど燐子さんいますかー?」
『ああ、言ってた燐子のお友達ねー、ちょっとまっててねー』
インターホンがブツリと切れる。
(今の絶対燐子のお母さんじゃん・・・やばいめちゃくちゃ緊張するし・・・身分なんていえば・・・)
めちゃくちゃ冷や汗が流れる。
紗夜はそれに気づいた。
「九条さん?どうしたんですか、汗なんてかいて・・・まだ2月ですよ?」
「いや・・・燐子のお母さんと会うの初めてで・・・どう身分を伝えたらいいか・・・」
「そんなのお友達でバンド仲間でいいじゃん!気楽に行こうよ気楽にー」
リサがバシバシと肩を叩く。
しかし緊張するものは緊張するのだ。
「九条さん、白金さんと付き合っているならいずれ合わなければならないのですから、覚悟を決めた方がいいですよ。」
「ううっ・・・」
そんなこんなしているうちに玄関の戸が開き、燐子と同じ黒髪の女性がでてきた。
「いらっしゃい、あなた達が燐子の言ってた子たちね。私、燐子の母です。」
「こんにちは、燐子さんのクラスメイトでバンドメンバーの氷川紗夜と申します。」
「同じくバンドメンバーの今井リサでーす。」
「え、えっと!同じくバンドメンバーでクラスメイトの九条奏多でしゅっ!その・・・燐子さんにはお世話になってます・・・」
緊張しすぎて呂律が回らない。
それを見て燐子のお母さんは「ふふっ」と笑った。
「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。燐子のお友達であるだけで私からしたら信用にあたる人だから。とりあえず入って。」
「「「おじゃましまーす」」」
とりあえず家に上がらせてもらい、燐子の部屋に案内される。
「燐子ー、お友達来てるわよー」
「うん、入れて・・・」
「そういうことらしいから、あとはゆっくりしてって。」
燐子のお母さんがその場をあとにする。
僕は燐子の部屋の扉を開いた。
「ど、どうもー・・・」
「おじゃましまーす。」
「お邪魔します。」
久々に燐子とあこと顔を合わせた。
2人は今しがた衣装を作り終えたところのようだった。
「こ、こんにちは・・・氷川さんに・・・今井さん・・・」
「ごめんね、急にソータを通じて押しかけちゃって。でも、こうでもしなきゃ話せないと思って。」
「九条さんや巴さんから話を聞きました。2人が最近衣装を作っていると。」
「は、はい・・・その・・・」
「その・・・私たち・・・っ!」
やはりあこと燐子はどうにも緊張しているようだ。
自分で言い出したくても言い出せない雰囲気を出している。
「あこ、燐子、落ち着いて。」
「「えっ・・・?」」
「二人が練習飛び出して行っちゃった理由がやっとわかったの。」
「だからこそ、力を貸して欲しい。」
「・・・どういうことですか?」
あこが聞いてきたので、二人に自分たちの気づいたことを話す。
二人はそれを聞いて少し驚いた顔をしていた。
「集団を・・・意識していた・・・?」
「ええ、あなた達2人が唯一、私達5人の中でずっとRoseliaを見ていてくれていた。」
「アタシ達が、もう1枚Roseliaを取り戻すためには、みんな全員、Roseliaであることをもう一度意識しないとって思って・・・ほんと、今更恥ずかしいことなんだけどね。今までもずっと、バンドをやってきたつもりなのにさ。」
「わ、私たちもずっと・・・Roseliaを取り戻す方法を・・・考えていたんです・・・」
「そうだったんですか?」
紗夜が少し驚いたようにそういった。
「はい・・・これからもRoseliaでいたい・・・そのために奏多くんに相談して・・・あこちゃんと2人で衣装を作って・・・」
「作っている時、ずっとRoseliaのことを考えていたんです!それが、すごく楽しくて・・・もっともっとRoseliaでいたいって思って・・・Roseliaのことを考えて、楽しい気持ちになるのって、ホントはダメなのかもしれない。もっと真剣に考えなきゃ・・・でも、あこはRoseliaが大好きだから!」
「ダメなんかじゃない。ダメなんかじゃないよ・・・あこ。」
「えっ・・・」
「あなたのその気持ち、これからのRoseliaにとってとても大切なものになると思うわ。その気持ちは、Roseliaに誇りを持っているってことだから。」
紗夜がそう言うとあこはパァーっと顔を輝かせた。
「はいっ!そうなんだと思います!あこ、Roseliaに誇りをもってます!」
「わ、私も・・・あこちゃんと同じくらい、Roseliaのこと・・・大切に思ってます!」
燐子が珍しくすこし大きな声を出す。
その思いだけでも十分だった。
「あこ、燐子。大切なことに気づかせてくれてありがとう。」
「い、いえ・・・私たちは、何も・・・それに・・・氷川さんや今井さんがRoseliaを取り戻したいと思ったのは・・・きっと、Roseliaのこと大好き、だからだと思います。」
「そっか・・・そうなのかも。きっと、それに気づけなかったのも、Roseliaのことをしっかり見れてなかったからなんだよね。反省、反省・・・」
「私も反省しなくては・・・」
二人の気が少し落ちる。
燐子がそれを「まぁまぁ・・・」と慰める。
「でも・・・私たちにそれを気づかせてくれて・・・Roseliaを取り戻そうとみんなを励ましてくれたのは・・・奏多くんだから・・・」
「いや、僕は何も・・・」
「そんなことないですよ!」
燐子の言葉を否定しようとするとあこがそれを止めた。
「あこ・・・?」
「きっと、奏多さんが動いてくれなきゃ、Afterglowのみんなと話さなければあこはこうしてりんりんと衣装作ってないです!きっと今でも考えっぱなしだったと思います!」
「・・・うん、ソータが『自分なりに考えて行動すればいい』って言ってくれなきゃ、アタシずっと何をすればいいかわからなかったし。」
「九条さんがいなければ、湊さんと話す決心ができなかったと思います。」
「私も・・・奏多くんが励ましてくれたから・・・こうしてまたみんなと話せてる・・・Roseliaが大好きって再確認できてる・・・奏多くんは、何もしてなくないよ・・・」
「みんな・・・」
そこまで言われて少し目頭が熱くなる。
しかし、今は泣く暇なんてない。
一層、Roseliaを取り戻したいという決心が強まる。
「ね・・・友希那もさ、Roseliaのこと、好きかな?」
「きっと好きだと思います!理由は、わからないけど・・・きっと、好きです!友希那さんはすごく厳しいけど・・・厳しいのって、Roseliaのことを信じているからですよね!Roseliaなら、もっとやれる!って思っているからですよね!」
「だからポピパのライブにも顔を出してくれた。Roseliaのために自分から動こうとしてくれた。きっと・・・Roseliaが好きだから。」
そうでなければ自分から動かない。
そうでなければあんな厳しい態度をとろうとした理由がわからない。
「みんなで・・・友希那さんともう一度・・・話してみませんか・・・?私たちは・・・既にRoseliaの『誇り』を持っているんだって・・・」
燐子の提案に乗らないものはいなかった。
恐らく今のRoseliaで、1番悩んでいるのは友希那だ。
彼女は「Roseliaのボーカルとして、折れるわけにはいかない」といつかの日に言っていた。
そして今、1番折れそうになっているのも友希那だ。
それを支えるのが、僕らの・・・メンバーとしての役割だと思っている。
「友希那は・・・今度、僕が呼ぶ。だから・・・」
「みんなで話をつけましょう。」
「あこ達は」
「既に」
「『Roselia』であるってことに・・・」
時間も時間なので、みんなは私の家をあとにした。
今井さん、氷川さん、奏多くんはなにやら話していたが、それも後に知ることになるだろう。
だが、共働きで同じ会社に行っているのにまさか母だけ休みなのは少し驚いた。
まぁ、これといって困ることではないので気にしてはないが・・・
するとドアがノックする音が聞こえた。
「誰だろ・・・はい?」
「燐子、私。入るわね。」
声の主は母だった。
母は私の部屋に入ってきた。
「素敵なお友達ね。」
「うん・・・突然ごめんね。来る前日に突然友達が来るなんて言っちゃって・・・」
「いいのよ、気にしなくて。あこちゃん以外に仲のいい友達が増えることに、お母さん嬉しいんだから。」
母はにこやかにそう言った。
すると母は突然肩を組んで顔を近づけてきた。
「もしかしてあの子?燐子の好きな子って・・・」
「ひゃっ!あ、あの・・・その・・・えっと・・・」
突然そんなこと言われて頭が真っ白になって慌てる。
母はそれを見て笑っていた。
「やっぱりかー!燐子、あの奏多くんって子に対してめちゃくちゃ明るい顔してるからさー」
「えっと・・・はい・・・」
「で、どうなの?あの子、なかなか可愛い顔してるじゃない?」
「えっと・・・クリスマスの日から・・・お付き合いしていて・・・」
「あらやだ、もうそんなところまでいってたのかー!なになに?お母さんやお父さんにはまだ内緒だったの?」
「だって・・・恥ずかしいし・・・奏多くんも、今日来るのとても緊張しているようだったし・・・」
「確かにガッチガチだったわねー、でも」
そう言うと母は私の両肩に手を添えた。
「あの子、心から優しい子ね。」
「・・・うん」
母にそう言って貰えて、私は心から嬉しかった。