無色と灰色の交奏曲   作:隠神カムイ

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今までのストーリー読み直してNeo-Aspect編の長さに驚いた隠神カムイです。

なにこれ!4ヶ月もやってんの!?

でも、長かったNeo-Aspectもようやく終わり!

前書きなぞ不要!本編どうぞ!


90話 Neo-Aspect ウゴキダス トケイノハリ

あの後、練習を行える状態ではなかったのでその日は解散となった。

 

学校も再開し、いつもと同じ・・・いや、それ以上に周りと、Roselia内での関係が良くなったせいか僕自身周りと話す機会が増えてきた。

 

学校での生活でいろいろあったのだが、学校での出来事は後に語るとして・・・

 

Roselia再結集して初の練習日、久しぶりの全員での練習だ。

 

そしてその日に友希那が持ってきたもの、それは新曲の歌詞だった。

 

それを見て全員が驚きの声を上げた。

 

「この曲・・・友希那がこの短期間で作ってきたの!?」

 

「ええ・・・私たちがRoseliaでいられるように。その気持ちを曲にしたかった。」

 

歌詞から感じ取れる思いや葛藤、そして何より今までで1番の完成度を誇る迫力。

 

友希那がまだ歌ってすらないのに曲の迫力を感じ取ることが出来た。

 

「わぁ・・・っ!カッコイイ!!あこ、今すぐ演奏したいっ!」

 

「素敵な曲ですね。珍しく私も宇田川さんと同じく、今すぐに演奏したい気持ちです。」

 

「ええ〜!?珍しく、なんて言わなくても〜・・・」

 

あこが頬を膨らます。

 

しかし、紗夜がここまで言う曲なのだ、みんな思うことは同じなのである。

 

「あっはは!紗夜、照れてるだけだって。これ、頑張って次のライブまでに間に合わせようよ!」

 

「はい・・・!ライブまで、あまり時間はありませんが・・・新しい・・・私たちを象徴する曲になりそうですし・・・」

 

「なにより、私たちには奏多がいてくれてる。アドバイス、できるわよね。」

 

友希那がじっとこっちを見てきた。

 

僕はその視線をまっすぐ返した。

 

「・・・任せて、僕はそのためにここにいる。だからみんなは己の技術を信じて演奏して欲しい。」

 

自分の思いを友希那にぶつける。

 

友希那はそれを聞いて「ふふっ」と笑うといつもの練習の時のクールな表情に戻った。

 

「今日からライブに向けて、集中していきましょう。」

 

「はーーーい!!」

 

あこが元気に反応した。

 

・・・そろそろ頃合だろうか。

 

「・・・あの、さ。みんなにこれ、食べて欲しいんだけど。」

 

そう言うとリサはカバンからクッキーを取りだした。

 

あの時、燐子の家に向かう途中に思いついたことがこれだ。

 

その日から入念に計画し、僕とリサと紗夜の3人でそれぞれ作ってきたのだ。

 

真っ先に反応したのはあこだった。

 

「わぁ・・・っ!クッキーだ!」

 

「これは・・・リサが作ってきてくれたの?」

 

「ううん、アタシと、紗夜と、ソータの3人で作ったの!」

 

「・・・前から一緒に作る約束はしていましたし・・・味はまだわかりませんけど・・・」

 

「大丈夫だって!アタシとソータと作ったんだから、味は折り紙付きだって!」

 

リサにそう言われるが、実際リサの方がクッキー作りは上手い。

 

しかし、味に関しては問題ないのは確かだ。

 

「クッキー作りはリサに負けるけどね、でもRoseliaにはやっぱりこれが必要かなって思ってさ。出すタイミングはリサに一任してたけど・・・」

 

「いや〜、いつ出そうかってすごく迷ったんだけどさ。なんとなく、今がいいかな〜って思ってさ・・・」

 

「クッキーには練習パフォーマンスを向上させる効果が見込めますので、練習前に食べるのがいいかと。」

 

なんか紗夜が評論家のような言い方で解説するが、みんなそれを気にせずクッキーを手に取った。

 

「それじゃあ頂くわ。・・・うん、美味しい。」

 

「はい・・・今まで食べた中で・・・1番美味しいです・・・」

 

「うん、すっごく美味しい〜!あこ、またこうやってみんなでクッキー食べられて嬉しいよ〜!リサ姉、紗夜さん、奏多さん、ありがとうっ!」

 

みんなが嬉しそうに食べる。

 

これは作りがいがあった。

 

「だってさ。やったね、紗夜!」

 

「さぁ、クッキーの効果が切れないうちに、早く練習を始めましょう!」

 

紗夜が赤面して急かしてくる。

 

やはりかなり心配していたのだろう恥ずかしさの中に安堵も見て取れた。

 

「はい・・・っ!」

 

そして今日の燐子はいつもよりいきいきしているようにみえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後

 

「友希那さんっ、今日のあこの演奏、どうでしたか?」

 

「ええ、悪くなかったわ。でも、奏多が練習中に言っていたようにいくつか問題点もあって・・・」

 

練習が終わり、その帰り道。

 

あこが友希那と練習のことで話している。

 

そしてその後ろで紗夜とリサがそれを見ながら談笑している。

 

そして隣で燐子と一緒にこの光景を見ている。

 

うん、『いつも通り』のRoseliaだ。

 

「いつも通り・・・だね。」

 

「ふふっ・・・Afterglowのマネ?」

 

どうやら口に出してしまっていたようで、燐子にそう言われた。

 

少し気恥ずかしくって頭を搔く。

 

でも、この『いつも通り』は『Roseliaのいつも通り』だ。

 

「そうかもしれないけど・・・僕達はAfterglowみたいな『いつも通り』じゃないよ。」

 

「わかってるよ。私たちは・・・Roseliaなんだから。」

 

「うん、でもこうやって帰れるのが懐かしく感じもついこの間までこんな感じだったような気がしてさ。なんて言うか・・・ついさっきまで時が止まって、今前に進み出した・・・みたいな?・・・ははっ、あこみたいにカッコイイ感じに言えないや。」

 

「時・・・前に・・・進む・・・」

 

燐子を見ると何やらボソボソ呟いていた。

 

燐子が突然こうなるのって珍しい。

 

「あれ、燐子?もしもーし?」

 

「そ、そうだ・・・!」

 

「うわっ!」

 

燐子が突然大きな声を出し、ビックリする。

 

その声に全員がこちらを見た。

 

「り、燐子・・・?」

 

「白金さん・・・?どうかしましたか?」

 

「あ、あの・・・あ、明日!新しく作ったみなさんの衣装・・・一度、回収させてもらえませんか・・・?」

 

燐子が突然そんなことを言った。

 

なにか不具合があることに気づいたのだろうか。

 

「何か問題があったの?」

 

「い、いえ!その・・・アクセントになるものがもう一つ欲しいと・・・思っていたんですけど・・・今・・・それが頭に浮かんで・・・」

 

燐子がスマホを取り出して時間を確認する。

 

ちらっと除くと6時半ほど、いつも燐子が通うアクセサリーショップは7時閉店だったはず。

 

「時間やばいよね、ここからだとすぐ僕の家だ。バイク使って行こう。」

 

「う、うん。ありがとう!こ、ここで・・・失礼します・・・!」

 

僕と燐子は急いで僕の家に向かい、バイクを使って商店街のアクセサリーショップに向かった。

 

向かう道中、僕は燐子に質問をした。

 

「燐子、何を買うの?」

 

「うん・・・時計や・・・歯車のアクセサリーが欲しくて・・・」

 

「あれ?Roseliaのテーマにしては珍しいね。」

 

確かにクールなイメージではあるが、Roseliaのテーマに少しズレているような感じはする。

 

でも、確かにあの新衣装には合うかもしれない。

 

「私たちの時は・・・一度止まってしまった・・・でも、こうして今再び、時計の針は進もうとしてる・・・これからも、『私たち』で進み続けたい・・・そんなモチーフで入れようと思って・・・」

 

「友希那が作った『Roseliaで奏でる曲』と燐子の『私たちで進み続けたい』という願いの籠った衣装。これなら、次のライブ凄いことになりそうだね。」

 

「うん・・・みんなで取り戻した『Roselia』だから・・・今まで以上のものにしたい。」

 

「うん、ライブ本番は僕は影から見ることしか出来ないけど・・・しっかり応援するからね。」

 

「・・・うん。」

 

僕はバイクを前に進める。

 

ライブ本番はもうすぐそこに迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてライブ本番。

 

場所はいつものCIRCLEのライブステージ。

 

SMSの会場と比べるとかなり小さいが会場の大きさは今関係ない。

 

今回のライブには今までお世話になった人を誘っている。

 

もちろん友希那の了承を得てる。

 

燐子が衣装を渡し、僕が着替えるのを待っていると一番最初に着替えを終わらせた燐子が出てきた。

 

「どう・・・かな・・・?」

 

「うん、似合ってるよ。今までのRoseliaのイメージを感じながらも新しいRoseliaの雰囲気も入ってる。何より燐子が作ったものなんだ、素晴らしくないわけがない。」

 

「っ〜〜〜!」

 

少しオーバーに褒めると燐子は顔を赤くした。

 

その表情の可愛さにこっちも顔が赤くなる。

 

「そ、そうじゃなかった・・・こ、これ・・・」

 

燐子はポケットから袋を取りだした。

 

それを受け取って中身を見る。

 

中に入っていたのはブレスレットだ。

 

「これは?」

 

「奏多くんに・・・付けて欲しくって・・・私が作ったんだ・・・」

 

「僕のために・・・!」

 

そのデザインをよく見ると薔薇や歯車が描かれていた。

 

「奏多くん言ったよね・・・『自分は本番では影から見ることしか出来ない』って・・・でも、私たちは6人でRoseliaなんだから・・・誰一人かけてほしくないから・・・それは、私たちがずっと繋がっていれる証であって欲しいって思って・・・」

 

すると燐子は袖をめくった。

 

そこには同じデザインのブレスレットがあった。

 

「時間が無くて2つしか作れなかったけど・・・友希那さんに相談したら奏多くんに渡しなさいって・・・それでもうひとつは私がつけてって・・・」

 

「友希那・・・」

 

友希那の計らいに感謝する。

 

すると扉が開き、あこが顔を出した。

 

「2人とも〜準備終わったから円陣組もうって!」

 

「うん、わかった。」

 

僕はブレスレットをすぐに腕につけると控え室に入った。

 

全員が衣装に着替え、統一感があった。

 

「あ、きたきた!円陣組むよ〜!」

 

みんなで円陣をくんで右手を真ん中に集め、小指だけ突き出す。

 

「今日のライブはいつものライブじゃない。私たちの・・・Roseliaの新しい旅立ちの、その1ページとなるライブ・・・いつも通り、全力で行くわよ!」

 

「「「「Roselia!ふぁいてぃ〜ん!」」」」

 

その掛け声とともに手を上にあげた。

 

これが、Roseliaの掛け声だ。

 

 

 

 

 

「・・・本当にこれ、変える気ないのかしら・・・」

 

・・・そして、いつも通り友希那が突っ込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・BLACK SHOUT、軌跡・・・2曲続けて聞いてもらいました。次でラスト・・・新曲です。『私たち』で作った新しい曲・・・どうか、聞いてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Neo-Aspect』──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜──────

 

リズムを刻むギターの音が・・・思わず走りそうになる・・・

 

・・・でも、今はただ、思いに任せて演奏したい・・・!

 

今までのことを無駄にしないために・・・

 

そしてこれからも成長し続けるために・・・!

 

 

 

 

 

リサ──────

 

友希那の横顔、すごく凛々しい。

 

アタシはこれからも、この5人のステージで・・・いや、6人で、この横顔を見ていたい。

 

他のどこでもない・・・アタシ達のステージで・・・!

 

だから、アタシはみんなを信じる!

 

信じて一緒に前に進むんだ!

 

 

 

 

 

あこ──────

 

あこ、カッコイイドラマーをめざしてたけど、これからは、そうじゃない!

 

あこは、『カッコイイRoseliaのドラマー』になりたいっ!!

 

この、超超超カッコイイ音楽を、これからもみんなと一緒にやりたいっ!!!

 

だからあこは、『カッコイイ』を追い求める!

 

だって、あこのカッコイイは、Roseliaのカッコイイに繋がると信じてるから!!

 

 

 

 

 

燐子──────

 

時計の針が、進んでいくのがわかる・・・

 

私たちの歯車が、噛み合って、音にのって・・・

 

これが・・・『私たち』の音・・・!

 

もう二度と離したくない・・・

 

もう一度繋ぐことのできたこの手を、絶対に離さない・・・!

 

それが・・・私たちが『Roselia』であれることだから・・・!

 

 

 

 

 

友希那──────

 

歌うことに罪悪感を感じた日・・・

 

未熟でも、歌っていいと赦された日・・・

 

それでも、私はまだ自分を好きになれなかった!

 

いつか好きになれたら・・・そう思って歌い続けていた。

 

でも、道は見えなかった。

 

ずっと、心の片隅に引っかかったままだった、歌への気持ち・・・

 

今なら・・・少しだけ好きと言えるかもしれない。

 

この、6人で作り上げ、5人で奏でる音を・・・

 

その音にのる、私の歌を───!!!

 

 

 

 

 

奏多──────

 

正直、ずっとこころで居場所というものを探していたんだと思う。

 

みんながここが居場所だと言ってくれても、心のどこかではまだ『孤独』だったんだと思う。

 

だから音も聴けなくなった・・・いや、聴こうとしなかった。

 

でも今は・・・『Roselia』が僕の居場所だから・・・!

 

それを貫きたい、自分に正直でいたい。

 

Roselia以外のみんなが、僕を信じてくれたように、僕もみんなのことをずっと信じていたい!

 

もう二度と手放せはしない。

 

僕の・・・みんなの暖かい居場所を・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブが終わって控え室。

 

その中は静まり返っていた。

 

そんな中、最初に口を開いたのは紗夜だった。

 

「・・・なんだか、信じられません。今日の私たちの演奏・・・」

 

「はい・・・わたしも・・・」

 

「あこ、まだ手が震えています・・・!」

 

「聴いているこっちも・・・全身が震えたって言うかなんて言うか・・・」

 

「なんだろう・・・この感じ・・・」

 

今まで感じたことの無い感覚。

 

未だに体が、心が震えているのだ。

 

そんな中、友希那が口を開いた。

 

「・・・本当は、本番直前まで怖かったの。『Roselia』と名乗ることが。・・・本当に私はRoseliaでいられている?また、離れて言ってしまわないか?・・・けど、歌ってみて思ったわ。私たちは『Roselia』なのだと。だから・・・これからもその熱を・・・誇りをもって演奏をし続けていきましょう。」

 

「〜〜〜〜〜〜っ!友希那ぁ〜〜〜!!」

 

すると張り詰めた糸が切れたのかリサが泣きながら友希那に抱きついた。

 

「り、リサ?!ど、どうしたの、急に抱きついて・・・!」

 

「だ、だってぇ・・・ごめん・・・アタシ、友希那のこと、本当に心配で・・・っ!変わらなきゃダメだって・・・ずっと友希那のこと、甘やかさないようにしてたんだけど・・・ほんとにほんとに、ずっと心配で・・・!」

 

「リサ・・・」

 

リサが友希那のことをとても心配していたのは見て取れていた。

 

友希那を助けたい、でも今は甘やかしてはいけないとわかっていたから、気持ちを抑えていた。

 

だからこうして今、リサは泣いているんだと思う。

 

「本当に本当に・・・戻ってきてくれて、よかったぁ・・・っ!また、6人で集まれて、本当によかったと思ったら・・・我慢できなくって・・・!ううっ・・・!」

 

「あこも、嬉しいですっ!こんなにカッコイイみんなと、カッコイイ演奏ができて・・・あこ、すっごくすっごく誇りに思っています!」

 

「二人とも・・・」

 

友希那が優しい目で2人を見る。

 

そして切り替えるようにいつもの友希那の顔に戻った。

 

「あまり、泣いてばかりでも困るわ。これから、反省会をしなくちゃ。」

 

「ええ、そうね。私たちの課題はまだまだあります。」

 

「今回の演奏、バッチリ撮れてるから!それ見て課題点を見つけよう!」

 

「ふふっ・・・はいっ・・・!」

 

「ビデオ見るならソータの家でいいよね。それじゃあ行こっか、いつもの場所に。」

 

「まずは片付けましょうか、それからです。」

 

みんながテキパキと片付けを開始する。

 

それを傍から見ていると燐子がすっと隣に立った。

 

「・・・戻ってきたね、私たちの居場所。」

 

「・・・うん、なら僕はこう言うべきなのかな。・・・おかえり。」

 

「・・・うん・・・ただいま・・・なんてね。」

 

たとえ新しくなっても、Roseliaが僕の居場所なのは変わりない。

 

ここが、無色の少年の、1番輝ける場所なんだから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




長い電車の旅から、ようやく解放された。

大阪から、新幹線、電車、路面電車を乗り継ぎようやく到着した。

「・・・ふふっ、ようやく着いた・・・まっててね、()()()




……To be continued

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