夢見るもの。 作:奇妙な夢追い人
違和感はあまり、と言うものであったが。
関節に、稼働に、違和感があった。
ひどく懐かしい場所。記憶に基づいた学業の場。しかし隣を行くのは記憶に無い少女。
スラリと伸びた手足、白磁の肌、銀糸のような髪、淀みなく輝く蒼眼。作り物の身体。
精密に美しく作られたそれはまるで意思を持っているように、恐らくは意思を持って、自分の隣を歩く。
窓に反射した自身の姿も作り物めいた物になっていた。違和感の正体はこれか。などと他人事のように考える。
靴で踏みしめた床に異物を感じた。床に目を向ける。ナニカの破片。自身や隣の少女の肌のような質感の。
事実それは肌であったのだろう。その肌の欠片が示すのはなんであるかはすぐに分かった。
砕けた人間があった。その人間は記憶に残るほど嫌われていた人物であった。胴は踏み抜かれ、腕は壁に引っ掛かっている。それでも人形は日常生活を送ろうとする。脚だけで立ち上がり、胴体と手はまるでそこにあるような動きをする。先のない肩を上げバランスを取ろうとする。背中が床に付いているというのに。駆動する度に綻ぶ身体をなんの意にも介さず。
人間は人形であった。異常を感じもせず普段の生活を繰り返すだけの。まるで幼児の人形遊びのような、ナニカをなぞるだけの行動。意識は存在せずそこに佇む。
まるで出来の悪いごっこ遊びのように。
自身は銀糸の人形について行きさらなる異常を感じ取る。
教え子に壊された人形。その口はカタカタと音を鳴らすのみで意味を持たない。表情も読み取れるほどの原型は保っておらず壁や机に手を叩きつける動作のみ記憶と同じだった。
カッターやハサミで関節を壊され動かなくなった生徒。惨状を意に介さず授業の準備を進めるもの。カタカタと無機質な音を立てて会話のマネをする人形。
耐えられるものでは無かった。異常を認識してしまえば、それは一般的な感性を持つものには苦しみしか残らないはずなのだから。
砕ける音がした。普段の生活を抜け出しそちらへ向かう。廊下で見たのは吹き飛んだドアと割れたガラス。満足に動く事のできなくなった人形。
ドアのあった枠から出てきたのは腕をだらんと下げた、人形。コチラに目もくれず、もはや動かなくなったそれに手首を振り下ろす。何度も何度も、腕がなくなるまで。
横を駆け抜ける、あんなのに加わりたくも、見つかりたくもない。必死ににげ、階段から転げ落ち、立ち上がろうとして、見えたのは
ニンゲンの、銀糸の様な
顔に赤い三日月を浮かべた少女。