何となくで始めてしまった処女作ですが楽しんでいただければ何よりです!
投稿はゆっくりめですがよろしくお願いします
追記・タイトルをベン・トーのようにセリフにしました
付き合えばいいんだろ争奪戦に by比企谷八幡
需要と供給、これら二つは商売における絶位の要素である。
これら二つの要素が寄り添う流通バランスのクロスポイント…その前後に於いて必ず発生する微かな、ズレ。
その僅かな領域に生きる者達がいる。
-人は彼らを【狼】と呼んだ-
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俺は逃げた。 自ら居場所と感じ取っていた少女達から逃げるように最低最悪な事をしてしまったと理解はしている。
きっと、俺達は3人で居るべきだったんだとあれほど痛感した日は無かった。 2人は「どちらかが選ばれても仕方がない。それに選ばれなくても結ばれた2人を祝福する」 そんな事を言っていたが人の繋がりはそんな強固なものではないと俺は思っていた。
俺にとっての『本物』はきっとあの2人が笑いあっていられる未来。 そこに俺が居なくてもきっと大丈夫なのだ。 だからこそ俺は逃げた。
ピピッピピッ…と目覚まし付きインターネットも出来る高性能メモ帳が音を鳴らすと同時に腐った目は見開かれる。
いや、悪夢という程じゃないけど寝覚めが悪いの何のね? そりゃ自分が悪いんだけどさっ!
昨晩の飯を抜いたせいか、力が出ないが鞭を打ち身体を起こすと最低限の身嗜みを整えバッグを持つ。
丸富大学の生徒となり早2年。小町の進学費用として、将来的には一人暮らしの費用として自らの仕送りを大幅に減らしてもらった。 これも小町の為ならば必要な事だと割り切りコンビニでバイトも始めた。 本当は働きたくないけど小町の為! 千葉の兄妹はこうであるべきだと思う。
わざわざ通販で買い貯めをしているマッ缶を片手にアパートから出ると桜とっくの前に短い役目を終え今や夏の季節がやって来ている。
徒歩圏内の大学へ迎えば毎日の様に絡んでくる警備員のオッチャンをあしらいつつ、パツキン眼鏡ガールに挨拶をし、そそくさとキャンパス内を歩いていく。サークル勧誘の時期も終わり適度な喧騒の中、教室へ辿り着けば俺は何時ものベストプレイスへ尻を滑らせ眠りの姿勢へ……
ぐーすかぐーすか、狸寝入りを続けていると一年時から変わらぬ人物が隣に腰を掛ける。 片耳ピアスで整った顔立ちをしている彼は女子生徒に隠れた人気もあり正直言うと近寄って欲しくない。 のだが、コイツとは持ちつ持たれつなのでそうとも言えない関係だ。
「………」
「残念な知らせだ」
ボソリと、俺にだけ聞こえる内緒話を始める。 やだ、2人だけの話だなんて友達みたい! などと偏った友達知識を考えているのだが…まぁ、それは上辺だけの考えで…コイツが残念と言ったからには碌でもない事なんだろうな。俺にとって。
「腐った目の男を探している女が1人現れたようだ」
「…はぁ…ありがたい情報だな。 んで、俺は何すればいい?」
「見つかりたく無いなら、暫く大学に来ないで西区に隠れるんだな」
「ばっか、年度始めだからって授業捨てたら単位があっという間に旅立つんだぞ? それに、西区って何が目的だラチェット。 疲れるのは嫌だ」
二階堂連。 庶民経済研究部に所属するガブリエル・ラチェットの頭目…1年の時とある問題でコイツと知り合い、なあなあな関係を築いている。
「少しばかり面白い事がな。 別に《氷結の魔女》や《湖の麗人》がいれば事が足りるが1人でも『狼』が多いに越したことはない」
「俺は暴力が嫌いだし、《帝王》の一件で俺は懲りたんだが…」
「…最近、仕送りが減って食生活が滞っているらしいな?」
エスパーなのん? いや、まぁガブリエル・ラチェットの情報網を使った情報収集で俺がバイトを始めた事とかから推測したんだろうけどね。
「情報は時に金より重いぞ。それと今はもうラチェットじゃない。ただの名も無き狼だ」
「わかった…わかったよ。 付き合えばいいんだろ争奪戦に」
「てか、《氷結の魔女》とか《湖の麗人》って誰だ?」
「此処いらでかなりの実力を持った二つ名持ちだ。 お前が来なくなってから色々あったからな」
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ラチェット…もとい二階堂に引き連れられ西区のスーパーホーキーマートへやって来た。 約一年ぶりの争奪戦参加なだけあって自分でもキョドっているのがわかる。実に怪しいのだが俺とて一年前はそこそこの奪取率を誇った狼なのだから堂々と弁当でも見ようじゃないか。スキル、ステルスヒッキーを発動! (常時発動型だから普段通りとか言わない)堂々とは何なのか? 俺に程遠いい言葉さ! 結局、一人でこそこそ弁当コーナーに寄るとピッタリと真横にくっついてくる女の子がいた。
「あら、貴方は初めましてですわね? わたくし沢桔梗といいます。 こちらは妹の鏡です。以後お見知りおきを」
ぺこりと、頭を下げたのは丸富大学附属高校の制服を身に纏った緩いカールをかけた女の子。そして髪型は違うものの顔立ちがどこか似た女の子…はっ、まさか姉妹の美人局なの? なにそれ新しい!
おっと、幼い頃からオヤジに刷り込まれた美人には気を付けろ…という若干、経験談が入ってそうな生々しい話を聞いた八幡にそんな手は通用しない。 残念だったな!
「何をしている比企谷」
どう喋ればいいのか分からずにキョドっていると救いの神…もとい、救いの二階堂がやってきた。 葉山みたいな無駄に爽やかな登場じゃないので本当にコイツのこういう所は好きだ。
ゾクゥ…
はうわぁ!? なんだこの悪寒は…
ぐ腐腐。
とりあえず余計な視線を避けるために俺と二階堂、姉妹共々カップ麺コーナーへ移動すると姉の方がキャッキャッとはしゃぎ話しかけ続けてくる。 俺? もちろん「…おう」とか「…だな」とかしか返事出来てないよ? だって八ry
「比企谷さんの連絡先も教えてくれません? あ、赤外線とかありません?」
女の子から連絡先を聞かれるなんて何時ぶりだろうか…ふと、思い出した顔が居るが頭を振りすぐに千葉の彼方へと吹き飛ばした。 携帯を出そうか出さまいかとウジウジしていると二階堂がササッ、自らの携帯に指を滑らせているかと思えば沢桔姉の携帯が可愛らしい音を鳴らす。
「あら、二階堂さんからヒキガヤさんの連絡先が…ありがとうございます」
「お、おう…」
自分の情けなさは今に始まった事じゃないのだが少し肩を落としていると弁当コーナーからこちらへ歩を進める男子高校生を見つけた。 見ない顔だな…と向こうも思ってるようだ。
「来たか、変態」
え、変態なのん? 変態ってHENTAIの変態? やだ、二階堂さんってば人脈が広いのねっ!
「変態言うな! …と、えーとはじめまして?」
「…お、おう。はじめましてだな」
「まぁ! まぁまぁまぁ! 佐藤さん、また懲りずにやって来ていただけたのですね! 今日もわたくし達にボッコボコにされて惨めな気持ちになるというのに…いい心掛けですね! まるで……」
流れるような侮辱を放つ沢桔姉だが突然壊れたのかフリーズする。 二つ名が変態とは…この佐藤という男は何をしたんだ…? そんな事を考えているとアブラ神がスタッフルームから現れればザワッ…、身の毛がよだつ程の殺気を感じ取る。
あぁ、こんな感覚久しぶりだ。 舞台に上がった醜い道化を見る様な侮蔑や嘲笑の視線ではない。 一人一人が俺を、俺は一人一人を明確な『敵』として感じ取っている。
半額のシールが貼られた弁当の数は5つ。
十数人居る狼の中で今宵の勝者は5人のみ。
ぼっちこそ至高。 孤高こそカッコイイ。 あ、でも痛いのは勘弁な専業主婦志望な俺がこうなるとは予想だにしなかった。
スタッフルームのドアが開かれ揺れる…ゆっくりゆっくりと二つの扉の距離が縮まり、そして閉じきった。
ー 風が巻き起こった ー
凄まじい乱戦が目の前で繰り広げられている。 え、なんで俺は参加してないかって? それはアレだよアレ。 久しぶり過ぎて走り出そうと思った瞬間に自分の脚に脚を引っ掛けるなんて器用なことしてすっ転んだ。
しかし、まぁ出遅れたのは正解かもしれない。 あの双子の姉妹がカゴを用いて容易く他の狼達を撃滅していく姿が目の前で繰り広げられているからだ。その実力は二つ名持ちクラスと言っても過言では無さそうで軒並み俺と同レベルぐらいの連中はホコリを払うように蹴散らされている。いくら腹の虫の加護があれど的確に急所を突かれて沈められてしまえば翌日のダメージは笑っていられるほどではない。 二階堂が追ってる狼って奴らの事か…あ、俺もそろそろ弁当取りに行かないとな。
双子と拳打を交えながらジワジワと弁当棚へと躙り寄る佐藤と呼ばれた少年と二階堂は今二つ彼女達に追い付けない実力差が目に見える。 佐藤くんは経験の差、二階堂は戦略の差だろうか? 最も、相手は2人なので戦略もマンパワーも2倍なわけだが。
ステルスヒッキーのお陰もあってか本人に気が付かれることもなく佐藤くんの背後へ回り込むと、挨拶代わりにトントンと肩を叩いてやった。
何事かとクルり、体を捻りこちらを向いた佐藤くんの顎へ下から上へ勢いが乗ったアッパーを全力で叩き込むと仰け反った身体を支える両脚を払いそのまま地へ沈ませた。 うん、俺の黒歴史時代に培った我流殺法は健在! やったね八幡、死体が増えるよ!
双子はというと今しがたまで拳を交えていた佐藤くんが突然、自分達から目をそらしたかと思えば勝手に倒れたように見えただろう。 ふっ、ボッチにかかればアサシン家業なんて容易いもんよ…
脚を止めることなく佐藤くんを飛び越えて弁当コーナーから一つの弁当を掬い上げる。 偵察の際に目を引いたこの一品!
『甘く柔らかなベールに包まれた爆弾にキミは弾ける!!!! チーズ in ロールキャベツ弁当 ¥640』
…………ネーミングまでは気が付かなかったが何とも凄まじいネーミングをしているしそれだけでこの弁当の重みを物語っている。 弁当片手に固まった俺をようやっと視界に入れたのか1人は感嘆の声を、もう1人は忌々しげに声を上げた。
「まぁ!」
「ちっ、比企谷か!」
俺の存在に気がついてから残り4つの弁当がカッ攫われたのほぼ同時。 双子が1つずつに二階堂、それと茶髪の女の子だ。 佐藤くん、すまん
あっさり俺が弁当を取れたのには理由が幾つかある。 本来の影の薄さも然る事乍ら二つ名クラスの暴れっぷりを見せてくれた双子、人の目を集めるレベルの弁当があったという事実が、影が極薄な俺という人間の存在を初撃まで視認する事がない事態を引き起こす。よって二つ名付きが居た際の弁当奪取率はなんと4割に登る。 凄くない?俺
意気揚々と『甘く柔らかな(ry』とおー○お茶を片手にレジへと向かい帰ろうとするのだが…その腕をガッシリ、沢桔姉にホールドされてしまった。 やめて、そんな柔らかいもの押し付けられたら八幡のハチマンが覚醒してしまうから!!
「ヒキガヤさん、夕餉ご一緒しませんか?」
「え…と、二階堂…?」
ヘルプマンを見れば肩を竦め首を振る。なるほど、逃げられないのねん? まぁ、二階堂に付き合うという考えで着いて行くことにしようか…年下に振り回されるのは案外慣れていたりする俺なのだ。
「今日もダメだった…」
「佐藤さん! 佐藤さんも一緒にっ」
「あぁ、うん。 わかったよ…」
なんとタフな少年だろうか。 俺がノシた後に踏まれたり蹴られたりしていたのに…
「ふっ、比企谷に一撃で沈められるとはな」
「ぐっ…二階堂はしっかり取ってるんだな……でも明日は僕が取ってるからな!」
「明日も西区のスーパーに出向く予定なので後で3人にメールを送りますね?」
日もすっかり暮れ人気の無い公園に登る湯気の数は既に3つあった。 西区の狼であろう茶髪ちゃんに顎鬚と坊主の3人組。 佐藤はそこへ、いつも立ち寄る様に腰をかけてど○兵衛の蓋を開ける。 そして双子の二人も続いて座るといつの間にか弁当を食べ始めている二階堂が俺にも座れと促してくる。 ふぇぇ…こんな初対面だらけの食事怖いよぉ…
なんて初めは思ってました。てへっ