マルチエンディングを目指したいです(白目
それと感想を遂にいただきました! 嬉しい!頑張りますっ
「おま……え?」
「なにボーッとしてるし。 さっさと今夜の弁当見に行くよ」
スタスタと先を歩き、弁当コーナーの横をゆったりと通り過ぎながら品定めをする三浦優美子は以前の苛烈さもある事ながら何処か、大人びた雰囲気を……俺は何を考えてんだ。 さっさと俺も下見をするか。
少し距離を空け、俺も俺で今夜の腹の虫にどれが喰いたいか聞いてみる。 なになに? 今日はさっぱりめで行きたい…
『とろろぶっかけ! 暑い日といえばズルッといこうぜ!! 山盛り蕎麦 400円』
うん、ぶっかけとかズルッととか、何処ぞの人が喜びそうなネーミングだけど俺の腹はこいつに決まっちまった様だ。 三浦は三浦でヘルシー弁当を狙うようで二人して距離を置く。 どうにも三浦が店内に入ってから空気がピリついているというかめちゃくちゃ重い…なんだこれ。
ここの半額神はコロッとしたオバチャンなようでニコニコと笑いながらシールを貼っていく…200円であの弁当が買えるなら食費的にもお優しい。 二つ名クラスが居れば奪取の難易度は多少下がるが居なければ地力で勝ち取るしかないので分が悪い。
開幕のゴング、扉が締まりきった音が店内に響くと売り場の軽快なメロディも今や戦場の喧騒に掻き消え怒号が店内を塗り潰した。
初めに動いたのは高校生ぐらいの青年。 長い脚を回し一気に売り場まで距離を詰めていく、俺や他の狼も追いつけない速度でソイツは先頭に躍り出るが生鮮コーナー側から飛び込んできたOLの蹴りが脇腹へと突き刺さり吹っ飛ばされていった。 OLさんも勢いを殺すために弁当棚を掴もうと手を伸ばしたが其処へ三浦が割り込み手をカット、掴んだまま強引に横に引っ張った。 不味い…!
八幡センサーが三浦のやる事を察知すると転ぶ様に、その場へ屈み込む。 数瞬遅れて俺の頭上を引っ張り回されたOLさんが飛んでいき背後の狼たちに激突、足並みを乱し一気に混戦へと変わり果てる。
「邪魔すんなし!」
「今日という今日は勝たせてもらうぞ、『
「はっ、アンタ誰だっけ?」
言葉にも火がある。 怖い。
そこそこ実力が有りそうな狼を文字通り一蹴し距離を開けると倒れ込んでいる狼を踏み台にして周囲の狼たちに次々と蹴りをぶち込んでいく。 いや、三浦さんやなんか出会っていない間に物凄いバトル漫画のキャラみたいな動きするようになりましたね? 金の髪をなびかせ宙を舞う………俺も見入っている場合ではない仕掛けねば。
着地を狙って前後から挟撃しようとしている男女のペアに三浦が気がつくと女の方へ容赦なく手刀を振り下ろすが、不安定な体勢から放った一撃は威力がなくそのまま押さえつけられていた。 しゃーねぇ、狙いは別の様だしな。
「ぶへっ!?」
「ちょ、人の獲物とんなし!」
「…んなこと言ってる暇あったら弁当とれよ」
三浦に気を取られていた男の背を力一杯に殴り体勢を崩させると起き上がることの無いようしっかりと踏んでおく。 いやー、暴力良くない。
「ヒキオに背中を守られるなんてね」
「……守ったつもりなんざねーよ」
「んじゃ、背中じゃなくて横に並べばいいし」
三浦がこちらへ向き直るとこちらへと駆け出す。 え、なにする気なの?
いや、狼として去年一年戦った知恵と経験がこの身体に嫌という程叩き込まれている(物理的に)。
タンッ!!! 、リノリウムの床が心地よい音を奏でるとともに俺が両手で受けを構えた所に三浦の足がピッタリ乗ると腰から腕へ力を一気に加え斜め上へと打ち上げた。
地方には『天井の蜘蛛』と呼ばれる天井を巧みに使い戦う狼もいるようで珍しい戦法ではないのだが、三浦は迫る天井に手を伸ばしぶつかると腕をバネ代わりにして一気に加速する。 大開脚した脚はそのまま重力に引かれるように落ち、巨漢の狼の脳天へ踵落としを決めた。
「うへぇ、喰らいたくねぇもんだな…」
俺も俺で組み付いてきた奴らを投げ距離を開くとそのまま棚へ手を伸ばして弁当をかっさらった。 俺へと伸びた手は即座に引かれ道が開かれる。
・獲物を捕った者襲うなかれ
礼儀に従い、俺には襲いかかってこない。一見乱暴な連中なのだが心に決めた信条で戦っているため気さくな奴も多く、少なくとも俺が話した狼たちはキモいやらなんやらは言ってきたことがない。 裏で言われてるんだろうけどな!
三浦も弁当を取ったようで俺に近寄りカゴへビールを2本、3本と入れていく。何本飲むつもりなのん?
会計を終え、店を出ると酔っ払い共がフラフラとしながら店をハシゴしていく姿を見てここが飲み屋街の一角だということを思い出した。つーか、バイクも置きっぱなしだから取りに行かねぇと…はぁ
「……お疲れ様でした」
「なに帰ろうとしてるし」
ちっ、バレたか…。 というか高校時代そこまで仲良くなかったやつと今更何を話せというのだろうか? 一色は未だに葉山を追いかけているのだろう。 その過程で俺という駒が必要なので今はあぁやって媚を打ってきているのだと賢しい俺は考えている。 きっと、葉山を呼び出して俺に誘拐されたとか言ってボコボコにされてしまうのだ。悲しい
「……あ、やっぱりヒキオ帰っていいし」
え、いいの!! なんて満面の笑みを見せると足を蹴られた。
「あーしも連れてけし」
「………は?」
why? あーしも連れてけし。
えーと、あーしは私。 連れてけしは連れていけって意味だから…私も連れていけって意味だね八幡賢い!
いやいやいやいやいやいや…!? 何でこいつ俺の家に来ようとしてんだ? 借金の保証人にでもしようとしてるのか? 仕事に偏見を持つわけじゃないけどやっぱり美人局なのか?
「弁当はあーしがしっかり持っててやるし! あ、バイクなんだっけ?ならカバンに入れてればいっか。 バイクどこ?」
「いや、なんでお前までくんだよ…別に仲が良かった訳でもねーのに」
「あ? アンタが逃げないように家まで把握しといた方がいいしょ。 それとも何? やっぱり逃げるつもりだったの?」
「…い、いえそんなことはないでしゅ……ど、どーぞ家にお越しくださいましぇ……」
人間、身に覚えた恐怖を忘れることはなかなか出来ないらしい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「乾杯〜!」
「…か、乾杯……」
両親と二階堂、それに……まぁあいつはいいか。誰も知らないマイルームに三浦が上がり込み、あーしさんの計らいでビールを1本分けて頂いた。 缶を煽り、喉を鳴らすと…うん、中々美味い。 これはただビールが美味いのか…誰かと飲むから美味いのか…
「ん、ヒキオ飲める口なん?」
「……まぁ、そこそこだ。 三浦は……聞くまでもねーか」
「あーしもそこそこ。 バイトもたまにだかんね? あそこ行けば何時でも会えるとか思わないことだし」
「行かねーよ。 あぁいう所なんざ初めてだしボッチの俺にはキツイ以外の何物でもない…つーか、金を払ってまで話したくもないまである」
「って言う割には、あんたイケメンと一緒に居たじゃん? 昔よりあーしとちゃんと話せてる気もするし。 うん、少しだけ堂々としてる気がする。 狼として活動してたから?」
━━ッ!?
驚いた。周囲の事はちゃんと見てたのは知ってるつもりだったし、だからこそアイツも三浦の近くに居た。何だかんだ面倒見の良い奴だとは思ってたが……まさか俺のことまで見てたなんて…
「かーちゃん…!」
「誰がかーちゃんだし!!!」
怒鳴られた。 お隣さん壁ドンしてこないかな……大丈夫かネタにされるぐらいで。 やっぱり怖い、知らないところで俺が慰みものにされてるとか怖すぎるから後で隣人をぶん殴りに行こう。そうしよう。
「隼人が言ってたんだ。 "優美子はもっと、人を見た方がいい。 きっとそれがキミのために、誰かのためになる" って」
…あの葉山がねぇ。
「だからヒキオのこともちゃんと見てたし。 そしたら文化祭とか修学旅行の事とか…なんとなーくわかった。 あんたホントにめんどくさい性格してんね」
「…勝手にわかったつもりになってんじゃねーよ。 アレは仕事だったからしたまでだし一番効率が良かったんだ」
「効率ばっかりで動いてた割には雪ノ下さんと結衣の時は居場所のためって逃げたんだ?」
「………」
「あぁ、別に攻めてるわけじゃないし。 あーしが隼人隼人…って気が付かなかったせいで結衣にも沢山迷惑かけたし修学旅行であんな事になった…ん、まぁ、ヒキオには散々迷惑かけたってあーしが勝手に思っているだけだから」
「…別に迷惑なんて」
「あーしが思っているだけって言ってんの。 それともなに? あーしがそう思ったらいけないの? ん??」
「ひぃ、しょ…しょんなことはないでしゅけろ……」
ビールを飲み干すとすぐに2本目開ける三浦は…やはりコイツは強いと思った。 何が彼女を成長させたのかは分からないが…きっとその成長が俺に、俺達に足りなかったものなのかもしれない。
溜息をつきながら残ったビールを一気に飲み干し弁当を貪る。美味い
「お、ヒキオ。いい飲みっぷりだし!」
「……ちっ、何が嬉しくて三浦と酒を…」
「あ?」
「わ、わーい。あーしさんと飲めるなんて嬉しいなぁ…」
「そうだし! ヒキオと飲む酒もまぁ、悪くないし!!」
互いに酔いが回ったか、学生の頃には有り得ないほど軽口を叩き、罵倒し合いゲラゲラと爆笑していた。 ご近所迷惑なんのその。 三浦にはっ倒され、仕返しとばかりに当時から思っていた化粧のケバさやらなんやらを指摘してやると大泣き。 ヒキオ最低! うん、言った後に俺も思ったよ!ごめんなさい!
その後も酒を開け続けた三浦は…なんというか撃沈した。 日の疲れもあるのだろうがいきなり男の部屋で寝始めるのはどうかと八幡思うの。 俺、葉山じゃないのよ?
体に触れるのははばかられたのでタオルケットをかけ頭の付近に枕を置いてやると頭を乗せてグースカ眠りやがる…
俺は冷蔵庫から冷えたビールを取り出して玄関を出ると軽く、お隣さんの玄関をノックした。 我が家の玄関に寄りかかりながら酒を飲んでいるとゆっくり開かれる扉。 隣人も自らの家の扉に寄りかかり腰を下ろすと俺から手渡されたビールをちびちび飲み始める。
「…悪ぃ、五月蝿かったろ」
「ん、音楽聴いてたから大丈夫」
「……そっか」
雲一つない夜空。 星が輝き静かな世界が広がっている。蒸し暑いけど…
「……覚悟か」
「……行くの?」
「きっと、行かざるおえないんだよ俺は」
「だろうね」
一色、雪ノ下に由比ヶ浜。
あの頃の俺が守りたくて捨てた物を2年経ってやっと拾いに行くなんて馬鹿らしい。だったら最初から捨てるなよ…壊れる関係だとしても思い出は壊れないだろ? きちんと、向かい合うから…気合い出せよ比企谷八幡。貪欲に行こうじゃないか。 半額弁当を得るために必死なあの瞬間のように
「んぁ、電話…?」
「あ、どうぞどうぞ」
今しがた会話してた隣人に許可を得ると通話ボタンを押す。 すると、耳に当てるまでもなく大声量が聴こえてきた。
『ひ、ひひひひひヒキガヤサンのお電話でひょうか!?』
ひひひひひひヒキガヤさんとは誰だろうか?
「…その声、沢桔姉か」
『えぇ、そうですそうですともっ! ヒキガヤさんでお間違いないみたいでしたね。安心しました』
「んで、要件は…こんな時間に高校生が起きてるんじゃありません」
『あぁ、そうでした。 合宿の行き先決まりましたの』
「本気で行くのかよ……何処だ。あまり遠いいと行きたくないんだが…」
『大丈夫です。千葉ですから』
さらば俺の覚悟。 こんにちはチキンな俺!!
『日付はおってご連絡します』
ブチッ…と一方的に切られると唖然とした俺。
「どうしたの?」
「千葉に合宿に行くことになった…」
「合宿? サークルでも入ってたの?」
「いや…非公認でな半額弁当争奪戦の遠征ってことでさ…」
「あー…最近行ってないな…よし、着いて行く」
「…お前はいいのか?」
「共犯者が覚悟を決めたならこっちも決めないと」