あの日から僕は身体を鍛え始めた。取り敢えず筋トレとランニングの量を増やしている。オールマイトの後継に相応しくなる為に、とにかく頑張っている。そして、放課後はかっちゃんと一緒に海浜公園のゴミ掃除をしている。コレが思ってた数倍キツかった。大小様々なゴミを運ぶには色んな筋肉が必要だった。腕の力だけで運ぶわけでは無かったのだ。砂浜は予想以上に足を取られ重いゴミを持ってる時は転ばないように慎重に運んでいる。そのせいで、掃除が思ってたよりも進んでいない。学校が終わってからは毎日かっちゃんとここに来ている。
「かっちゃん、本当にスタミナ凄いね。僕もうヘトヘトだよ」
「お前は重いゴミを運ぼうとし過ぎだ。オレが言わなきゃ小さいゴミ選ばねえだろ」
「だって、早く筋肉付けないとだから」
「身体にはバランスっつうもんが有るんだよ!重いのだけ運んでも身体のバランスは崩れるから小さいのを運んで様々な筋肉をバランスよく鍛えんだよ!!」
「えっ!?バランス?そんなに大事なの?」
「腕力だけ鍛えても、足腰が弱けりゃ踏ん張れねえ。そんなんじゃ攻撃も守りも強くならねえんだ。バランス良く鍛える事が大事だとオレは思うんだよ」
確かにかっちゃんの言う通りだ。腕だけ鍛えても身体を支える足腰を強くしなきゃ倒れてしまうし、逆に足腰ばかり鍛えても人が生活で主に使うのは手だ。いざという時は手が出てしまう。つまり、人間の身体は天秤なんだ。バランスが悪いと平行に保つ事が出来なくなってしまう。
「ありがとう、かっちゃん。僕、少し焦ってたみたいだ。オールマイトの後継になる為に少し無理してたみたいだ。入試までまだ10ヶ月有るんだから先を見据えて行かないとダメだよね!」
「ま、一直線になんのはお前の良いとこなんだ、そこはブレんなよ」
僕はかっちゃんに言われたようになるべくバランス良くゴミを運ぶようにした。大きいのを運んだ後は前に運んだものよりも小さいのを。小さいのを運んだらそれよりも大きいものをと運ぶ様にした。ココはゴミが有り過ぎて選ばなくても自然とバランス良く運べてる気がする。
そうして僕たちは毎日一緒に学校に行って学校終わりに鍛えてを繰り返して平日を過ごし、今日ついに、オールマイトに鍛えてもらえる日が来た。
〜翌朝7時〜
「来たな!緑谷少年!爆豪少年!」
僕たちより先にオールマイトはいた。
「おはようございます!オールマイト!」
「じゃあ君たち2人には取り敢えず、今から30分程で身体を温めて貰いたい。その後は9時までこの砂浜を走ろうか」
オールマイトの言葉に僕は驚いた。
「9時までですか!?」
最近になって鍛え始めた僕はそんなに走れるか不安だった。
「ペースは自分で決めて良い。疲れたら歩いても良い。取り敢えず9時まで足を動かし続けてみな!!さぁ行こう!」
そう言われて僕たちは走り出した。
走り始めてからどれくらい時間が経ったんだろ……もう無理だ、少し歩こう。そう思い既にジョギング程度に遅くなっている足を止めようとしたら
「はぁ……!はぁ……!はぁ……!」
かっちゃんに抜かされた。かっちゃんはずっと走り続けてる。その背中を見て折れそうになる心をなんとか保つ。
「そうだ…一緒に合格するんだ……!足は…止めないぞ!!動かし続けるんだ!」
「はぁ…はぁ………ったくよ!」
なんとか止まらねぇで済んだか。一緒に上を目指すんだから助けねえとな。まぁオレもお前が居るからこのキツいランニングも耐えれてるんだけどな。
「デクより先には倒れられねえんだよ!オレは!!」
かっちゃんが叫んで気合を入れ直してる。僕も負けないぞ!!かっちゃん!!こうして僕は残りの時間をしっかり足を動かし続けた。
「私が!!ヒーロー活動を終えて来た!!」
オールマイトが上から降って来た。
「えっ!?オールマイト居なかったんですか!?」
「そりゃ私はヒーローだからね。困ってる人を助けに行かなければならないからね。君たちに付きっ切りという訳にもいかないんだよ」
オールマイトはNo.1として忙しいのにも関わらず僕たちを鍛えてくれている。オールマイトを裏切る事にならない様にしようと心に誓った。
「じゃあ取り敢えず15分休憩したらその後はお昼までゴミ掃除をしよう!!じゃあ!頑張ってくれよ!!」
そう言ってオールマイトはまた飛んで行った。僕とかっちゃんは休憩の為に座り込む。
「よく止まらないで走ったじゃねえか。1回だけ折れそうになったろ?」
「うん…。だけどあの時かっちゃんが後ろから抜いた時、君に負けたくないと思ったからなんとか頑張れたんだよ!!一緒に雄英に合格するって思い出させてくれたから」
「運動神経はオレの方が良いからな。オレもデクより先にはヘバレねえんだよ……。まぁ、なんだ。一緒に助け合って、頑張って行こうぜ」
かっちゃんの言葉に僕は嬉しくなった。
「っっ!!うん!!!ありがとう!!かっちゃん!」
「っ!…るせえ!!休憩終わりだ!次やんぞ!!」
そう言ってかっちゃんはゴミ掃除に行った。もしかしてかっちゃん、照れた!?
「置いてかないでよ!」
僕は急いでかっちゃんの所に向かった。
〜8ヶ月後〜
アレから僕たちは走り込みとゴミ拾いをしてをひたすら繰り返していた。僕も最初と比べると筋肉が付いた気がする。そんな日々を繰り返していると、僕たちはオールマイトから呼び出しを受けた。新しい特訓をすると言ってたけど……何をするんだろう?不思議に、それで居てワクワクしながら僕は海浜公園に向かっていた。
「遅えぞ!デク!」
既にかっちゃんはいた。かっちゃんは特訓の事になると行動が早い気がする。そんな風にかっちゃんも変わったなぁって思ってると。
「来たね!!2人とも!!!」
「「おはようございます!オールマイト!」」
オールマイトがゴミの上に立っていた。
「アレから8ヶ月が経ったね。君たちも最初と比べると身体つきが逞しくなったね。そんな君たちに!今日から新しい特訓をしてもらうよ!!」
「なんだよ?新しい特訓って」
「爆豪少年!君の個性は爆破だったね?」
「ああ」
「君たちは学生だから個性を使った事は少ないだろう?よって爆豪少年には個性を鍛える為に、今日は限界まで海で個性を使ってもらうよ?」
確かに僕たちは個性を自由に使う事は出来ないけど、限界を知るってどういう事なんだろう?
「君たちは自分の限界を知らないだろう?それだと、いざという時に使えなくなって戦えなくなってしまうんだよ。そんな事が起きてしまうとヒーローの後ろにいる一般人が危険に晒されてしまうんだ。だからこそ、君たちには個性の限界を知って把握して欲しいんだ」
「なるほどな。じゃあオレは向こうでやれば良いんだな?」
「そうだね。だけど個性を使う事に変わりないから今日は応援を呼んだんだ。おーい!来てくれー」
そう言ってオールマイトが入り口に向かって声を発した。すると2人の人がコッチに歩いて来た。
「オールマイト。あまり大声を出さないで下さい。貴方は良くも悪くも目立つのだから」
「ですよね!目立ちますよね!」
「お前もだルミリオン」
なんか怖そうな人と明るい人が来たぁ!!なんかこの人達真逆だよ!
「ありがとう!よく来てくれたね」
「まさか貴方から連絡が有るとは思いませんでしたよ、オールマイト。まさか謝罪をする為に会いたいと言われた時は、流石に驚きました」
「謝りたかったのは本当なんだよ、ナイトアイ。勇気が出たのは彼らのお陰でね」
そう言ってオールマイトとナイトアイと呼ばれた人が僕たちを見た。
「……なるほど。確かに、この2人はお互いが良い関係を築けているようだ」
「彼らを見ていたら、私も昔に戻りたいと思えてね。君に謝る勇気を貰えたんだよ」
「私も、あの時の事が心残りでした。私の方こそ申し訳ない。それと、また宜しくお願いしますよ、オールマイト!」
「…ああ…。ありがとう!ナイトアイ!また一緒に戦ってくれ!」
オールマイトが泣きながら握手をしている。何者なんだ!?この人達は。その後2人の自己紹介が始まった。
「私はサー・ナイトアイ。昔はオールマイトのブレインとしてサイドキックをしていた。君たち2人がオールマイトの弟子なので有るならば厳しく行くのでそのつもりで」
「オレはルミリオン!オレはナイトアイに連れてこられただけなんだよね!宜しくね!」
オールマイトのサイドキック!?コレもすごい情報だ!オールマイトにサイドキックがいるなんて誰も知らない筈だからだ!
「君たちに出会えたから、私はナイトアイと仲直りする事が出来たと思っている。ありがとう、緑谷少年、爆豪少年」
「オールマイト、貴方は忙しい身だ。話はここまでにして、早く特訓に移りましょう」
「おっと、そうだね。ならナイトアイ、取り敢えず爆豪少年に付いて貰って良いかい?特訓内容は伝えた通りに頼むよ」
「わかりました。……行くぞ?爆豪くん」
そう言ってかっちゃんとナイトアイとルミリオンの3人は海の方へ移動した。
3人が見えなくなった所で
「…さて、緑谷少年。まずはコレを食え」
そう言ってオールマイトは僕に髪を一本渡して来た。
「……えっ!?コレをですか!?」
「OFAは所有者のDNAを取り込む必要があるんだ。さぁ食え!」
「力の継承が思ってたのと違うなぁ…」
そんな風に言いながら僕は髪を口に入れ飲み込んだ。
「それから2時間から3時間くらい経てば自然と使えるようになるはずだ。取り敢えずそれまでは君の個性、ゴムを鍛えよう」
僕の個性はゴム。確かに個性を鍛えるとは言うけど…
「伸ばしたりするんですか?」
「ノンノン!!君は意外に頭が固いなぁ!ゴムって伸ばすだけかい?考えてみなよ!例えば、ゴムで作られてるものとかさ!」
「…なんだ?何が有るんだ…?……っは!?ゴム風船とかはどうですか!?空気を思いっきり吸って身体に溜めれば浮いたり出来そうです!!」
「グッド!!そう言う柔軟な発想が個性を使う上で大事なんだよ!!」
そう言えばかっちゃんはあの時爆発の光を集めて目眩しに使ってた。考え方次第ではどんな個性でも強くなるのか。
「それに君は全身ゴムなんだろう?なら私の力を使っても骨が折れる事は無いだろう」
伸ばす、膨らむ。取り敢えず今の僕が思いつく限りはコレだけだ。それに合わせてOFAを使えば充分闘える筈だ。絶対合格するぞ!!
「じゃあ私は爆豪少年の方を見てくるから取り敢えず伸ばせる距離を増やす様に特訓しようか」
「はい!頑張ります!!」
こうして僕たちは残りの2ヶ月を過ごしていった。
〜入試前日〜
「よく耐えたね。2人とも」
「オールマイトの弟子が中学生と聞いた時は驚いたが、まさかここまで特訓をしっかりとやり抜くとは思わなかった。素直に賞賛しよう」
「今日はルミリオンくんは居ないが、彼から伝言を預かっている。君たちなら合格できるから、いつも通りに行けば大丈夫だよ。ってね」
「はい!」
「ああ」
「じゃあ明日に備えて今日はゆっくり休みな。期待してるぞ!2人とも!!」
僕らはオールマイト達から激励を貰って帰路に着いた。こうして僕らは受験日を迎えた。