姫補助プレイは世界を救う   作:フォーサイト頑張れ

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長いです…

前回のあらすじ

野盗に拐われてしまった商人を救出する依頼を引き受けたフォーサイトは、リ・エスティーゼ王国の領地、城塞都市エ・ランテルへ向かうため準備に取り掛かった。



Chapter 4

◆その日の真夜中 番外編 ※流し読み可

 

 

「早く支度してよね! ロバーとアルシェが来たら出発するんだから!」

 

 

 (イミーナ)が過ぎていった。眠気で冴えていない頭の中でミドナはそんなことを考える。

 むくりとベッドから起き上がり窓の外を眺めてみても未だ空は真っ暗だ。街路地を闊歩する人の姿も見受けられず、街灯の灯りだけが地面を悠々と照らしているだけの静かな夜だった。

 

(もう少し優しく起こしてくれてもいいのに……それなら少しは気持ちのいい目覚めを迎えられる気もするわ……)

 

 寝起きが悪いのは異世界に来ても変わらなかったことに不満を漏らし、ミドナは自室をぼんやりと見渡す。部屋のあちこちに散乱している大量の衣服――ユグドラシルの装飾アバターを細目で眺めた。

 異世界に来てから悩みの種である衣装選びがミドナの朝をより辟易とさせる。溜息を吐いて、焦点が合った服をおもむろに掴んだ。

 

(こんなミニスカートもう履く機会ないわね。ユグドラシルなら中はデフォルメされて真っ黒に表示されたけど……こんなの着て動き回ったらパンツ見てくださいって言ってるようなものね……)

 

 掴んだ白のフリル付きスカートを投げ捨てる。

 

 ユグドラシルでは公式で様々な課金装飾アバターが売り出されていた。一切の補正値が付与されていない完全無欠のお洋服(ファッションアイテム)だ。ミドナも着せ替え人形の気分で大量に購入していたのだが、現実に着て公衆の面前に立つには聊か生き恥にも似た羞恥を患ってしまいそうな派手なアバターばかりだった。

 

(その時は可愛いと思ってつい買っちゃうのよね……由依ちゃんに『迷ったら買え』って強く言われたからかもしれないけど、今となっては後悔しかないわ……)

 

 毎日と同じ服を着るわけにもいかない。ミドナは森妖精(エルフ)であり、当然、体からは老廃物が出るし、埃などの外的要因でも服は汚れるのだ。

 

 ミドナはおもむろに服を選んでいく。今日は普段通りの服装ではいけない。王国の近辺を荒らす野盗の塒まで出向いて、恐らく攫われているであろう雇い主の身内を救出する依頼を受けているのだから。なるべく地味目の暗い服を着るべきだと品定めしていく。

 

 ちなみに恋仲にあるヘッケランとイミーナの部屋にいつまでも居候するわけにもいかなかったので、彼らの隣に部屋を借りたのだ。帝国通貨を一切と持ち合わせていなかったミドナの食費や雑費、宿代など全てヘッケランに拝借させてもらってる状況だ。現在、せめてもの誠意を見せようと日雇いの道路整備の仕事で稼いだ銀貨四枚を返済しただけである。しかしそれも今日この依頼で得られる報酬で全額返済できるだろう。そう思うと、少しだけホッとする。

 

 異世界に来てからの悩みの種はまだある。それは装備品だ。

 上からサークレット、ネックレス、上着、マント、小手、ブーツ。この装備品の着脱行為が億劫なのだ。寝る前に外し、起きたら付ける。この一連の動作が無駄のように感じてしまう。

 

(そもそも別に私、異世界に来てまで戦いたいとも思ってないし……皆と楽しく毎日過ごせればそれでいいんだけどね)

 

 戦う気がないのなら、この装備品全てがガラクタである。そもそも帝国近辺の水準を考えれば装備の補正値を期待せずとも百レベル分の能力値(ステータス)だけで十分戦えるだろう。だからこそ、ミドナはこの装備の着脱行為に不満を漏らす。

 しかし戦わない訳にもいかない。ミドナが所属しているフォーサイトは請負人(ワーカー)だ。危険なモンスター退治のような依頼もこの先あるだろう。どれだけ能力値(ステータス)が高いと驕ろうが、ミドナは単なる人間種である森妖精(エルフ)だ。首が飛んだら普通に死ぬだろうし、そもそも人間だった頃と比べても体に何の変化も感じられない。目に見えて変わった事と言えば、文字通り目が見えるようになったことくらいだろうか。

 

(そもそも私が異世界に来た理由って何なのかしらね。もし仮に神様が私に何らかの使命を与えているのだとしたら……)

 

 補助や回復に重点を置いた自分にできる事と言えば誰かを守護する事ぐらいだろう。フォーサイトのメンバーを守るために異世界に君臨したのだろうか。神様が何を考えているのか、ミドナには皆目見当も付かなかった。

 

 地味目の衣装を選び、装備品を装着して鏡の前に立つ。普段の白のローブも暗褐色のローブに変えてあるので、信仰系魔法詠唱者というよりは、魔力系魔法詠唱者のような様相が怪しい雰囲気を漂わせる。

 

(そういえば私この世界に来てからずっとスッピンよね? 化粧品なんて持ってないし、スキンケアとかしなくていいのかしら……?)

 

 異世界に来て容貌が変わったとはいえ、ミドナはこれでも二十八歳だ。良い歳した成人女性が化粧もせずに公共の場に出るのは聊か品が無いように思われた。

 

(次の休みにイミーナとアルシェに買い物付き合ってもらえないかしら……そ、そうよ! 目が見えるようになったんだし、友達と仲良くショッピングなんて最高じゃない! お洒落なカフェとか、映画とか……映画館なんて無いか。舞台? ならあるのかしら? とにかく色々やってみたい遊びは沢山あるわ!)

 

 明るい未来に心を躍らせていると、再び部屋の扉が開かれる。この部屋の合鍵を持つ者は一人しかいないので、誰が入室して来たのかを、ミドナはわざわざ確認するまでも無いと決めつけた。

 

「遅い! いつまで支度してるの! 朝食冷めちゃうんだけど?!」

 

 夜中なので声を殺しながら器用に怒鳴られるミドナは気怠そうに振り返る。

 扉の前で仁王立ちするイミーナをぼんやりと眺めていると、この状況に思い当たる節があると思考を巡らす。

 

 もしかすると、これが夢にまで出てきた光景なのではないだろうか。

 

「……何? どうしたの? 私の顔に何かついてる?」

「…………なんでもないわ。それより今日の朝食は何?」

「いつものパンとスープと野菜よ。昨晩店の主人に頼んで作り置きしておいて貰ったのよ」

「また? たまには別の朝食が食べたいわ」

「贅沢言わない! そんなセリフは自分で払えるようになってから言ってよね!」

「ふふっ、そうね」

「……どうしたの? なんか変な物でも食べたんじゃない?」

「気にしないで。さて、行きましょう」

 

 こんな会話のやり取りを、ミドナは人生で一度も交わしたことは無かった。

 もし自分に母親がいるとすれば、きっとこんな感じで口うるさいのだろう。そんな妄想していると、どこか暖かい気持ちになった。

 

「イミーナ」

「何?」

「ありがとね」

「……やっぱ変じゃない? 熱でもあるんじゃないの?」

「そういう時は、どういたしましてと言って欲しいわね」

 

「……どういたしまして!」

 

 

 次の日の真夜中 end

 

 

 

 

 バハルス帝国の東西門を二台の馬車が通り過ぎる。

 

 フォーサイトの面々が二組に分かれて乗るこの馬車は依頼主である商人のグラン家から借り受けたものだ。各馬車の御者台にはヘッケランとイミーナが座り、馬の手綱を握っている。

 バハルス帝国から城塞都市エ・ランテルまでは丸一日近く馬車を走らせなければならないため、恐らく到着も夜になるだろう。

 

「夜のほうが影に身を隠しやすいですし、潜入には向いているということです」

「なるほどね、理解したわ」

 

 イミーナが操縦する馬車の中にはロバーデイクとミドナが座っている。アルシェはヘッケランの操縦する馬車の中で恐らく寝ているのだろう。

 寝れる時は寝ておくべきだ。これから丸一日かけて馬車を走らせなければならない。途中で操縦を変わらなければならないので尚更だ。現地に到着して睡魔が襲ってきましたでは話にならないのだから。

 馬車が二台なのは野盗に囚われている人の数が多かった時のためと、グラン家の者を帝国まで連れて帰るためだ。しかしグラン家の者を保護したとしても一度エ・ランテルまで行く必要がある。グラン家が王国の冒険者に依頼をしてしまっている手前、勝手に連れ出すわけにもいかないのだ。身元を確認させた後にこの馬車で共に帝国まで帰還することになっている。

 

「私達が捕らえた野盗達はどうするの? 無力化で留めておくんでしょう?」

「近辺に王国の冒険者がいるようであれば彼らに任せます。いないようであればエ・ランテルまで行って憲兵を呼んでこなければなりませんね。ですが私達は冒険者ではありません。なるべく素性を隠さないといけない身ですので、その場に冒険者の方々が居ることを願いましょう」

「助けた人達も冒険者任せってことでいいのね。それでグラン家の人達を帝国に連れて帰るのも理解した。でもこの衣装は本当に必要だったの……?」

 

 そう言ってミドナは横に置いてある布袋を指差す。

 布袋の中には丁寧に畳まれたグラン家の使用人の衣服が入っている。昨日、グラン家から渡された執事服とメイド服だ。

 

「恐らく必要なのでしょう……商人様の身元引受人を演じなければならないのですから、装備を纏ったままでは色々と疑われてしまうのではないかと思います。問題は誰が着るかってことです」

「私は嫌よ? いや、そもそも私には無理よね? ほら、耳の大きさで森妖精(エルフ)だってバレるでしょうし」

「確かにそうですね……だとするとヘッケランとアルシェでしょうか?」

「ヘッケランだと違和感あるんじゃないかしら? 頭に赤のメッシュが入った執事ってどうなの?」

「ですよね……となるとやはり私ですか……」

 

 数々の戦闘によって鍛え上げられた大きな体躯に若干の違和感を感じるが、それでも執事服を着せるならヘッケランよりもロバーデイクのが幾分とそれらしく見えるだろう。

 

 ミドナは馬車の窓から外を眺める。まだ夜空に浮かぶ月は消えそうにない。馬車は走り始めてまだ間も無いのだ。恐らく長い一日になるのだろう。

 

「……野盗に襲わてしまった人達、生きているといいわね」

「そうですね。無事だといいのですが……希望は半々と言ったところでしょうか」

「でも意味も無く攫った人を殺してしまうなんてこと、いくら野盗でもしないんじゃないかしら?」

「……どうでしょうか。金品を奪って解放しているようなら私達はここにはいませんし、口封じに殺してしまう事もあり得るのでは?」

「本当に? 人が人をそんな簡単に殺せてしまうものなの? その人に何か恨みでもあったのなら話は分からなくもないけど……」

 

 そういった事件は現実(リアル)でもよく聞いたことがある。誰かが殺されたり攫われたり、まだ歳場もいかない幼子が被害に遭ったニュースを聞くと、被害者もそうだがその家族の心情を思うと酷く心を痛めてしまった経験は誰にでもあるだろう。

 だが大概の殺人の動機は私怨なるものだ。無差別殺人なんて事件は稀有であり、余程の精神異常者が一人で引き起こしてしまうものだ。

 比べて野盗は集団だ。心有る人が殺しは辞めようと、止めてくれはしないのだろうか。

 

(いや、治安の悪い国ではよくあることなのかもしれない? 環境こそ悪かったものの、日本はそれなりに平和だったってことなのかしらね……)

 

 誰かを殺したいほど人を憎んだことはない。だからこそ、人を殺すという行為に及ぶ真相心理をミドナは理解できなかった。

 

(ここは異世界で人を食べるモンスターも沢山いる。話によると帝国と王国は毎年戦争してるらしいし……だから命の価値を軽く見てしまうの? ……だとしても人が人を簡単に殺せてしまうのはやっぱり理解できないわ。捕まえた野盗から話を聞いてみようかしら……)

 

 人の死について悲嘆していると、どこか哀傷的な感情になっていたようだ。難しい顔をしていたミドナを心配そうに伺っていた年長者の存在に気が付く。

 気遣わせてしまった心苦しさから、ミドナは意図的に笑顔を作った。

 

「ロバーも睡眠を取っておいたほうがいいんじゃないかしら? 寝てないんでしょう?」

「ええ、今日の準備に色々と時間が掛かってしまいましたから」

「私は馬車の操縦なんてできないし……私にも何か役に立てることはないかしら?」

「ミドナさんには馬の疲労を回復させる役目があります。それで十分だと思いますよ」

「そう……? でも先は長いし、私に気を遣わないで寝てくれていいのよ?」

「……そうですね。ではお先に失礼します」

 

 そう言ってロバーデイクは腕を組み、馬車の内壁に体を預けて目を閉じた。

 

 まだまだ先は長い。そう思い、ミドナも再び眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 陽が登り、そして沈み、再び月が夜空に浮かんだ静かな夜。碌な休憩も取らずにひた走り続けた二台の馬車は、エ・ランテル辺境の森と平原の境に停められた。

 人気を全く感じさせない森の中からは、木々の葉が風に揺られる音しか聞こえてこない。

 

 人間の種族的な強さはこの世界では下位序列に位置するため、広い平原のような場所にしか生存圏を獲得していない。森林や山脈、海などの様々な地形は上位種族の縄張りであり、そこに人間が暮らす余剰など存在しない。人間には暗闇を見通す目も持たないため、闇夜に包まれる森の中に人の気配がないのは至極当然の事なのだろう。

 

 馬車から降りたヘッケランは狐の顔が絵描かれている、どことなく怪しげな面を四人に手渡す。

 

「これで顔を隠して仕事をするわけだが、王国の冒険者を見かけたらまず身を隠す。姿を見られて警戒された場合は交戦の意思が無い事を証明するためにも面を外す。いいな?」

「了解」

「んじゃロバー、頼む」

「ええ、〈暗視〉(ナイト・ビジョン)

 

 ロバーデイクの魔法により視界がさながら昼時のように照らされる。魔法の効果時間はそれほど長くないため、その都度掛けなおす必要があるのが玉に瑕だが、それも必要な魔力消費と言えた。危険に身を置いてきた彼らは常人よりも夜目が利くとは言え、野盗が周到な罠を仕掛けている可能性も考えらる。ここは惜しみなく魔法を使っていくべきだろう。

 

「ミドナ、お前は後衛って事でいいんだよな?」

「ええ、私は皆のバックアップに徹するわ」

「んじゃ隊列は俺に続いてイミーナ・ミドナ・アルシェ・ロバーの順で行く。何か異論はあるか?」

 

 四人が沈黙で返す。特には無いようだった。

 

「よし、手筈通り森が切り開かれている場所を探していくぞ。洞窟を塒にしている場合もあるから注意しろよ?」

 

 四人が頷くのを確認すると、ヘッケラン達は森の中へと歩を進めて行った。

 

 

 

 

 しばらく歩き続けていると、突然イミーナの足が止まった。

 

「――ストップ。何かがこっちに走ってくる」

「全員茂みに隠れろ」

 

 五人は身を低くしより深い影に隠れて姿を隠蔽させる。嗅覚に優れたモンスターであった場合は意味を成さない行動だが、相手が人間であれば十分にやり過ごせるだろう。

 

「何が向かってきているか分かるか?」

「この足音はモンスターではないと思うけど……」

「ええ、恐らく人間よ。何かに怯えて必死に逃げて来ている様子ね」

「――なぜそこまでわかる?」

 

 アルシェの問いに、ミドナが自分の耳を指差す。

 

「私は森妖精(エルフ)なのよ? 半森妖精(ハーフエルフ)のイミーナより耳が良いのは当然よ」

「私のアイデンティティの一つを奪わないでくれる……?」

半森妖精(ハーフエルフ)にも長所(メリット)はあるわ。森妖精(エルフ)に課せられた種族故の短所(デメリット)を半減してくれるから、最終的にはバランスの取れた能力値(ステータス)配分ができるはずよ。でも特化型には向いてないわ」

「その話は後回しだ。それで距離はどの程度だ?」

「もう近いわ」

 

 この静かな夜には似合わない、まるで地獄の底から逃げてきたような、恐怖に怯えきった男が武器を胸に抱いて必死に走ってくる姿が見えてきた。

 

(どうする?)

(このまま待機だ)

 

 五人はそのまま男が走り去って行くまで身を屈め続けた。

 やがてその背中が見えなくなった頃、ヘッケランが立ち上がった。

 

「もういいだろ。それより何だったんだ?」

「知らない。何か『俺は馬鹿だ』って小さく呟き続けてたけど……」

「――泣いてた? 冒険者って恰好ではなかった」

「恐らく野盗の一人だったのではないでしょうか? 何があったのか聞いてみるべきだったのかもしれませんね」

「どうだろうな。止めたところで喚かれたら面倒だぜ?」

「とりあえず彼が来た方向に野盗の塒があるって考えてもいいんじゃない?」

「それはそうだと思うが……何か嫌な予感がしないか?」

 

 ヘッケランの言葉にミドナを除く三人が息を飲む。

 請負人(ワーカー)として長年、戦場に身を晒してきた彼らだからこその経験からくる悪寒。直感とも呼べる第六感が警告している。この先にはかなりの危険が待ち受けていると。

 仮想空間で気ままに遊んでいたミドナには決して身に付かない感覚だ。何も感じられなかったミドナは彼らの判断を待った。

 

「モンスターでも出たのか? 金級(ゴールド)の冒険者にあそこまで怯えるってことはないよな?」

「恐らく可能性は高いでしょう。ですが野盗の強さもピンキリです。人喰い大鬼(オーガ)巨人(ジャイアント)相手に逃げてきた可能性もあるのでは?」

「――それはあまり考えられない。あの人が胸に抱えていた武器は南方から伝わる『刀』。武器はその人の格を現す。つまり相当な手練れなはず」

「かなりヤバい化け物が出たってこと……?」

 

 イミーナの一言に四人は一週間前に起きた過去の記憶が蘇る。自分達が成す術も無く蹂躙される光景、悍ましい咆哮に狂気的とも感じられる残虐性。今でも悪夢によって再現されているこの記憶はまだ新しい。

 

 ――だからこそ、その時、誰が忽然と姿を現したのかを思い出す。

 

 四人はミドナに視線を送る。彼女ならば再び『奇跡』を起こしてくれるのではと希望を抱いてしまったが、ヘッケランは首を振った。

 

「……いや、冷静ではないな。あの時のバケモンみたいな可能性もある。幸いにも俺達はあの体験をして生きて帰ってこれた。ならその経験を生かすべきだろ。撤退するべきだ」

「野盗に囚われている人達はどうするのですか? 見捨てて帰ると言うのですか?」

「――正体不明のモンスターが出現しているのなら生きているかもわからない。助からなかった命だと考えるべき」

「……そうね。自分達の命に勝るものなんて無いし、気の毒かもしれないけど賢明な判断だと思うわ」

 

 ヘッケラン、アルシェ、イミーナの冷徹な判断に、ロバーデイクは苦渋の様相を見せる。理解しようと心の内で葛藤しているようだった。

 彼らはそこに自分達では到底太刀打ちできないような危険があると危惧しながらも火の中に飛び込むような愚者ではなかったということだ。請負人(ワーカー)として一流である事を証明させた決断であり、ここで歩を進める行為は真っ先に身を亡ぼすだけの蛮勇と嘲笑然るべき愚かな行動と言えただろう。

 

 ただ一人だけ、無言で彼らを見つめる森妖精(エルフ)がそこに居た。面をしているのでその表情までは伺えないが、どことなく悲壮な雰囲気を漂わせている。

 

「……本当に見捨てていいの?」

 

 その一言に顔を落としたのはロバーデイクだった。

 彼の性根は偽りのない善人なのだろう。無辜の民を救えない自分に憤りを感じているからこそ、その一言がより彼の胸の内を抉った。

 

「……まだ助けられる可能性もあるかもしれないわ。それなのに何もしないで帰るの?」

 

 表情こそ見えないが、寂しいという気持ちが声色で伝わってくる。

 

 ヘッケランとイミーナは知っているのだ。彼女の想いを。

 そして伝えてもあるのだ。チームの意向に従うようにとも。その意思を乱すようなミドナの発言に、ヘッケランは憤りを感じる。

 

「ミドナ、お前の力を信用していないとは言わない。だが不確定要素が多すぎるからこそ、次は助からないかもしれないと俺達は懸念したんだ」

「ええ、それにミドナでも勝てない相手だったらどうするの? 次はミドナまで死ぬかも知れないのよ?」

「――助けてもらった恩を忘れてはいない。でもこれとは話が別。チームの意思に従って欲しい」

「……帰りましょう、ミドナさん」

 

 そう言ってロバーデイクは手を差し出す。

 ミドナはその手を取らない。ただ、見つめているだけだった。

 

「……ここで帰って、私達は明日も笑い合えるの? 胸を張って生きていけるの? 答えて、ヘッケラン!」

 

 ミドナは真っすぐヘッケランを見据える。

 

 くだらない戯言だと、ヘッケランは苛立ちにも似た感情を抱いた。

 

 請負人(ワーカー)がどんな胸を張って生きろと言うんだ。もともと日陰者であり、どんなに名声を上げても英雄などと称賛されることはない。そんなに名声を上げて脚光を浴びたいのならば冒険者にでも成ればいい。

 

 強く握った拳をそのままに、ヘッケランは唇を噛みしめた。

 

 仕方がないではないか。己に勝る存在など世の中には五万といるのだ。全てを己がままにしてしまうのは一握りの存在だけだ。自分達は違う。請負人(ワーカー)としては上位に属しているのかもしれないが、世界的に見れば自分達など矮小な存在だ。だからこそ知恵を絞って生きてきたのだ。この判断は絶対に間違ってはいない――そう、強く言い聞かせた。

 

「……俺達は金で依頼されただけに過ぎない請負人(ワーカー)だ。今回の依頼は野盗の制圧及び囚われている人の救出であり、危険なモンスターの討伐ではない。それに自分達の命を投げ売ってまで誰かの命を救おうとは思わない。これが答えだ」

 

 嘘偽りのない当然の答えだ。自分達の命に勝るものなどはない。チームの仲間に対して命を掛ける行動ならまだしも、赤の他人に対して己の命を賭ける奴がどこの世界に居るというのだろうか。

 この言葉を笑って貶すような奴は、口だけの賢者か、本物の英雄、もしくは自己犠牲心の強い利己主義者(エゴイスト)くらいなものだろう。

 

 ヘッケランの返答にミドナは俯く。

 

「……皆も同じ考えなのね?」

 

 三人は沈黙で返す。

 

「……私は誰かが困っているのなら、手を差し伸べてあげたい」

 

 そう言って、ミドナは狐の面を外す。

 木々の隙間から漏れる月光が、ミドナのライトグリーンの瞳を艶やかに照らす。

 

「……皆は先に帰ってて――」

 

 

 そう告げると、ミドナは一人、森の中を歩いて行った。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ちょっとミドナ! …………行っちゃったよ」

「……どうするんです?」

「知るか! 付き合いきれねえよ」

 

 ヘッケランは地面を蹴り上げる。どうにも腹の虫が収まらなかった。

 チームにとって最善だと思われる選択肢を提示してきた。潜在しているかもしれない危険に対し憂慮できた事は褒めて然るべき英断であり、ヘッケランは何一つとして判断を誤ってなどいない。

 誰もがそう理解しているし、リーダーとしてチームを引っ張ってきた彼を皆は信頼してくれている。

 ミドナの独断的な行動は連携に軋轢を生じさせる危険な行為であり、チームの規律が形骸化してしまう恐れがある。端的に言うと容易に許されるような問題ではないということだ。

 

「――何がミドナをあそこまで駆り立てている?」

「さーな。人助けが趣味なんじゃねえのか?」

「強者が弱者を救う姿勢は正しい行いだと思いますが?」

「チームの調和を乱してもか? あいつと組んでたら命が幾つあっても足りないだろうよ」

「……ミドナ」

 

 イミーナはミドナが歩いて行った方角を目で追った。

 

「本当に一人で行かせていいのですか? ヘッケラン」

「というか私は捕まってる人達よりも、ミドナの方が心配よ……」

「――何やらかすか分かったものではない」

 

「……はぁ」

 

 冷静ではないなと、ヘッケランは再び首を振る。

 この仕事をやり遂げられれば請負人(ワーカー)としてではなく、人として胸を張って生きて行けるのだろうか。この荒んだ心も晴れやかな気分になるのだろうか。ミドナの扇情的な行動はそう心に訴えかけてくるものがある。人の心を動かす何かがあるのかもしれないな、とヘッケランは俯瞰する。

 

 ミドナは決して利己的に動いているわけではない。それを承知しているからこそ、ここまで勝手な真似をされても自分達は憎めずにいるのだろう。

 全てはあの時、彼女を拾ってしまった事から始まった因果なのだろうか。いや、突然と姿を現した時にはもう運命の歯車は回っていたのかもしれない。

 

 ヘッケランは不服な態度でぶっきらぼうに言い放つ。

 

「しょうがねえなぁ……どうなっても知らないからな?」

「何かあったら、そんときゃ腹括るしかないわね」

「――私はできれば生きて帰りたいのだが……」

「信じてみましょう、アルシェ。彼女の力を」

「やっぱりあの女には一言ガツンと言ってやらねえと気が済まねぇな……」

「言っておやりなさい。私達の分も頼みますよ、リーダー」

 

 全く毎度毎度と世話の掛かる新人だと、ヘッケラン達はミドナの後を追った。

 しばらく走り続けると、こちらを向いてミドナが佇んでいた。耳が良いのだろう。自分達が近くまで来ていることを予め察知していた。

 

(……後ろから蹴り入れてやろうと思ったのに)

 

 そんな事をヘッケランは考える。

 呆気に取られたような顔も苛立たしい。しかし今は隠密行動中であり、怒鳴るわけにはいかなかった。

 

「勘違いするなよ? 俺達はお前がヘマをやらかさないか見張りに来たんだ」

「……いいの? 私の我儘に付き合ってくれるの?」

「一回だけだ! この一回だけお前を信じてやる! これから先、チームを組むに値するのかをこの目で見定めさせてもらうからな?」

「それにあんたを一人にしたら、何しでかすか分かったもんじゃないからね」

「素直に心配だったと言えばよろしいのではないですか……?」

「――私は何としてでも生きて帰りたい。だからミドナ、私達をしっかり守って欲しい」

 

 アルシェが右手を差し出す。出会った時とはまるで正反対だ。そんな不思議な状況に、ヘッケランは思わず笑い堪えた。

 

「…………ええ、アルシェ。任せてちょうだい」

 

 瞳の端に涙の雫を浮かべながら、ミドナはアルシェの手を取った。

 恥ずかしい奴め、全く……。そう思うと、やっぱり場を和ませたくなる男がそこにいた。

 

「それにあれだ。お前に貸した一週間分の生活費、しっかり返してもらうまで逃がさないからな?」

 

「そこなの?!」

 

「当たり前だ! 借りた金はしっかり返せよ?」

 

「ふふっ、そうね。ありがとね、ヘッケラン」

 

 五人の小さな笑い声が木霊した。

 

 

 

 

 

 

「少し待って――」

 

 再び五人で歩き始めようとした時、ミドナは無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)から小さな布袋を取り出した。中に黄色い砂が入っており、それを辺りに振りまいた。

 

「それは?」

「簡単な消費型探知アイテムよ。一定時間内に付けられた足跡を可視化してくれるわ。これで逃げてきた人の足跡を辿りましょう」

「便利なアイテムだな」

飛行(フライ)の魔法や足跡を残さないような暗殺者(アサシン)相手には全く効果は無いわ。万能とは言い難いアイテムよ?」

 

 対人に置いて足跡などの形跡を残すようなプレイヤーはユグドラシルでは格好の獲物だ。PK(プレイヤー・キル)して下さいと自ら言ってるようなものだった。このアイテムはユグドラシルではモンスターを効率よく狩るために多くのプレイヤーが愛用していたものであり、対人(プレイヤー)を追跡するにはもっと上位の魔法や特別なアイテムを使用するのが基本だ。

 

 五人はそのまま男が残した足跡を辿り続ける。すると草や木の根で上手く隠匿されていたであろう穴が見つかった。ちょうど人一人が通れるような小さな空洞だ。

 

「足跡が増えてるわ。一つはさっきの男のものだけど……もう二つは別の方向に行ったみたいね」

「ここから出てきたってことか?」

「恐らくそうね。入っていく形跡は無いし、裏口みたいな隠し通路なのかもしれないわ」

「どうしますか? 二つの足跡を追ってみます?」

「いや、俺達は野盗に囚われてる人の救出に来たんだ」

「――間違いない。中に入ろう」

 

 天井の低い洞穴の中を進んでいくと、やがて人の手が加えられたと一目で分かる程度には整備された通路に出る。やがて松明で灯された大きな広間に出た五人の視界の先には、地獄のような惨状が広がっていた。

 

 そこには人間だと思われる死体が幾つも転がっていた。余りの悲惨な殺され方に人の形状をほとんど保っておらず、すぐには人間だと判別できない状態だった。

 ある者は臓物を引きずり出され、ある者は頭蓋骨を砕かれ脳漿を床に飛び散らせ、ある者は血液を吸い尽くされたのかカラカラに干からびている。その死体は慈悲などという甘い言葉は微塵も感じられない惨状であり、薄暗い広間には死臭がどんよりと漂っていた。

 

「こ、こりゃ一体……ここで何が起きたってんだ?」

「腐敗臭はしてませんし、まだ死体は新しいようですね。それにしても酷い……残虐的な殺し方です」

「――大きな口で齧られたような跡がある。モンスターの可能性が高い」

「大口のモンスターってこと……? でもこっちの死体は干からびてるけど?」

「足跡は二つだったんだろ? 別々のモンスターが共闘した可能性もあるか……となると知能が高いな」

 

 血を吸われている事からモンスターの片割れは吸血鬼(ヴァンパイア)の可能性があるとヘッケランが考えていると、広間の入り口で口元を抑えて狼狽えているミドナの姿が目に入った。

 

「――ああぁあぁあ人が人が人が人が人がううぅ……うっ……」

 

 よろよろと後ずさり、どこからか取り出した水差しをそのまま口に持っていく。口元から零れる水など意も介さず、溺れるように水を煽ったミドナは大きくむせ返った。

 

「……うぅ、ごめ……なさ…うっ……」

「お、おい! しっかりしろ! 大丈夫か!」

 

 胃の中からこみ上げてくる物をミドナは必死に押し留める。洞窟内に篭る死体臭がミドナの嗅覚を刺激する。残虐な惨状と異臭によってミドナの精神は極限にまで蝕まれていた。

 

「た、たすけなきゃ……うぅ……」

 

 よろめきながら一人の死体に近づき両手を翳す。その手をヘッケランが咄嗟に掴んだ。

 

「待て、ミドナ! 何をしようとしている?」

「なにって……そせいにきまっ……てるでしょ……うっ……」

「――待て待て待て! いいから待て! 今、蘇生って言ったか? 蘇生魔法が使えるのか?」

「――蘇生……魔法……?」

 

 ミドナの発言に四人は目を見開き瞠目する。信じられない台詞を聞いてしまったので、もう一度お聞きしてもよろしいですかと尋ねたい気分になったが、返ってくる言葉はきっと同じだろうと悟る。

 何をするのかと思えば突然と蘇生魔法を行使しようとするミドナの手をヘッケランは無理やり挙げさせた。

 

「とりあえず待ってくれ! 落ち着けミドナ、少し待て!」

「そうよミドナ! 早まらないで! もう一度水を飲みましょう? ね? 落ち着いて!」

「……な、なにを……うっ――」

 

 イミーナが無理やりミドナの口元に水差しを運ぶ。もはや頭から水を被せた方が良いと思われたが、水差しの中身は水滴が滴るほどの冷水のようなのでイミーナは思い留まった。

 

「その蘇生魔法は第何位階なんだ? ……い、いや、今はそれどころじゃないか……えっと、蘇生魔法ってつまり人が蘇るんだよな……? 蘇らせた場合、そいつの体は奇麗に元通りになるのか?」

「……わから、ない、こっちに、きてからまだ……つかったことはない……わ」

「……とりあえずロバー、ミドナの精神を安定させてくれ」

「え、ええ……〈獅子の如き心〉(ライオンズ・ハート)

 

 ロバーデイクの魔法によって落ち着きを取り戻したミドナは飲み過ぎた水を吐き出すように咳き込んだ。

 

「……た、助かったわロバー。ありがとね」

「いえ、構いません。死体を見るのは初めてだったという事ですか?」

「……そうね、グロ系は免疫無くてキツいわ。それより蘇生しちゃ不味いのかしら……?」

「不味いってそりゃ……不味いよな?」

 

 蘇生魔法を行使できる人間をヘッケランは一人しか知らない。王国のアダマンタイト級冒険者、蒼の薔薇のリーダーである神官が行使できると噂で聞いたことがあるが、それ以外には誰一人としてヘッケランは知らない。

 

「例え奇麗元通りに生き返らせられるとして、記憶はどうなるんだ? こいつら野盗だよな? モンスターに殺された記憶が残っていた場合、蘇生された事を自覚しなかったとしても自分が生きていることを不審に思うんじゃないか?」

「どうなんでしょう……全員生き返らせれば夢オチだったと思ってくれは……しませんよね」

「――この人達を生き返らせるのは得策とは言えない気がする。彼らは人里離れたこの場所で悪事を働きモンスターに襲われた。因果応報とも言える」

「……そうね。蘇生させた場合、間違いなく面倒事に巻き込まれるわよ? 生き返らせるなら依頼主の関係者だけにするべきじゃない? 感謝の鎖で縛りつけて黙っててくれないかしら?」

「――ミドナなら記憶も操ってしまいそうだけど?」

「……そういう魔法も確かに存在するわ。でも私は精神系魔法を習得していないの。残念ながら使えないわ」

「だとしたら野盗の蘇生は賛成できないぜ? 蘇生魔法を使える人間が居るって情報を喜んで売るような奴らだと思うぞ」

「で、でもあまりに不憫よこれじゃ……可哀想じゃない……」

「――この人達を蘇生させた場合、また無関係な人達が襲われる可能性だってある」

「そうよミドナ。そうなったら間接的にミドナが人攫いの手助けをしたことになるのよ?」

「彼らは然るべき報いを受けたという事なのでしょう。残忍な殺され方ではありますが……」

「……そう。なら囚われている人を探さないと」

「――向こうに暖簾が掛かってる、奥につながる道があるみたい」

 

 アルシェが指差す方向には、入り口に続く洞窟とは別の空洞があるようだった。簡易的な寝処になっている小さな広間には、人間の女性の死体が四肢をもがれて乱雑に転がっていた。頭部や腕や脚などの数から推測すると四人分くらいの死体の数だ。女性たちの衣服が見当たらないところを察するに、恐らくここに囚われていたのだろう。

 

「……こりゃひでえな」

「どれが依頼主の娘なわけ? 誰が誰だかわからないわよこれじゃ」

「どの部位に魔法を掛ければ、その人が蘇るのでしょうか……?」

「――頭部ではないかと予想する。間違ってたらごめん」

「彼女達は蘇生させても問題はないわよね?」

「……どうだろうか。でも彼女らは野盗達に姦わされて憔悴しきってた所をモンスターに殺されたって仮定した場合、死んだことにも気が付かないであの世に行っちまったとも考えられないか?」

「死んだときの記憶が曖昧であれば、自分達が蘇生された事すら気が付かないってこと? 物凄い希望的観測ね」

「――やってみる価値はある。そもそもミドナが蘇生魔法についてよく知らないみたいだから、実験的な意味合いでもやってみるべき」

「実験って……結構酷い事をさらっと言うわね、アルシェ」

「――私は現実を見ているだけ。夢は見ない主義」

「……そう。それじゃ、蘇生させるわよ?」

 

 ミドナは四人が賛同するのを確認し、死体の頭部に手を翳す――そして一つの懸念が頭を過った。

 

「……この子たちのレベルっていくつなのかしら?」

「レベル? レベルってなんだ?」

「……質問するわ。野盗の人達は誰かが蘇生させない限り、絶対に生き返ることは無いのかしら?」

「……何言っているんだ? 当たり前だろ」

「その人がどれだけ強くても?」

「さぁ……逆にミドナは蘇生魔法が無くても生き返るのか……?」

「……そうよね。多分だけど生き返らないわ」

「……?」

 

 意味不明だと言いたげな表情を作る四人を一瞥し、ミドナはユグドラシルの仕様について思い返す。

 

 ユグドラシルではプレイヤーのHP(ヒット・ポイント)が〇になった場合、気絶という状態が三十秒間続く。気絶した場所に留まり続け、そのままカウントが過ぎた場合は街などで復活するのだ。気絶した状態時に蘇生魔法を掛けると、そのプレイヤーは復活するシステムだ。

 プレイヤーは気絶状態から蘇生されると、行使された蘇生魔法の階位と己のレベルの高さによって経験値消費(デスペナルティ)の量が上下する。カウントが過ぎて街に戻ると、より多くの経験値消費(デスペナルティ)が発生する。

 

(確か低レベルの場合は蘇生魔法を掛ける意味すらなかったはず……ある程度のレベルまで上げない限り、デスペナは発生しなかったんだから……)

 

 例えば三レベルのプレイヤーに蘇生魔法を使った場合は意味も無く蘇生の代償として経験値消費(デスペナルティ)を課してしまうため、低レベルのプレイヤーが気絶した場合は街に戻るのが基本だった。しかしこの世界には気絶も街戻りも存在しない。HP(ヒットポイント)が〇になった瞬間に死亡だ。

 

 蘇生魔法もMP(マジックポイント)があれば無制限に使えるわけではない。魔法の階位によって金額は変わるが金貨を消費する。MP(マジックポイント)を消費している分、短杖(ワンド)(スタッフ)を購入する金額よりは安く済むとは言え、それでも高位の蘇生魔法は多大な金貨を消費するのだ。

 

(ユグドラシル金貨で蘇生できるなら、別にそれは構わないけど……もし蘇生による経験値の消費が本人の保有する経験値を上回ってしまった場合はどうなるのかしら……その階位魔法では『生き返らない』で終わってくれればいいけど、もしそうではなかったら……)

 

 ミドナは女の死体から目を離し、ヘッケランに向き直る。

 

「この子たちを生き返らせるのには、恐らく低位の蘇生魔法では生き返らない可能性がある。第九位階魔法〈真なる癒し〉(トゥルー・リザレクション)を使う許可が欲しいわ」

 

 それを聞いたヘッケランは思わず額に手を伸ばす。第三位階魔法どころの話では無くなったことに、強烈な頭痛と眩暈に襲われた。

 他の三人も同じような反応を見せる。

 第九位階という言葉に、一気に疲労してしまったヘッケランは草臥れた様子で質問した。

 

「一応聞かせてくれ……なぜその魔法なんだ?」

「経験値消費を極力抑えるため……ね。低位の蘇生魔法だと蘇らない可能性があるわ。あくまで私の憶測だけど……」

「ああ、そうかい……まぁこれは有事の際だし仕方が無いか。いいよな、皆?」

 

 全員で顔を見合わせ、頷いた。

 

「よし、やっちまえ」

「わかったわ――」

 

 ミドナが翳した手に白い魔法陣が形成される。すぐに魔法の効果が発動し、洞窟の上空に天使が出現すると翼を大きく広げた。すると役目は終えたと言わんばかりに、天使は光の粒となって消えていった。

 天使の姿に見惚れていた四人は、無残な姿だった死体が目を離した隙に本来の美しい女性の姿に戻っていた事に感嘆の言葉を口々にする。

 

「凄いなこりゃ……まるで魔法だ」

「いや、魔法でしょ。何言ってんのよ、ヘッケラン」

「本当に生き返っているのですか……?」

「恐らく……アルシェ、脈があるか確認してみてくれる?」

「――了解した…………大丈夫。ちゃんと生き返ってる」

「よかった。ならあと三人分ね」

 

 次の死体に手を翳し蘇生魔法を行使する。消費金貨は一人につきユグドラシル金貨一万枚だ。これは〈真なる癒し〉(トゥルー・リザレクション)で蘇生させた場合に消費する金貨においては最低額であり、高レベルのプレイヤーを蘇生させる場合はより高額になる。

 

(この依頼の成功報酬が概ね三百金貨だから、物凄い赤字ね……)

 

 合計四万枚の金貨がミドナの財布から消え去った頃、そこには四人の女性が全裸で寝転がっているという摩訶不思議な光景が広がっていた。

 

「……流石にこのまま持っては帰れないわね」

「あんまり見るんじゃないわよ、ヘッケラン!」

「ばっか、お前! 仕事中だぞ! 弁えてますとも」

「衣類は持ち合わせていないので、とりあえず馬車まではこの姿で我慢してもらいましょう。アルシェ、お願いします」

「――わかった」

 

 アルシェは一本の巻物(スクロール)をポーチから取り出す。この依頼のために購入した魔法の巻物(スクロール)であり、付与されている魔法は浮遊する板(フローティング・ボード)だ。

 アルシェは巻物(スクロール)の魔法を発動させると半透明の板を空中に出現させ、そこに眠っている彼女達を乗せて布を被せた。

 

「さて、ここからが問題だ。外には野盗達を殺し尽くしたモンスターがいるはずだよな?」

「――馬車まで戻って、エ・ランテルまで行くのは危険?」

「間違いなく危険でしょう。それに保護できたのは女性だけです。他の方はどこにいるのでしょうか?」

「……多分、洞窟内にはいないでしょ。殺されてどこかに埋められてる可能性のが高いと思うわ」

「……まぁ、そうだよな。洞窟内にほっといたら腐っちまうし……なら諦めてもらうしかないか」

「――それなら帝国まで一直線に帰還するべき。まずは私達の身の安全を考えて、彼女達の事はその後で考えよう」

「……そうだな。なら馬車まで彼女達を運搬しよう」

 

 話が決まったところに、ミドナが横から発言する。

 

「――待って。モンスターの正体を突き止めておきたいんだけど、チームを分けられないかしら?」

「……どういうことだ?」

「そうね……」

 

 ミドナは四本の巻物(スクロール)とクラッカーの形をしたアイテムを二つ取り出す。

 

「この巻物(スクロール)に今から篭める魔法は〈伝言〉(メッセージ)よ。これで離れていても意思の疎通が可能になるわ。このマジックアイテムは下の紐を抜くと上空に光球が打ちあがるから、それが信号になって自分の居場所を仲間に伝える事ができるアイテムよ。彼女達を馬車まで運搬するチームと、モンスターを探すチームに分けましょう」

「戦力を二つに分けるのは危険じゃないか?」

「だからこそこのアイテムで緊急時は知らせてくれってことでしょ? でもお互いの居場所が遠かったら手遅れになるけど?」

「私は転移魔法が使えるから、何かあったらすぐに飛んでいくわ」

「て、転移魔法……?」

 

 一々驚くのも疲れてきたので敢えてここは脳死することにした。虚栄を張らない普段の彼女の姿を見ていると、超ド級の魔法詠唱者だという事を忘れがちになってしまうのだ。

 

「すぐに対応してくれるならいいけど……でもモンスターの退治なんて依頼されてないし、今やるべきことではないと思うけど?」

「倒せそうなら倒してしまいたいけど、無理そうなら戦わないわ。私は補助職だから、戦闘手段をほとんど持っていないの。だからこそ、どんなモンスターなのか把握しておきたいのよ」

「――どうする、リーダー?」

 

 特に有力な反対意見が出なかったので、四人はヘッケランの答えを待った。

 

「……まぁミドナの言う事も一理ある。それに王国の冒険者も気掛かりだ。ならミドナと俺で周辺を見て回るから、三人で馬車まで行ってくれ。巻物(スクロール)とアイテムはお互いに持っておこう」

「馬車まで無事に辿り着いたら〈伝言〉(メッセージ)を送ればいい?」

「そうだ、何かあったらすぐに連絡してくれ」

「――了解、そっちも気を付けて」

 

「んじゃ、最後の仕事と行きますか――」

 

 パチンと手を合わせたヘッケランは、野盗の洞窟を後にした。

 

 

 

 

 

 

 二手に分かれたヘッケランとミドナは周辺を捜索していく。

 ミドナは探知用のアイテムを再び使用したが、洞窟内で時間を掛け過ぎたために足跡が消えていた。

 

「この洞窟に入る前に見た足跡はここから北に向かっていたわよね?」

「そうだったな、行ってみるか」

 

 まっすぐ森の中を走り続けると平原に出てしまった。しかし二人の視界の先には、洞窟内で見た惨状と似たような光景が広がっていた。

 

 またもや人間が殺されている。平原に転がる死体の数々にミドナは体を震わせる。

 

「なんてこと……」

「これは……プレートを付けているから王国の冒険者だな。間に合わなかったか……」

 

 死体を数えてみると六人ほどだろうか。ただ一人だけ人の姿を保ったまま奇麗な姿で転がっている女性の姿が目に入った。赤い髪をした、どことなく活発そうな女性だ。

 

「この人は……生きているわ」

「起こして何があったのか聞いてみるか?」

「そうね……でも先にこの人達を蘇生してあげたいんだけど」

「――待て! 頼むから待ってくれ……」

 

 ヘッケランは慌ててミドナを抑止する。毎度の如く自分ばかりが頭を悩ませていることに不平を喚きたくなったが、ここは忍耐するべきだと不満は後回しにして思考を切り替える。

 

 ここで死んでいるのは冒険者であり、モンスターに殺されたのは間違いないだろう。まだ自分達は蘇生された者の記憶がどのような状態になっているのかについて確証を得られていない。死の直前にモンスターに殺されたと自覚していたら厄介だ。そんな者達を蘇生させてしまったら、目を覚ました彼らは己が生きていることを絶対に不審がるだろう。

 

「……危険だ。蘇生させた場合に生じるデメリットのが遥かに大きい。その力はなるべく隠しておきたいんだ。必ず面倒事に巻き込まれるし、騒ぎになるのは明らかだからな」

「で、でも……この人達は何も悪い事をしていないのよ? 冒険者は人々を守る良い人達なんでしょう?」

「だとしてもだ。冒険者と言えどモンスターの命を奪っているんだぞ? その冒険者がモンスターに殺されるのは、ある意味仕方がないとさえ言えるんだ」

「そんな……同じ人間種じゃない……お願いよ、ヘッケラン。この人達を救えるのは私しかいないのよ……?」

「モンスターに命を奪われる冒険者は何もこいつらだけじゃない! お前はそんな人達の全てを救おうとでも言うのか?」

「……私は見て見ぬフリをしたくないだけ。助けを求めているのなら、その手を取ってあげたいの……」

「モンスターだってこいつらを殺さないと自分が殺されるんだ。その理屈だとモンスターも助けないと筋が通らないことになるが?」

「……わかんないよ、何が正しい行いなのかなんて……ただ私は信念を貫きたいだけ。やらない後悔はしたくないの」

「……堂々巡りだな」

 

 はぁ……とヘッケランは息を漏らす。

 周囲を伺ってみるが他に人が居る気配は感じられない。

 ミドナがここで蘇生魔法を行使し、この寝ている女性だけを起こした場合、死んだ仲間が生き返っている姿を見たら何を思うんだろうか。こちらが何かをしたと考えてしまうのが道理だろう。

 

 しかし自分達は面をしていて誰にも素顔までは見られていない。この依頼を受けた自分達は帝国でも非公式であり、その素性を暴くのは容易ではないはずだ。依頼主であるグラン家の者が口外しなければの話だが……。

 

 ヘッケランは自分達が厄介事に晒される危険性とミドナの想いを頭の中で天秤に掛ける。

 自分達もミドナに救われた口だ。そう思うと、無碍に否定することはできなかった。

 

「……なんとかなるのかね。だが、これっきりにしてくれよ? 俺達は慈善団体じゃないんだからな?」

「……そうね。なるべくそうするわ」

「あんまり信用ならねぇなぁ……まぁいいや。やっちまえよ」

「――ありがとう、ヘッケラン!」

 

 ミドナは蘇生魔法を発動させる。ただしヘッケランが先ほど洞窟内で見た第九位階魔法<真なる癒し>(トゥルー・リザレクション)とは異なる魔法のようだった。

 装備こそ破壊されているものの、その冒険者達の姿は洞窟内での光景と同じように奇麗さっぱり元通りに蘇生された。

 

「よかった。この階位魔法でも蘇生できるのね」

「第九位階の魔法とは違ったようだが?」

「ええ。一段下げた蘇生魔法を使ったわ。彼らは冒険者だから、経験値を多く保有していると思ったの。それより早く彼女を起こして話を聞きましょう」

 

 そうかい、とヘッケランは頷き、寝ている女の肩を揺さぶる。やがて彼女の瞼がゆっくりと見開かると、体に電流が走ったかのように突然と上体を起き上がらせた。

 

「――ひ、ひいいいい!! やてえぇぇ! 殺さないでえぇぇ!」

「――っうお! ビックリした!」

「だ、誰よあんたたち! さっきの化け物の仲間?! や、やめてよ……お願いだから……」

 

 女の冒険者の慌て方を察するに、恐らく殺される直前だったのだろう。何らかの理由があって、彼女だけは見逃されたようだ。

 彼女は慌てながらも周囲を見回すと、死んだ仲間が生き返っている事に気付いたようで、頭を抱えながら動揺していた。

 

「……えぇ? 何これ? どうなってるの? まさか、夢?! なわけないわよね? なにこれ……」

「……察しがいいな。もちろん夢だ。お前達は悪夢を見ていたんだ……いいな?」

「――え? で、でも……」

 

 バラバラに破壊されている彼らの装備に彼女は注目したようだった。流石に夢だと言い切るには無理があったようだ。しかし夢で通さなければならないと思ったヘッケランは強引に話を進める。

 

「お前が見ていた夢の内容を聞かせてくれないか? 俺達はそれが知りたいんだ」

「……あんたたち何者? エ・ランテルの冒険者じゃないわよね?」

「……質問に答えてもらおうか? こう見えても忙しい身なんだ。話をしたくないと言うのなら、その体に直接聞いてみることになるが――」

 

 ヘッケランは腰に携えた剣に手を伸ばし、静かに殺気を放つ。

 少し前に死の恐怖を体験した人を脅すような真似はしたくはなかったが、今は一刻を争う場面だ。致し方がないと心の中で謝罪を入れる。

 

「は、話すわ! 話すから手荒なことはやめて!」

「よし、わかった。こちらも正直に話してくれるなら何もしない。それで、どんなモンスターに襲われていたんだ?」

「……吸血鬼(ヴァンパイア)よ。それも普通の吸血鬼(ヴァンパイア)じゃなかった。こちらの銀武器が全く効かなくて……凶悪な大口をした…………あれ? でも……」

「……どうした? 大口をした?」

「……可憐な女の子の姿が記憶にあるわ。彼女も吸血鬼(ヴァンパイア)だったのかしら……」

「二体目ってことか?」

「……どうだろう。そこまで覚えていない。ただ、綺麗な女の子だったわ。この世の者とは思えない絶世の美少女で……ボールガウンのような美しいドレスを纏っていたわ」

「……吸血鬼(ヴァンパイア)にドレスのモンスターねぇ。どうだ? 心当たりあるか?」

 

 ヘッケランは黙って聞いているミドナに質問する。腕を組みながら逡巡しているミドナは、首を横に傾げた。

 

「さぁ……吸血鬼(ヴァンパイア)もお洒落をする時代なのかしら?」

「何言ってんだ……? まぁいい。それでなんでお前だけ生きてたんだ?」

「――え? なんでって……あっ! そうだった、赤色のポーションを投げたら、急に動きを止めたの」

「……赤色のポーション? 青じゃなくてか?」

「私も詳しくは知らないけど、エ・ランテルで新しく冒険者になった人から貰ったのよ」

「赤色のポーションねぇ……どうだ? 何か知ってるか?」

 

 再びミドナに聞いてみると、先ほどとは違って若干の動揺が見受けられた。面をしているのでその内情までは読めなかったが、一週間という短い時間だが共に過ごしたヘッケランだからこそ分かる程度の小さな動揺だ。

 何か思い当たる節があるのかと思い、再びミドナに質問する。

 

「……おい? 何か問題があるのか?」

「……い、いえ、なんでもないわ。いや、なんでもあるわね……そ、その、ポーションは普通は青色よね?」

「あ、ああ……そうだが?」

「そうよね……いや、まさか……」

 

 不思議な挙動を察するにミドナは何かを知っているようだった。自分以外にもここには冒険者が居るので話せない内容なのか、もしくは自分にも話せない内容なのかは不明だったが、とりあえず現時点では喋る気は無いようだった。

 

「……その吸血鬼(ヴァンパイア)はどこに行ったか分かりますか?」

「え? い、いや、わからないわ」

「……そう」

 

 何かを探す様にミドナは周囲を見渡した。

 

「申し訳ないけど、あなたは先に馬車に戻ってて。私は奥の森を少しだけ見てくるわ」

「――お、おい!」

「すぐ戻るから、絶対に付いてきては駄目よ! 何かあったらすぐに〈伝言〉(メッセージ)で教えてちょうだい!」

 

 そう言ってミドナは森の中へと走り去って行った。

 

「……なんだってんだよ一体――」

「――ん……? こ、こわ……?」

「あ……」

 

 どうやら蘇生された冒険者の一人が目を覚ましたようだった。

 

「な、なん、だ……? ここは、しごのせ、かいか?」

「……ちょうどいいや。お前に一つ質問したい」

 

 よろよろと上体を起き上がらせた男にヘッケランは言葉を投げかける。

 

「お前が寝ていた前の記憶を教えてくれないか?」

「ま、まえのきお、く……? あ、あああ!!!」

 

 急に頭を抱えて地面に縋りつくようにうずくまる男にヘッケランは動揺を隠しきれない。

 

「……だ、大丈夫か? 安心しろ。もう化け物はいねえよ。お前達は悪い夢を見ていたんだ」

「……ゆ、ゆめ? ゆめなは、ずが……」

「――夢だ。誰が何を言おうと夢なんだ。それで夢の最後はどんな状況だったか覚えているか?」

「……え、さいご……って、お、れはばけ、もんにかまれて……ころされ……たんだ」

「……ふむ」

 

 どうやら殺される前までの記憶はしっかり残っているようだ。 

 厄介だな……。とヘッケランは今後の事態を懸念する。

 記憶が残っている以上、この冒険者達と長く居続けるのは危険だろう。余りこちらの情報を与えるわけにはいかなかったので、ヘッケランはこの場を立ち去ろうとする。

 

「……ま、まって、くれ。なぜお、れはいき、ている?」

「だから夢を見ていたと言ってんだろ?」

「……嘘よ。私は彼らが殺されているところも記憶に残っているのよ! あんたたちが何かしたんじゃないの?!」

 

 はぁ、と溜息を一つ吐く。面倒事になる予感しかしないのは、きっとヘッケランの気のせいでは無いだろう。

 

「さぁな。俺は悪夢を見ていたとしか言えないが……まぁ、そうじゃないと思うんだったら――」

 

 

「――どっかの女神様のお恵みでも賜ったんじゃねえのか?」

 

 

 その言葉を残し、ヘッケランは馬車へと走り出した。

 

 

 

 Chapter4 end




早くナザリックに行きたい。

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