魔法科高校の劣等生-黄龍の異端児-   作:愚者ぺら

13 / 30
第十二話 出発

九校戦に向かうためのバスが停まっている駐車場。

バスの中には雫やほのか、モノリス・コードでチームを組む森崎に、深雪さん。

外にはエンジニアとして一年生で唯一選ばれた達也もいた。

 

 

ほのかに促されて雫の隣、窓際の席に座る。

「おはよう、みんな早いね」

 

「おはよう、神威くん。いよいよ九校戦だから、待ちきれなくて......」

いつになく燃えている様子の雫。

 

「そう言えば、桜華ちゃんは応援に来るんですか?」

ほのかの質問に

「桜華ちゃん?」

と深雪さんが首を傾げる。

 

「妹だよ。少し前に京都からわざわざやって来て、うちにいるんだ。

向こうであったら紹介するよ」

 

「神威さんの実家は京都だったんですね」

 

「そうだよ。そう言えば、何で達也は外で立っていたんだ?」

 

「出席確認だって。後来てないのは何人かいるんだけど、すぐ来ると思う。ただ......七草会長が遅れるって連絡があって。いつになるか分からないのにずっと外にいるの」

雫からそれを聞いた俺は

「ちょっと外行ってくる。雫、そこの席確保しといて」

と言ってバスから降りた。

 

 

渡辺先輩がいなくなったタイミングを見計らって

「やあ、達也。七草先輩待ってるんだって?別にバスの中でもいいんじゃないの?」

と達也に声をかける。

 

「俺がいれば空気が悪くなるだろ」

 

「気にしすぎじゃない?まあ、達也がいいならいいんだけど。それより、面白い話があるんだ」

 

「なんだ?」

 

「五神家のうち、俺を含む四家の次期当主が九校戦の選手で参加する」

その言葉を聞いた達也の顔は一瞬だけ驚きの表情となる。

 

「春のブランシュの一件では世話になったから、名前教えてあげてもいいんだけど......知りたい?」

 

「何が目的だ?見返りを要求するんだろ?」

 

「別に欲しいものはないよ。くれるって言うならありがたく貰うけど。

例えば.......最近開発した飛行デバイス......とか」

 

「どこまで知ってるんだ?」

 

「どこまでと言われれば、ほぼ全部......かな。

まあ、飛行デバイスが欲しいのはシルバーへの個人的興味なんだけどね」

 

「......分かった。後で渡してやる。世話になったのはこちらも同じだ」

 

「それじゃあ、教えてあげよう。五神家次期当主、そのうちの三人を。

まずは、北神 玄斗(げんと)、八高の二年。

次に三高の一年、西神 白夜(びゃくや)。最後に九高の一年、南神 紅羽(くれは)

みんなかなりの実力者だからね、気をつけなよ」

俺の言葉に達也は少し考え込む。

 

「用は済んだから、俺は戻るよ」

と言って車内へ戻ろうとする。

そこで言い残したことがあることを思いだし、振り返り、

「中で待っててもみんな気にしないんだから、あんまり卑下しない方がいいよ」

と今度こそ再びバスの中へ戻る。

 

 

 

 

「神威さん、お兄様とどんなお話をしたんですか?」

探りを入れるように深雪さんは言う。

「バスの中で待っててもいいんだよって伝えといた。外じゃ暑いだろうからね」

 

「そうですか。ありがとうございます、神威さん」

 

「いや、あんまり意味なかったみたいだよ。まだ外で待ってるし。

頑固なんだか、律儀なんだか。そういうところは達也の良いところだと思うけどね」

 

「......はい、そうですね」

 

 

 

しばらくして七草先輩が到着した。

遅れること一時間半。外で待っていた達也と言葉を交わし、バスに乗り込む。

そして、九校戦の会場に向けてバスは走り出した。

 

 

「神威くん、よかったらお茶」

そう言って雫はお茶の入ったコップを差し出す。

「ありがとう、雫。雫は喉乾いてないか?車酔いとかしてないか?」

 

「うん、大丈夫。あ、神威くん寒くない?」

 

「大丈夫だよ、雫こそ大丈夫か?」

 

「ありがとう、大丈夫だよ」

 

 

 

「ね、ねえ、ほのか。あの二人は......付き合ってはないのよね?」

 

「う、うん。そういう話は聞いてない」

 

「そのわりには随分と親しげよね。これは問い詰める必要がありそうね」

 

「うん!時間はたっぷりあるもんね」

深雪さんとほのかがそんな会話をしているとは知らずに、雫との会話に花を咲かせていた。

 

 

 

すると、突如嫌な予感が頭を過る。

その直後、

「危ないっ!」

と二年の千代田先輩が叫んだ。

その声につられ、ほぼ全員が対向車線側の窓へ目を向ける。

 

 

対向車線には大型車が傾いた状態で火花を散らしている。

その車は車線を仕切るガード壁に激突すると宙返りしながら、バスの方へ飛んできた。

バスは止まり、直撃は避けた。

が、炎を上げながらこちらへ向かってくる。

 

 

「吹っ飛べっ!」

「止まって!」

森崎や雫が魔法を発動しようとする。

パニックを起こさなかったのは褒められるべきことだけど、この状況では事態を悪化させる。

 

(龍ノ眼___発動!)

心の中でそう唱えると、全ての魔法式がかき消された。

「深雪さんっ!炎は任せた!」

俺の言葉に戸惑いながらも頷くと、直ぐに魔法で消火する。

 

 

 

 

事故による怪我人は一高側には出なかった。

事情聴取や通行可能にする為の手伝いなどで三十分ほど時間をロスしたものの、昼過ぎにはどうにか宿舎に着くことができた。

 

「神威、少しいいか?」

バスから降りた俺に達也が声をかける。

「何?」

 

「さっきの事故、魔法式がかき消されたらしいがお前か?」

 

「さあ?俺はてっきり達也の仕業だと思ってたよ」

と笑顔で嘘をつく。

 

「しらを切るのか?」

 

「そうは言っても、分からないものは分からないさ」

 

「まあいい。お前が敵じゃないなら」

そう言って達也は機材の乗ったカートを押していく。

 

 

達也を見送り、部屋に荷物を置いた俺は上層階のとある部屋に向かった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。