魔法科高校の劣等生-黄龍の異端児-   作:愚者ぺら

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アニメ二期決定ということで久々の更新です。
アニメ始まるまでには二年に進級させてあげたい......。


第十三話 五家の跡取りと導きの老師

会議に出席する他国の高級士官も宿泊するようなホテルを九校戦の間は宿舎として使用している。

そんなホテルの上階の一室の扉を俺は開けた。

「遅いよ、神威。待ちくたびれたじゃない!」

と俺に声をかけたのは長い深紅の髪の少女。

 

「そうは言ったって事故に巻き込まれたんだから仕方ないだろ。

連絡はしておいたはずだよ、紅羽」

 

「本当に事故だったんか?」

そう聞いてきたのは白髪オールバックの青年。

 

「事故だよ、白夜。一高を狙った人為的な事故。玄斗、何か聞いてない?」

黒髪の青年にそう尋ねる。

 

「《無頭龍》という中華系組織が不穏な動きを見せてるらしい。そちらは東神が担当するので、我々は九校戦に専念するようにと言われている」

 

「そう。で、わざわざ集めた理由は何?」

事故やその後の事情聴取で疲れていた俺は少しイラついていた。

 

「直ぐに済む。そうイライラするな。話の半分はさっき話した無頭龍のこと。

もう半分は.....五家当主からの伝言だ。

『九校戦は実戦以外で唯一実力を発揮できる場、加減は無用』だそうだ」

 

「加減無用ねぇ〜。けど神威、あんまりやり過ぎんなよ」

 

「どういう意味だよ、白夜」

 

「お前、一条とピラーズで戦うだろ?加減は無用ったって、やり過ぎてアイツの心を粉砕しないように一定の加減は必要だろ?」

 

「大丈夫、大丈夫。自分の力がどれだけ強力かを思い知るだけだから」

 

「それがダメなんでしょうが。事実がどうあれ、それを知らなければ一方的にやられてるだけなのよ」

 

「でもそれしかやり方がないんだから仕方ないでしょ。

大体本気出していいって言われてるんだし、大丈夫なんじゃない?」

 

「まっ、一条の心がそう簡単に折れるとも思っちゃいねえよ」

 

「話は終わりでしょ。俺もう行くから」

と欠伸をしながら部屋を出ようとする。

正直言ってすぐにでも寝たかった。それぐらいに眠かった。

 

「懇親会の後、ここで九島殿がお前と会いたいそうだ。お前も世話になった相手だ。忘れるなよ」

玄斗の言葉を聞き流しながら部屋を出る。

 

そして、自室につくなり、倒れこむようにベッドで横になった。

 

 

 

 

「おい、中神。起きろ、起きろって!」

騒がしい声に叩き起こされた俺は半分寝ぼけた状態の頭で

「何?騒がしいんだけど」

と目の前に立つ森崎に尋ねる。

 

「もうすぐ懇親会だ。さっさと準備しろ」

準備と言われても大した準備もないんだけど、流石に寝起きのままじゃダメか。顔ぐらいは洗おう。

半開きの目をこすりながら、俺は洗面台に向かった。

 

 

 

 

 

 

懇親会の会場。

各校の生徒、四百人近くが集まったそこで雫たちとパーティーを楽しんでいた。

 

来賓の挨拶が始まり、一人の老人の番となる。

九島烈。

『老師』と呼ばれる十師族の長老。

十師族という序列を確立した人物で、二十年前は世界最強の魔法師の一人と目されていたらしい。

 

 

名前を呼ばれて壇上に上ったのは若い女性だった。

九島烈は何故か女性の後ろに立っていた。

 

精神干渉魔法。

これを見破れた人間がこの中に何人いただろう。

 

俺は壇上の九島烈に笑みを向ける。

それに気づいたらしく、向こうもニヤリと笑う。

 

壇上の女性がスッと脇にどくと、ライトが九島烈を照らした。

おそらく、ほとんどの者には九島烈が突如現れたように思えただろう。

 

「まずは悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する」

九十近いとは思えない若々しい声で九島烈はそう言う。

 

「今のはちょっとした余興だ。魔法というより手品の類いだが、

タネに気づいた者は、私が見た限り五人だけだった」

その五人に俺は含まれないんだろうな、と考えていた。

俺の場合はタネがわかっている状態の手品を見ていただけだから。

 

「つまり、もし私がテロリストだった場合、それを阻むことが出来たのは五人......と一部の例外のみ、というわけだ」

一部の例外、その言葉だけは消え入るような声で発せられた。

 

「魔法を学ぶ若人諸君。魔法とは手段であって、それ自体が目的ではない。

私が今用いた魔法は魔法力の面から見れば低ランクのものだ。

だが、君たちはその弱い魔法に惑わされ、私が現れると分かっていたにも拘わらず、私を認識できなかった。

明後日からの九校戦は魔法を競う場であり、それ以上に魔法の使い方を競う場だということを覚えておいてほしい。

魔法を学ぶ若人諸君。私は諸君の工夫を楽しみにしている」

九島烈の言葉に聴衆は手を叩く。

一斉に拍手とならなかったのは戸惑いからだろう。

魔法師社会の頂点に立ちながら、今の魔法師社会の在り方に逆らうことを勧める。

 

相変わらずだな、この爺さんは。

 

 

 

 

 

 

懇親会が終わり、俺は自室に戻らず昼間と同じ部屋に来た。

部屋をノックし、返事が聞こえたのを確認すると、扉を開き

「邪魔するよ、爺さん」

と言って入る。

中にいた人物数人が戸惑っていた。

 

「すまんが、二人きりにしてくれ」

九島烈の言葉に全員が部屋を後にする。

 

「いいの?あれ、護衛でしょ?」

 

「別に構わん。元々いらないからな」

 

「それもそうか。にしても相変わらずだね、爺さんも。

さっきの挨拶、面白かったよ」

 

「それはよかった。しかし、相変わらずなのは君もだよ。

私に恐れをなさずにこうして話せるのは君ぐらいのものだ」

 

「尊敬はしてるけど、恐れるだなんてことはあり得ないよ。

昔からずいぶん世話になったから」

魔法に関わらず、様々な知識はこの人に教わった部分が大きい。

 

「そうか。私は君が恐ろしい。神獣を宿し、異端児と呼ばれる君が」

九島烈の言葉に俺は黙り混む。

その呼び名は好きじゃなかった。

龍の目と特殊な身体で生まれた俺につけられた仇名。

中神家の守り神である黄龍をその身に宿した、前代未聞の異端児。

 

「この呼び方は嫌いだったな。話を変えよう。

中神神威、君の目的はなんだ?なにをしようとしている?」

九島烈の問いかけに俺は小さくため息をつく。

そして、まだ誰に話していない、俺の密かな野望を口にする。

 

「俺は五神家を終わらせたいんだ。五神家は今の時代には必要がないと思ってる。この国を守護するのは軍や警察の役目。先導するのは政治家の役目だ。俺たちがいなくても大丈夫なんだ。ただ、問題が一つだけ」

 

「十師族.......か」

 

「そう。十師族全てが万が一暴走を始めた場合、それを止められるのは五神家ぐらい。

もちろん、そうなることはないと思ってる。でも、何が起こるか分からない。俺一人の考え一つで最悪の事態が起こる可能性もある」

 

「それなら、君のやるべきことは簡単だ。

十師族に信頼できるパイプを作ること。そして、十師族と無関係の優れた魔法師の育成だ」

十師族の暴走を未然に防ぐために情報を集めるために十師族と、万が一の時に抑え込めるだけの力を持つ者と手を組む。

考えてみれば単純なことだった。

十師族関係者となれば当てはいくつかあるし、後者の方も魔法科高校にならいくらでもいる。

 

 

「......なるほど。あなたの助言はいつも役に立つ。

ありがとう、爺さん。そろそろ戻るよ」

 

「もう行くのか」

 

「色々あって疲れてるんだ。またゆっくり頼むよ」

と言って部屋を出た。

 

 

あの人はいつだって俺の道を示してくれる。

中神を継ぐのを悩んでいた、あの時もそうだったな。

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