魔法科高校の劣等生-黄龍の異端児-   作:愚者ぺら

16 / 30
第十五話 九校戦開幕

十日間に及ぶ九校戦、その初日を迎えた。

一日目の競技はスピード・シューティングの決勝までと、バトルボードの予選。

スピード・シューティングには七草先輩、バトルボードには渡辺先輩が出場する。

 

スピード・シューティングの会場に移動した俺たちは、

一般用の観客席に、左から俺、雫、ほのか、達也、深雪さんの順に座る。

 

「予選では大破壊力を以て複数の標的を一気に破壊するという戦術も可能だが、準々決勝以降は精密な照準が要求されるというわけだ」

達也の解説に、新人戦のスピード・シューティングに出場する雫が頷く。

 

「従って、予選と決勝トーナメントで使用する魔法を変えてくるのが普通だが......」

「七草会長は予選も決勝も同じ戦い方をすることで有名ね」

達也のセリフは背後に現れた少女に横取りされた。

 

「エリカ」

 

「ハイ、達也くん」

「よっ」

「おはよう」

「おはようございます」

俺たちの背後に右からレオ、エリカ、美月と初対面の男子。

話したことはないが、知っている。

吉田幹比古。

古式魔法の名家、吉田家の神童と呼ばれていたのを覚えている。

一高の二科生だとは聞いていたけど、達也と知り合いだったとは。

 

 

みんなが七草先輩の話で盛り上がる中、俺は席を立った。

「あれ......神威くん、どこ行くの?」

 

「うん、ちょっとね」

雫が不安そうにこちらを見ていたが、気づかないフリをしてその場を離れた。

 

 

 

 

「よっ、偵察?」

俺は達也たちとはかなり離れた場所、一人で観戦している紅羽に声をかける。

「違うわ。暇潰しよ」

 

「紅羽って......友だちいないの?」

 

「いるわよ!神威こそ一人じゃない。あんた、学校で浮いてるんじゃないの?」

 

「そんなことはないって。紅羽が一人でいるのが見えたから来たんだよ。っていうか、ここで見える?」

 

「あんた程じゃないけど、目はいいの。それに前の方には行きたくないわ。ああいうのは嫌い」

そう言って指差したのは、観客席の最前列で七草先輩を応援する少年少女。

 

「お前って、昔から人気者は嫌いだもんな。

どんなに好きでも流行り出すと嫌いになるし、流行りに逆らおうとするし」

 

「今はそこまで酷くないけどね」

 

「それにしても、エルフィン・スナイパーの異名は伊達じゃないな」

七草先輩の戦いに感心していた。

 

「それだけに残念だわ。彼女と戦うことは無いんだもの。司波深雪以外に面白そうな相手もいないし」

残念そうに話す紅羽に

「面白い奴ならいるぞ。北山雫って子が」

と答える。

 

「へえ~、神威が一目置く子か......面白そうね。その子は何に出るの?」

 

「スピード・シューティングとピラーズ・ブレイクだよ」

 

「もろかぶりじゃない。

じゃあ、楽しみにしといてあげる」

そう言って少し嬉しそうに紅羽はその場を後にした。

そんな紅羽の姿に俺も嬉しくなっていた。

 

昔から一人でいることの多かった紅羽は五神家の人間にすら心を開いていなかった。

それが、俺たちに心を開き、ライバル......とはいかなくても、十分に戦える相手に心踊らせているということが、俺には嬉しく思えた。

 

 

 

 

 

 

雫たちと再び合流して、渡辺先輩の出場するバトル・ボードを観戦し終えた俺たちは、

用事があるという達也、具合が悪いという吉田を除くメンバーで昼食を食べることになった。

 

「神威さん、桜華ちゃんは大丈夫なんですか?」

ほのかの質問に

「桜華ちゃん?」

とエリカが首を傾げる。

「妹だよ。もうすぐ着くって連絡があったから、食べ終わったら迎えに行くよ」

 

「ねえねえ、その桜華ちゃんってどんな子?」

エリカは興味があるらしく、そう聞いてくる。

 

「年は一つ下でしっかりした、自慢の妹だよ。

うちは母が亡くなってるから、俺に甘えてくることが多いのが悩みだけど」

 

「確かにしっかりしてた。礼儀正しい妹さんだったね」

 

「そう言えば、雫とほのかは会ったことあるのよね?どこであったの?」

 

「神威くんの家だよ。この前ほのかとお邪魔したの」

 

「へえ~」

エリカが生暖かい目でこちらを見る。

深雪さんもにこやかな笑顔を向けてきた。

 

 

 

昼食を食べ終えて、俺たちはホテルのロビーにむかう。

「兄様!」

ロビーに着いて早々、桜華がこちらに駆け寄ってくる。

 

「やあ、桜華。迷子にならなかったか?」

 

「はい、大丈夫でした。

雫さん、ほのかさん、お久しぶりです。そちらの方々もご友人ですか?」

 

「千葉エリカよ」

「西城レオンハルトだ」

「柴田美月です」

「司波深雪よ。よろしくね、桜華ちゃん」

 

「はい......兄共々よろしくお願いします」

 

「しっかし、神威の妹とは思えねえくらいしっかりしてんな」

 

「レオ、それどういう意味?」

 

「神威くんって真面目なのかふざけてるのか分からない時あるもんね」

レオにエリカが賛同する。

正直言って心外だ。俺はいつも真面目なのに。

 

「兄様はいつでも真面目です」

二人の話に桜華がそう答える。

さすが我が妹、よく分かっている。

 

「ふざけている時も真面目ですよ。大体は場を和ませようとしているんです。最初は息苦しいのが苦手な私の為だったんですよね?」

......本当によくわかってるよ、我が妹。

 

「へえ~、神威くんって案外シスコンなんだ」

 

「そういうのとは違うんだけど......」

単純に桜華には笑顔でいてほしいって、ある時桜華を見て思っただけなんだけど。

 

 

「兄様、このあとご一緒してもよろしいですか?」

 

「ああ、みんなもいいかな?」

俺の言葉にみんな頷く。

 

 

 

 

スピード・シューティング女子の決勝トーナメント会場。

準々決勝からすでにスタンドは満席状態だった。

達也を待ちながら、女性陣は桜華を質問攻めにしていた。

 

「あ、達也くん、こっちこっち!」

遅れてやって来た達也にいち早く気づいたエリカが声をかける。

 

「準々決勝からすごい人気だな」

 

「会長が出場されるからですよ。他の試合はこれほど混んでいません」

達也は深雪さんと言葉をかわし、ほのかと雫の間に座る桜華に気づいたようだ。

 

「君は?」

 

「あ......初めまして。中神桜華と言います。

司波達也さんですよね、兄様から話は聞いています。

よろしくお願いします、四葉のガーディアン(達也さん)

桜華は笑顔で達也にそう言った。

最後、桜華は達也さんと呼んだように聞こえただろう。

しかし、達也と俺にだけは四葉のガーディアンと聞こえた。

達也の反応と周りの反応から察するにそれは間違いない。

 

桜華の得意とする魔法『幻術』。

精神干渉魔法の一種で、幻覚、幻聴など幻を操る。

それは九島烈を唸らせるほどの精度と汎用性を持つ。

俺と達也を除く、声の届く範囲にその魔法をかけたのだ。

 

 

「どうしたんだ、達也」

レオの言葉に固まっていた達也は平静を装う。

 

「いや、何でもない。よろしく、桜華」

 

 

 

 

スピード・シューティングは七草会長の圧勝で幕を閉じた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。