魔法科高校の劣等生-黄龍の異端児-   作:愚者ぺら

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第十六話 雫VS紅羽

九校戦二日目は達也がクラウド・ボールに出場する七草会長のエンジニアとして、駆り出された以外は特に面白い事もなく、終わっていった。

 

 

三日目は渡辺先輩がバトルボードの試合中に事故にあい、全治一週間の怪我を負った。

明らかに不自然な事故ではあり、第三者の介入があったと断定したものの、分かったのはそこまで。

九日目に行われる渡辺先輩が出場予定のミラージ・バットには深雪さんが出場することになった。

 

 

 

そして、四日目。

いよいよ一年生のみで行われる新人戦が始まる。

新人戦初日は雫がスピード・シューティングに、ほのかがバトルボードに出場する。

 

 

雫は無事に準々決勝へと駒を進めていた。

準々決勝の相手は......南神紅羽。

 

「神威さんどうかしたんですか?」

一緒に雫の試合を見守るほのかが声をかけてくる。

 

「ああ......まあね」

 

「雫ならきっと大丈夫ですよ」

ほのかの言葉に

「そうだな」

と答えた。

 

しかし、やはり心配だった。

雫のことも、紅羽のことも。

 

俺は紅羽の本気を一度だけ受けた事がある。

正直言って、勝てないとまで思った。

呪詛返しでは間に合わないその速度に、防御系魔法では受けきれないその威力に。

 

しかも、それは三年前の出来事だ。

紅羽の腕は当然上がっている。

スピード・シューティングという制限のつく競技の中でも、紅羽はその力を存分に発揮できる。

ただ、紅羽が本気を出すのかは別問題。

紅羽の本気を見ても、雫が折れるとは思ってないけどやはり心配だ。

紅羽の本気がどれほどのものかを俺は知らないんだから。

 

それに加えて心配ごとがもう一つ。

一高に対する妨害行為。

バスでの事故、渡辺先輩の試合中の事故、この二つは間違いなく同一犯。

犯人......おそらく複数の人物がこの会場に紛れ込んでいる。

けど、無頭龍とかいう奴らの仕業だとすれば今は奏司に任せる他ない。

それが当主たちの決めたことで、俺の今すべきことは九校戦で全力を尽くすことだから。

 

紅羽と雫、二人の戦いも今は見守ることしか出来ないのか......。

 

 

 

 

 

 

 

北山雫......聞いたことのある名前な気がしてたけど、まさかあの写真の子だったなんて。

神威のとこのおばさんが亡くなった辺りから、神威の部屋の机に神威と同じくらいの歳の女の子が一緒に写っている写真が飾られていた。

この子誰?って聞くと『雫。前に海で会った子』って神威は答えた。

なんで数日しか一緒にいなかった子の写真を飾ってるのか不思議だったけど、一目惚れだったんだろうなって今は思う。

あいつの初恋、まだ続いてたんだ。

 

なら、私もそろそろケリつけないと。

私とあいつはどうやったって結ばれないんだから。

 

 

 

競技開始の合図とともに私は白のクレーに見えないマーカーをつけ、引き金を引く。

すると、白のクレーのいくつかが爆散する。

この競技、クレー同士をぶつけて破壊するのがオーソドックス。

私も普通ならその戦法を取ったけど、今回だけは違う。

クレーにつけたマーカーは遠隔操作によって爆発する爆弾。

しかも爆風によって相手のクレーは煽られるし、マーカーをつけてないクレーも近くにいれば巻き込まれて爆発する。

 

さあ、どうする?

 

そう思って横をチラッと見た。

焦っているか、慌てているかのどちらかだろうと思っていた。

なのに......北山雫、彼女は全く持って冷静だった。

 

ふふっ、面白いじゃん。

神威が認めるのも、惚れるのもわかる。

ちょっとだけ、本気出して上げる!

 

さらにギアを上げ、加速していく。

それでも、彼女は冷静だった。

と同時に、彼女の中にある熱い何かの片鱗が見えた気がした。

 

 

そろそろ頃合いかな。

私は静かにCADを下ろした。

会場のどよめきが聞こえる。

けど、そんなことはどうでもいい。

私はただじっと彼女を見つめていた。

 

そうして、スピード・シューティングの準決勝は終わった。

 

 

 

控え室に戻ろうとしていた私に

「ねえ、待って」

と声をかけてきた人物が一人。

いうまでもなく、北山雫だった。

 

「私に何か用?」

 

「どうして......途中でやめたの?あのままいけばあなたが勝ってた」

 

「いいえ、私の負けよ。さすがに神威が惚れるだけあるわ」

彼女を認めるかどうかという賭け。

それに私は負けた。

北山雫は私の予想以上だった。

 

「あいつのこと助けてあげて。私たちにはできない事だから」

そう言い残して、足早にその場を去った。

なぜ彼女にあんな事言ったのかわからない。

けど、神威を助けられるのは多分あの子ぐらいだ。

 

神威は......五神家を終わらせようとしてるんだから。

 

 

 

 

 

 

結局、雫はスピード・シューティングで優勝。

二位と三位も一高の選手となった。

なんで紅羽があそこで止めたかはわからない。

けど、紅羽が何かを抱えていて、その答えがあったってことはわかる。

でも、それで終わり。

その先は俺にはわからない。

一度、しっかり話合わないとな。

 

 

「兄様、紅羽さんの事も気になりますが、今は雫さんを褒めてあげてください」

俺のことよく見てるよ、我が妹は。

 

「ああ、そうだね。今はそっちが優先だな」

 

 

 

 

 

 

「雫、優勝おめでとう」

 

「うん、ありがとう」

スピード・シューティングで雫が優勝した夜。

俺は宿舎の雫が泊まっている部屋にいた。

雫が、二人きりで話たいというからここに来たんだけど、ほのかが出て行く時に今まで見たことない満面の笑みだったのが少し気になっていた。

 

「それで......話って?」

 

「準決勝で戦った紅羽さんって人......神威くん知ってる?」

やっぱりその話か。

そんな気はしていた。

ここは隠す意味もないか。

それに、雫には知ってて欲しい事もあるし。

 

「もちろん、知ってるよ。彼女も五神家の人間なんだ。

五神家に産まれた者は、六歳から十二歳まで中神の家で過ごす決まりになってるんだ。

家族......とまではいかないけど、親戚みたいなものかな」

 

「あの人、なんであそこで止めたかわかる?」

 

「ごめん、それは俺にもわからない。けど、雫との戦いで何か答えを見つけたんだと思う」

 

「そっか.....」

 

「それにしても、なんで俺の知り合いだと思ったの?」

二人きりで話たいことって言われてこれしか思いつかなかったけど、雫がどこで俺と紅羽の関係を知ったのかが気になった。

 

「準決勝の後、紅羽さんと話をしたの。その時、神威くんの名前が出たから」

そういうことか。

なんの話をしたのかは置いておいて、紅羽は雫に何かを感じたんだろう。

それが、紅羽の答えに繋がったことは間違いなさそうだ。

 

 

 

 

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