魔法科高校の劣等生-黄龍の異端児-   作:愚者ぺら

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第十七話 アイス・ピラーズ・ブレイク

九校戦五日目、新人戦二日目。

俺と雫はそれぞれアイス・ピラーズ・ブレイクの予選に臨むのだったが、朝からあるものに見惚れていて、試合どころではなかった。

 

 

試合前、雫に呼び出された俺は、水色に振袖を纏った雫に見惚れ、立ち尽くしてしまっていた。

「おかしくないかな?」

 

「......」

 

「神威くん......やっぱり変?」

はっ!つい見惚れて黙ってしまった。

 

「いや、すごい似合ってる」

 

「本当?ならなんで目を逸らすの?」

目を逸らしていたのは無意識だった。

 

「......可愛いすぎて直視できないです」

俺の本心がつい口から出てしまった。

 

「神威くん......」

雫が照れているのが顔を見なくても分かった。

やばい、振袖姿の雫が頭から離れなくて、試合に集中できなそうだ。

 

 

しかし、当然試合は行われる。

まあ、一条以外は楽に終わるだろうと思っていたし、実際その通りだったから集中出来なくても問題なかったけど。

 

 

 

 

 

 

六日目、新人戦三日目。

この日はアイス・ピラーズ・ブレイクの男女決勝トーナメントとバトルボードの男女準決勝〜決勝が行われる。

アイス・ピラーズ・ブレイクには俺、雫、深雪さんが、バトルボードにはほのかが出る。

みんな、心配の必要はなさそうだけど。

 

かく言う俺も決勝で一条と当たる以外は楽できる。

もちろん、一条との試合も楽じゃなくても圧勝はするけど。

 

 

 

俺の予想通り決勝戦まで危なげなく勝ち進み、いよいよ一条将輝と戦う時が来た。

 

《クリムゾン・プリンス》の異名を持つ彼は、十師族の一つ、一条家の次期当主。

当然強いわけだけど......それでも俺の敵じゃない。

五神家の、中神の前では敵じゃない。

雫と一緒に一位取ろう!

密かに、勝手に俺はそう決めていた。

雫側の問題を忘れて。

 

 

櫓に上がると、一条はじっとこちらを見つめていた。

白夜から何かを聞いたのか、個人的な興味か。

どちらにしても、見せてやるよ。

 

 

試合開始のランプが灯った。

自陣のピラーズを強化し、一条の魔法を防ぐ。

その後、振動系魔法で敵陣のピラーズを壊していく。

 

最初は呪詛返しでも使ってやろうと思ってたけど、面白そうだから正攻法で行くことにしたのだった。

単純な力比べでも俺が勝つのは必然。

 

優勝候補の一条が力比べで負けるとなれば大ニュースだ。

それも相手が十師族関連の家ではなく、無名の家の人間となればなおのこと。

あんまり大ごとになると五神家的に良くない気もするけど、当主がいいと言うんだからいいはずだ。

 

そんな事を考えている内に一条の表情は曇っていく。

多分、対照的に俺の顔はニヤケ顔になっていただろう。

 

そのまま力でねじ伏せて、俺はアイス・ピラーズ・ブレイク新人戦男子の部で優勝した。

 

 

 

 

九校戦六日目はバトルボードでほのかが優勝、アイス・ピラーズ・ブレイクでは俺と深雪さんが優勝、二位と三位も一高という快挙の一日となった。

勝手に舞い上がっていて、雫が深雪さんに負けることを全く考えていなかったことに、試合が終わってから気づいたのだ。

 

 

俺は雫とほのかの泊まっている部屋の前で立ち尽くしていた。

何度もノックしようとしてはやめ、ノックしようとしてはやめを繰り返していた。

深雪さんと戦い、圧倒的な力の前に敗れてしまった雫になんと声をかけるべきか、俺には分からなかった。

大体、俺が声をかけていいものなのか、そんな疑問が何度も頭に浮かぶ。

とりあえず会うだけ会おうと意を決してノックしようとすると、扉が開き、雫とほのかが出てきた。

 

 

「「あ......」」

俺と雫は固まってしまう。

お互い、この展開は予想していなかった。

 

「神威さん、ちょうどよかったです。私たちこれからお茶しに行くんですけど、一緒にどうですか?」

ほのかの気の利いた提案に俺は

「ああ、それじゃあ一緒に行こうかな」

と答える他なかった。

 

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

「あ、そうだ。神威くん、優勝おめでとう」

雫が笑顔で俺の優勝を祝福してくれた。

なら、俺も......

「雫、準優勝おめでとう。ほのかも優勝おめでとう」

二人の栄誉を称えなければ。

 

 

 

 

 

 

一方、無名の相手に圧倒された一条将輝は呆然としていた。

「ダメだ、全く情報がない。何一つ引っかからないよ」

 

「中神神威......何者なんだ?」

友人の吉祥寺真紅郎も神威について調べているが、当然大した情報は出てこない。

 

「多分、無理だぜ。アイツの事調べたって大したもんは出てこねえよ。普通の手段ならな」

見かねた白夜は二人にそう声をかける。

 

「白夜、何か知ってるのか?」

 

「もちろん、知ってるぜ。アイツとは古い付き合いだからな。

アイツは俺と同じ五神家の次期当主。それも俺たちを束ねる中神の跡取りだ」

白夜の言葉に二人は唖然とする。

白夜はこの二人には自分の家の事を話していた。

 

「なぜ隠していた?」

 

「俺たちの存在は隠されるべきものだ。それに知ってたって勝てるわけじゃない。どうやったってアイツには勝てねえよ」

 

「なら、なぜ明かしたんだ?」

 

「お前らは......特に将輝、お前は知っとかなきゃならねえ。中神神威が成そうとしている事の助けになってもらうためにもな」

白夜も知っていた。

神威が五神家を終わらせようとしている事も、その為に必要な事も。

 

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