クラス分けの結果を確認した俺は
「二人は何組?」
と雫とほのかに声をかける。
「私たちはA組。神威君は?」
「俺もA組だよ。よろしくな、二人とも」
そう言って握手を求める。
二人はそれに応えてくれた。
「この後、ホームルームに行きますか?」
ほのかが訊ねてきた。
「あ~、悪い。実は生徒会に呼ばれてて...」
「生徒会?なにかやらかしたの?」
雫が悪戯っぽく訊ねてくる。
「いや、多分勧誘じゃないかな」
「勧誘?」
二人は首を傾げる。
「あー、実は俺、入試次席らしくて」
「そうだったんですか!?」
ほのかは驚きの声をあげる。
「俺は入試の成績なんてどうでもいいと思うけどね。
大事なのはこの先だ。これから、何を学ぶか、それをどう活かすか...なんてね」
俺のその言葉に二人は感激していた。
「じゃあ、俺はこれで」
そう言ってその場を後にした。
館内図を頼りに生徒会室にたどり着く。
生徒会室の扉をノックする。
「どうぞ~」
中から返事が返ってくる。
扉を開けて
「失礼します」
と言って中に入る。
すると、七草先輩の他に上級生と思わしき男子生徒と新入生総代の女子生徒がいた。
「本題に入る前に軽く紹介させてもらうわ」
七草先輩はそう言うと一呼吸置き、紹介を始める。
「もう知ってると思うけど、私は生徒会長の七草真由美です。
彼は副会長のはんぞーくん」
隣の男子生徒を指差し言う。
「服部刑部だ。よろしく」
服部先輩は挨拶するが、俺はあることが気になった。
『はんぞー』は何処から来たんだ?
しかし、別にどうでもいいことなのでスルーしよう。
「こちらは司波深雪さん。
深雪さん、彼は中神神威くんよ」
「よろしくね、深雪さん」
「よろしくお願いします。えっと......」
深雪さんはそこで言葉を詰まらせる。
何と呼べばいいか悩んでいるのだろう。
「神威でいいよ」
「では、改めてよろしくお願いします。神威さん」
一通り紹介が終わり、本題に入る。
「二人には生徒会に入ってもらえないかしら?」
まあ、予想通りだった。
「今すぐ答えを出さなくてもいいわ。
もちろん、断ってくれても構わない。ただ、なるべく早い段階で決めてもらえると嬉しいわ」
「わかりました。考えおきます」
「私も考えておきます」
「話はそれだけよ。じゃあ、帰りましょうか」
七草先輩がそう言って生徒会室からでる。
それに続いて深雪さん、俺、服部先輩の順で出ていく。
廊下を歩いていると深雪さんが一人の男子生徒を見つけ、
「お兄様、お待たせしました」
と駆け寄っていく。
「こんにちは、司波くん。また会いましたね」
七草先輩も挨拶する。
「お兄様、その方たちは?」
司波さんは後ろにいた二人の女子生徒を見て訊ねる。
「こちらが柴田美月さん。そしてこちらが千葉エリカさん。二人は同じクラスなんだ」
「そうですか......さっそくクラスメイトとデートですか?」
「そんなわけないだろ。お前を待っている間、話をしていただけだって。
そう言う言い方は二人に対して失礼だよ?」
「はじめまして、柴田さん、千葉さん。司波深雪です。
私も新入生ですので、お兄様同様、よろしくお願いしますね」
「柴田美月です。こちらこそよろしくお願いしますね」
「よろしく。あたしのことはエリカでいいわ。
貴女のことも深雪って呼ばせてもらっていい?」
「ええ、どうぞ。苗字ではお兄様と区別がつきにくいですものね」
三人は改めて自己紹介をする。
「深雪、生徒会の方々の用は済んだのか?」
「大丈夫ですよ」
「しかし、会長!」
「予め約束していたわけではないし、実際要件は済みましたから。
深雪さん、神威さん、いい返事を待ってますよ」
そう言って七草先輩は立ち去る。
服部先輩もそれに続く。
が、去り際、深雪さんと親しく話す司波兄を睨んでいた。
「ところで君はなんなんだ?」
俺に向かって司波兄はそう言う。
「ああ、すまない。自己紹介のタイミングが掴めなくてね。
俺は中神神威だ。新入生同士よろしく」
そう言って握手を求める。
すると、彼は一瞬戸惑っていた。
そして、
「......中神......そうか、お前が......」
と呟くのが聞こえた。
それが深雪さんにも聞こえたのだろう。
「お兄様?」
と声をかける。
深雪さんをチラッと見ると笑みを浮かべて、
「司波達也だ。よろしく」
と言って俺の手を握り返してくれた。
そのあと、お茶でもどうかと誘われたがそれを断り家に帰る。
◇
誰もいない自宅に着くと制服から部屋着に着替える。
そして、父に連絡を入れる。
「お久しぶりです、父上」
「うむ。それで一高はどうだった?」
「正直に言えば......失望しました。
一科生と二科生で差別意識があるというのは知っていましたが、新入生までそうだったとは......」
「そうか......。だが、それが現実なのだ。変えたいと思えばお前が力をつけるしかあるまい」
「はい。......それから生徒会に入ってほしいと頼まれました」
「生徒会長はたしか、七草だったな。それで、どうするつもりだ?」
「......生徒会に入ろうと思います。その方が色々と動きやすそうなので」
「わかった。お前に任せよう」
「承知しました。......あともうひとつ」
「なんだ?」
「例の兄妹と接触しました」
「そうか。そちらもお前の判断に任せる」
「はい。ではまた」
そう言って俺は電話を切る。
こうして、俺の波乱に満ちた高校生活が始まった。