「やっぱり来てたんだ」
家の前に座り込んでいた桜華にそう声をかける。
学校を出る前に『至急、帰宅されたし』という桜華からのメッセージで来てる気がしていた。
「急ぎの仕事です」
引き続き実戦の中で経験を積めってことなんだろうけど、それだけじゃないな。
桜華の表情でそう感じる。
「はあ〜。分かった。詳しく聞かせて」
そう言って桜華を家に入れる。
「それで?今回はどんな案件?」
着替えもせずにソファに腰をかけて、桜華に尋ねる。
「大陸からやってきた連中の中に気になる人がいたそうです」
数日前に父さんから大陸から面倒な連中が来たという報告は受けていた。
しかし、それは榊影で対応するとも報告を受けた。
なんで俺に回ってくるんだ?
「その気になる人ってのは?」
「兄様を探していたそうです」
俺を探していた?
大陸ってことは無頭龍関係か?
いや、それなら奏司か桜華を狙ってくるほうが可能性が高い。
「榊影の報告では、その者は中神
桜華の報告に言葉を失った。
黄毅.....黄毅さんだって?
生きてたんだ......。
黄毅さんは五年前、事故に遭い、行方不明になった桜華の兄。
俺には従兄弟にあたる人。
そう、俺と桜華は本当の兄妹ではない。
桜華の両親もその事故に巻き込まれて、亡くなっている。
家族を失った桜華はうちに養子として引き取られた。
元々兄妹同然で育った俺たちだけど、その事故が起きてから桜華は俺を『兄様』と呼ぶようになった。
「ですが、その者が本当に黄毅兄様かどうかまでは確認できていません。
黄毅兄様の名を語る偽者の可能性も......」
「黄毅さんが生きてる可能性より、その可能性の方が低いと俺は思うよ。
俺のことは九校戦で知る機会があったとして、黄毅さんの情報を掴むのは無理だと思う。
どちらにしても直接会って確かめるのが手取り早そうだ」
「確かにそうですが......」
「大陸の者を追ってた榊影に接触してきたなら、俺がそれに加わればいいだけさ。
仕事ってことは最初からそのつもりだったんだろ?」
「......しかし、兄様が自ら動くのは反対です」
桜華の言葉に俺は驚いた。
ここまではっきりと意見を出すことは珍しい。
でもそれは......
「それは中神桜華としての意見?榊影次期当主としての意見?」
「兄様の妹としての意見です」
「次期榊影当主としての意見は?」
「......中神黄毅を騙る人物と接触し、真偽を確かめてください。
また偽者の場合は即刻排除してください」
「ああ、それでいい」
自分の役目を果たした桜華の頭を撫でてやる。
「ちなみに本物だった場合はどうする?」
「しばらくこの家に住まわせるようにと指示を受けています」
事故に遭い行方不明だったとは言え、五神家に連なる者なんだし、当然か。
「わかった。動くのは今夜からでいいんだな?」
「はい。今日の捜索エリアは榊影に接触があった付近です」
「了解。それじゃあ、準備に入ろうか」
「本物だとしたら、大亜連合に派遣してた榊影によく気づかれなかったよな」
榊影は各国の動きを手早く知るために世界各地に派遣されている。
その情報網はかなり根深く、些細な変化も見逃さない。
それに引っかからず、それに頼らなかった。
もし本物なら何が目的なんだ?
「それも含めて当人に尋ねればいいだけです」
「うん、そうだね。本物にしろ偽物にしろ問わなきゃないことはあるからね」
俺はまだ知らなかった。
この事件の先にいる俺たちの真の敵のことを。