一科生と二科生の揉め事も先輩方の介入で収束した後、
「借りだなんて思わないからな」
一科生の男子生徒、森崎駿は棘のある口調で達也に向けてそう言った。
「貸してるなんて思ってないから安心しろ。決め手になったのは俺の舌先じゃなくて深雪の誠意だからな」
「......僕の名前は森崎駿。お前が見抜いたとおり、森崎の本家に連なる者だ」
森崎はそう言って名乗りを上げた。
「別に見抜いたとかそんな大げさな話じゃない。単に模範実技の映像資料を見たことがあっただけだ」
「僕はお前を認めないぞ、司波達也」
そんな捨て台詞を残して森崎は立ち去った。
「厄介な相手に目をつけられたな、達也」
俺はそう言って雫、ほのかとともに達也に駆け寄る。
「ん?誰だ?」
二科生の男子生徒は達也に訊ねる。
「1-Aの中神神威。よろしく」
そう言って、手を差し出す。
「1-Eの西城レオンハルトだ。レオでいいぜ」
レオは屈強な見た目通り、力強く俺の手を握り返した。
「へぇ、思ったより力あるんだな」
「これでも鍛えるからな」
そう言って俺たちはお互いに手を離す。
「あ、あの、光井ほのかです。さっきは庇ってくれてありがとうございました」
「どういたしまして」
「それで......その......駅までご一緒してもいいですか?」
ほのかは恐る恐る訊ねた。
達也たちは了承すると、なぜか俺も一緒に下校することになった。
◇
「......じゃあ、深雪さんのアシスタンスを調整してるのは達也さんなんですか?」
達也の隣に陣取ったほのかが訊ねる。
「ええ、お兄様にお任せするのが一番安心ですから」
「少しアレンジしているだけなんだけどね。深雪は処理能力が高いから、CADのメンテに手がかからない」
「それだってデバイスのOSを理解出来るだけの知識が無いと出来ませんよね」
「CADの基礎システムにアクセス出来るスキルもないとな。大したもんだ」
美月とレオも話に入ってくる。
「達也くん、私のホウキも見てもらえない?」
エリカがそう言うと
「無理。あんな特殊な形状のCADをいじる自信はないよ」
と拒否する。
「あはっ、やっぱり凄いね、達也くんは」
「何が?」
「これがホウキだってわかる事が」
そう言ってエリカは先ほどの警棒をクルクルと回す。
「え?その警棒、デバイスなの?」
美月が訊ねるとエリカは満足げに頷いた。
「普通の反応をありがとう、美月」
エリカが美月にお礼を言うと
「話を戻すが俺は無理でも神威なら出来るんじゃないか?」
と達也が俺に振る。
「おいおい、いくらなんでも買い被りすぎだろ。確かに自分のCADぐらいなら調整出来るけど」
俺が答えると
「そうなのか?懐に忍ばせてるCADがあまりに特殊だったから、得意なのだと思ってたよ」
と返された。
俺はやれやれと言った顔で木でできた小刀を取り出す。
「なんだ、それ?」
レオに訊ねられ、俺は素直に
「俺のCAD」
と答える。
「え、これが?」
エリカも驚いた様子で聞き返してくる。
「ああ、特殊な術式が組み込まれてるんだけど、それは秘密な」
「それは五神家とやらの秘術か?」
達也が真面目な顔つきで聞いてくる。
「五神家って......都市伝説の『影の五家』って奴か?」
レオが疑問を口にする。それを聞き、美月が
「でも、神威さんとどういう関係が?」
と訊ねてくる
「ん?俺は五神家の一つ中神家の跡取りなんだよ」
「え!あれってただの噂話じゃないんですか!?」
ほのかも驚きの声を上げる。
「それは私も初耳」
雫も驚いていた。
「まあ、噂ほど大した家じゃないけどね。
だから、あんまり言いふらしたりしないでくれよ。がっかりされるから。
大きな力を持ってるわけでもない、歴史があるだけの家なんでね」
そんな会話をしていると美月が
「皆さんスゴいんですね......。うちの高校って一般人のほうが珍しいのかな?」
という。
すると、先程まで黙っていた雫が
「魔法科高校に一般人はいないと思う」
と漏らす。
その通りだとみんな思ったことだろう。